虹ヶ咲ヤンデレ小説 〜憎しみに染まる虹彩〜   作:てらりうむ

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お久しぶりです。って何回目だろうか。
てらりうむです。4ヶ月ぶりの更新です!
にしては大した文字数ないんですけどね…虹アニメが始まりもうラストスパートなのに出すべき時に出せず私も勿体無い感がヤバいです。


13話 微笑

月明かりに照らされる校舎の廊下を俺は全速力で駆け回っていた。

本能のままに足を動かし続け、捕食者から逃げ回ることしかできない弱者のように。

 

廊下を走る度に、誰もいないはずの校内には大きな足音が遠くまで響き渡る。

それは俺に限らず、どこまでも追ってくる追跡者も同様だった。

 

彼女は俺を逃す気など毛頭ないようで、さっきから俺が数ある出口から脱出しようとするのを、先回りし続けている。

 

「はぁ…っはぁ…さすが元生徒会長なだけはあるな。この迷宮学園の地図が寸分狂わず脳内にインプットされてるわけか」

 

別の校舎への連絡口には窓がなく、非常灯の不気味な緑が一部を照らしていた。

そこを進もうとして立ち止まり、眼前の暗闇から感じた気配に呼吸が整わないまま言葉を投げかける。

 

「記憶力じゃ敵わないな。せつ菜」

 

「ええ。でも、私なら渚斗さんのことならなんでも把握してますから」

 

発した声に続いて、水面から浮き上がるようにせつ菜が通路の角から現れた。

目線を少し下げてみると相変わらず片手に裁ち鋏を持ち続けているのがここからでも十分分かる。

アレを使って一体何をする気なのだろうか。

考えたくもない。

 

「それは世の男性なら泣いて喜ぶセリフなんだがな。使うタイミング間違えてるぞ」

 

「…渚斗さん。今ならまだ間に合いますよ?あなたの中の悪魔はまだあなたを完全に侵食できてはいないようですから」

 

「俺の中には悪魔が住み着いてるのか?」

 

「ええ。あなたの周りにたーっくさんいるじゃないですか。いつもいつも纏わりついている悪魔からどんどん浸食されてるんですよ」

 

せつ菜の脳内には同好会のメンバーの顔が浮かんでいるんだろう。

ハサミを振り回し、息を荒げている。

 

「俺にはせつ菜、お前が悪魔に見える」

 

ここまで狂いながらも、なかなかに冷静なせつ菜の隙を突くにはこうやって挑発でもしない限り無理なんだろう。

一歩間違えれば身体に穴が開くかもしれないが、こうやって逃げ続けていても埒があかない。

今こうしている時も、しずくちゃんや彼方さんが誰かに襲われているかもしれないのであれば、賭けに出るのも怖くはなかった。

 

「あぁ…なんてかわいそうな渚斗さん。どんどんあいつらに精神を乗っ取られていってるんですね…早く…早くしなきゃぁぁ!!!」

 

 

「頼む…!誰も傷つかないでいてくれ!」

 

祈るように目を閉じて、再び元来た道に駆け出すのだった。

 

 

 

 

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「いない…ね?」

 

「ええ…」

 

しずくと愛の2人は校内に入ってまず部室へ足を運んでいた。

何かほんの足がかりにでもなればと、何度か渚斗の携帯に電話をかけたのだが、繰り返されるのは電源が入っていないことを知らせる機械的な返答のみだった。

 

「2人の荷物と、、あれ?これってナギッちの携帯じゃない!?」

 

慌てた様子の愛が、拾った携帯をしずくに見せる。

 

「どうりで繋がらなかったんですね」

 

画面の黒に白い亀裂が幾重にも重なり伸びている。何度か電源ボタンを押してみたが反応はなかった。

 

「やっぱりせつ菜さんの罠…という事ですよね」

 

「ナギッちをどこかに隠して、私達を後ろから…とか?うぅ…愛さん考えたくないなぁ」

 

苦虫を噛み潰したように顔をしかめる愛を見てしずくも表情を曇らせた。

 

 

「とにかく、2人いるんだからしっかり後方確認しつつせっつーとナギっちを見つけないと」

 

 

 

 

ゴトッ!

 

 

 

 

 

 

 

「い、今の練習室から?」

 

「愛さん、私が見てきます」

 

物音が聞こえたのは部室の横に併設されたレッスンルームからだ。

息を潜めつつしずくは部屋へと入り込む。

部屋の中にあるドア…普段は渚斗が作曲に使ったりメンバーとボイストレーニングを行うときに使うピアノが置いてある部屋から微かではあるが物音が聞こえる。

 

それに誰かが啜り泣いている。

 

しずくはリアリスト、要は霊の類などはあまり信じないタイプではあるがこの時ばかりは冷や汗を額に滲ませていた。

極度の緊張状態とすぐそばに近づく死の気配が嫌でもその気にさせるのだ。

 

「っ!」

 

「きゃぁ!」

 

ドアの小さな窓枠から中を覗き込んだ時、しずくと中で泣いている人物との目があった。

霊…であれば既に死んでいるはずだが、あまりにも霊とは程遠い気配にしずくの力がストンと抜ける。

 

「かすみさん!!」

 

ドアを乱暴に開いてしずくは彼女の元へと駆け寄る。

 

「かすみさん大丈夫ですか!?」

 

「ご、ごわがっだぁよぉしず子!!」

 

かすみの様子にしずくは動揺しながらもすぐに落ち着きを取り戻し、抱きついてくる友人を力強く抱きしめ返した。

 

「え、かすみ!なんでこんなとこに!?」

 

中々戻ってこないしずくを心配してか、遅れて愛も扉の外から顔を覗かせた。

 

「とりあえず、少し落ち着いてからでいいですから何があったか教えてくださいかすみさん」

 

しずくの制服を涙で濡らしながら、かすみはコクコクと頷いた。

 

 

 

 

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「先輩から助けてって…普段そんなこと絶対に言わないからどうしても気になって来たら、誰かに後ろから突き飛ばされて気を失って。それで気付いたらここにいたの」

 

「突き飛ばされたって、怪我はないの?」

 

「怪我はしてないです」

 

「そっか!なら良かった」

 

「で、でもそんなことより先輩は一体どうしちゃったんですか??しず子達なにかしってるの??」

 

しずくはかすみの瞳を見て少し戸惑う。

おそらくかすみは何も知らないのだろう。

という事は今日の午後、喫茶店でしたやりとりを再びかすみにしなければならない事を考えると、口を開くのを躊躇ってしまう。

そんなしずくの様子を見てか、愛がかすみの横に座った。

 

「ショックだと思うけど、話さなきゃ始まらないから話すね」

 

 

 

 

 

 

 

 

…数分後

 

 

 

 

 

 

 

「え、せつ菜先輩が…と、というか歩夢先輩や果林先輩もって。彼方先輩は元に戻った?一体何がどうなってるのしず子」

 

「何も知らなかったんですか?かすみさんは」

 

「だ、だって同好会のみんなと顔合わせづらくて避けてたから…」

 

「無理もないよ」

 

「「「…」」」

 

沈黙に耐えきれなくなった愛は、無理矢理笑顔を作りかすみとしずくの手を握りしめた。

 

「と、とにかく!今は早くナギっちを見つけないとね」

 

「そ、そうですよね愛先輩。ほらしず子行こ!」

 

手を引かれて歩き出したしずくは、口に手を当てて思考を巡らしていた。

 

あの日、先輩が彼方さんを探しに保健室に行った日。

あの日を1日目として…彼方さんは探しに来た私に対して『先輩に陵辱された』と言った。

それを信じなかった私達の元にタイミングを見計らったかのように例の画像が届いて。

次の日、2日目に先輩は彼方さんに捕まった後、自力で抜け出して歩夢さんに襲われていた彼方さんを助けた。

でも、結局彼方さんは写真の件については全く知らなかった。

それに彼方さんが先輩を捕まえようと待ち合わせ場所に来た時。

既に先輩は何者かに殴られて気絶していたって…

 

やっぱり…誰かが裏で操ってるとしか…。

 

歩夢さん?果林さん?せつ菜さん?エマさん?璃

奈さん?

 

それとも…

 

「しず子!しず子ってば!」

 

「へ?」

 

「もー!いきなり黙ったりして怖いじゃん!ちゃんと話聞いてよ」

 

「ごめんなさい、ちょっと考えごとを…」

 

「えっと、じゃあも一回愛さんから提案ね。3人で探すより、二手に分かれた方がナギッちを見つけられる確率は高いはず。愛さんは1人でも大丈夫だから、かすみとしずくはあっちの方探してきてくれない?」

 

たしかに…先輩を早く見つけるためにはその方がいいだろう。

しかし、しずくの脳内には先程考えていた事が脳裏によぎる。

 

まさか…かすみさんに限って…あるわけない。

かすみさんは同好会の事すごく大切に思ってるのを私は知ってる。

 

思考を支配する悪夢を振り払ってしずくはかすみの顔を今一度見つめる。

 

「しず子?」

 

やっぱりそうだ。

こんなにも綺麗で、可愛くて、触れれば壊れてしまいそうなほど弱々しく揺れる瞳がそんな恐ろしい闇を隠しているだなんてあり得ない。

 

「かすみさん、行きましょう。先輩を助けなきゃ」

 

「うん!」

 

「何かあったら、メールでね。通知音は切るように」

 

愛の言葉に頷いて、そのまま別の方向へと向く。

2人は暗闇の中を1歩踏み出した。

 

 

 

 

 

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しばらくの間、無言で私はかすみさんと校舎の廊下を歩いていた。

お互い神経を研ぎ澄まして、微かな音にも注意を払っているので、繋いだ手はじんわりとした感触が支配していた。

そんな感触が消え、突然背後から呻き声が上がる。

 

「っ!かすみさん!?」

 

振り返ると、かすみは肩を震わせながら地べたに力なく座り込んでいた。

物陰に隠れながら背中をさすると、力なく目を開けて私の手を握る。

 

「ごめんしず子…ちょっとだけ休憩…しない?」

 

そう言ったかすみの顔はひどく疲れているのが見て取れた。

微かに声も震えていていつもの明るい声音ではなかった。

無理もない。

こんなホラー映画のような体験をしたことなんて普通に考えれば無いのが当たり前だ。

昼間はあんなにもたくさんの声が飛び交うこの空間も夜になればこうして人間の恐怖心理をジリジリと加速させるものへと変貌する。

 

「ごめんなさい、気がつかなくて。どこか落ち着いてやすめる場所は…」

 

自身の力の無さに痛む胸を抑えて、あたりを見回しながら落ち着けそうな場所を探す。

 

「しず子、確かここの下に広場があってそこにベンチがあるから…少し横になりたいかも…」

 

「分かりました、階段降りられますか?」

 

手を引きながら、階下へと続く階段に向かって進む。

 

「うん…ありがとう。どうして…どうしてこんなことになっちゃったんだろうねしず子…この前まであんなにみんな仲良く楽しくしてたのに」

 

今にも消えそうな弱々しい声でかすみが問いかけてくる。

ここ数日間、ずっと私が考えていた事だった。

そして私はその答えをなんとなしに掴んでいて、誰かにそれを打ち明け、共有したいとも考えていた。

そうすることがどうしようもないほどに広がっている暗闇に光を灯すせめてもの抵抗だと思ったからだ。

 

「誰のせいでも無いんです。どこかで必ず気づいてた…このままじゃいけないって。でも変わってしまうのが怖くて…みんなで乗り切らなければいけない事なのに…」

 

「そっか…みんなの問題か。やっぱりしず子も先輩のことが好き?」

 

「ええっ!?そ、それは…」

思わず声が裏返った。

なんだか先ほどまでのかすみさんの声が、一転して真面目なトーンに変わった気がした」

 

「どうなの?」

 

「好…きです」

 

「それは先輩として?異性として?」

 

「…いいえ異性として先輩が好きです」

 

私はキッパリと言い切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そっか…残念」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

え?と聞き返す間も無く、私の身体は宙に浮かんだ。

 

あれ、なんで。

 

なんでかすみさんは笑ってるんだろう。

 

さっきまでの疲れた表情はどこにもなく、そこには不気味な微笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 

「しず子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ばいばい♪」

 




いやはや。牙を向きましたね。
セフィロス参戦ならぬかすみん参戦です☆

正常:愛 しずく 璃奈 彼方
正常(?):
異常:
末期:歩夢 せつ菜 かすみ エマ 果林 ←一気に昇格しました☆

次はもう少し早めに出せるよう頑張りますので、次回もお願いします!
そして新規読者の皆皆様方!この作品が盛り上がるよう評価投票、お気に入りよろしくお願いします!
ランキングに久々に載りたい泣泣

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