コードギアス~あの夏の日の絆~   作:真黒 空

12 / 78

武装を文字で起こすと分かりづらいと思うので、念のため最低限の説明だけ前書きに入れさせていただきます。

・MVS――メーザーバイブレーションソード。対ナイトメアの大型刀剣。抜刀後刀身の分割も可能で切れ味抜群。
・大型ランス――グロースターの基本兵装。側面に収納式の4枚のブレードを搭載した大槍。
・アサルトライフル――グラスゴー時代から運用される対ナイトメア用の火器。


12:イレギュラーな男

 

 埼玉の敷地を4機のナイトメアが走る。

 大型ランスを片手に構えた青紫のグロースターが2機に、色だけ赤紫になっているギルフォードの乗るグロースターが1機。そしてジェレミアの乗機するアサルトライフルを構えた唯一のサザーランド。

 

『ギルフォード卿、この度は私の我儘を聞いてくださり、感謝致します』

『姫様の判断ですよジェレミア卿。私としても、あなたの腕には興味があります。是非ともその力を存分に見せていただきたい』

『お望みとあらば全力で。しかしイレブン風情に力を発揮するだけの力量があるかは疑問ですが』

『枢木スザクは世界唯一の第七世代型ナイトメアフレームに騎乗しています。油断していては足を掬われますよ』

『これは失礼。確かにあのロイドが作ったナイトメアというのは脅威かもしれませんな』

『ロイド伯爵と面識が?』

 

 ギルフォードの問いに、若干苦々しさの混ざった声音でジェレミアは答える。

 

『学生時代の同期でありました。当時監督生だった私にとって、トラブルばかり起こすロイドは頭痛の種だったものです』

『ロイド伯爵の破天荒ぶりは貴族界隈でも有名でしたね。と、そろそろ無駄口を叩くのは止めましょうか。接敵します』

『イエス・マイロード』

 

 こんな軽口を叩いている中でも警戒を怠らなかった二人だが、あっけないほど罠や奇襲の気配はなかった。

 そして大通りを曲がれば、サザーランドとは明らかに違う騎士の装いをした白銀のナイトメア。

 資料で見た通りの嚮導兵器の姿。明らかにこちらを待ち構えていたランスロットに4機は一度制止し、代表としてギルフォードが名乗りを上げる。

 

『私は神聖ブリタニア帝国第二皇女コーネリア殿下の騎士、ギルバート・G・P・ギルフォード! 問おう! 貴様は脱走兵枢木スザクに相違ないか!』

 

 誇りないイレブンの事、無視して襲い掛かってくるかと思えば、意外にも枢木スザクはギルフォードに名乗りを返した。

 

『ええ。その通りです。元日本国首相枢木玄武の長子、元ブリタニア軍准尉、そしていまはただの日本男児、僕は枢木スザク』

 

 静かに、だが揺るぎない口調で答えるスザク。

 テロリスト特有の威勢の良さがない事を意外に感じながらも、ギルフォードは片手で持っていた大型ランスを両手に持ち直す。

 

『そうか。ならば問答は不要。皇帝陛下の慈悲を裏切り、名誉ブリタニア人としての栄誉すら捨て去り、愚かにもイレブンへと戻った貴様を処断する!』

 

 告げると共にギルフォードのグロースターはフルスロットルでランスロットに突っ込む。

 それに対しランスロットは最新の武装であるMVSを抜く。

 武器を使わず戦っていたという報告だったが、敵の力量を図る目はあるらしいとギルフォードは警戒を強めた。

 MVSを構え迎撃態勢を取るランスロットの間合いに入る寸前に、ギルフォードは跳躍しランスロットの後ろへと回り込む。

 枢木スザクは元名誉ブリタニア人。そのためナイトメアに乗っての戦闘経験は皆無と言っていいだろう。となればこうした変則的な動きに対する反応は遅れるはずだとギルフォードは読んだ。

 しかしランスロットの動きはギルフォードの予想を遥かに上回るものだった。

 グロースターによる振り向きざまの最速の突き。それをランスロットは最小限の回避動作で見事にかわす。それはわずか数センチを見極める見事なものであり、この動きができるパイロットはブリタニア軍の中にも殆どいない。

 避けられるとしても大きく退くはずだと考えていたギルフォードは、その瞬間致命的な隙をランスロットに晒す事になった。

 即座に振り上げられるMVSにダメージは免れないと判断し、それでも致命傷を避けるため回避に入ったギルフォードだったが、ランスロットがその腕を振り下ろす事はなかった。

 間一髪のタイミングでジェレミアにより斉射されたアサルトライフルを回避するために、ランスロットが大きく飛びのいたからだ。

 すぐに味方機がギルフォードの周りを固め、ランスロットの追撃から守る。 

 

『ご無事ですか! ギルフォード卿』

『ええ。危ないところを感謝します。ジェレミア卿』

 

 たった一度の接触。それだけで脅威を知らしめたランスロットと枢木スザクにギルフォードはつばを飲み込む。

 

『どうやら、甘く見て勝てる相手ではなさそうですね』

『まさかイレブン風情があれほどの腕を有していようとは……』

 

 ギルフォードの言葉に緊張したジェレミアの答えが返る。

 この時点で二人は枢木スザクがイレブンである事への慢心を全て捨て去った。

 

『しかし、騎士の誇りにかけて勝つのは我ら!』

『然り! 誇りなきイレブンに我らブリタニアの力を思い知らせてやりましょうぞ!』

 

 裂帛の声を上げ、突撃する4機のナイトメア。

 それを待ち構えてるのは不気味なほど静かに立つ白銀の騎士。

 勝負の行く末を決める戦いが火蓋を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 埼玉ゲットー西部。

 扇達は埼玉の住人を率いて指示された脱出地点へと向かっていた。

 現在埼玉ゲットーは驚くほど人の気配もナイトメアの気配もない。

 時たま遠くから戦闘音が聞こえるが、近くからは避難する住民の瓦礫を蹴る音や、細々とした話し声しか聞こえない。

 この状況を作り出したのが顔も分からない枢木スザクの協力者の力かと思うと、その底知れなさに恐怖を憶える程だった。

 

「もしかして、本当にこのまま出られるのか……?」

 

 思わずそんな言葉がついて出た。それこそ先の新宿事変のような突然の停戦命令が発せられるくらいの奇跡でも起こらければこのまま殺されるしかないと考えていた扇にとって、こんな風に一部でも戦いが止んでいるいまの状況、それ自体が信じられないものだった。

 

「扇さん、他の人達に聞こえますよ」

「あ、ああ。すまない」

 

 井上に注意され、口を閉ざす。

 脱出を先導する自分達が、作戦の成功に懐疑的な発言すれば避難民の不安を煽る事にもなり、最悪混乱が起こって脱出がままならなくなってしまう事もあり得る。そうなればこれまでの努力は全て水の泡だ。

 

「気持ちは分かりますけどね。一体どうやったらこんな状況作れるのか……」

「そうだよな。新宿の時の事を考えたら、夢でも見てるみたいだ……」

 

 あの時はただ事態に流されて追い詰められるだけだった。

 襲ってくるブリタニア軍から逃げて逃げて逃げて、そんな中で南と吉田が負傷し、殺されそうになった寸前で停戦命令が発せられた。数機のナイトメアと突出した力を持つ枢木スザクがいるからといって、これと同じ状況を新宿の時に作り出せと言われても扇には絶対にできなかっただろう。

 

「けど本当に脱出できるのか? 戦力を削ったって言っても、一部だけだぞ。包囲を崩したわけじゃない」

「そうよね。しかも枢木スザクが包囲を突破したって言うのは南側なんでしょう? なのにどうしてわざわざ違う方向へ向かうのかしら?」

 

 杉山の懐疑的な意見に井上も賛同して不審を口にする。

 確かに今日初めて会った、しかも顔も見ていない相手を信用する事は難しいだろう。

 

「分からないが、それでもこんな状況を作った奴の考える事だ。きっと意味があるんだろう。信じるしかない」

「まぁ確かに。ここまで来たらそれしかないよな……」

「ええ。今更降りられないわよ」

 

 不安と一抹の希望を抱きながら、指示された通りに扇達は西へと足を進めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさかギルフォードがここまで苦戦するとはな……」

「ランスロットはもちろんの事、枢木スザクも並のパイロットではなさそうですね」

 

 コーネリアの呟きにダールトンは感心したように答える。

 ギルフォードは帝国の先槍とまで呼ばれる優秀な騎士だ。相手が機体性能にかまけたパイロットであれば、たとえナイトメアの性能で後れを取っていたとしても容易く勝利を持ち帰った事だろう。しかしランスロットと相対したギルフォードの部隊は、既に2機をランスロットに落とされ、残ったギルフォードとジェレミアであってもランスロットを仕留めるには至っていない。援軍を近くに待機させてはあるが、ここで投入すれば部下を信じていないと言外に示す事にもなる上、生半可な戦力では足手纏いになりかねない。ギルフォード級の腕前となれば、軍の中でもコーネリアやダールトンくらいしかおらず、それを考えればギルフォードと共にランスロットと戦えているジェレミアの腕は相当なものと言えた。

 

「私も出ましょうか?」

「いや、ここはギルフォードに任せる。それよりも枢木スザクを逃がさないよう戦場の包囲を急げ」

 

 ランスロットとの戦闘が始まって既に数十分。ランスロットが逃げないよう埼玉とは別にランスロットの周囲を囲むようにコーネリアは部隊を派遣していた。ギルフォード達との戦闘をやめ逃げようものなら包囲を突破するしかなく、すぐさま追ってくるギルフォード達が挟撃できる構えだ。

 

「それにしても兄上は甘い。これほどの機体をみすみす奪われた者達を、無罪放免とは」

「処罰はあったと聞いていますが?」

「あの程度、処罰には入らん。といっても私が総督に赴任する前の事だからな。独断で処断するわけにもいかんし、まったく厄介な部隊だ」

「もしランスロットを奪還できた場合は特派に返すのですか?」

「そうなるな。私の子飼いに技術チームなどないし、兄上への貸しも作れる。脱出ブロックのない試作機などあっても邪魔なだけだ」

「少々もったいない気もしますが、それが最善でしょうな」

 

 自分の苛立ちを感じて会話に付き合ってくれているのを感じ、コーネリアは深く息を吸い込む事で自省して建設的な話を振る。

 

「お前から見て、枢木スザクはどうだ?」

「イレブンではありますが、その実力は計り知れないものがあるかと。経歴から見ても、枢木がナイトメアに乗って戦った事はこれまで一度もないはず。にも関わらずギルフォードとジェレミア卿の二人と互角に戦う実力。実戦経験を積めばブリタニアの脅威になる事もあり得るかもしれません」

「ほう。お前がそこまで言うとは、珍しいな」

「イレブン相手だからと言って侮るのは視野が狭いと言わざるを得ませんな。第七世代型ナイトメアに乗り、その性能を十全に引き出せるとなれば、捨て置いて良いものではないでしょう」

「つまりは必ずここで潰す必要がある、という事か」

「仰る通りです」

 

 質実剛健なダールトンは無駄なプライドや見栄で判断を誤るような愚か者ではない。

 そのダールトンにここまで言わせる枢木スザクは、相当な脅威と言えた。

 

「テロリスト共はどうなっている?」

「枢木スザクが突入してきた南側を中心に散発的な襲撃が出ておりますが、包囲を突破できずにゲットーの中に隠れているようです。東側から親衛隊を差し向け捜索しておりますが、いまのところ発見には至っておりません。また包囲を襲撃して逃げるテロリストが若干数おり、それを追っている部隊がありますが、罠を考え深追いは控えております。ですが尻尾を掴むのは時間の問題かと」

「そうか。枢木スザクを仕留めれば残りは雑魚だ。そう警戒する事も……」

 

 そこまで口にしてコーネリアは違和感を覚えた。

 確かに枢木スザク以外に大した戦力はないだろう。だが相手にはこちらの動きを読んで戦力を削ってくるだけの策略家がいたはずだ。なのにこの状況にはそいつの気配が欠片も感じられない。

 これが枢木スザクとテロリストだけであったなら違和感を抱く事もなかっただろう。だがあれだけの被害を軍に与える策略家が、この状況で何も手を打っていないというのは、どうにも不自然が過ぎる。こちらは枢木スザクを落とせば戦いなど殆ど終わったようなものだが、あちら側はギルフォードを落としたところで包囲が崩れるわけでもない。ならば枢木スザクの勝利が相手側の狙いではないはずだが――

 その考えに至った時、雷鳴のようにコーネリアは自身が知らず知らずのうちに騙されていた事を悟った。

 

「チッ、そういう事か!」

「いかがされました、総督」

「枢木スザクは囮だ! 我々の目を奴に向けるための餌に過ぎん!」

 

 急に怒りを露わにしたコーネリアの発言に、周囲の部下は驚愕する。

 どのようにしてその結論に辿り着いたかは分からなかったが、常勝の女神とまで呼ばれるコーネリアの発言を頭から疑う者はこの場にはいなかった。

 

「奴らは枢木が戦っている隙にこのゲットーから脱出するつもりだ!」

「しかしどうやって。ゲットーは我が軍が封鎖して……」

 

 ダールトンは主の真意を汲み取るため改めて戦場の地図を見渡し、そしてようやく理解した。

 

「気付いたか、ダールトン」

「はい。いつの間にか西側の包囲が手薄になっております」

 

 なんですと! と周りの参謀達が驚きの声を上げる。

 コーネリアとダールトンもその鮮やかな手口に驚くが、それ以上に見抜けなかった自身に対し怒りを抱く。

 

「すぐに西側に援軍を向かわせろ! テロリストを追っている部隊も戻せ! 奴らはいまこの時もゲットーからの脱出を図っているはずだ!」

「イエス・ユアハイネス!」

 

 部下が慌てて通信機に指令を飛ばすのを見ながら、コーネリアはこの一戦を初めから振り返る。そしてこれまでの全ての流れが敵の手のひらの上だった事を察した。

 最初に突入する時に南側の戦力を必要以上に削ったのは、そこから逃げるとこちらに思わせるため。そして枢木スザクを囮にこちらの戦力を削ったのは、動きを読まれている事をあえて教える事でこちらの退却を誘うため。被害を最小限にゲットー外縁まで引くとなれば、配置を問わず最短距離を指示するのが最良。枢木スザクを中心部より西側で暴れさせたのも、西側の被害を大きくして後退した時に戦力を手薄にするためだろう。この際あえてランスロットに武器を使わずに戦わせ、こちらの目が枢木スザクに向くよう誘導している。そしてランスロットを前面に押し出して戦わせている隙をついて、包囲の手薄な西から脱出を図っているというわけだ。また、あえて場所を変えず西側を戦場にする事で、テロリストの捜索を東側から行わせるよう誘いを掛けている。散発的な襲撃は包囲を抜け出せず足搔いているというこちらにアピールする効果に加え、テロリストを殲滅しようとする軍の部隊をおびき寄せ、手薄になった包囲に穴をあける意味もあったのだろう。どこまでも周到に計算された策に、コーネリアは歯噛みする。

 

「侮っていた。いや、先入観に囚われ過ぎていた……敵の狙いは、私ではなかったか」

 

 クロヴィスを襲撃した者が影にいるだろうと考えていたため、今回も自分の首を狙いに来るとコーネリアは疑っていなかった。しかし襲撃者はクロヴィスに停戦命令を出させている。しかも元日本国首相の息子である枢木スザクの仲間なのだ。テロリストや埼玉の住人を逃がす事を目的にしても何もおかしくはない。

 数多の戦場で戦ってきたコーネリアには『戦いの勝利とは敵将を討ち取る事』という固定観念があり、総督になって間もないこの戦いでも当然敵の狙いは総大将である自分であると考えてしまったのだ。

 

「だがまだ戦いは終わっていない。貴様の尻尾、みすみす逃がす私だと思うな」

「こちらの軍がゲットーから一時退却した時間、そしてテロリスト共がこちらの目を引くため姿を見せていた事も考えるに、イレブン共の脱出は未だ続いていると思われます。おそらくいまならまだ、追いつく事は可能です」

 

 コーネリアの敵意剥き出しの呟きにダールトンも肯定を示す。

 そこには策に嵌められた程度では崩れない、歴戦の将の風格があった。

 

「待っていろ。枢木スザク諸共、必ず私の前に引きずり出してやる」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ブリタニア軍のゲットー外縁の部隊の反応を確認し、ルルーシュは目を細めた。

 

「この動き、気付いたか。コーネリア」

 

 想定よりも早い。

 ルルーシュの推測ではもう少し誤魔化せるはずだった。そのためにわざわざ突破するつもりもない南側のブリタニア軍の部隊にこちらの姿を晒していたのだから。

 

『R2、R3、転進した敵機を落とせ。その後R1と合流しそのまま脱出部隊の殿を務めろ。B1、脱出状況を報告しろ』

 

 西側で敵機をおびき出していた部隊に破壊を命じ、部隊から報告を聞いたルルーシュは眉をしかめた。

 

「間に合わないか。さすがに一筋縄ではいかないな、コーネリア」

 

 このままでは脱出が完了する前に追撃部隊に襲われるだろう。

 そうなればいままでの苦労は全て水の泡だ。

 

「後続部隊を切り離すか? それともナイトメアの部隊を囮に? 罠を仕掛けるにしても、時間が足りないか……」

 

 ここまでくれば全員を助ける事は難しい。どうにか被害を最小限にしようとルルーシュが策を考えていると、スザクから通信が入った。

 

『ルルーシュ。そろそろかい?』

 

 スザクは未だにコーネリアの親衛隊と戦闘を継続中だ。そんな中で通信までしてくる余裕がある事に内心ルルーシュは呆れる。

 時間を確認すると、確かにスザクを撤退させる予定時刻まで残り数分といったところだった。

 

『ああ。だが問題が起きた。もう少し時間を稼ぐ事は可能か?』

『それは大丈夫だけど、どうしたの?』

『コーネリアがこちらの策に気付いた。本隊からの増援に脱出部隊の尻尾を捕らえられる可能性がある』

『そんな……』

 

 一瞬ルルーシュはスザクに撤退を指示するか迷ったが、結局時間稼ぎを要請する。

 追撃部隊にスザクと戦闘中の親衛隊まで加われば、脱出部隊の全滅は必至だろう。

 

『本隊からの応援って事は、北側からだよね』

『ああ。南側は誘導していたのもあって増援が追いつく前に逃げ切れるだろう。だが北側は……』

『じゃあ僕がその追撃部隊を止めるよ』

 

 あっさりと、自身の状況を顧みない発言にルルーシュの眉が吊り上がる。

 

『バカを言うな。お前は親衛隊と交戦しているだろうが。しかもその一帯は既に囲まれているはずだ。挟撃されればいくらお前と言えどただでは済まないぞ』

『大丈夫だよ。なんとかしてみせるから』

『待て。エナジーの問題もある。お前が行くのはリスキー過ぎる』

『心配いらないよ。任せてルルーシュ』

『おいスザク! 話を聞け!』

 

 ルルーシュが怒鳴るのも虚しく、通信が切れる。

 思いきり通信機を握りしめ、ルルーシュはコックピットの画面を叩いた。

 

「あの体力バカが! どうしていつも人の話を聞かないんだ!」

 

 もう一度通信をつなげたところで、スザクがこちらの指示を聞くとは思えない。

 だがスザクがこのまま救援に向かえば、驚異的な戦闘能力で挟撃を凌ぎ追撃部隊を壊滅させる事までは可能かもしれないが、ただでさえ開戦当初から暴れ回っているランスロットのエナジーが脱出分まで残らない事は明らか。

 このままでは埼玉の住民を助ける事は出来ても、スザクは捕らえ殺されるだろう。

 これがゲームであれば、最大戦力は失われるが戦略目的は達成されるため、辛勝とはいえ勝利と呼べる結果だろう。しかしルルーシュからすれば、スザクを失うのであればそんな勝利になどまるで価値はない。この作戦を決行するにあたって、ルルーシュは埼玉の住民を助けられない事は可能性として考えていても、スザクを失う事は一切想定していなかった。優先順位で言えば、自分達の生存こそが第一だったのだ。そのためスザクが無謀にも死地へ飛び込んだこの事態はルルーシュにとって最悪の状況と言えた。

 増援を送ろうにもコーネリアの親衛隊相手に素人上がりのテロリストの腕では焼け石に水だろう。しかも作戦が佳境に入りテロリスト共も脱出中であるこの現状、策を巡らそうにも打てる手は限られている。

 万事休すとも思える事態に、ルルーシュはそれでも通信機を手に取り指示を飛ばす。

 

『P2、まだ脱出は終えていないな? ならば脱出する際、いまから言うポイントに――』

 

 自身と友の命が掛かる正念場に、新宿の時を思い出しながらルルーシュは必死に頭を働かせる。

 そこに諦めるなどという選択肢は思考の隅にも上がらない。

 

「俺とお前、組めばできない事など……」

 

 手を取り合ったあの日の言葉を思い出し、ルルーシュは全速力でサザーランドを走らせた。

 





もしかして今話の主人公はギルフォードとジェレミアでは……?
そんなわけで敵だろうが味方だろうがミスターイレギュラーは止まりません。
ルルーシュの策を破れるのはお前だけだ!

次回:奇跡の二人

埼玉戦はクライマックスへ。

出典
・Sound Episode2
STAGE:5.631「オレンジピール」
『ジェレミアとロイドが同期』
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。