スクロールは焦らずゆっくりしてくださいね…
と、言う事は…?
「渚斗さんっ!見てください!ライトノベルがこんなにたくさんあります!」
「あ、あぁ…そうだな」
「これずっと読みたかったんです。あ、でもでもこっちの出たばかりの作品も捨て難くて」
せつ菜に連れられるがままに、まず来たのは大きな商業施設の中にある本屋だった。
流石というべきか、商業施設に入っているだけはあって駅前の店舗とは棚の数も店内の広さも倍はある。
ズラリと並んだ本には店員さんが作ったポップが飾られていて、どれも購買意欲を湧かせるに十分なあらすじが記されていた。
そんなポップには目もくれずにせつ菜はポンポンポンとバーゲンセール中の主婦が如く、御目当てのライトノベルを買い物カゴへと重ねていく。
「おいおい。そんな買って大丈夫か?絶対重くなるぞ」
「分かってます!だから渚斗さんについてきてもらったんですよ」
「げっ、その量を俺に持たせる気か」
「どうせ渚斗さんの事ですから、鞄の中身はすっからかんでしょ?そこに入れてください♪」
せつ菜の瞳にはさっきまでの暗い影は無くて、俺は少しだけ安堵する。
よく考えてみれば、歩夢や彼方さんのように強引ではない分まだせつ菜はマシな方なのかもしれない。
これが歩夢だったら俺を脅して言いなりにするのではなく、とっくに他のみんなを始末して取り返しのつかない警察沙汰に…なんて事になっている気がする。
同好会を潰されたくなかったら私に従え…というのは裏を返せば、従ってさえいてくれれば危害を加えるつもりはない…と言ってる事になるわけで。
ただ突っ走るようなことはせず、"これからの行く末を現実的に踏まえての考え"という計算高いモノをせつ菜からは感じる。
まぁ、結局のところ危険を孕んでいるというのは2人とも同じではあるが…
そんな危険と鞄の重さが肩にのしかかり、慣れない感覚を味わいながら次に向かった先はこれまた俺にとっては慣れない場所だった。
「あの、せつ菜さんや。こういう店はたとえ女の子連れだとしても入りにくいと言いましょうか…」
「こんなに可愛い女の子と入れるだけ幸せ者ですよ?渚斗さんは」
あや、可愛いって自分で言っちゃう感じ?
ま、可愛いってのには文句ないけど…このデートらしきものだって俺が望んできたわけではなく、脅されてるから渋々来ているってことを忘れないでいただきたいな。
このフロアは店のほとんどがファッション関連のようで、さっきの本屋よりだいぶ混んでいた。
はぐれると…色々とまずいな。
「せつ菜。その…手、繋ぐぞ」
「…へ?…は、はい!繋ぎましょう!!」
俺の態度が刺々しいものから急に紳士的な態度に変わったからか、せつ菜は一瞬ぽかーんとしてしまう。けれどすぐに持ち直して、力強く頷きながら差し出した手を絡めてきた。
なんだか騙しているようでせつ菜には悪いが、これで少なくとも赤の他人に迷惑をかけることは防げそうだ。
「ここです!さぁ入りましょう!」
幾分か、彼女の笑顔に輝きが増した気がする。
もしかして、素直にこの状況を楽しんでいるのだろうか?
「いらっしゃいませ…!?」
平日の夕方にしては少し騒々しいくらいの店内へと足を踏み入れると、今まさにお客に渡そうとした紙袋を店員がばさりと落っことした。
その店員の異変に気づいた他の店員もその視線を追う。
そしてそのまま、魅了されたように呟いた。
「可愛い…」
「お人形さんみたい…」
「彼氏の方もイケメンよ…」
「あなた、お客さんお願い…」
奥から店長らしき人物が俺達の方に視線を向けたまま、フラフラと歩み寄って来る。それはまるで魅力されたように、あるいは熱にあてられたかのように。
「ちょっと、え?私は?というか、服…落ちたまま…」
文句を言おうとした女性客もまた、2人の姿に見惚れて言葉を失う。
学生服に、恋人繋ぎ。まるで少女漫画からそのまま飛び出してきたような美少女と美男子がいたからだ。
「ど、どんな服をお探しですか?」
上ずった声を上げる店長はみるからに緊張していて、スーツを着こなしている大人の女性とは思えない様子だった。
「えっと…ここのお店のホームページに載っていたこのコーデってありますか?」
「はい!もちろんございます!」
興奮気味の店長に促されるまま、せつ菜は御目当ての服を何着か手に取って試着室へとむかう。
「渚斗さん…?覗いちゃダメですからね?」
「覗かねーよ」
試着室のカーテン越しにせつ菜と会話をする。
以前から欲しいと思っていたコーデの内どれが1番似合っているのかを選んでほしいとの事で、店内から女性の視線を受けつつせつ菜が着替え終わるのを、俺は早く早くと心の中で念じていた。
数分後…
「渚斗さん…?覗いてもいいんじゃないですかね?」
「どっちなんだてめぇは…って…」
ムカッときて振り返った俺は、店内にいた全員と共に息を呑んだ。
着ているのは肩が露出した白のワンピース。
部分部分にフリルのあしらいがあって、可愛らしさを演出している。
ややミニ寄りの裾がせつ菜の雰囲気にあっていて、言葉通りモデルさながらの格好だった。
可憐…という言葉は彼女のためにあるのではないだろうか?
そんな風に思ってしまうくらい、瞳を攫われてしまった。
「ふふっどうでしょうか…っきゃっ!」
頬をぽっと染めたせつ菜は、その場でクルッと一回転だけ回ってみせる。
しかし、慣れないミュールを履いたからなのか体勢を崩してしまう。
全員が「あっ!」と思った次の瞬間には、俺の腕がせつ菜の体を支えていた。
「ご、ごめんなさい」
「いいえ。お嬢さん」
なんだか連れの女の子がこんなにまで他人の視線を釘付けにしているというの状況には嬉しいものがあって、俺は調子に乗ってせつ菜の手を取りお辞儀をした。
そんな2人のやり取りは店内にいる全員の瞳に、さながら貴公子とプリンセスといった様子で、まるで物語のワンシーンのように映っていた。
「しゃ、写真撮っていいかしら!?」
「わ、私も!」
「握手してください!」
「私も!私も!」
わぁっと一気に囲まれた俺達。店内だけでなく、騒ぎに集まってきた店外の人まで輪に入ってきて、あたりはしばし騒然となってしまった…
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
「だぁ〜〜疲れた……」
「えへへ、大変でしたね?」
なんとか人混みを掻き分けて脱出した俺達は施設の近くにある噴水広場で休憩をとっていた。
場所は変われど、やっぱりせつ菜は視線を集め続けている。
せつ菜の人の目を奪うオーラには一種呪いのようなものでも関わっているんじゃないだろうか?
「あっという間でしたね。もうこんな時間です」
せつ菜が俺の顔の前に伸ばした腕に巻いてある小さな時計。
短針は6。長針は30を、それぞれ指していた。
確かに、そろそろ帰宅したほうがいい時間帯である。
しかし、ここで俺の脳内にはある考えがよぎった。
このまませつ菜と別れてしまっていいのだろうか?
脅されて渋々ついて来たプチデートだったが、後半はお互いそんなことも忘れて純粋に楽しんでいた気がする。
その中で、俺は色々と思い出したのだ。
優木せつ菜という人間がどういう存在だったのかを。
彼女は忘れているんだ。
目の前の欲望に気を取られて、周りが見えなくなっているだけ…
それは多分、他のみんなにも当てはまる。
俺の言葉で、欲望の闇から連れ戻せるならば…
「ふふっ。今日は楽しかったですよ♪ではまた明日…会いましょうね」
意味ありげに微笑む彼女の背中を見て、俺は迷う。
!→→→→→→→→→ATTENTION→→→→→→→→→!
この回ではこの先の展開を変える分岐ルートが発生しています。
読者様が選んだ選択肢によって物語が進んでいくのか、または終幕を迎えるかが決まります。
それでは、どうぞお選びください…。
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
…今呼び止めなければ、せつ菜はそのまま横断歩道を渡って行ってしまうだろう。
なぜだろうか…この選択肢がこの先の未来を大きく判断するような気がする。
(どちらかのリンクをタップしてください。該当ルートに飛びます)
このままじゃいけない。
俺は立ち上がって、せつ菜の手を掴んだ。
「!?」
せつ菜が頬を赤く染めながら振り返った。
「悪いけど、俺にも付き合えよ」
「で、でももう遅いですし…も、もしかして!?そ、そんな私まだ心の準備が!!」
「うっせ。ほら、行くぞ」
今朝の続きでも期待しているのだろう、サイレンのように真っ赤になって叫ぶせつ菜の手を引っ張り、俺はある場所へと向かうのだった。
俺は咄嗟にせつ菜の腕をつかもうとした手を引っ込めた。
冷静に考えた方がいいと判断したからだ。
このままあそこに向かったとして、上手くいく保証なんてない。
ならば、携帯でしっかりとしずくちゃん達に今日起こった出来事を共有してからでも遅くはない。
しっかりと準備をして、3人でせつ菜さんを説得すれば…なんとか。
「渚斗さーん!」
ブンブンと勢いよく手を振るせつ菜に、俺はひらひらと軽く手を振って駅へと向かった。
夕陽がゆっくりと地平線に消えていくのが見える。
早く帰ろう。
夜は…最近嫌いになった。
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
次の日の朝、どうせ連絡の一つや二つは来ているのだろうと携帯の電源をつけては見たものの、画面には優木せつ菜の表示は無かった。
「あら、勘が外れたかな」
ま、連絡が来ないなら来ないで別に気にすることはない。
彼女だって生徒会長やっているわけだからいつでも時間に融通が効く訳ではないのだろう。
1人で納得してぼさぼさになった頭を掻きながらベットを後にした。
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
授業終わり。
結局、一度も連絡は無く平穏に1日が終わった。
一応しずくちゃんと彼方さんには、昨日起こった事をメッセージで送っておいたのだが、既読はついていない。
んー、携帯はこまめにチェックするよう3人で取り決めたはずだったんだが…
きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
突然、耳をつんざくような悲鳴がクラスの入り口方から上がった。
なんだ!?
そちらに視線を送る。
すると、クラスメートに遠巻きにされた1人の生徒がいた。
「…!!」
俺は息を呑む。
その人物は、ハサミを持った手をだらりと下げ、服も返り血に塗れていたのだから。
「歩夢…お前…一体何が…」
「ああ、あなた、一緒に帰ろ?あなたを騙していた悪魔は、ちゃんと退治したから♪」
た、退治…だと?
「同好会のみんなは最初から悪魔だったんだよ。分かってるでしょ?」
まさか…さっき送ったメールに既読が一つもつかないのは……
せつ菜からなんの連絡も来ないのは……
「嘘だ、そんな…そんなのっ!!!」
「8人ともちゃんと動かなくなったからね。これでしばらくの間は、私達の周りも安心だよ〜さ、早く帰ろ?」
晴れやかに、にっこりと笑う歩夢。
そんな彼女とは対照的に、俺はその場に膝をついた。
思い違いをしていた…俺が判断を誤ったせいで…みんなが!!
「フフッ…あはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!」
歩夢の笑い声が響き渡る中、俺はどこまでも自己嫌悪の海へと沈んでいくのだった。
はい!
普通にたどり着いた方はおめでとうございます!
バットエンドはいつも突然なのです。
渚斗くんはギリギリでいつも生きているんです。
リアルフェイスです。
皆さんのおかげで日間ランキングに久しぶりに乗る事ができました!!
ありがとうございました!!
続きが早く見たい方は…引き続き評価、感想、お気に入りよろしくです!
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