リアルが忙しくなってしまって…書く暇がなくて…
これからも不定期ではありますがよろしくお願いします!
しずくと愛が不気味な雰囲気漂う虹ヶ咲学園の校門前にまで辿り着いたのは、せつ菜がメールを送ってからすぐのことだった。
夜の通学路を歩くこと十数分、すぐに駆けつけられた事だけでも喜ぶべきか否か…。
そんな事を考えつつ一歩ずつ歩みを進める。
せつ菜からの挑戦とも明確な罠ともとれる言葉を受け、すぐに身体が動いたしずくは今一度、深々と深呼吸をしたところで校門へと目を向けた。
身を屈ませながら警備員室をのぞくと、顔を真っ赤にした警備員が目に入る。
「あちゃー。こりゃ酔ってるね、、警備員失格じゃんか」
鼻を摘みながら近くにあった毛布を警備員にかけて、愛はため息を吐く。
「だから入れたんですね…でもなぜ先輩の携帯をせつ菜さんが…」
しずくは依然何の反応も示すことのない携帯の画面を見るのをやめた。
そして手のひらをぐっと握り胸に当てる。
「先輩…どうか無事でいて…すぐ行きますから」
そう、自分に言い聞かせるように呟く。
「しずく、慎重に行こう。あんまり信じたくはないけどさ、せっつーがマジでおかしくなってるなら私達に何か仕掛けて来るはずだよ」
普段は常時笑顔の愛も、この時ばかりは珍しく神妙な面持ちで口にした。
それを聞いてしずくは苦々しい思いを感じる。
彼方さんの一件があって、いずれは自分も直接"他の誰か"と対峙する時が来る事は分かっていたが、それがこんなにも早く訪れるとは思っていなかったからだ。
もちろん、渚斗を信じて協力すると決めたあの日から覚悟は決めていた。
それでも彼女は心の奥の奥の方に、わずかにまだ信じられない気持ちが残っていた。
あんなに優しかった上級生達が本当に他のメンバーを排除しようだなんて事を本気で考えているのか?
そんな"狂気"に染まった仲間を前に自分は真っ向から立ち向かえるのか?
そんな迷いが、少しだけ彼女の体を震わせる。
「しずく、大丈夫だよ。愛さんがついてる」
しずくの微かな表情の変化に気付いた愛が、しずくの汗ばんだ手をギュッと握って鼓舞した。
そうだ。1人じゃ無い。
私だけじゃない。
仲間がいる。
それだけでしずくの中にあった小さな迷いは粉砕された。
その部分を占めていた場所には、一歩を前に進めるための力強い思いが満たされていく。
彼女は自身の覚悟を再確認するように「行きましょう!」と傍らの愛に声をかけた。
ニッ!
と、力強い笑顔で愛は答えた。
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しずくと愛が校内に足を踏み入れた数分後。
1人の少女が校舎の近くに広がる緑豊かな公園にいた。
携帯からのメッセージに気づいた時、脳内では放課後に出会ったしずくとの会話が何度も再生されていた。
"璃奈さん、ちょっとお話ししませんか?このままお互いを避け合っているようじゃいけないと思うんです"
その言葉は何も間違っていない。
避けているだけじゃ何も解決しないのは分かっていた。
でも、あの写真を見た時胸に抱いたのは…
"嫉妬"だった。
ただ、純粋に自分も渚斗とあんな風に抱き合ってみたいと感じて、彼方に対して恨み嫉みと何ら変わりない感情を抱いた。
その時、自分の知らないもう1人の自分が囁いたのだ。
「なら、私だって」
得体の知れない闇に引き込まれていくような…心地良い誘いに何度も何度も誘惑されて、逃げるように同好会の事を考えるのをやめた。
登下校を共にしていた愛に見つからぬように1人で帰り…教室からほとんど出ずに…
同好会に入る前の私に戻れば…
そんな甘い考えでぽっかりとあいた穴から目を逸らし続け、数日を過ごした。
だが…
今朝の歩夢と果林の会話や、先程届いた渚斗からのメール。
もう璃奈の心は限界だった。
張り裂けそうな感情を振り解くように家を飛び出し、学校の近くの公園まで着いた時。
再び手の中の携帯が震える。
表示は非通知。
微かな気配を感じて璃奈は辺りを見回す。
街灯に照らされた周囲には人影は無い。
そう確認したのち、絶えず震えている画面をタップした。
「もしもし…」
『あ、璃奈ちゃん♪』
母性溢れる優しい声に、肩の力が一気に抜けた。
「エマさん!あのっ…えっと…」
『大丈夫だよ。落ち着いて璃奈ちゃん』
「で、でも渚斗さんのあのメッセージ!」
『私にも届いたよ。一体どうしたんだろうね』
「私、気になってしまって…」
『………そんなことより、璃奈ちゃん。今どこにいるの?』
「…え?」
そんなこと?
そのような言葉で片付けていいものではないだろう。
臆病な私が動揺するのは当然。
しかし、だからといって普通こんなにも落ち着いた声音で話せるだろうか?
『だから〜今どこにいるのかなぁって』
口ぶりこそ穏やかであったが、なぜかエマは執拗に居場所を問いただして来る。
『聞こえてないのかな?……どこにいるの?』
「…なんでそんな事を聞くんですか?」
何故だろうか。
璃奈の中に少しばかりの不安が宿る。
思えばなぜわざわざ非通知で電話を掛けてきたのだろうか。
なぜ自分の居場所をそんなに知りたがるのか。
『………』
電話越しの沈黙が、額に冷や汗を伝わせる。
まるで心臓を見えない何かに握りしめられているような感覚が支配する。
そうして一滴の汗が地面に落ちた。
瞬間、頭上から降ってきた空を切る音。
そして璃奈の肩口から、彼女にしか聞こえない小さな声が告げた。
「殺すから…だよ?」
ガンッ!!!!!!!!!
振り下ろされた鉄パイプが打撃を加えんとした目標を外れる。
そして整備された舗装に傷をつけた。
「きゃぁぁぁぁぁ」
自分が今、殺されかけたのだと理解した璃奈の口からは当然のように悲鳴が上がった。
ゆらり…ゆらり…静かに左右に揺れる影がこちらへと近づいてきて、璃奈の身体はそれと同じ分後方へジリジリと後ずさっていく。
「もう〜璃奈ちゃんってば避けたらダメだよ〜!ちゃんと死ななきゃ…ね?」
鉄パイプ片手に姿を見せたのはエマだった。
「っ!なんでっ!」
「なんで?…だって渚斗くんが言ったんだもん。助けてって」
「な…なんで私を」
「だって、渚斗くんが苦しむ原因を作ってるのは同好会のみんなだもの。だから手始めに弱そうな璃奈ちゃんを殺しちゃおって」
終始、いつもの穏やかなトーンで話をするエマ。
街灯の光が地面に反射してうっすらとその表情を闇夜に浮かび上げる。
ほんの数日前、ただ泣き出すことしかできなかった璃奈を抱きしめてくれた人物はもうそこにはいなかった。
璃奈の身体はその時点で、璃奈自身が意図せずとも勝手に足を動かし、走り出す。
"振り返るな"
そう自分の脳に何度も指示を出す。
きっと…きっと動けなくなってしまうから…と。
後方の足音が離れたのを確認して、近くの茂みへと身体を飛び込ませる。
激しい動悸と息切れを鎮めるために無理矢理口を押さえて体を縮こまる。
「りーなーちゃーん。どこにいるのかなぁ?あ、もしかして隠れんぼがしたいのかな?」
次、見つかったら確実に死ぬ。
それは朦朧とする意識の中でも理解できた。
足が震えてもう逃げることすら叶いそうにないことも。
「どこかなーここかなー?」
近くの茂みを、鉄パイプで乱雑に探る音が近づく度に血液が熱を帯びる。
額からは汗がドッと吹き出し、際限なく制服を湿らせる。
来ないで…
来ないで…
嫌だ。
嫌だ嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ。
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。
死にたくない…死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない!!!
抗えない本能が、壊れたように同じ単語を脳内に綴る。
「んっ!?」
唐突に何か柔らかいものが触れた。
「りな子、こっち」
近くの暗闇から、そう呼ぶ声がかけられる。
「しっ、早くこっち来て」
安堵の息を漏らす前に、璃奈は手を引かれて暗い路地裏に身を沈めた。
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
「はぁ…はぁ…はぁ…ここまで来れば…」
手を引かれるままに公園から離れた2人は橋の上で止まる。
璃奈は倒れ込むように地面に手をついて、これでもかというほど肩を上下させ、息を整える。
「…かすみちゃん、なんでここにいるの?」
見上げた先に映るのは風になびくベージュ色の髪と、月に照らされる髪飾り。
「ふぅ…」
いまだに肩で軽く息をしている璃奈とは対照的にかすみは軽く深呼吸を一度して、橋の手すりに背中を預けていた。
「これ、りな子にも届いてるでしょ」
「それは!先輩の!」
見せられたのは、璃奈やエマに届いていたものと完全に同じ内容のメッセージ。
「バカだな〜先輩なわけないじゃん。果林先輩かせつ菜先輩の仕業だよ」
いつもより少し刺々しい言い方で話すかすみ。
しかし璃奈にとって重きを置くところはその点ではない。
「そ、それ、どういう…」
「ねぇ、りな子。いい加減認めたらどう?みんな素直になってるんだからさ」
「え…」
手すりに置いた指先が最初より倍のスピードでカツカツという音を立てる。
それは同時にかすみのうちに湧く苛立ちの加速をも意味していた。
「あーもうムカつく…なっ!…いつまでいい子ちゃんでいるんだって言ってんだよ。そんなんじゃさっきみたいに死ぬよ?いいの?死んでも」
端に捨ててあった缶を蹴飛ばして、かすみは普段では聞いたこともないような低い声と共に詰め寄ってくる。
「なんなの…かすみちゃんおかしいよ!…ううん、かすみちゃんだけじゃない先輩達もみんな変だよ!」
「…はぁ。これ見てそんな悲劇のヒロインみたいなセリフ言えるのかな、りな子は」
『んっ!?…んちゅ…ちゅる…っむ…っぷはっ…はぁ…』
『悪いな歩夢…ファースト貰っちまって』
『そ、そんな…私…嬉しい…あなたも私の事想ってくれてたなんて…』
「え、歩夢さんと…渚斗さん…」
「りな子がゴキブリみたいに逃げ惑ってる間に先輩…彼方さんともキスしたみたいだよ?あーあ…可哀想な先輩。好きでもない女の子にキスされちゃうなんて…」
「嫌だ、こんなの見せないでよ!!」
「…もーさぁ。そういうのいらないってばー」
「そ、そうだかすみちゃん!私達で止めよう?お話しすればきっと先輩達は…」
かすみの基準に照らせば、目の前で今にも泣き出しそうな璃奈はあまりにも無防備で、愚鈍に過ぎた。
もっとまともな答えが返ってくると思っていたが、飛び出して来たのは虫唾が走るような気の抜けた提案だった。
イライラが加速していくのを感じたかすみはそのまま口を開く。
「ねぇりな子…いつまで甘えたこと言ってんの?さっきのエマさんの目覚えてないの?バカなの?あれはね。殺意だよ。今までの繋がりなんて関係ない。次会ったらすぐに殺されるけどいいわけ?いい加減気付けよのろま。おーい。聞いてんの?」
おかしい。
こんなの間違ってる。
みんなどうかしてる。
殺す?
死ぬ?
少し前まであんなにも一緒だった私達が?
嫌だ。
そんなの嫌だ。
璃奈は徐々に自分だけが、周囲とは断絶した恐ろしい世界へと移行している気分になってきた。
暗闇の濃い世界へと、私の知らない"私"が一歩を踏み出す。
しかし未知への恐怖が、その一歩を踏みとどまらせた。
そして…
「…やだ…やだよ!こんなのもうやだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「…あらあらまた逃げちゃった……別に助けることなかったかな。ま、私は先輩の苦痛に歪む顔もだ〜い好きだからぁ〜♡……せいぜい踊り狂ってよ?…り・な・子」
→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→→
校舎から体育館まで続く渡り廊下。
昼の合間に蛍光灯がショートしていたのだろう。
光が点いては消え、点いては消えを繰り返してまばらなタイミングで廊下一帯を照らしている。
その中を、足取り軽くぐんぐんと進んでいく影があった。
「果てしない…道でーも一歩一歩…♪」
彼女は今日も、家主のいない家に侵入した後、大人しく家主の帰宅を今か今かと待っていたのだが、
『学校にいる。助けてくれ』
携帯に表示された文を見た途端、迷わず作りかけの料理を残して夜の闇に駆け出した。
「諦めなければ…夢は逃げない♪」
カラカラカラ…
その手に金属バットを握りしめて。
「となりに…ふふっ…あなたがいてくれるから♡逆境も不安も乗り越えていけるよ♪」
カラカラカラ!!!
「あーりがとっ!」
バンッ!!!!!!!
声を大きく張り上げると同時に体育館の扉を勢いよく開くと、彼女は目線を右から左にゆっくりとずらしていく。
「………」
そして暗闇の中、ある一点で目線を留めると口に手を当ててクスクスと笑い出す。
「隠れてるのは分かってるよ。この女狐が」
「あらあら…お耳がよく聞くウサギさんねぇ…」
舞台の袖に巣食う影から、1人の人物が姿を表す。
「果林さんのズル賢さには叶わないよ〜。せつ菜ちゃんの裏でこそこそ動いてさぁ…そんなに他のみんなが怖いのかな?」
「怖い?うふふ…….そうねある意味は。あなたの愚かさには恐れ入るもの」
そう言って果林とは反対側の袖からは、いかにも柄の悪そうな4人組がゾロゾロと出てきた。
歩夢の近くまで近づくと、1人が口笛を鳴らして笑みを浮かべる。
「ひゅーっ、こんなかわい子ちゃん好きにしちゃっていーのか」
「うっわ、テンション上がる」
「俺1番最初な!初物だったら最高」
「バーカ。てめぇは早すぎるから口でも使っとけよ」
あぁ、そういう事か。
歩夢は目の前で自らの体を舐め回すように見ている男達を無視して果林へと視線を戻す。
「果林さん。あなたが臭すぎて周りにウジが湧いてるよ?大丈夫?」
「うっわ、クール系??」
「いーねー、ただ泣き叫ぶようなのは正味飽きてたからさ」
「せつ菜ちゃんはどこ?私の渚斗はどこ?早く教えろ」
「あらあら…教えろだなんて…やっぱり先輩に対しての口の聞き方が良くないわね」
そのまま袖へと戻ろうとする果林。
それを近くの壁に刺さったナイフが邪魔をする。
「教えろ女狐!!!!これ以上私の渚斗をたぶらかすな!!!」
「…あらあら危ない。聞けない相談ね、歩夢。でも良かったじゃない?その人達、とーってもいい人達だから…手取り足取り…色んなこと教えてくれるわよ!!」
ナイフを引き抜いて、お返しと言わんばかりに歩夢へと投げつける。
「ふふっ……ははっ…あはははは!!!!!果林さん!あなたって自分じゃ何もできないんですね!!こんな事したって、いずれ墓穴を掘る事になりますよ??」
「あーあ。ほんっと可愛げのない後輩ね…お兄さん達〜よぉくしつけてあげて♡ふふ……」
「へーい。さっ、歩夢ちゃん?だっけ。お兄さんたちといいことしようぜ?」
「…あんたらに構ってる暇なんかない」
「釣れないねぇ。でもさ拒否権なんかないんじゃない?」
男の手が歩夢の肩に触れる。
瞬間、男の眼前に迫るのは…
「私に!!触れるなあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ヤンデレ末期化を楽しみにしているメンバーは?
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天王寺璃奈
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中須かすみ
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宮下愛
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エマヴェルデ
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朝香果林