ゼロの使い魔 ールイズとサイトが素直になったらー 作:jigu
時が経つのって早いですね…
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。我が運命に従いし、”使い魔”を召喚せよ」
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気が付くと自分の顔を覗き込む女の子がいた。
彼女は白いブラウスとグレーのプリーツスカートの上に黒いマントを羽織っている。
よくよく見ると現実では目にすることはないような、桃色がかったブロンドの髪に鳶色の瞳をしていた。
「貴方、名前は?」
辺りを見渡すと、彼女と同じような服装をした男女が自分たちを囲んでいることに気が付いた。
周囲の人たちも、金色に始まり赤色や青みがかった色をした髪をしている。
コスプレ会場にでも、自分は迷い込んでしまったのだろうか?
そう思い、首を傾げた。
「…私の声が聞こえてないのかしら?」
再度、目の前の女の子から言葉が発せられる。
周囲の状況を把握することに集中しすぎて、目の前の女の子の問いに答えていないことに気が付いた。
「あぁ、ごめん。俺の名前は才人。平賀才人だ」
「ヒラガ・サイト?変わった名前ね」
「そんな変な名前か?まぁいいや、君の名前は?」
「ルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ」
名前からして明らかに日本人ではないようだ。
見た目からして違うとは思っていたが…
「ルイズ・フラン…なんだって?ごめん、うまく聞き取れなかった」
「ルイズでいい「おいルイズ!『サモン・サーヴァント』で平民なんて呼び出してどうするんだよ!」
「本当だよな!流石は”ゼロのルイズ”だ!」
誰かが大きな声でそう言うと、覗き込んでいる少女以外の全員が笑い出した。
目の前の少女はそれらの言葉に対してなんとも思っていないのか、嬉しそうにこちらを見つめている。
「いいのか?明らかに馬鹿にされてるみたいだけど」
「いいのよ、好きに言わせておけば。それに私は今凄く機嫌が良いの」
周りから馬鹿にされているのに、少女はとても機嫌が良いようだ。
そのことを不思議に思っていると、笑い声が聞こえる人垣の中から一人の男性がこちらに近付いてきた。
「ミス・ヴァリエール、無事に『サモン・サーヴァント』に成功したようだね」
「はい、ミスタ・コルベール」
近付いてきた男性の名前はコルベールと言うらしい。
コルベールは大きな木の杖を持ち、真っ黒のローブに身を包んでいる。
よくよく周りを見渡してみれば目の前の少女を含め、木の棒のようなものを持っている人が見受けられた。
「何度か『サモン・サーヴァント』を失敗した時はどうなるかと思ったが無事『使い魔』を召喚することができて何よりだ。私が知っている限り過去に人間が『使い魔』として召喚されたことはないから、少し驚きはしたがね。さて、それでは『儀式』を続けなさい」
「わかりました」
サモン・サーヴァント?使い魔?召喚?儀式?一体なんだっていうんだ?
混乱している才人を余所に、ルイズは才人の目の前に膝をついた。
「ごめんなさいね、突然のことで混乱をしてるかもしれないけど…許してちょうだい」
ルイズは目をつむり、手に持った小さな杖を才人の目の前で振った。
「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール。五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与え、我が使い魔となせ」
そう言うと、杖を自身の額に置き、ゆっくりと顔を近づけた。
(…随分顔が赤くなってるけど、可愛い顔してるなぁ)
などと現実逃避をしてる間に、ルイズの両手が才人の頰に添えられ、二人の距離は”ゼロ”になった。
その時間は5秒にも満たないものであったが、柔らかい唇の感触が数分、数十分にも感じられた。
ルイズが唇を離して立ち上がり、コルベールの方を向いた。
「終わりました」
その淡白な返答から平常心を保っているように思ったが、桃色がかったブロンドの髪からわずかに見える耳が真っ赤になっていることから、そんなことはないことが才人にはわかった。
鏡がないため才人自身は気付いていないようだが、才人自身もルイズと同様な反応をしている。
「うむ、『サモン・サーヴァント』は何度も失敗したが、『コントラクト・サーヴァント』は一度で成功できたようだね」
コルベールは嬉しそうに言った。
「相手がただの平民だから『契約』できたんだよ!」
「そうでなければ”ゼロのルイズ”に『契約』なんてできるわけないだろうね!」
周囲にいる数名が笑いながらそのようなことを言った。
そんな中、才人はコントラクト・サーヴァントとか契約と言う単語の意味について考えていた。
そのようなことを考えた直後、才人の身体が燃えるように熱くなった。
「…っ?!あぁあああああああ!」
思わぬ痛みに悲鳴をあげると、ルイズが駆け寄り背中に手を当てた。
「落ち着きなさい!『使い魔のルーン』が刻まれてるのよ」
「お…俺の体に…何刻んでんだよ…」
痛みが起きたのもつかの間、すぐに痛みが治まった。
コルベールが近寄ってきて、先ほどの痛みによって左手の甲に刻まれた『使い魔のルーン』を確かめた。
「ふむ…珍しいルーンだな…」
そう言うと、コルベールは左手の甲に刻まれたルーンを写し始めた。
その言葉につられて、才人は自身の左手の甲を確認すると見慣れない文字が刻まれていた。
「…なんなんだあんたらは」
「…あとでちゃんと説明するわ」
かなり小声で言ったつもりであった才人は、ルイズに聞かれたことに驚いた。
ルーンを写し終えたコルベールは立ち上がり二人の側から離れた。
「さてと、皆教室に戻るぞ」
その言葉が合図となり、周辺にいた人たちが宙に浮き、城のような石造りの建物に向かって移動し始めた。
その光景を目にした才人は唖然とした。
「人が…宙に浮いてる…?」
「貴方『フライ』も見たことがないの?」
非現実的な光景を目にし、才人は思わず目眩がした。
「ルイズ!お前は歩いてこいよ!」
「そもそも”ゼロのルイズ”は『フライ』どころか『レビテーション』すらできないじゃないか!」
「貴女の使い魔が平民だなんてお似合いよね!」
悪意を持った言葉を言い、笑いながら飛び去って行った。
才人とルイズは取り残されることとなった。
飛び去って行った人たちが見えなくなると、ルイズは深いため息を吐いた。
「もう…ほんと失礼なんだから」
そう言うとルイズは才人の方へ向き直った。
才人に向けた表情は先程までの少し悲しそうな顔ものではなく、嬉しさが見え隠れするような表情であった。
「改めて自己紹介をするわね。私はルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。ルイズって呼んでくれると嬉しいわ」
誰からも見惚れられるような笑顔でルイズはそう言った。
「…これはどうもご丁寧に。俺は才人、平賀才人だ。そんなことより、ここはどこなんだ?お前らはなんなんだ?誘拐?どうやって空を飛んだ?使い魔とか儀式とかってなんなんだ?」
突然のことに混乱している才人は、質問にしっかり答えつつも疑問に思っていることを矢継ぎ早に質問した。
「ちゃんと聞かれたことについては答えるわ。でも、質問全部に答えるのは時間もかかると思うから、学院まで歩きながらと部屋で落ち着いてからでもいいかしら?」
ルイズは、そんな才人の状況を理解し、相手を落ち着かせるような声色で言った。
そして、才人の返答を聞かず、ルイズは歩き始めた。
右も左もわからない才人は置いていかれる訳にもいかず、すぐさま彼女を追いかけた。
「あ、そうよ。貴方のことはなんて呼べばいいかしら?ヒラガ?サイト?家名がサイトよね?ならヒラガの方がいいかしら?」
「かめい…?あぁ、家名か。家名っていうか苗字が平賀で、名前が才人だよ」
「ヒラガが家名でサイトが名前なの?貴方のいたところは私たちとは少し違うのかしら?不思議ね。サイトって呼んでもいいかしら!」
「まぁいいけど…それよりさっきの質問に答えてくれ」
「そうだったわね。まず、ここはトリステインよ。サイトはどこの生まれなのかしら?」
「東京だよ、東京」
「トーキョー?聞いたことないわね、どこの国かしら?」
「日本」
「…そんな国聞いたことないわ」
「は?聞いたことない?…それ本当に言ってる?」
「本当よ…サイトに嘘を吐く必要がないもの」
嘘を吐いていないと言うルイズを訝しみ、才人は次の質問をした。
「じゃあなんで人が飛んでんだ?人が飛ぶなんて落下する方法しか知らないんだけど」
「基本的に空ぐらい飛べるわよ?メイジだもの」
「メイジ?メイジっていわゆる魔法使いか?!」
「そうね、魔法を使える人のことを指すわね」
ルイズの表情はいたって真面目なもので、気が動転している才人の目にも嘘をついているようには見えなかった。
才人の無知とも取れる質問に対して、ルイズはそれに怒るわけでもなく馬鹿にするわけでもない返答が帰ってきたことで、才人は少し落ち着いて現状を整理することができた。
「…つまり俺はお前の『使い魔』とやらにさせられるためだけに知らないところに召喚されたわけ?」
「…そういうことになってしまうわね、本当にごめんなさい」
「…そう素直に謝られると強く言いにくいんだが?」
「…ごめん…なさい…?」
そう言いルイズは困った顔をして首を傾げた。その仕草はとても様になっており、女性慣れしていない才人は思わず目を逸らした。
「ねぇ、サイト。貴方が色々と言いたいことや聞きたいことがあるのはよくわかるわ。でも、思ったよりも歩きながらだとちゃんと話しづらいし、ひとまず学院に帰って落ち着いてから話し合うことにしない?」
「…そうするか。どのぐらい距離があるのかはわからないけど、その間に俺も頭の中を少しでも整理しておくよ」
「ありがとう、サイト」
そうして、二人は学院へと歩を進めた。
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どうも、jiguです。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
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