新撰魂。
日本が敗戦した2年後から関西を拠点として活動する反ブリタニア組織の一つであり、クロヴィス統治下では関東の日本解放戦線に次いで厄介なテロリストとして名前が挙がっていたレジスタンスである。
元々は関西の小さなテログループの一つに過ぎなかったが、水面下で次々と周囲のテロ組織と手を結び、たった数年で関西全域のテロ組織と協力関係を築いた、いわば関西テログループの集合体。
新撰魂という名前ももはや一つのテロ組織ではなく、その集合体を指す名前として使われており、テロリスト同士が一致団結し始めている事にブリタニアが気付いた時には、既に止めようがないほど新撰魂は関西に根を張っていた。
戦力でこそ日本軍を母体とした日本解放戦線に劣るものの、関西全域に根を張る組織力は5年にも渡りブリタニアを苦しめ続け、黒の騎士団が台頭していなければ、日本解放戦線なきいまエリア11で最も厄介なテロ組織として名前が挙がっていたであろう一団だ。
先の九州戦役でも澤崎から九州のテロリストを通じて秘密裏に連絡を受けており、九州を攻めようとするブリタニア軍を挟撃する策を持ち掛けられていた。残念ながらその策は実行どころか可否の判断を組織内で検討している内に、持ち掛けてきた澤崎がブリタニアに捕まってしまったためおじゃんとなったが、距離が離れているとはいえキョウトや黒の騎士団には協力要請すらしなかった事を考えれば、新撰魂の組織力と戦力が窺えるというものだろう。
ちなみにキョウトもその組織力を買って過去には日本解放戦線との協調を提案したのだが、話が進むにつれて肝心の日本解放戦線が新撰魂を見下しているのが透けて見えたため、結局その話は流れて一度も協力姿勢を取った事はない。
日本解放戦線が崩壊した現在は黒の騎士団との協調も打診されてはいるが、過去の不信感から新撰魂はそれを断り続けていた。
「組長、お疲れですか?」
部下から心配そうな視線を向けられ、新撰魂の組長――近藤総一は曖昧に笑いながら首を振った。
「日本解放戦線も中華の力を借りた澤崎も、コーネリアとマリーベルに叩き潰された。精神的にも体力的にも、これで疲れてなかったら超人だよ」
「だとしても、無理して倒れるなんて事ないように気をつけてくださいね。いま組長に倒れられたら、どこもかしこもパニックになりますよ」
冗談混じりに笑う部下の目には深い隈が刻まれており、近藤と同じくらい寝ていないのがはっきりと分かる。
エリア11の情勢はクロヴィスが退任してコーネリアが赴任した半年ほど前から劇的に変化しており、特にここ数か月ほどは特大の事件がいくつもあった。
それに伴って関西のテロ組織をまとめる新撰魂の長である近藤の仕事は激増しており、休む間もなく会議や対応に追われる日々が日常と化している。ちなみに新撰魂は無数のテロ組織の集合体であるため、明確にトップがいるわけではなく、主要なテロ組織のリーダー6人が関西の各地を収める形となっている。しかし元々は小さなテロ組織だった新撰魂を関西テログループの集合体にのし上げた近藤こそが実質的な新撰魂の盟主として祭り上げられており、新撰魂というグループ名と無数のテロ
「今日は殲滅された九州レジスタンスの生き残りの受け入れだったな?」
「ええ。二か月前の澤崎の事件以降、九州では殆どのテロ組織は潰され、日本人に対する弾圧が強まっているそうです。いま日本で最も日本人が虐げられているのは、間違いなく九州でしょう」
「それでもまだブリタニアへの怒りを失っていない、か。背景を考えればこんな言い方もどうかと思うが、戦力として期待できそうだな」
二か月前の一件で九州のテロ組織の多くは澤崎に協力した。そのため諸共叩き潰され、九州全体の抵抗活動が下火になったのを機にブリタニアが日本人の弾圧を強めたせいで、澤崎に協力していなかったテロ組織も活動が難しくなったのだ。しかもそれに加えてテロリストの積極的な炙り出しが行われ、巻き込まれる事を恐れた日本人にゲットーから追い出されるという事態にも発展したという。
そのため九州のテログループは殆ど壊滅しており、そのわずかな生き残りが新撰魂を頼って海を渡ってくるという事態に陥ったのだ。
「受け入れ先の『武士の灯火』の準備は整っているんだな?」
「はい。実際にその目で見た方が早いかと。もう着きますよ」
促されて前を確認すると、巧妙に隠されている出入り口の一つが見えた。事前に特徴を知らされていなければ、間違いなく気付かずに素通りしていただろう。
入念な持ち物検査の後に出入りを許可され、案内された部屋で二人は今後の予定を確認する。
「受け入れは一時間後ですので、それまでは『武士の灯火』のリーダーである正木さんと受け入れ後の所属について――!!」
「な、なんだ!」
話している途中に大きな衝撃と共に轟音が響き、二人は咄嗟に近くにあったものにしがみつく。
部下の動揺した声には当然答えがないものと思われたが、それは館内放送という形で応じられた。
『敵襲! 敵襲! 至急戦闘態勢を整えよ! 至急戦闘態勢を整えよ!』
これ以上なく端的かつ明瞭な状況報告と指示出し。
部屋の外が一気に騒がしくなる気配を感じながら、近藤は状況把握に努めるため即座に立ち上がった。
「正木のところへ行くぞ」
「は、はい!」
部屋を出ようと早足で扉に近付き、手を掛けたところでまたもや機械を通した声がアジトに響き渡る。
しかしそれは先程とは違い、驚きと恐怖に染まった声ではなく、どこまでも冷たい響きを宿していた。
『勧告します。武装解除して慈悲を請いなさい。わたくしの名は、神聖ブリタニア帝国第88皇女にして、エリア11総督補佐、マリーベル・メル・ブリタニア。無思慮に鳥かごから飛び出したあなた達を、再び翼に抱くために参りました』
その日、関西テログループをまとめる『新撰魂』の組長、近藤総一の燃える魂はブリタニアの一息にかき消された。
「お帰りなさ~い。どうでしたか? ガウェイン単独操縦のOSの使い心地は?」
出撃から帰ってきたマリーベルを出迎えたのは、搭乗する機体の製作者であるロイドの陽気な声だった。
上官に対する態度としても皇族に対する態度としても、落第どころかぶん殴られるのを通り越して捕まっても文句を言えない不敬だったが、マリーベルはまるで気にせず求められた回答を口にする。
「手元の操縦の方は問題ありませんが、ドルイドシステムを使った際のデータ表示には改善の余地がありました。あとで問題点をまとめておくので、修正をお願いします」
「かしこまりました~」
ダメ出しにも上機嫌に頷き、ロイドはマリーベルへの興味を失ったとばかりに、いま取れたばかりのデータの方に視線を移す。
マリーベルとしては無駄におべっかを言ってくる相手よりも、ロイドのような態度の方がずっと楽であったため、無礼な態度には何も言わずにシャワー室へと向かった。
軽く汗を流した後、パイロットスーツからドレスへと着替えて一通り戦後の事務処理と報告を済ませる。その後で再びロイドもいるであろう格納庫兼研究室へと戻った。
「データの確認は終わりましたか? ロイド」
自分用に用意されている席へと腰掛け、目の前のPCの電源を入れながらマリーベルは白衣の背中に問い掛ける。
「バッチリですよぉ皇女様。欲を言うなら相手側にもう少し手強い機体とパイロットがいれば、もっと質の良いデータが手に入ったんですけどねぇ」
「例えばあなたが造ったランスロットと、それに乗る枢木スザクのように。ですか?」
マリーベルの問いに、首だけ振り返ったロイドがにんまりと笑う。
「僕のランスロットとまではいかずとも、黒の騎士団の赤いナイトメアなんかでも充分ですよ。――今回の戦いでは手掛かりは見つかりましたか?」
「残念ながら、黒の騎士団に関する手掛かりもNACとつながりを示す資料もまだ見つかっていません。捕らえた捕虜も尋問する予定ですが、過度な期待はしない方が良いでしょう」
「中々思い通りにはいきませんねぇ」
データ採取の機会がない事にやれやれと首を振るロイドだったが、マリーベルは淡々とその落胆を打ち払った。
「黒の騎士団がテロ行為を続ける限り、いずれ必ずぶつかる事になります。急ぐ必要はありません」
「あは~。その時が楽しみですねぇ」
ロイドの期待の声を聞き流しながら、マリーベルはPCから過去の黒の騎士団との戦闘データを呼び出す。
ここ最近のマリーベルは、暇さえあればこれまでのブリタニアと黒の騎士団の戦闘データを分析し、その対策に頭を割いていた。
「ロイド。ダールトン将軍の機体を活動停止に追い込んだ敵の装置ですが……」
「ゲフィオン・ディスターバーですか?」
葛飾ゲットーでのダールトンの戦闘データを振り返り、マリーベルが口元に手を当てながらロイドを呼ぶ。
「ええ。確かこれまで実用化にまでは至っていなかった技術なのですよね?」
「理論だけのものだと思われていました。なので黒の騎士団が使ったのが本当にゲフィオン・ディスターバーだったのかは、起きた現象から逆算した確証のない推論になりますね。もっとも……」
「あなたとセシルは間違いないと確信している」
先取りしたマリーベルの言葉に、ロイドは返事の代わりに笑みを返す。
「けどどうして今更そんな話を? 前も話しましたけど、いくら僕やセシル君でも理論だけで見た事もない装置の対策を取るのは難しいですよ?」
理論が分かっているなら対策も容易だと考える愚か者もいるが、そもそも理論だけで上手くいくならとっくに実用化がされている。その実用化に至るまでの
マリーベルもそれは分かっており、無理難題をどうにかしろと部下に命令する愚かな皇女ではなかった。
「戦闘データを見返していて気付いたのですが、ダールトン将軍の機体が機能停止する直前にわずかな異音が聞こえます。これはゲフィオン・ディスターバーが作動した音とみて間違いはないですか?」
「う~ん、確認してみても?」
「ええ、どうぞ」
PCの前から離れ、ロイドにヘッドフォンを譲る。
自分の研究を中断してそれを確認したロイドは、眉を変な形に曲げながら頷いた。
「タイミング的に間違いないでしょうね。装置が作動させた音が、床越しに聞こえてきたんだと思います」
「戦闘データを見る限り、異音が聞こえてから機体が機能停止に陥るまでわずかにタイムラグがあります。これは装置が機体に干渉するまでの時間でしょうか?」
「ゲフィオン・ディスターバーはナイトメアの動力となってるサクラダイトに干渉するはずなので――装置を作動させる、力場が発生する、サクラダイトに干渉する、という工程を踏む必要があるはずです。皇女様が考えてられてる通り、タイムラグはその工程までに掛かる時間でしょうね」
実物を見ていないため、断言を避けてロイドはマリーベルの見解を肯定する。
そしてすぐに不思議そうに首をかしげた。
「でもこれって気にするような事ですか? 僕ら研究者からすれば装置の作動から効果が出るまでの時間は気になるところですけど、タイムラグといっても一秒にも満たないですし、もし戦場で使われたら何かしらのアクションを起こそうとしてもその前に機能停止しちゃいますよ?」
ゲフィオン・ディスターバーの効果範囲は最低でも半径15メートル以上。装置の作動に気付いてからでは、ランドスピナーを全開にしようと咄嗟にジャンプしようと、効果範囲から逃れるどころかその予備動作の間に機能停止してしまうだろう。アサルトライフルやヴァリスといった遠距離武器で装置を破壊するなんて対処は尚更難しい。
そんなロイドの疑問に、マリーベルは肯定でも否定でもなく意図を説明する事で答える。
「対応を考えるためには、どんなに無駄と思える些細な情報でも頭に入れておく必要があります。――ゲフィオン・ディスターバーはサクラダイトに干渉する装置なのですよね?」
「ええ。僕の知る理論通りであれば」
「ならナイトメアの機能は止められても、動いている機体の慣性までは止められない。現状効果範囲をどこまで広げられるかは定かではありませんが、罠が設置されていると考えられる場所で絶えず動き回っていれば、装置が作動してもその慣性で効果範囲外まで逃げられる可能性はありますね」
「う~ん、正確な情報がないので断言はできませんが、確かにそういった対処は有効かもしれませんね――――でもそれって」
「ええ。相手も当然警戒して罠を張っている。であれば、罠の設置ポイントは自ずと絞られます。速度の出せない障害物の多い場所や、曲がり角などで減速しなければならない場所。その条件さえ分かっていれば、敵機の動きから設置ポイントを割り出す事は不可能ではありません」
「戦闘中にそれができるのは皇女様だけですよぉ」
呆れと賞賛が入り混じった表情でロイドが笑う。
目まぐるしく状況が変わる戦場で、自分も戦いながら敵部隊の配置や動きから罠の場所を特定するなど、常人にはとても不可能だ。しかしドルイドシステムを使いこなし、複座での運用を前提としたガウェインを単独で操るマリーベルの情報処理能力はそれを可能にしてしまう。
「そういえば、ゲフィオン・ディスターバーの対策もいいですけど、スザク君とランスロットの対策はもう終わったんですか? 最近はずっと戦闘データと睨めっこしてましたよね?」
思い出したようにロイドが問うた。
黒の騎士団殲滅の最大の障害、枢木スザク。元々その排除を目的にこのエリアに呼ばれた事もあって、マリーベルはその攻略に最も時間を割いていた。
「ええ。機体と武器の性能はもちろん、ランスロットの動かし方、行動傾向、戦闘スタイル、想定外への対処、全て頭に入れました。戦場で相対したなら、一息に蹴散らして見せましょう」
自信ではなく確信と共に、マリーベルは断言する。
そして視界の隅にあったガウェインに視線を移し、小さく口元を綻ばせながら付け加えた。
「もっとも、いまのままなら戦闘データを分析する必要もなかったかもしれませんが」
「ラクシャータ。戦闘データの分析は終わったか?」
研究室に足を踏み入れた仮面の男は、挨拶もなしに気だるげにソファに座る主任に問い掛けた。
会議に情報分析に裏工作と、拠点を黒の騎士団のアジトに移してから以前よりも一層あくせくと働く男だ。無駄話どころか挨拶さえ省くのも頷けると、礼節なんかには頓着しないラクシャータは無駄な指摘をせずに聞かれた事に答える。
「ちょうどいま終わったところだよ。にしても、こんなものよく準備できたね?」
「それに関してはキョウトに感謝だな」
ひらひらと手を振って応じ、ラクシャータが感心したように示したのは、最近テロリストを精力的に潰し回っているマリーベルとその騎士の戦闘データである。
どんな方法を使ったかは分からないが、破壊されたはずのテロリストのナイトメアから戦闘データを手に入れて、キョウトがこちらに回してくれたのだ。
「青いランスロットの方は、スザクのやつと殆ど同じ性能だね。乗り手側がスペックに振り回されてる場面がちょくちょくあるから、パイロットとしての腕は多分スザクやカレンよりも下。だけどフロートのアドバンテージを持ってかれてる事を考えると、実力だけで勝敗が決まるとは思わない方がいいよ」
ラクシャータがまずはスザクが使っているランスロットと同じフォルムの機体についての分析結果を告げる。
それに関しては想定通りだったため、ゼロは頷いて続きを促した。
「例の皇女様が乗ってる大型ナイトメアフレームの武装は分かった限りで二つ。指先から放つ十指のスラッシュハーケンと、大出力ビーム火器のハドロン砲。後者はチャージまでに若干の溜めがあるみたいだけど、動きながらでもチャージはできるみたいだから弱点とは言えないね」
本題のナイトメアの報告にゼロは、最も懸念していた点を真っ先に確認する。
「ハドロン砲の射程は?」
「最低でも、500メートル以上」
面白くなさそうにラクシャータが答える。
それは強力な兵器を生み出した者への技術者の対抗心故か、それともゼロが抱く懸念と同じ結論に至っているが故か。
「つまり相手は、こちらの攻撃が殆ど届かない上空から一方的に砲撃してくる――という戦法が取れるわけか」
「そうなるね。こっちの武装で攻撃が届きそうなのは、ランスロットのヴァリスくらいだけど……」
「あの大型ナイトメアフレームの機動力を考慮すれば、不意を突かない限りは当たらないだろうな」
フロートユニットとハドロン砲。
あまりに相性の良い組み合わせが黒の騎士団の反撃手段の殆どを封殺する。
それはいくら戦力を増やそうがどうにもならない戦略的不利を示していた。
「ハドロン砲の射出速度とフロートユニットの機動力からして、上空からの一方的な砲撃を避けられるのはランスロットか紅蓮だけ。もし勝機を探すなら紅蓮が囮になって注意を引き、隙をついてランスロットが砲撃するくらいしか有効打はなさそうだな」
「相手からすれば、それだけを警戒すればいいんだから楽なもんよね。どれだけ不意を突かれても対処できる高度を維持すれば、それだけで負けないんだから」
「しかもこちらがいくら紅蓮やランスロットを使った戦術を考案しても、相手側にはそれに付き合う理由がない。最低限の警戒だけして紅蓮とランスロットを無視。その上でこちらの部隊を上空からハドロン砲で殲滅。――そんな策を取られれば、なす術もなく黒の騎士団は瓦解するだろう」
相手側の立場で戦略を語るゼロが、覆しがたい絶望的な状況を淡々と口にする。
もしゼロが推測した通りの戦法が実行されたなら、一般団員はもちろん藤堂や四聖剣すら物の数ではない。敵のナイトメア一機に全ての部隊が全滅させられる可能性すらあり得た。
「で、どうすんだいゼロ? あのナイトメアを攻略しなきゃ、勝機なんてなさそうなもんだけど?」
「いくつかの対策は既に考えている……が、やはり制空権を取られているのが痛いな。こちらの翼はまだ掛かりそうか?」
「そんな簡単にできるなら、とっくに作ってるよ。せめて実物が一つでもあれば、開発も進むんだけどねぇ」
苦々しく表情を歪めながら、ラクシャータがシャッポを脱ぐ。
フロートシステムの開発に関しては、ブリタニア側に先を行かれてしまった事を認めざるを得なかった。
「ないものねだりをしても仕方がない。そちらは気長に待たせてもらうとして、追加で一つ武器の製造を頼む」
「いまでも手一杯だってのに、これ以上何を作らせるつもりだい?」
「無理難題を言うつもりはない。あなたの腕なら片手間で作れるだろう」
そう言ってゼロは詳細が書かれたデータをラクシャータに渡す。
「ふーん、なるほどね」
データを早速確認したラクシャータが納得したように頷く。
それを見て、言葉はなくとも了承が取れたと判断しゼロは踵を返す。
「おや、もう行くのかい?」
「まだ何か用があるのか?」
ゼロの確認に、ラクシャータは片手に持っていたキセルで格納庫の方を示した。
「あれ、見ていくと思ったけど?」
「今日は時間がない。また明日、訓練がてら触らせてもらおう」
その答えにラクシャータはやれやれと首を振り、慌ただしく研究室から去っていくゼロの背中を見送った。
戦闘を終え、帰投したオルドリンは大きく息を吐いてコックピットから外へと出る。
「テロリストの掃討、お疲れ様です。ジヴォン卿」
「ありがとうセシルさん」
出迎えてくれたセシルに笑顔でお礼を言い、トトからタオルを貰う。
「マリーベル様も無事に戦闘を終えられたそうです」
「そっか。心配はしてなかったけど、さすがはマリーね」
トトの報告に、オルドリンは笑みを浮かべる。
今回のテロリストの掃討は二か所同時の襲撃だったため、コーネリアから部隊を借り受けたマリーベルとオルドリンが別々の場所で指揮を執っていた。
「どうでしたか、新しい機体の乗り心地は?」
「うん。クラブよりも思い通りに機体が動かせる。とってもいい感じよ」
セシルに問われ、オルドリンは今回の戦闘で初陣を飾った、自身の愛機となるナイトメアを見上げた。
「きっとこの機体なら、枢木スザクも倒せる」
いままで使っていたランスロット・クラブを多少スペックダウンさせ、武装も新たにオルドリンに合わせてチューンナップした専用機。
黒の騎士団のナイトメアである紅蓮の濃い赤とは違い、明るく鮮やかな赤に彩られたランスロットに、オルドリンは拳を握った。
「ランスロット・グレイル――――私の新しい剣」
決意と誓いを思い出し、オルドリンはまだ見ぬ敵への戦意を昂らせた。
予定では適当に組織名だけ出して終わらせようと思っていた新撰魂ですが、書いていたら思いのほか設定が湧いてきたので、まさかの一話限りのオリジナルネームドキャラが誕生しました。完全なオリキャラは初めての登場かもしれないですね。
二次創作でオリキャラを出すのはあまり好きではないので、もしかしたら今作唯一のオリキャラになるかもしれません。
次回:穏やかな時間