少々ナナリーに厳しめですのでご注意ください。
いつかこんな日が来る事は最初から分かっていた。
分かっていて、それでも来なければいいと願わずにはいられなかった。
6歳という幼い時分に自らを支える足と、光を失ってしまったたった一人の妹。
母を失い、皇族という身分すらなくして、一夜にして幸福だった日常の全てを壊された。
そんな妹に目が見えないのならせめて、見えていれば直視しなければならない残酷な現実も見ないで済むようにと、力の限り非情な世界から遠ざけ慈しんできた。
もう人生で味わうべき不幸など全て味わった。
ならば後は穏やかに、健やかに、なんの憂いもなく生きてほしいと願うのは間違っているだろうか。許されないのだろうか。
そんな問いに意味がない事は分かっている。
世界は何一つ思い通りにはならず、ひと一人の願いを叶えてくれる事などない。
だがそれでも進むと決めたのは自分自身だ。
ならばどれだけ耐え難くとも、彼女の悲しむ顔を見る事になろうとも、呑み込むしかない。
俺はもう、ただの優しい兄でいるわけにはいかないのだから。
「あら? お兄様」
食堂に入ると、気配に気付いたナナリーがこちらに顔を向けてくる。
「今日は用事があったのではないんですか?」
小首をかしげるナナリー。
その手元には咲世子さんから教えてもらった折り紙の鶴がある。
確か、千羽折ると願いが叶うのだっただろうか。
優しい世界。
彼女が願った世界を創るために、彼女のために造った世界を壊さなければならないというのは、なんと皮肉な話だろう。
「ああ。でもそんな場合でもなくなったんだ」
ゆっくりと彼女へと近付く。
兄が普段と違う雰囲気を纏っている事に気付いたのか、戸惑ったようにナナリーは眉根を寄せる。
「お兄様?」
「ナナリー。話があるんだ。とても――とても大事な」
彼女の前にしゃがみ込み、手を取ってルルーシュは告げる。
息の呑む気配があった。
穏やかな表情から一転、深刻な顔つきになったナナリーは固い声で兄に問う。
「何か、あったんですね?」
「ああ」
一度顔を伏せ考え込むと、ナナリーは再び兄に問うた。
「それはお兄様が悲しまれていた事と、関係があるんですか?」
聡い子だと、ルルーシュは妹の手を握りながらそう思った。
突然大事な話があると言われ、それをすぐに近頃の兄の異変に結びつけた。
目が見えないせいもあるのだろう。
ナナリーは人の感情の変化を驚くほど敏感に感じ取る。
「話をする前に、お前には会ってもらいたい人がいるんだ」
質問には答えず、ルルーシュは部屋の前で待たせていた人物を呼ぶ。
「入ってくれ」
扉が開き、茶髪の青年が食堂に足を踏み入れる。
彼はルルーシュと同じようにナナリーに近付くと、ルルーシュとは逆の手を取った。
「久しぶり、ナナリー」
その声と手の感触にナナリーは驚き、呆然と声のした方に顔を向ける。
「スザク……さん?」
信じられないと言わんばかりの呟きに答えるように、スザクは握っていた手に力を込める。
途端、ナナリーの顔が綻ぶ。
「良かった。心配していたんです。怪我をしているんじゃないかって」
「僕は大丈夫だよ。元気だけが取り柄だからね」
安心させるためにスザクが冗談交じりに答えを返し、それを聞いてナナリーも笑みを浮かべる。
しかし何かに気付いたように、すぐにその表情を曇らせた。
「でもスザクさんは、黒の騎士団にいるはずじゃ……」
「そうだよ。僕はいまゼロの下で、ブリタニアを変えるために黒の騎士団の一員として戦ってる」
「そんな、どうして……」
テロリストである事を肯定するスザクの言葉に、ナナリーは悲しげに眉を寄せる。
それを痛ましく思いながら、ルルーシュはその先を告げる役をスザクに任せるわけにはいかず、二人の会話に割って入った。
「俺が頼んだからだ」
最愛の兄からの答えに、ナナリーは戸惑いを隠せずスザクからルルーシュへと顔の向きを変える。
「お兄様が頼んだって……どういう事ですか? まさかお兄様も、黒の騎士団に……」
「そうだ。俺も黒の騎士団の一員だ」
息を呑む音が静かな食堂に響いた。
重ねている手が震えているのをルルーシュは察するが、それを止める術をいまの彼は持っていなかった。
「で、でも……黒の騎士団はテロリストなんですよね? スザクさんは軍人で、お兄様だって学生なのに、テロなんて……」
「身分も立場も、戦わない理由にはならない。テロという手段が間違っている事は俺もスザクも理解しているよ。だけどそれが分かっていながら、俺達は戦う事を選んだんだ」
「そんな事って……」
悲しそうなナナリーの声がルルーシュの胸を締めつける。
だが自分が黒の騎士団の一員だという事実は、まだ話のほんの触りの部分でしかない。
自分はさらに残酷な真実を彼女に告げねばならないのだ。
「……黒の騎士団はコーネリアお姉様とも戦っているんですよね? なのにそんなところに入ったらお兄様も……」
「違うんだナナリー」
身内と争う事になるかもしれない。
そんな危惧を語るナナリーに、静かにルルーシュは首を振った。
「違うって、何が……ですか?」
「俺とスザクは黒の騎士団の一員ではあるが、黒の騎士団に入ったわけじゃない」
その答えに困惑する気配が伝わってくる。
躊躇いは一瞬。
ルルーシュは静かに、しかしはっきりとそれを口にする。
「俺達が、黒の騎士団を創ったんだ」
その言葉の意味をナナリーが理解する前に、ルルーシュは決定的な言葉を告げる。
「俺が――――ゼロなんだ」
「………………………………………………………………………………………………えっ?」
ポツリと。
ナナリーの口から零れたのはそんな小さな疑問の呟きだけだった。
初めは何を言われたのか分かっていない様子のナナリーだったが、徐々にその衝撃が薄れるにつれ、儚い顔が青ざめていく。
「……お兄様が、ゼロ……?」
「ああ、そうだ」
しばらくして、ナナリーは信じられないとばかりに呟く。
間髪入れずに、ルルーシュはそれを肯定した。
「……嘘、ですよね? お兄様は……私を、からかってるんですよね?」
「ナナリー……」
手に続いて、声も震えていた。
その様子にスザクは痛ましげな声で名前を呼ぶが、口を挟む事はしない。
そしてルルーシュは妹の縋るような問い掛けを、優しい声音とは裏腹にはっきりと否定する。
「嘘じゃないよ。俺はゼロで、スザクは俺と一緒に黒の騎士団の一員として戦ってくれている」
「うそ――――嘘です! お兄様は嘘つきです!」
ルルーシュとスザクの手を払いのけ、ナナリーは己の身体を抱きながら兄の言葉を全力で拒絶した。
普段の穏やかな態度とは掛け離れたヒステリックな様子で、ナナリーは嫌々と、何かから逃げるように首を振る。
「だって、ゼロはたくさんの人を傷付けて、コーネリアお姉様とも戦って、シャーリーさんのお父様だって……」
ラジオや人から聞いたゼロの情報を思い出して、そんな非道なテロリストと優しい兄が結びつかず、ナナリーは必死に否定の材料を集める。
しかしそれは当のルルーシュによって全て肯定された。
「お前の言う通りだ。俺は多くの人を手に掛け、黒の騎士団を率いて姉上を襲い、そしてシャーリーのお父さんを殺した。間違いなく、全てゼロとして俺がやった事だ」
「……うそ…………うそ……」
いつもと変わらぬ柔らかい声で語られる、非道な行い。
ナナリーは呆然と、涙を流しながら何度も首を振って突きつけられた現実を拒絶する。
それをルルーシュとスザクはただ見ている事しかできなかった。
この状況を作り出してしまった二人には、慰める資格も、優しい言葉を掛ける権利もない。
「……お兄様は、私に嘘をついていたんですか?」
重苦しい沈黙が過ぎ去り、頬に涙の跡を残しながらナナリーは弱々しく問う。
その声は未だ震えていたが、相手を責める響きがあった。
「そうだ」
余計な言い訳を一切せず、ルルーシュは妹の問いに頷く。
ナナリーはその返答にクシャリと顔を歪ませた。
「本当の事を黙って、ゼロとして色んな人を、傷付けて――!」
「……」
涙声で兄の罪を糾弾するナナリー。
ルルーシュは黙ってそれを聞いていた。
「なんで……どうして、こんな事を……」
溢れんばかりの感情を抑えつけるような声で、ナナリーは納得のできる答えを求める。
その危うげな様子に礼拝堂で話した少女の姿を重ねながら、ルルーシュは問われた疑問に正直に答えた。
「弱肉強食。そんな国是を謳うブリタニアの下では、国から捨てられた俺達は決して幸せにはなれない。だから俺は――」
「それは!」
ルルーシュの言葉を遮って、一際強い怒鳴り声をナナリーは上げる。
そんな風に声を荒らげるナナリーを、ルルーシュもスザクも見た事がなかった。
「それは他人の幸せを壊してまで、求めるものなのですか?」
「っ……!」
再び涙を流して放たれた問いに、ルルーシュは唇を噛んだ。
先程ナナリーと重ねた友達の悲嘆にくれる姿を、自分を糾弾するシャーリーの悲痛に塗れた叫びを思い出して、血が滲むほどに拳を握り締める。
しかしそんな兄の姿が見えないナナリーは、自らが抱く当たり前の倫理観で以ってルルーシュの行いを否定した。
「人を傷付けて手に入れる幸せなんて、そんなの…………そんな幸せなんて、私はいりません」
「ナナリー……」
愛する妹のための戦いを、当の妹に否定され、ルルーシュの顔に絶望が宿る。
こうなる事を予想していなかったわけではないだろう。
しかしたとえ想定していても、ナナリーに拒絶されたという事実はルルーシュには耐えがたいものだった。
「見てられないな」
何も言えなくなったルルーシュに、失望混じりの声が入り口からぶつけられる。
身内の話し合いに口出しするのも野暮だろうと事態の推移を見守っていたC.C.は、ルルーシュのあまりにもお粗末な体たらくに静観をやめ、食堂の中に足を踏み入れる。
「ブリタニアが何をしてきたかも教えていない相手に、自分がテロリストだと話したところで拒絶されるなど目に見えている事だろうに。妹相手ではとことん物が見えなくなるらしいな、お前は」
「C.C.」
「C.C.さん……」
突然の乱入に兄妹が彼女の名前を呼ぶ。
このタイミングで現れた事と、何やら事情を知っているらしいC.C.の態度に二人との関係性を察し、ナナリーは固い声で問うた。
「C.C.さんも、黒の騎士団の一員なんですか?」
「いいや、私は違う」
「えっ……違う、のですか?」
当然のように肯定の返事があると思っていたナナリーは、あっさりと否定された事に毒気を抜かれ、呆けた様子で質問を繰り返す。
「ああ。少なくとも黒の騎士団として活動した事は一度もないな」
C.C.はいつも通りに、飄々とそれに答えた。
事実C.C.は黒の騎士団の活動内容や行動計画をルルーシュやスザクを通して知っていても、それに関与した事など成田の件くらいのもので、数あるアジトの一つにすら足を運んだ事がない。
その成田でさえ黒の騎士団の制服を着て現地までついては行ったが、それもルルーシュを助けるためであって黒の騎士団の活動には一切関与しなかった。
「じゃあどうして、お兄様やスザクさんと一緒に……?」
黒の騎士団の人間ではないのなら、この場においてC.C.は完全な部外者である。
そんな人物がなぜ割って入って来たのか、戸惑いのままにナナリーはさっきまでの勢いが嘘のような気の抜けた声で訊ねた。
「私は軍から追われている。お前の異母兄であるクロヴィスが極秘にしていた人体実験の被験者としてな」
「えっ……?」
「C.C.!」
唐突に聞かされた異母兄の名前とその所業にナナリーが思わず漏らした呆けた声は、ルルーシュの怒号によってかき消された。
しかしルルーシュに怒鳴られるなど慣れたものと言わんばかりに、C.C.の口は止まらない。
「幸いクロヴィスはブリタニア本国に帰ったが、追われている事には変わりないからな。ブリタニアと敵対するルルーシュに匿ってもらってるんだよ」
長い緑色の髪を手の甲で払い、C.C.は自らの境遇を明かす。
それを聞いたナナリーは、ただえさえルルーシュがゼロだと知ったところに、さらなる身内の残酷な所業を聞かされ可哀想なほどに顔を青ざめさせていた。
「嘘……です。クロヴィスお兄様が、そんな事をするわけ……」
「新宿事変を知っているな」
話を受け止めきれないナナリーにC.C.が問う。
またも突然話題が変わり、ナナリーは動揺を隠せないままに、戸惑いながら頷く。
「えっと、毒ガステロがあったって……」
「それはクロヴィスの嘘だ。あの事件は逃げた私を捕まえるためにクロヴィスが行った虐殺だよ」
「そんな――!」
人体実験に虐殺。
およそ日常生活とは縁遠い、人道から掛け離れた行いを異母兄がしていたと語るC.C.の言葉にナナリーは絶句する。
「本国に黙って人体実験などしていた事がバレれば責任問題となる。だからクロヴィスは目撃者を残さないために、新宿にいた人間を一人残らず皆殺しにした。表向きはテロリストのせいにしてな」
ニュースやラジオでは決して語られなかった裏側をC.C.は容赦なく暴く。
小動物のように震えるナナリーの心情などお構いなしに。
「ブリタニアの植民地ではこういったナンバーズを人とも思わない非道が平然と行われている。つまりブリタニア国民の平穏は、ナンバーズの不幸を糧にして成り立っているものと言える。これがどういう事が分かるか?」
「ど、どういう事って……」
質問の意図が分からずナナリーは言われた言葉を繰り返す。
そんな真実盲目な少女に、C.C.は歴然とした事実を告げた。
「お前の日常は既に、多くの日本人の犠牲の上にあるという事だ」
「あっ……」
呆けた声を漏らすナナリー。
しかし魔女は舌鋒を緩めず先の彼女の発言を糾弾した。
「それをいらないと切り捨てる事が、どれだけ傲慢な事か理解して言っているのか、ナナリー?」
「わ、私、そんなつもりは……」
「C.C.、お前――!」
「ルルーシュ。待って」
気付いていなかった真実を突きつけられ、ナナリーは怯えて震えながら自らの身体を掻き抱く。
それに黙っていられないのがルルーシュだった。
ナナリーを傷付けるC.C.の論調に我慢の限界を迎え割って入ろうとするルルーシュだったが、しかしそれはスザクによって止められる。
「スザク、だが――!」
「決めたんでしょ。ナナリーの平穏を壊すって」
「っ!」
「連れ出すからには、もう何も知らせずにいるわけにはいかないよ」
スザクに諭され、ルルーシュは唇を噛み締め、拳を震わせながらそれに耐える。
目の前で愛する妹が傷付けられる姿を、ただ黙って見守る。
「お前は言ったな。他人を傷付けてまで得る幸せなどいらないと。ならいまここにいる私を、お前は否定するか?」
「ひ、否定?」
まだ言われた事を受け止めきれていないナナリーに、C.C.は時間を与える事なく続けて問う。
怯えた様子を見せながら、ナナリーは問いの意味が分からず疑問符を浮かべた。
「さっきも言った通り、クロヴィスが新宿の虐殺を行ったのは私が逃げたせいだ。つまり私が大人しくクロヴィスの人体実験に付き合い玩具にされていれば、新宿の人間が殺される事もなく被害は出なかった。お前の言葉を借りるなら、私は自分の幸せのために新宿の人間を犠牲にしたというわけだ」
「それは――!」
「違うか? だがお前が言っているのはそういう事だろう? 他者を傷付けるくらいなら自らが傷付くべき。お前の言に従うならば、私は逃げる事も許されず実験動物としてクロヴィスにこの身を捧げなければならないはずだ」
「そうじゃありません! そうじゃなくて、私は――!」
「私は、なんだ?」
金色の瞳が真っ直ぐとナナリーを射抜く。
それが見えているはずはないが、C.C.の迫力にナナリーはすっかり気圧されていた。
時にはルルーシュすら手玉に取る魔女の相手は、まだ幼いナナリーには荷が勝ちすぎている。
それでもなんとか自らの思いを形にしようと、ナナリーは懸命に口を開いた。
「私はただ、私達の幸せが他の人達を不幸にしてしまうなら、それは間違っていると……」
「だがその間違った幸せの上に、いまお前達はいるんだよ。ナナリー」
絞り出したナナリーの必死な思いは、しかし諭すようなC.C.の言葉によって否定されてしまう。
「お前が見ようとしなかっただけで、世界は優しくなどできていない。租界ではなんの苦労もなく幸せを享受する人間がいる一方で、ゲットーでは毎日のように餓死者が出ているのがこの国の現状だ」
主観的な感情は交えず、C.C.は淡々とありのままの現実を語る。
その言葉の一つ一つが、ナナリーには心に楔を打ち込まれたかのように重く響いた。
「だからこそルルーシュとスザクはそれを覆すために立ち上がった。イレブンという弱者の不幸の上に成り立つ幸福などおかしいと、声を上げるためにな。その主張は、お前と同じものではないのか?」
「それは……」
「私は別に、それが正しいと言うつもりはない。ルルーシュの行動のせいで不幸になる人間がいる事も確かだ。シャーリーとかいうお前達の知人もその一人だろう」
具体的な人物の名前が挙がり、ナナリーの肩が震える。
しかしC.C.はその程度で話すのをやめるほど優しくはなかった。
「だが人を傷付け殺しているという点においては、ルルーシュもブリタニアも変わらない。そしてブリタニアの国民であるというだけで、お前もその暴力の恩恵を受けている。その時点で他人を傷付け幸福を享受する事を否定する権利など、お前にはない」
「っ……」
安易に幸せをいらないと切り捨てたナナリーを、C.C.は静かな語調で批難した。
たとえ直接手を下していないのだとしても、このエリア11で飢える事もなく日常を謳歌できているのはイレブンから搾取した富があるからだ。
そしてその富は、ブリタニアが力づくで日本から奪ったもの。
その罪がナナリーにあるとは塵ほども思わないが、しかしだからといって日本人の犠牲の上にある立場を忘れて、それに抗おうとする者を聖人面して批判する事など、この地に住むブリタニア人に許されるはずもない。
「誰もが平等に幸福になれる優しい世界などない。少なくとも、いまこの地上においてはな。だからこそ争うんだよ。ブリタニア人も日本人も。限られた幸せを奪い合うゼロサムゲームに勝つために」
それが
しかしこちらを見つめる紫紺の瞳に気付き、ニヤリと口角を吊り上げると一言付け加えた。
「もっとも、そんな世界の仕組み自体に喧嘩を売る奴もいるようだがな」
誰かを挑発するように放たれたC.C.の軽口。
しかしそれを聞く余裕をもはやナナリーは持っていなかった。
非情な現実を知らされ、自身の価値観を根本から否定されたナナリーの心はボロボロだった。
昨日までなんの憂いもなく幸せな日常を謳歌していた14歳の少女に、突然語られた世界の裏側は残酷過ぎた。
目に見えない非道を感じ取る前に隠してくれていた兄も、もう現実から自分を守ってはくれない。
以前も感じた、自分の見えないところで自分を取り囲む世界の何もかもが変わっていっている感覚に、ナナリーは押し潰されそうになる。
しかし彼女はそれでも、ただ黙って打ちのめされる事を良しとはしなかった。
「でも、だからって……人を傷付ける事が許されるわけではないはずです」
顔を上げ、震えも収まっていないナナリーが気丈に反論の言葉を返す。
その姿にC.C.は意外そうに眉を上げた。
これだけ自身の思いや考えを否定され、真実を知った上でなお、自らの意思を主張できる強さをナナリーが持っているとはC.C.は思っていなかった。
それはC.C.がナナリーを侮っていた事の証左だった。
所詮はルルーシュに守られ庇護されているだけの子供だと、無意識の内にそう認識してしまっていた。
きっとそれは、彼女を守らんとするルルーシュとスザクの影響を受けていたせいもあるのだろう。
「それにC.C.さんが言っていた事だって事実とは限りません。だって……だってお兄様も、スザクさんも……私に、嘘をついて……!」
険しい表情で、彼女にしては珍しく他人を責めるように言葉を吐きだす。
自分が最も信頼していた人間に騙されていたという事実が、ナナリーの心に強い疑心暗鬼を植えつけていた。
彼女の目が見えないという身体的な障害も、それを増長しているのだろう。
何が本当で何が嘘なのか、彼女は実際に見て判断する事ができない。
「ナナリー、ごめんね」
黙ってC.C.とナナリーのやり取りを見守っていたスザクが、唐突に謝罪の言葉を口にする。
その声はどこまでも柔らかく、優しく響いた。
「突然こんな事を言われて驚いたと思う。教えられてなかったブリタニアの酷い仕打ちに戸惑っただろうし、僕らが言った事が本当なのかって混乱するのも当然だ。本当なら段階を踏んでゆっくり教えるべきだったし、黒の騎士団を創る前に僕とルルーシュは君に相談するべきだった。そういうのを全部すっ飛ばして、いきなりルルーシュがゼロだとか、ブリタニアが酷い事をしてるだとか、そんな事を言われても受け入れられないのなんて当たり前だよ」
ナナリーの心境に寄り添って、スザクはその戸惑いや混乱を肯定する。
いまのナナリーの状況は、これまで教えられてきた事が全て作られた映画の話だったと言われているようなものだ。突然そんな事実を知らされれば、誰だって戸惑う。
いくら信頼している兄の話だとしても、信じられないのも無理はない。
「こんな風にしか打ち明けられなかったのは、間違いなく僕とルルーシュのせいだ。本当にごめん」
「スザクさん……」
目が見えないナナリーに深々と頭を下げてスザクは謝る。
誠実なスザクの謝罪に、ナナリーも思わずといった様子で彼の名前を呼ぶ。
スザクは一度は払いのけられた手をもう一度そっと重ねて、真摯に自らの思いを訴えた。
「でも信じてほしいんだ。僕もルルーシュも、ナナリーを騙そうとしたわけじゃない。ただナナリーにこんな血生臭い世界を感じてほしくなかっただけなんだ。だから巻き込みたくなくて、心配も掛けたくなくて、君には何も言わなかった。それが僕らの我儘だって事は、分かっていたけど」
目が見えなくなったナナリーは、手で触れた相手が嘘を言っているのかがなんとなく分かった。
そしてスザクの言葉に、嘘はないように思えた。
だがそれでも、いままでずっと嘘をつかれていた事実に変わりはないのだ。
「……私は相談してほしかったし、教えてほしかったです」
「うん、そうだと思う。ごめん」
「クロヴィスお兄様が虐殺をしたなんて、日本人の方がブリタニアのせいでそんなに苦しんでいるなんて、私はまだ信じられないです」
「いいんだよ。実際に見聞きしなくちゃ、信じられないのなんて当然なんだから」
「でも、本当にそうだったとしても、私は人が傷付くのを当たり前だなんて思いたくありません」
「そうだね。僕もそう思う」
「たとえ私達の幸せのためでも、スザクさんとお兄様にはテロなんてしてほしくないです」
「うん……」
「黒の騎士団、やめていただく事はできませんか?」
「……」
泣きそうな声で願うナナリーに、スザクは言葉を返せず黙り込む。
スザク個人としては、ナナリーの願い通りに黒の騎士団をやめてしまってもよかった。
彼女を守るためなら、迷わずスザクはそれを選べる。
だがその選択をするのは自分ではない。
「ごめんよナナリー。俺達は、戦う事をやめるわけにはいかない」
スザクに向けられた願いを、ルルーシュが拒絶する。
その答えにナナリーの表情が悲しそうに沈んだ。
「お兄様……」
「お前が俺達の事を思ってそう言ってくれる事はとても嬉しい。だが俺もスザクも、覚悟を持ってこの戦いを始めた。人を撃つ事も、撃たれる事も覚悟した上で、それでもこの道を選んだんだ」
「でも、それでは多くの人が傷付いてしまうのではないんですか? もっと――何か別の、優しいやり方はないのですか?」
ゼロとして戦火に身を投じる意志を語る兄に、胸に手を当ててナナリーは懸命に訴える。
たとえ自分が暴力の上に成り立つ日常の上にいるのだとしても、それを変えるために暴力を振るうのが正しい事だとは思えない。考えついていないだけで血が流さず世界を変えていけるような、そんな方法がどこかに存在するのではないかと、彼女は必死に己の理想に沿う問いを投げ掛ける。
それは言葉は違くとも、彼女の異母姉がスザクに問うた事と本質的には同じものだった。
「もし俺がまだ、ブリタニアの皇子だったならそんな方法が取れたかもしれない」
愛する妹の問いにルルーシュは遠回しに否の答えを返す。
もはや綺麗な理想だけを追える時間は終わってしまったのだと、そんなどうしようもない事実を伝えるために。
「けど母さんが死んで、日本に送られ、戦争が始まって、世界が優しくない事を俺は知ってしまった。誰かを守るためには、誰かを見捨てなければならない、そんな残酷な現実がこの世界にはある事を」
「だから、無関係の人を傷付けるのですか?」
批難の込められた問い。
膝の上で拳を握り込むナナリーは、これまで見た事もないような厳しい顔をルルーシュに向けていた。
そこに宿るのは明確な忌避。
ナナリーが初めてルルーシュへと向ける感情だった。
「矛盾している事は分かってる。これが許されない道だという事も、理解している。だけどそれでも俺は、抗わずにはいられなかった」
妹から否定されている事実に相反した思いを抱き、自分の心の皮を剝がされるような苦痛を感じながら、それでもルルーシュは己の意志を言葉にする。
「俺達のように理不尽に奪われるような世界ではない、俺とお前とスザク、三人で笑っていられたあの夏の日のような優しい世界を創るために、俺は――」
「――優しい世界」
ルルーシュが決意を語ろうとしたその時、それを遮るようにナナリーはルルーシュの言葉を繰り返した。
それはかつて彼女が願ったもの。
千羽折れば願いが叶うという鶴に、兄の前で口にした、なんて事のない願い事。
そんな過去の一言を思い出してナナリーはクシャリと顔を歪ませた。
「私は――そんなつもりで言ったわけでは、ありません……!」
「――っ!」
その言葉は、的確にルルーシュの心を撃ち抜いた。
ナナリーの願い、それはルルーシュにとって戦う理由の一つだった。
もちろん最たるものはナナリーの安全と幸せではあるが、母の死の真相、父と祖国への復讐、それに並んでナナリーの願いはブリタニアと戦うルルーシュの原動力になっていた。
それが他ならないナナリーによって否定される。
覚悟していたはずなのに、愛する妹の拒絶はルルーシュの心に想像を絶する痛みを齎した。
「……分かっている。これは俺のエゴだ」
耐えがたい痛みに打ちのめされながらも、取り乱す事なくルルーシュは己の意志を曲げず言葉を紡ぐ。
いま一番つらいのは、突然理不尽な現実と向き合わされているナナリーなのだと、必死に自分に言い聞かせながら喉を震わせる。
「納得なんて……しなくていい。罪の意識を感じる必要もない。ゼロになると決めたのは、俺の意志だ。お前のせいでもスザクのせいでもない」
気を抜けば己の心に背く言葉を口にしてしまいそうで、ルルーシュは必死にそれを抑えつけた。
言い訳をするな。認められようとするな。
誰かのためなんて、そんなお為ごかしを自分に許してはいけない。
母を失い、車椅子に座って瞼を閉じる妹を見たあの時の悲しみに。
異国の地でやっと見つけた小さな幸せすら、戦火によって真っ赤に塗り潰されたあの怒りに。
理由をつけるのは自分自身への冒涜だ。
「きっと俺はどうしたって、この道を選んでいた。お前の言葉がなくても、スザクが共に歩んでくれなくても」
多くのものなど望んでいなかった。
たった一握りの幸せさえあれば、それで良かった。
なのにこの世界は、そんな小さな願いすら許さず理不尽に奪っていく。
だからルルーシュは、立ち上がらなければならなかった。
「許してほしいとは言わない。身勝手に己の道を進む俺の事を、蔑んでくれていい。どんな理由をつけたとしても、俺がやっている事は人殺しだ。相手が兄だからといって、お前がそれを受け入れる必要なんて、どこにもない」
「お兄様……」
「すまない、ナナリー。だが俺はもう、止まるわけにはいかない」
そしてルルーシュは告げる。
誰にも、スザクにすら変えられなかった思いのままに。
「俺にはどれだけ血を流そうとも、叶えたい願いがあるから」
そう言って、ルルーシュは話を打ち切った。
批難も嫌悪も全て受け入れ、それでも己の意志を貫く覚悟だけを示して。
揺るがない兄の決意を聞いたナナリーは、俯いて服を掴んだ手を震わせる。
「ゼロをやめていただく事は、できないんですね……」
縋るように、最後の確認としてナナリーが問う。
対するルルーシュの返事はもう決まっていた。
「……ああ」
もう語るべき事は語ったと、ルルーシュは余計な事は口にせずただ頷いた。
「スザクさんも、お兄様と同じ考えなのですか?」
「ごめん。ナナリー」
固い声でスザクもナナリーの思いを拒絶する。
心から信頼している二人に自身の願いが届かなかった事に、ナナリーは唇を噛み締めた。
まるで自分が世界に一人取り残され、一人ぼっちになってしまったような錯覚に涙が零れ落ちそうになる。
それでもナナリーが耳を塞ぎ現実を拒絶しないのは、幼い頃にそれよりも大きな絶望を味わっていたからかもしれない。
「私は――私はお兄様とスザクさんのやり方が正しいとは……思えません」
「……」
ナナリーから告げられる否定の言葉。
しかしそれは迷子の子供が口にしたように力ないものだった。
「でも、分からないんです。私は今日まで、ブリタニアが日本人の方に何をしていたかも、お兄様がどんな思いで生きていらしたかも、何も知りませんでした。――だから何が正しくて何が間違ってるのか……何も分からないんです」
「ナナリー……」
正直に、ありのまま自分の思いを語るナナリーの身体は震えていた。
しかし現実と向き合おうとする必死さだけは痛いほどに伝わってきた。
あるいはそれこそが、ナナリーの強さなのかもしれない。
「だから考える時間をください。一度落ち着いて、考えたいんです。お二人の事も。ブリタニアの事も」
この場では結論が出せず、ナナリーは答えを出すための猶予を願う。
子供のようにつらい現実から目を背けるのではなく、当たり前に抱いていた暴力への嫌悪だけで二人を拒絶するのでもなく、ただ流されて受け入れてしまうのでもなく、きちんと考えたいのだと自身の思いを告げる。
「ああ。お前がそう望むなら」
そんな懸命な妹の願いをルルーシュが拒絶するはずもなかった。
ありがとうございますと、小さくお礼を言うナナリー。
兄妹の話に一応の決着が着いたのを見て取り、C.C.はえも知れない空気を作り出す二人に真正面から声を掛けた。
「話がまとまったところで、そろそろ本題に入ったらどうだ?」
「えっ?」
C.C.の言葉にいままでの話が肝要ではなかった事を知り、ナナリーはキョトンとした声を漏らす。
一瞬だけ表情を歪めC.C.を睨みつけたルルーシュだったが、それが避ける事のできない問題だと分かっていたため文句を言う事はなく、すぐに意識を切り替えてナナリーに話を切り出す。
「実はナナリー。お前にお願いがあるんだ」
「……なんでしょうか?」
これだけ大きなカミングアウトをされた後だけあって、ナナリーが返す声には警戒の色があった。
それをどこか悲しく思いながら、ルルーシュは本題を告げる。
「この学園を出て、俺とスザクと一緒に来てほしい」
「……!」
「俺とお前を狙う男がいる。もしその男に軍へ通報されれば、俺達は終わりだ」
一度離れ、そして再び戻ってくる事ができた学園。
その愛すべき日常の象徴と再び訣別してくれと、ルルーシュは最愛の妹に請う。
「だがそんな事はさせない。何があっても俺とスザクがお前を守る」
「それは……私も黒の騎士団に入ってほしい、という事ですか?」
緊張した声でナナリーは問う。
話の流れからナナリーがそう誤解するのも仕方のない事だった。
ルルーシュは首を横に振り、そんな意図がない事を努めて優しい声で伝える。
「違うよ。これは俺とスザクが始めた戦いだ。お前に付き合わせるつもりはない」
「でも黒の騎士団に入るとかそういうのは別にして、このまま学園に残っていたら危ないんだ。だから僕らと一緒に逃げてほしい」
ルルーシュに続いて、スザクも事情の説明に加わりナナリーが共に来る事を望む。
しかしナナリーは険しい表情を緩める事はなく二人に訊ねた。
「私達が狙われているのは、お兄様がゼロだから……ですか?」
ナナリーの声にはそれを責めるような響きがあった。
突如として自分の居場所が奪われる原因となったものに反感を覚えるのは、当然の反応だろう。
「いいや、それは違う」
しかしそれは質問した二人とは別の人間から否定される。
「今回の件は私のせいだ。敵が狙っているのは私だけで、お前とルルーシュはそれに巻き込まれただけだよ。この件に黒の騎士団もルルーシュがゼロである事も何一つ関係がない」
自ら名乗り出て、C.C.は全ての責は自分にあると語る。
ルルーシュを庇っているようにも思える状況だったが、先程の話で軍から追われていると話していたC.C.の言葉には、それに伴う説得力があった。
そして追ってくる相手は別にしろ、C.C.は何一つ嘘をついていない。
「すまないな、ナナリー。お前達を巻き込むつもりはなかったんだ」
「いえ、そんな……」
誠実に謝罪の言葉を口にするC.C.。
ルルーシュなどはC.C.が素直に頭を下げた事に対して場違いな驚きを抱いたが、それを受けたナナリーは予想していたのとは全く違う相手を責めていた事に気付き、曖昧に言葉を濁した。
そして少しの間、悩むような素振りを見せた後ナナリーは兄の願いに答える。
「分かりました。お兄様とスザクさんと一緒に行きます」
「ナナリー……」
「ありがとう、ナナリー」
安堵するルルーシュとスザク。
しかしナナリーはこれだけは言っておかなければならないと、一言付け加える。
「でも、お兄様やスザクさんがなされている事を認めたわけじゃありません」
「ああ、分かっているよ」
準備をしてくると言って部屋に戻るナナリーと、護衛のためそれについていくスザク。
なんとか大過なく話を終える事ができた事に安堵し、ルルーシュは大きく息を吐く。
これで最大の懸念は取り払われたとまではいかないが、近くで彼女を守れる分、随分と楽になる事だろう。
そしてルルーシュは、この話し合いの一番の功労者でもあるC.C.に向き直る。
その表情は珍しく気まずそうなものだった。
「悪い。嫌な役目を押し付けたな」
「私が招いた種だ。気にする必要はない」
ルルーシュの謝罪にC.C.は素っ気なく手を振る。
実際にC.C.はこれくらいの憎まれ役は当然だと自覚していた。
だからそれで話を終わらせる事なく、悔やしさを滲ませている青年の名をC.C.は呼ぶ。
「ルルーシュ」
「……なんだ」
何やら複雑そうな顔をして考え込んでいるルルーシュの様子に、どうせ感謝を伝えるべきか、それとも何か礼でもすべきか考えているのだろうと当たりをつけ、C.C.は無駄に律儀なその性格に内心軽く呆れてしまう。
C.C.からすれば元々今回の件は自身の不始末が発端であり、先のナナリーとの問答も飛び火した被害を最小限に抑えようとしたに過ぎない。
つまり自分は単に最低限の責任を果たしただけの事であり、そこにルルーシュが何かしらの感謝や謝罪をする必要はない。
だがその事を直接言っても、この男はそれとこれとは話が別だとでも考えているのか、納得しようとしない。
だからC.C.は向けられる紫紺の瞳を真っ直ぐ見返し、普段なら絶対に言わない本心を口にした。
「悪かったな」
「……!」
初めて自分に対して向けられた謝罪の言葉にルルーシュがわずかに目を剥く。
どんな考えがあってC.C.がそれを口にしたのか、その真意に思考を巡らしルルーシュは沈黙する。
答えを待つ金色の瞳を前に一度瞑目し、自身の思いや感情を再確認したルルーシュが静かに目を開く。
「マオの件がなくとも、いずれこんな事態が来る事は分かっていた」
落ち着いた、しかしどこか力強さを感じさせる声でルルーシュは答える。
鋭く細めた瞳は揺るがぬ意志を湛えており、紫紺の眼差しはC.C.を越えてまだ見ぬ先を見据えているかのようだった。
「これが行動の結果だ。俺は後悔などしていない」
決意を滲ませた声が静かに食堂に響いた。
それに返事を求める事なく、ルルーシュも準備のために出口へ向かう。
「お前もさっさと準備をしろ。すぐに出るぞ」
「ああ。分かっているさ」
答えを聞いたルルーシュは、もはや話す事はないとばかりに食堂を出て行く。
C.C.はその背中を感情の読めない瞳で見送り、ため息ともいえない小さな吐息を零した。
暴露回。
ナナリーの結論はシャーリー同様持ち越しです。
必要ないとは思いますが、念のため説明をしておきますと、今話はC.C.によるナナリー糾弾話みたいになりましたが、別にナナリーが悪いわけでもなく、C.C.だって当然それは理解しています。もちろんC.C.がナナリーを嫌っているという事実もありません。
次回:理想の行方