会社に戻った俺は、デスクに「城戸真司」の件を報告した。
「じゃあ、なんだ?ミラーワールドってのは本当に実在するってことか?」
「ええ」と返事をしたが、自分がライダーになったことまで言おうかは悩んだ。「そうらしいですね。なんでも、彼は仮面ライダーというものに変身して戦っていたと言っています」
真司の過去を告げ、自分のことは誤魔化した。OREジャーナルの二の舞だけは避けなければならない。
「かめん、ライダー?」
「なんでもそのバトルロイヤルに勝利すれば、願いが叶うとか」
これも真司から聞いた話だ。だとすれば、・・・俺の願いは何にすればいいのだろうか。
「で、その城戸真司が生きている・・・。ということは、城戸真司は何を願ったんだよ」
確かに。その質問は想定外だったため、俺は言葉に詰まった。
「お前だったら、何を願うよ。開斗」
俺の様子を察したのか、小久保デスクは質問を変えてきた。
「なんですかね。・・・大金持ちとか?」結局、ちんけな答えしか思いつかなかった。「デスクなら、どうします?」
「確かに。そう言われたら俺も難しいよ」と微笑しながら言う。「でもよ、そこまでしてでも手に入れたいものって、現実にはないものだよな」
デスクはやはり頭が切れる。それを考察した方がいいとは思った。真司は一体何を願ったのか。
一旦デスクの元を離れた。
真司との会話を思い出した時、真司は最後にドラグレッダーと会ったのが2019年と言った。しかしOREジャーナルが、ミラーワールドの記事のせいで閉鎖に陥ったのは2003年だ。この空白の16年間はなんだ。
それも戦っていればわかるというのだろうか。
俺の願いも、いずれ見つかるのだろうか?
何を考えればいいのかわからなくなって、俺は夢遊病のようにスマホをいじっていた。だが、カードデッキのアプリを起動するというわけではなく、LINEを開いて花枝にメッセージを送っていた。
夜になり、俺は18時に定時退社を決めた。
ここで困ったことが一つ。花枝からまだ返信が来ないのだ。この頃は、以前より返信の間隔が長くなっている気はしていた。忙しいのだろうか。営業も何があるかわからない職であるため、あまり咎めないではいるようにしていた。
仕事中であろうと、返信は割と早かった花枝。もうあのメッセージを送ってから5時間くらいは経とうとしている。ここで時間を潰しているのも億劫であるため、とりあえずは社外へ出ることにした。
ビルを出たところでタイミングよく花枝から電話がかかってきた。大丈夫そうだ。
特に問題なく、食事へ行けるだろう。ただ俺は花枝の返信が遅くなっていることについてもっと考えるべきだった。
昨日の夜は久しぶりに花枝と一緒にいたわけだが、夜が明けると仕事が待っているということに変わりはない。
俺はいつものように、御茶ノ水駅で降りた。すると目の前に・・・。
「また会ったね」昨日会った青年が立ちはだかった。「なあ、折角だから戦わない?」
この青年の目の前で俺のスマホが鳴っていた。恐らくライダーを探知したという通知だろう。そのバイブレーションを聞いて、青年は言った。
「ああ、その通知きれないらしいからさ、スマホの電源は落とすようにした方がいいよ。大分不便だけど、下手にライダーバトルに私生活を邪魔されすぎても嫌だろうからね」
なるほど。青年の言っていることは一理ある。ただ俺の仕事柄スマホの電源を切っておくなんて到底不可能に近かった。会社から携帯を与えられているわけでもないし・・・。
「わかったよ。人目の映らないところにいこう」
といって俺たちは人気を避けた鏡の近くへ行った。
同時にスマホを鏡に翳す。同時にスマホがカードデッキに変る。そしてVバックルに挿入する。
「変身!」
俺たちは鏡の世界へと飛び込んでいった。