ルルーシュが置かれている現状は客観的に見てとても苦しいものだ。
死んだ事になっているため目立つ事はできず、もし本国に見つかれば連れ戻され政略の道具にされるか、他の皇族やそれに味方する者に知られれば、玄武に依頼した何者かのように刺客を差し向けられ暗殺されかねない。なんとか誰にも見つからずに隠れ住む事ができたとしても、戸籍がないためまともに職に就く事もできなければ結婚もできず、様々なものを制限されながら不自由な一生を送るしかない。
だからこそルルーシュは祖国に対して反逆する。
自分はもちろん、最愛の妹であるナナリーが幸せに暮らせる世界を創るために、ブリタニアを破壊する。しかし一介の学生に過ぎないルルーシュにそんな力はなかった。知恵は回るが体力は人並み以下であり、信頼できる仲間がいるわけでもない。そんな状況ではブリタニアを壊す事など夢のまた夢だろう。
しかしいま、ルルーシュは仲間を得た。枢木スザクという心の底から信頼できる仲間を。
正直、スザクが味方してくれる事で状況が劇的に良くなったかと言われればそうでもない。
肉体能力に置いてスザクは人並み外れたものを持ってはいるが、所詮は一個人の武力だ。多数を相手どれば潰されてしまう程度のものでしかなく、ルルーシュと二人でも大した戦力には成り得ないだろう。
しかしそんな現実的な戦力分析をしながらも、ルルーシュの心にはこの先の険しい道に対する不安は消えていた。
スザクが味方になってくれる、その事実があらゆる不安を上回る心強さをルルーシュに与えてくれていた。
「それでルルーシュ。これからどうするつもりなの?」
つないだ手を放し、改めてスザクが問うてくる。
「それはどういう手段でブリタニアをぶっ壊すのか、という事か」
頷くスザクに、ルルーシュは口元に手をやり元々の計画を思い出す。
「そうだな……本来ならEUに渡った後はしばらくの間身を隠し、皇位継承の争いが激化したところで相続から外れた皇族に手を貸して陰から国を乗っ取ろうかと考えていたが、お前がいるならそんな回り道をする必要はないか」
「前に聞いた時も思ったけど、凄い事考えてたんだね、ルルーシュ」
「表舞台に立つこともできない俺ができる事なんて限られているからな。これが一番現実的な方法だったんだよ」
大国を陰から乗っ取る事が現実的と言う友人にスザクの顔が引きつるが、それに気付かずルルーシュは続ける。
「日本から出てEUに渡るのは良いとして、拠点を築いた後は身を隠すよりもむしろ、情報収集をして与しやすい小国を見つけ取り入った方が効率的か? そこから根を広げていけばいずれ……」
「それなんだけどルルーシュ。本当に日本から出るの?」
思考の海に沈みそうになったルルーシュの意識をスザクの問いが強引に引っ張り上げる。
「どういう意味だ? 確かに日本はお前の故郷で思い入れはあるだろうが、リスクマネージメントの観点から見れば出国は急務になる。いま出国するといってもいずれブリタニアを打倒すれば、日本もエリア支配から解放されるのだから、感傷でリスクを負うよりも大局的視点に立って……」
「そういう事じゃなくて。君がブリタニアに反旗を翻す気なのはもう分かってるけど、その間ナナリーはどうするつもり?」
理路整然と出国に対するメリットを語るルルーシュを遮って、スザクは目の前の現実的問題を取り上げる。
最愛の妹の名前を出され、ルルーシュは一瞬返事に詰まった。
「それは……だからお前にナナリーを守ってもらいたいと俺は……」
「もちろんナナリーも僕が守るけど、それでも直接反逆する君の方が危険なんだ。言っただろう? 僕はナナリーも君も守りたいんだ」
「だが現実的な問題としてお前の身体は一つしかない。俺とナナリー、二人を同時に守る事は……」
「だから、さ。ここは一つ、君が過ごしてたっていうアッシュフォードの学園に戻ってみない?」
「なに?」
「君の事を追ってた親衛隊はもういないし、彼らもあの時の事は誰にも言えないなんて言ってたから、戻っても大丈夫なんじゃないかと思うんだ」
何も考えていないような笑顔でスザクはそう提案する。しかし確かにそれは一考の価値のある提案だった。
ルルーシュが学園を出たのは親衛隊から隠れるためだ。しかしいまのところアッシュフォードに軍が押しかけてくるような事態にはなっていない。それはつまり親衛隊が今回の件を軍に秘匿していたという事だ。あの時に新宿でルルーシュを見ているのは親衛隊とスザクだけであり、親衛隊がいなくなりスザクが裏切る事はあり得ないのだから、状況はあの新宿の日より以前と変わっていないと言える。つまりルルーシュが警戒していた追手が来る可能性は限りなく低い。
「周りに人がいた方がナナリーも安心だろうし、君の伝言を僕に伝えてくれた人も、凄く君の事を大切に思ってるのが伝わってきた。彼女に何か異変があった時に連絡してもらえば、ナナリーの事はひとまず心配ないんじゃないかな?」
「確かにミレイは信頼できるが……」
スザクの提案に言葉を濁すルルーシュ。最大の問題は解消されているとはいえ、学園に戻るのが最善かと言われればそうではない。
一番の懸念は今回の件を経てアッシュフォードがどう動くか。一度逃げたのだ。戻ってきたのならまた逃げられる前にルルーシュとナナリーを本国に売ってしまおうと、そう考えられても不思議ではない。ミレイが裏切るとは思えないが、ミレイの両親は確実にそうした案を検討するだろう。ルーベンにしても、今回の事で自分達を見限らないとは言えない。安全が100%確保できないのであれば、アッシュフォードに戻るのは避けるべきといえる。
しかしスザクが言う事も一理ないわけではない。現状出国にするにあたって様々なリスクは当然あり、とりわけ出国先として考えているEUに先立って基盤を築いている余裕はない。となれば出国しEUに渡ったとしても、そこからは手さぐりで生活基盤を整えなければならないのだ。大国とはいえEUでもテロや内乱は少なくない。頼れるものがいない海外の地での生活は苦しいものになるだろう。となれば追手が消えた現状、日本に残りアッシュフォード学園に戻った方が危険は少ないと言えるかもしれない。
「無理にとは言わない。僕なんかじゃ思いつかない問題もあると思うから。でもできるなら、君達は戻った方がいいと思う」
「やはり日本を出るのは嫌か?」
スザクの言葉に込められた強い思いを感じ取り、ルルーシュはそれを祖国に対する心残りだと受け取った。
しかしその考えは首を振られ否定される。
「違うよ。僕は別に君達がいるなら日本でも海外でもどっちでもいいんだ」
「ならどうしてそれほど俺達が学園に戻る事にこだわる?」
「だって学園の事を話すナナリーが楽しそうだったから」
その言葉に不意を突かれてルルーシュは言葉を失う。
君も満更じゃないみたいだったしね、と笑うスザクがあまりに自然体で、特別な事は何も考えていないのが分かる。
スザクにとってこの提案は自然と出てきた当たり前の案だったのだろう。リスクとかメリットとかそういったものを考慮に入れず、自分とナナリーにとってそれがプラスに働くかどうか、それだけを考えて。
自分では絶対に持てない視点に、ルルーシュは改めて友達の大切さを実感する。
「……そうだな。一度ミレイと連絡を取って、可能なら戻る事も検討しよう」
ルルーシュにとってもナナリーの世話を任せられる人間がいる事は大きい。
これから反逆するにあたって寂しい思いをさせてしまうだろう妹の心のケアは、どうしたって自分一人じゃ行き届かないだろう。アッシュフォードのメイドである篠崎咲世子であれば長年の付き合いもありナナリーも信頼しているし、ルルーシュとしても任せる事に不安はない。身辺周りはいままでのように自分が警戒していればどうにかなるだろうし、戻る事で発生する問題もよほどのものでない限りこちらで処理できる。
「あとこれは相談なんだけど……」
今後の方針について一段落するのを見計らって、言いづらそうに頬を掻きながらそう切り出すスザク。
そのあまりの分かりやすさに、ルルーシュは苦笑する。
「大方軍を脱走して行く当てがないからどうしよう、なんてところか?」
「そうなんだよ! 良く分かったね、ルルーシュ」
「この状況でお前が言いそうな事なんて簡単に予想がつく。とりあえず今日は俺の家に……」
「それでね。軍を逃げる時にナイトメアに乗って逃げて来たんだけど、それも一緒に隠せる場所ってあるかな?」
「…………なんだと?」
「だから乗ってきたナイトメアを隠せる場所が……」
「何を考えてるんだお前は!」
思わずルルーシュは叫んでいた。
「親衛隊を殺した上にナイトメアフレームを奪ってきただと! そんなの自ら追って来いと言っているようなものだろうが!」
「だ、大丈夫だよ。ナイトメアはちゃんと見つからないよう隠してきたから」
「脱出経路も確保せず突発的に事件を起こして逃げてきた奴のちゃんとがどれだけ信用できるというんだ! 親衛隊を殺害しただけでも危険だと言うのに、あんな目立つものに乗って逃げるなど一体何を考えている! 目撃者が軍に通報しただけで簡単に足跡を辿られるんだぞ!」
事態の重さが分かっていないスザクを怒鳴りつけ、それでも冷静な頭が状況把握を優先する。
「……ちなみに隠したのはどこだ?」
「いまはもう使われなくなった、元々うちが所有してた土地の林の中に……」
「お前名義の土地などすぐに調べられるに決まっているだろう!」
あまりに考えなしのスザクの行動にルルーシュは頭痛を感じた。
よくもこんな状況で大丈夫などという言葉を口にできたものだ。
「とりあえず、正確な場所を教えろ」
「う、うん。分かった」
口頭でスザクからナイトメアフレームの隠し場所を聞いたルルーシュは少しだけ考え込んで踵を返した。
「ついてこい」
そのまま隠れ家に戻ったルルーシュは、スザクに待機を言い渡して中へ入っていく。
再び出てきたルルーシュの手には一枚の地図が握られていた。
「お前はいますぐ隠したナイトメアを拾って、この場所に隠し直せ。ルートも全て書いておいたから、迷う事はないはずだ。ただし、いま隠している場所に軍の人間がいたらナイトメアなど捨ててすぐに逃げろ。俺もお前が誰かに見られた可能性を考えてすぐにナナリーとこの家を出る」
「えっ、君達まで?」
「お前一人なら気にも留められないだろうが、夜にナイトメアを走らせていた男が租界でこっそりと誰かと会っていたなんて不審にも程がある。どんな理由であろうと通報された時点で俺達はおしまいだからな。用心を重ねるに越した事はない」
「……なんかごめん。ルルーシュ」
「そう思うなら少しは考えて行動しろ。まったく、どうしてナイトメアなんか盗んできたんだ」
スザクは考えなしだが、軍のナイトメアを奪ってくる危険性が分からない程愚かではないはずだ。もしそこまで危機管理ができなかったなら、敗戦後の日本の苦境の中でとっくに死んでいただろう。
散々ルルーシュに罵られた事で落ち込んだ様子を見せながらスザクは疑問に答える。
「君達を守るために、少しでも力が欲しかったんだ」
「……」
「でも、なんだかかえって迷惑掛けちゃったみたいだね。本当にごめん」
申し訳なさそうに謝るスザクにルルーシュは大きくため息をついた。
「戦力はあるに越した事はない。虎の子のナイトメアが手に入れば戦略の幅は一気に広がる」
その言葉にスザクは俯けていた顔を上げる。
人のために自らの危険を顧みないところは矯正すべき点だろう。
だがだからこそ、自分はこの親友を信頼しているのかもしれない。
「ただそれも俺達が無事である事が前提だ。ナイトメアを手に入れるために怪我をして再起不能になるなど、本末転倒でしかない。だから必ず、ナイトメアよりも自分の身を優先しろ」
自分が手綱を引かなければ、必ず目の前の友人は自分達のために無茶をする。
それを理解し、ルルーシュは優先順位を明確にした。
その意図を正確に理解しスザクも強く頷く。
「分かった。肝に銘じるよ」
「これを持っていけ。後で俺の方から連絡を入れる」
いざという時のために用意していた携帯をスザクに渡す。
「これからお前にはその無尽蔵な体力が尽きるほど働いてもらう予定なんだ。下手を打って捕まったりするんじゃないぞ」
「分かったよ。君も無理してナナリーに心配掛けないようにね」
そんな言葉を掛け合って、二人は別れた。
数時間前に別れた時とは真逆の思いを胸に宿して。
スザクと手を組んで5日。アッシュフォードを出て二週間以上経って、ルルーシュとナナリーは再び学園に戻った。
ミレイと連絡を取ったところ、現状ルルーシュ達が学園を出たと知っているのが彼女と彼女の祖父であるルーベンしかいないと分かったからだ。彼女は匿っていた皇子が逃げたと知れば両親が追手を出すかもしれないと危惧し、祖父以外の全ての人間に事の一切を秘匿した。本当は誰にも伝えないのが最善だとは分かっていたが、祖父が主君を裏切る事はないとミレイは知っており、軍への対策を練るには祖父の協力は必須であると考えたためルーベンだけには事実を打ち明けたのだ。事情を聞いたルーベンはすぐに学園の警備を増やし、もしルルーシュが助けを求めてきた時のための手回しを始めた。ミレイは外向きには家の事情で本国に戻るため休学していると告げ、詳しい事は自分も知らないと白を切り通した。退学ではなく休学にしたのは、学内の人気者であるルルーシュが突然いなくなった混乱を避けるためと、もし万が一主君が戻ってこられる事態になった時に受け入れを容易にするための口実だった。
それは功を奏し、アッシュフォードの現状を聞いたルルーシュは一度ルーベンと話し合いの場を設け、無事学園に戻る事を決めた。
そして久しぶりにクラブハウスに入ったルルーシュとナナリーを迎えたのは、無機質なホールではなくいくつものクラッカーだった。
『おかえりなさい! ルルーシュ! ナナリー!』
目を丸くする兄妹に、生徒会メンバーが声を揃えて笑いかける。
数秒程驚いて固まっていた二人だが、立ち直るとナナリーは満面の笑みを浮かべ、ルルーシュも苦笑に近い笑みを浮かべながらナナリーの髪についたクラッカーの紐を払う。
「ありがとうございます。ただいま帰りました、みなさん」
「出迎えてくれるのはありがたいですが、なんですか、これは?」
律儀に挨拶を返すナナリーの車椅子を押しながら、ルルーシュは呆れ顔で問う。
クラブハウスのホールはまるでパーティー会場のように豪華な食事が並べられ、いたるところに装飾がなされていた。
「もっちろん二人の帰還祝い兼、新しい生徒会メンバーの歓迎パーティーよ! こういうのは盛大にやらないとね!」
「歓迎パーティー?」
ナナリーが首をかしげると共に一人の女子生徒が二人の進み出てきた。
「初めまして。ルルーシュ君。ナナリーちゃん。先週から生徒会役員になったカレン・シュタットフェルトです」
「あっ、はい。初めまして。カレンさん。ナナリー・ランペルージです」
初対面の挨拶をかわすナナリーとカレンと名乗る赤髪の女生徒。
その姿を後ろから見ながら、ルルーシュはやはりと確信する。元々ミレイを通してルーベンからイレブンとのハーフだという情報は学園に戻る前から得ていた。その時に見た顔写真でもしやとは思っていたが、彼女は新宿事変の時にルルーシュが巻き込まれたトレーラーに乗っていたテロリストの女で間違いなかった。おそらくテロをしている理由は生まれがハーフだという事に起因しているのだろう。
「ル~ル~」
考え込んでいたルルーシュを覗き込んでくるシャーリー。
ルルーシュに真正面から見つめられる形になったカレンは、戸惑いを露わに首を傾げた。
「あの、私の顔に何かついてる?」
「いや、すまない。旅の疲れかな。少しボーとしてしまっていたみたいだ」
慌てて言い繕って、ルルーシュは差し出されていた手を掴む。
「改めて、ルルーシュ・ランペルージだ。よろしく頼む」
「うん、よろしく。ルルーシュ君」
シャーリーがジト目で睨んでくるのを視界の端に収めながら挨拶を交わす。
この視線には気付かないフリをした方がいいだろうと、ルルーシュは冷や汗をかくのを自覚しながら判断する。
「カレンは病弱だからあまり生徒会に参加できないかもしれないけど、ちゃんとフォローしてあげるのよ」
「病弱……ね」
テロリストの時に見たあの勇ましさを思い出し、思わず呟く。
おそらくはテロリストだという事がバレないように擬態しているのだろうが、トレーラーでわずかに見た生来の性格があれなら相当ストレスが溜まっている事だろう。
「それじゃ改めて、お帰りなさい兼ようこそ! 帰還歓迎パーティーの開催よ! カンパーイ!」
『乾杯!』
全員がいつの間にか配られていた杯を掲げパーティーが始まる。
そして開始してすぐに、ルルーシュは喧しい悪友に詰め寄られた。
「ルルーシュー! お前いままでどこに行ってたんだよぉ!」
「どこって、一時的に本国に戻るって伝達があっただろう?」
「そりゃそうだけどさ! いきなり何も言わずにいなくなるなよな。何かあったんじゃないかって心配するだろ!」
「ホントだよ。凄く、すごーく心配したんだからね。ルル」
リヴァルとシャーリーが口々に不満を露わにする。
もう話す事もないと思っていた友達との会話に、ルルーシュは少しだけ居心地の良さを感じた。
「ごめんごめん。いきなり呼びつけられたんで、話す時間がなかったんだよ」
「だとしても電話で話すくらいできただろ。どんだけコールしてもつながらないしさ」
「急だったから携帯をクラブハウスに忘れたんだ。あっちじゃそのせいで苦労したよ」
「ルルってたまに凄くドジだよね」
「でも戻ってきてくれて良かったね」
隅にいたニーナも会話に加わり、和気藹々とした時間が流れる。
横目にナナリーがカレンとやミレイと話して笑顔なのも確認し、戻ってきて良かったとルルーシュは心の中で思う。
「でも珍しいよな。というか初めてじゃないか? ルルーシュが家庭の用事っての」
「かもしれないな。普段連絡を取ってるわけでもないし」
「そうなのか? じゃあ今回はなんで……」
「よーし! 生徒会フルメンバーが揃ってさらに新規メンバーも参入した事だし、ここは一つ盛大にお祝いのイベントをやるわよ!」
事情を聞こうとしたリヴァルの声を盛大にぶった切って会長の叫びが響く。
いつもの事なので生徒会メンバーは特段驚かないが、まだ入って日の浅いカレンだけは目を丸くしていた。
「何言ってるんですか会長! まさにいましてる最中じゃないですか!」
シャーリーが至極尤もな意見を述べるが、我らが生徒会長は意に介さず両手を広げる。
「シャーラップ。こんな普通なのイベントの内に入らないの。そんなわけでルルちゃん、いつも通り企画は私が練るから段取りは任せるわよ」
「却下。と言いたいところではありますが、今回はナナリーのためでもありますから開催自体は反対しません」
「おっ。聞き分けが良くて大変よろしい」
「ただし、予算の範囲内であればですよ」
ギロっとルルーシュが念を押すように睨みつけるが、会長は分かってる分かってると空返事をして意に介さない。
普段通りのお気楽さにルルーシュはため息をつきながら、近いうちに齎される厄介事の対処を覚悟した。
それからなんやかんやで会長が作った料理に舌鼓を打って騒いでいると、流していたテレビが一つのニュースを報じた。
『緊急ニュースです。最近メディアへの露出が極端に減っていたクロヴィス殿下ですが、健康上の理由から急遽本国へ戻る事が発表されました。それに伴いエリア11の総督の任も解かれ、新たな総督には第二皇女であるコーネリア殿下がご着任されます。突然に退陣に対し、クロヴィス殿下を心配する声が……』
「へぇ。総督代わるんだ」
「本国に戻るなんて、よっぽど酷い病気とかなのかな?」
リヴァルとシャーリーが雑談程度にそんな話をするのを横目に、ルルーシュは誰にも気付かれない程に小さく目を細めた。
コーネリア・リ・ブリタニア。ルルーシュやナナリー、クロヴィスの姉であり武人としても名を馳せる女傑。侵略戦争の最前線に立つ事も少なくなく、他国からつけられた異名は『ブリタニアの魔女』。
(それにしても、まさかコーネリアとはな)
スザクが味方になってくれなければ、ブリタニアを陰から乗っ取るために最も手を貸す可能性が高かったコーネリアがこのエリア11に赴任してくるというのは、なんとも因果めいた話だ。
(中華との間にあるとはいえ、エリア11はコーネリアが派遣されるほどの要地ではないはずだが……)
本来なら軍人肌のコーネリアは一エリアの総督になるような気質の人間ではない。皇位継承権のランクから考えても、わざわざ途上エリアのエリア11の総督に任命されるというのは違和感が残る話だ。ならばこれは、旗艦で襲われたクロヴィスの件が思った以上にブリタニア本国に重く見られているのか、はたまた妹の基盤を作るための姉心か。だがどちらにしてもルルーシュからすればどうでもいい事ではある。重要なのはコーネリアがエリア11の総督に赴任するという一点のみ。
(コーネリアの性格からして、まずは内政よりもクロヴィスのせいで腐敗した内部の浄化とテロリストの殲滅を優先する可能性が高いか? 部下にしても文官よりも武官の方が圧倒的に多いだろうし、スザクを通してNACと連絡を取れるならそこから切り崩す事も考えた方がいいかもしれないな……)
頭の中で新たな策を練りながら意味深に向けられた会長の視線はあえて無視する。
さりげなく目線を動かせばカレンが大人しそうな顔をしながら拳を握りしめているのが見えた。テロリストに協力する彼女からすれば音に聞くコーネリアの武名は決して無視できるものではないだろう。少なくともテロ活動はクロヴィスがいた時よりも確実に苦しいものになるはずだ。
みんなの視線がテレビに向けられている中、ナナリーが車椅子を動かして隣にくる。
そしてルルーシュの手を優しく握った。
視線を向けると、穏やかな笑みが返される。
その笑顔の意味を正確に汲み取り、妹の手を握り返す。
母に憧れていた姉と戦う決意を、ルルーシュは心の中で静かに固めた。
「おかえり。ルルーシュ」
パーティーの後片づけを終えてクラブハウスの自室に戻ったルルーシュを迎えたのはそんな挨拶だった。
新緑の髪に金色の瞳。人を見下したかのような傲岸不遜な態度でベットに腰掛ける少女にはルルーシュも見覚えがある。
「お前は……」
「私はC.C.。お前の命の恩人だ」
誰何する前に自己紹介を済ませたのは、新宿の時に毒ガスと思われていたカプセルから出てきた謎の少女。
イニシャルだけというのもふざけているが、不法侵入しておいて堂々と名乗るその態度もふざけたものだった。
「巻き込んでおいて命の恩人を名乗るとは、随分と厚かましい奴だな」
「助けてやったのは事実だろう? それとも、あのまま死にたかったのか?」
「そもそもお前がいなければあんな事態には陥っていないと言っているんだ」
「それこれとは話が別だ」
飄々とこちらの苦情を躱し、C.C.はあっさりと話題を逸らす。
「それにしても、随分とセキュリティ意識の高い学園だな。中に入るだけでも一苦労だったぞ。特にこのクラブハウスの中には」
「嘘をつけ。入るだけなら容易だったはずだ」
「まぁそうだな。正確には気付かれずに中に入るのは、か」
軍が来た場合、没落したアッシュフォードにそれを退ける力はない。そのため迎え撃ったり侵入を防いだりといった防衛設備は学園に設置されていない。しかし誰かが侵入した時にすぐに逃げられるよう侵入者を発見するセキュリティはかなり強固なものが敷かれていた。普段は一部しか使用されていないセキュリティではあるが、追手が手掛かりを求めて空き巣に来る事も考え、ルルーシュが学園を出て以降はずっと厳戒態勢を維持していた。
「ミレイに警戒を解かせたのは時期尚早だったか……」
そのセキュリティも今回ルルーシュが戻ってくるにあたってある程度解かれている。追手の心配がないといって戻ってくるのに、警戒レベルを引き下げないのは不信を招く。それにそもそも親衛隊が死んだ現状、そこまでのセキュリティは必要なかったからだ。
「お前、どうしてここにいる?」
「どうしてとはご挨拶だな。別れ際にまたなと言ったのを忘れたのか?」
「そんな去り際の挨拶を誰が本気にする? なぜ俺に会いに来た。何が目的だ?」
「目的も何も、私はお前の答えを聞きに来ただけだ」
そう言われ、思い当たる事は一つしかない。
「力を与えるとかいう契約の話か? それならとっくに断っただろう」
「あれは私が信用できなかったからだろう? お前を助けてやったいま、状況は変わっていると思うが?」
「確かに状況は大きく変化しているが、お前が胡散臭い女だという事は何一つ変わっていない。素性どころか本名すら明かさない女を信用できるものか」
「女の秘密を許容できない男はモテないぞ、坊や」
「そういう事を言っているんじゃない!」
煙に巻くようなC.C.の言動に振り回されている事を自覚しながら、いままで相対してきたどんな人物とも違うC.C.の性格にルルーシュは主導権が取れない。
「そういえばお前はどうして学園に戻ってきたんだ? ブリタニアからの追手から逃げるためにわざわざ住み慣れたこの場所を出たのだろう?」
「逃げる必要がなくなっただけだ。親衛隊が俺を追ってくる事はもうない」
「ほぅ。始末できたのか」
ニヤリと口の両端を上げて笑うC.C.。
「なら私も一安心だな。実行部隊がいないのであれば、見つかる心配もなさそうだ」
「あれほどの包囲の中で総督に停戦命令を出させた奴の台詞とは思えないな。見つかったとしても、容易に逃げられるだろう」
「そんな便利なものでもないのさ。だからお前の力が必要なんだ」
「願いを叶えるため、か」
契約を持ち掛けられた際の交換条件を思い出し、C.C.の言葉の真意を汲み取る。
だがそれに応えるかどうかは別問題と言えた。
「お前の願いが一人で叶えられないものだとしても、俺には関係のない話だ。前にも言った通り、俺にはお前と契約するつもりなど一切ない。他を当たるんだな」
「いいや。お前は必ず、いずれ力を求めるさ。それまでは……」
初めて会った時のように確信めいた言葉を呟き、C.C.はいきなり拘束衣を脱いでベッドに潜り込んだ。
「まぁこの部屋で我慢してやる」
「おい、まさか泊まるつもりか」
「男は床で寝ろ」
「そう言う事じゃない!」
人の話を全く聞かないC.C.にルルーシュも声を荒らげる。
「なんだ? まさか命の恩人を野宿させるつもりか?」
「俺が学園に帰ってくるまでは一人でどうにかしていたんだろう」
「女一人養う甲斐性もないのか? 坊や」
「話をすり替えるな。少しはこちらの都合も考え……」
「しつこいのは嫌いだ」
話を聞こうともせず布団を頭から被るC.C.。
無理に追い出せば逆恨みしてこちらの不利益になる事をしでかすかもしれないと考えると、強硬手段は愚策だろう。
「そもそもお前はなぜ俺にこだわる? 素性は? 力と言っていたが、具体的にそれはどういうもの――」
「おやすみ。ルルーシュ」
せめて状況だけでも把握しようと投げ掛けた問いは全て流される。
盛大にため息をつき、ルルーシュは厄介なものを抱え込んだと深くうなだれた。
シュナイゼル・エル・ブリタニア。
神聖ブリタニア帝国の第二皇子であり、帝国宰相という重役につく、現在最も帝位に近い男。
彼は今日、珍しく仕事ではなく私用で外出をしていた。
塵一つ落ちていない廊下を歩き、案内をしてくれる執事に目的の部屋まで案内され入室を果たす。
「お待ちしていました。兄上」
「いきなり押しかけてすまないねクロヴィス」
シュナイゼルを恭しく出迎えたのは彼の弟である第三皇子のクロヴィスだった。
体調不良の名目でエリア11の総督の任を降り本国に戻ってきた弟を見舞うため、シュナイゼルは忙しい合間を縫ってクロヴィスの屋敷へと足を運んでいた。
「いえ。こちらこそ宰相閣下にわざわざご足労いただき申し訳ございません。本来ならばこちらからご挨拶に伺わなくてはならないというのに」
「気にしないでくれ。それに今日はそう言った堅苦しいのはなしにしよう。久しぶりの兄弟水入らずの場なのだからね」
一見、クロヴィスは普段と変わらないように見えるが、立場上人の内心を読む事に長けているシュナイゼルには弟がかなり憔悴している事が察せられた。だがそれを指摘する事はクロヴィスに対する侮辱にもつながるため、気付かないフリをして気疲れする形式ばったやり取りを早々に排除する。
既に杯の置かれているテーブルに腰掛け、二人は数年ぶりに向かい合った。
「君がエリア11から戻ってくると聞いた時は驚いたよ。でも目立った怪我がないようで何よりだ」
「ご心配をお掛けして申し訳ございません、兄上。役目を果たせずおめおめと帰ってきてしまい、お恥ずかしい限りです」
「いいや。君は立派に役目を果たしたよ。エリア11はテロ活動が活発な難しいエリアだが、君のおかげであの地は矯正エリアに落ちる事もなくいまも平穏な時間が続いている。君は自分の功績を誇るべきだよ」
「そう言ってくださるのは兄上くらいのものです」
本国に帰ってきてからは皇帝陛下に帰還の挨拶をしたくらいでしか屋敷を出ていないはずのクロヴィスだったが、使用人から自分の噂を聞いていたか、もしかしたらエリア11にいる時に耳に入ってしまったのかもしれない。
「健康上の理由と聞いていたが、身体の方は大丈夫なのかい?」
「問題はありません。健康上の理由、というのは建前ではありませんが、別に病気というわけでもないのです」
「ふむ。病気でないと言うなら、精神的なものかな? 言いづらい、というなら答えなくても構わないが」
「他の者にならともかく、兄上に隠し立てするような事ではありませんよ」
そう言ってクロヴィスは自分のグラスを手に取って傾けた。
喉を潤して手に持ったグラスの水面を眺め、懐かしむように目を細めながら口を開く。
「兄上は憶えていらっしゃいますか? あの地で失われた二つの宝石を」
抽象的なクロヴィスの問いに、シュナイゼルは考える様子すら見せずに頷いた。
「もちろん、憶えているよ。生きてさえいれば、きっとルルーシュは私にも負けない才覚を発揮し、ナナリーはとてもお淑やかで美しいレディに成長していた事だろうね。そういえば、君がエリア11の総督に志願したのは彼らのためだったかな」
七年前、クロヴィスがエリア11の総督に赴任する時に交わした会話を思い出し、シュナイゼルは目を細める。
同じように自ら語っていた事を思い出しているだろうクロヴィスは暗い表情で首を振った。
「ため、というのはいささか押しつけがましいように思えます。私はただ、あの地の平定はルルーシュが私に残した課題ではないかと、そんな気がしただけです。残念ながら、私にはその課題を解く事は叶いませんでしたが」
「クロヴィス……」
「私の力不足のせいでエリア11は未だに衛星エリアへの昇格もままなりません。テロは横行し、生産力は上がらず、土地はやせ細っている。きっとルルーシュとナナリーは私に失望している事でしょう」
「そんな風に考えるものではないよ。あの優しい二人が、君に失望なんてするわけがないだろう」
「ですが私には聞こえるのです。二人の怨嗟の声が。助けてくれなかった。守ってくれなかった。なのにエリアは静まらず、穏やかに眠る事もできない。そんな役立たずの兄など消えてしまえと、そう私を謗る声が耳を離れてくれないのです」
新宿事変のあの日から、目を瞑れば瞼の裏に浮かぶ幼い兄妹の顔と呪詛の呟き。クロヴィスはそれにずっと苦しめられていた。いや、苦しめられているなんて言葉は逃げでしかないだろう。なぜならそれらは歴とした事実であり、自身が背負わなければならない業なのだから。
「あの日、私達はルルーシュとナナリーに手を差し伸べてあげる事ができなかった。まだ十にもなっていない二人が敵国に送られるのを、ただ黙って見送りました」
「そうだね。助けてあげたかったけれど、彼らを助けられるだけの力が私達にはなかった。とても悲しい事だけど、私達にはどうする事もできなかった」
「だとしても、何かしてあげられる事があったのではないかと考えてしまうのです。日本に送られる事は避けられなかったとしても、彼らに何か言葉を掛けてあげるくらいの事は……」
「二人の日本行きは父上がお決めになった事だ。あの場で二人に言葉を掛ければ父上の不興を買ってしまう可能性があった。君の判断は正しいよ。クロヴィス」
「正しい……ですか」
シュナイゼルの慰めにクロヴィスは天井を仰ぎながら自嘲するように笑った。
「私の行いが正しかったなら、彼らはどうあっても死ななければならない運命だったと、そういう事なのでしょうか?」
「……」
「ダメですね。最近はどうにも後ろ向きな事ばかり考えてしまう」
首を振り、クロヴィスは視線を自らの兄へと戻す。
「兄上。一つ、お頼みしたい事があるのですが聞いてはいただけないでしょうか」
「なんだい? 血を分けた弟の頼みだ。できる限り応えよう」
突然の頼み事に対してもシュナイゼルは驚く事もなく真摯に答える。
それに礼を述べ、クロヴィスは慮っていた部下の名前を口にした。
「ありがとうございます。ではバトレーを兄上の配下に加えてやってはいただけないでしょうか」
「バトレー……というと、確か君のところの将軍だったかな」
「ええ。研究者としても優秀な、自慢の人材です。きっと兄上の力になってくれるでしょう」
出された名前にシュナイゼルが自身の記憶から情報を引き出す。
そしてその意味に気付き目を細めた。
「彼は君の懐刀でもあるはずだ。つまり――」
「ええ。私はもう表舞台からは手を引こうと思います」
質問を先取って頷くクロヴィス。
彼は言い訳するように言葉を重ねた。
「元々柄ではありませんでしたから。自分が皇帝に相応しいと思った事もありません。私には屋敷にこもって絵でも描いているのがお似合いでしょう」
「……それでいいのかい?」
「いいも何も、エリアの一つも治める事のできない弱者など、この国には不要ではないですか?」
「クロヴィス……」
「失礼。些か自虐が過ぎたようです」
謝罪を口にし、クロヴィスは座っている椅子の背もたれに身体を預けた。
「私にはもう、何かを成そうとするだけの意志も、気力もありません。情けない話ではありますが、私はエリア総督という立場にも、皇位継承権を持つ皇子という身分にも疲れてしまった。所詮私は皇帝どころか総督の器ですらなかった、という事でしょう」
力なくそう語るクロヴィスは頻繁にメディアに出ていた時とは別人と思えるほど覇気がなくなっていた。
「私の後任には姉上がなってくれると聞きました。姉上であれば、エリア11もすぐに平定なさってくださる事でしょう」
「クロヴィス。君なりの決心があっての言葉なのだろうから、こんな事を聞くのは野暮かもしれないけれど、心残りはないのかい?」
「あったとしても、もう私には何もできません。――兄上、私は気付いてしまったのです。自分は強者などではないと」
クロヴィスは笑った。
その笑みを見てシュナイゼルはそれ以上の説得と追及を諦めた。
「分かったよ、クロヴィス。バトレー将軍の事は私が引き取ろう」
「感謝致します。兄上」
「もし君の気が変わったなら真っ先に私に言いなさい。必ず力になるから」
「重ねて、感謝申し上げます。このような情けない弟で申し訳ありません」
「情けないなんて、そんな風に自分の事を言うのは止めなさい。自分を客観的に評価し身を引く覚悟ができる君は充分に立派だよ、クロヴィス。少々自己評価が低過ぎるところはあるけどね」
からかうように付け加えられた言葉に笑みを交わし、クロヴィスもそれ以上の礼と謝罪をやめる。
話すべき事も話し終わり、シュナイゼルは立ち上がる。訪問からさして時間は経っていないが、帝国宰相という身分にあるシュナイゼルには腰を据えてじっくりと話す時間を取る事すら難しい。
「それでは私はもう行くとしよう。あまり思いつめる事のないようにね」
「ご健勝をお祈りしております、兄上。どうかお気をつけて」
「ありがとう」
屋敷から出て行く兄を見送って部屋に戻ったクロヴィスは、飲みかけの杯を持って棚の上に飾ってある写真立てを見た。
そこには遠い昔に撮った、アリエスの離宮での時間が切り取られている。
ルルーシュとナナリーを両端に、母であるマリアンヌ様が二人の手を取って微笑んでいた。
クロヴィスはグラスを傾けて飲みかけのワインを空にすると、テラスへと出た。
そこにはポツンと、小さなチェス盤がテーブルの上に置かれている。
「37戦36敗」
過去に弟と行ったチェスの戦績を思い出しながら、クロヴィスは弟がやたらと動かしていたキングを手に取る。
「結局私は、君に一度も勝つ事ができなかったね。ルルーシュ」
手に持ったキングを一マス前に進める。
これで37敗か、そう呟いた声はどこにも届かず風と共に消えていった。
幕間回。
強盗殺人者として絶賛逃亡中のスザク。学園に帰り姉弟喧嘩を決心するルルーシュ。押しかけ女房のC.C.。ニートを決意するクロヴィス。
キャラの入退場が多くなってきましたね。
次回:戦う理由
幕間はもう一話ほど続きます。