~レイジside~
白玉楼にてレイジは依姫に突然濡れ衣を着せられ、勝負を仕掛けられてしまった。レンの言った通り聞く耳を持とうとせず説得を試みようとしても
依姫「問答無用!」
の一言でバッサリだ。その上場所が階段と足場が悪く、足元をきちんと確認しなければすぐ体勢が崩れ、攻撃を受けてしまう。依姫は足元を見る様子がみられないのにも関わらず転ぶことはおろか躓きさえしない。もしかしたらレイジを倒すことで躍起になっているのかもしれないが、依姫は落ち着いた表情をしているのでそれはないだろう。とはいえ先程から依姫が攻撃、レイジが避けという状況が続き、膠着状態となっている。なんとかしなければならないが、いい方法が思いつかない。
アーティ「あいつったらもう・・・傷つけないようにとか変なとこに気ィ使うもんだから押される一方じゃない。正当防衛として反撃してもいいだろうに、ホントワケのわからないヤツよ」
レン「いえ、神機は人に対しては非常に危険なものです。レイジさんの気持ちはわかります」
フラン「うー、ワンパターンでつまんない・・・私も混ざろっと」
変わらない状況に飽きてきたフランはふわふわと依姫の背後側へと飛んでいく。レイジからは避けながらその姿が見えたが、依姫の激しい猛攻により注意を向けられない。依姫の後ろに来たフランは意外な行動に出た。
フラン「わっ!!」
依姫「あわあっ!!?」
あまりにも場違いな行動に全員びっくり。依姫の驚きっぷりにもまたびっくり。依姫は驚きで息を荒くしながら今度はフランに刀を向ける。
依姫「忘れていた・・・。あなたも彼らを倒していた一人だったわね・・・あなたは何者?」
レイジはフランを傷つけさせまいとフランの前に出て立ち塞がる。しかしフランが「私にも出番ちょうだい!前回私空気になりかけたんだから!」とレイジを押し退け前に出た。
フラン「私はフランドール!フランドール・スカーレット!レミリアお姉さまの妹で吸血鬼だよ!」
腰に手を当て、高々と声を張り上げて自己紹介する。
依姫「(レミリア・・・吸血鬼・・・まさか彼女に妹がいたとは・・・。しかも彼らを簡単に葬っているところをみると彼女よりも注意が必要ね)あなたは何故、ここにいるの?」
フラン「決まってんじゃん、幻想郷中にいるあいつらをムッコロスためだよ!」
依姫「殺す・・・ですって・・・?」
わなわなと怒りを露わにする依姫。誤解をさらにエスカレートさせてしまったようだ。
依姫「・・・やはりあなたも、神へ仇なす存在なのね」
フラン「違うよ、吸血鬼だよ」
依姫「そんな吸血鬼、修正してやる!」
また話を聞かずに斬りかかってきた。レイジが再び前に出て攻撃を止めようとすると、妖夢が突然飛び出してきて楼観剣で受け止めた。
依姫「妖夢・・・!?」
妖夢「依姫さん!いい加減にしてください!彼らの行動を見てまだ気付かないんですか!まだ一度もあなたを攻撃しようとしていないでしょ!」
依姫「演技である可能性は否めないわ。そこをどいて」
妖夢「嫌です!」
鍔迫り合いの状態から妖夢は刀に力を籠め依姫を押し退ける。
依姫「そう・・・ならば仕方ない」
そう言いながら依姫は刀を地面に突き刺した。すると妖夢の周りに何本もの刃が地面から現れて取り囲んだ。
妖夢「えっ!?これは・・・」
依姫「動かないでね。動いたら祇園様の怒りに触れるわ・・・終わったらすぐに解放してあげるから」
妖夢「くっ・・・」
アーティ「あいつ、味方を躊躇なく・・・!」
フラン「味方を動けなくするのはいけないよ」
拘束されることで感じる苦痛をフランは嫌というほど理解している。外のことをあまり知らなくても、これだけはよくわかるのだ。
依姫「まさかこんな所で急用ができるとはね・・・」
依姫は刀をもう一本抜き、また地面に突き刺した。無数の刃がレイジとフランを囲む。動いたら危険なことが起きるらしいが、大体想像はつく。刃がこちらを襲ってくるなりするのだろう。レイジは自分と刃の位置を確認する。この時点で首を動かしていたため「動く」ことになってしまっているが、刃に動きはみられない。恐らく抵抗をするといけないのだろう。とりあえずフランに下手に動かないよう伝えておく。
依姫「抵抗を止めなさい。これからあなた達を月へ連行し、然るべき罰を受けてもらいます」
フラン「ねーねー、月ってさ、空よりずーっと高いうちゅうってとこにあるってお姉さまから聞いたの。うちゅうには空気がないってことも聞いたんだけど、私達が行ったら死んじゃうんじゃない?」
依姫「月面付近には空気があるから死ぬことはないけれど、
フラン「ん~・・・しけいってヤツ?死ぬのはやだなぁ」
依姫「私もあまり誰かが死ぬのを見るのは好きじゃないけどね・・・」
妖夢「そんな・・・彼らは私達を助けてくれたのに・・・!」
アーティ「れいじィ、もういい加減ブッ飛ばしてもいいと思うんだけどぉ?とりあえずその周りに生えてるヤツぶった斬っちゃいなさいよ」
アーティは完全に呆れ果てた口調でレイジに決着を付けるよう話しかけてきた。言われなくてもやるつもりだ。横薙ぎにして一気に切り崩さないと「祇園様の怒り」とやらに触れるため、フランに伏せるよう言っておく。
フラン「うー」
返事をした後しゃがみガードをするフラン。その愛らしさに一瞬口が緩むがすぐに気を取り直し、神機に手を伸ばした後周囲を薙ぎ払うようにして一気に振り抜く。地面から生えていた刃は皆バラバラになった。
依姫「なっ・・・刃の檻を破った・・・!?」
フラン「よっし、反撃開始ー!禁忌「レーヴァテイン」!」
フランの手に長い剣が現れ、大きく振り回し始めた。剣が階段に当たると深く抉れて軽い爆発が起きる。
依姫「なかなかの威力ね・・・でも」
依姫は軽々と避け、フランの眼前に迫り剣を振り下ろす。
依姫「技は未熟!」
フラン「うッ!?」
フランはなんとか依姫の攻撃を受け止められたが、無理な体勢で受け止めてしまったため次第に押され弾き飛ばされてしまった。レイジは吹き飛ぶフランを受け止める。
フラン「あ・・・ありがと、レイジ」
レイジ「・・・」
フラン「うー、もう本気出しちゃう!禁忌「フォーオブアカインド」!」
今度は4人に分身して攻撃を始めた。しかしこれも容易にかわされている。
依姫「頭数だけ増やしても私の敵ではない!」
フラン(分身)「ふぎゃっ!(ピチューン)」
フラン(分身)「ぶっ!!(ピチューン)」
フラン(分身)「えっうs (ピチューン)」
フラン「あれ・・・」
レイジ「・・・!?」
レン「分身とはいえ、ここまであっさりとやられるなんて・・・」
アーティ「5秒も経ってないんじゃない?」
あまりの速さに呆然とするフラン。レイジ達は驚いている。依姫は依然として落ち着いた様子である。
依姫「無駄な抵抗はやめなさい」
フラン「む、無駄かどうかわかるもんかい!」
依姫「無駄じゃない抵抗もやめなさい」
フラン「う~・・・なら、とっておき見せちゃうもんね!レイジ、離れてて!」
レイジ「・・・?」
一体何をするのか気になったが、レイジはとりあえずうなずき、距離を置く。
フラン「夢幻――――幻月!!」
フランが両腕を前に突き出すと、圧倒的な量の弾が高速で発射された。あまりにも速く、まるで暴風域のただ中にいるかのように激しく乱れ飛ぶ。
依姫「なるほど、これは中々避けるのが難しそう」
依姫はそう呟きながら刀を構える。彼女の体が段々淡い光で包まれる。
依姫「天宇受売命(あめのうずめのみこと)」
スペルカード名にしては珍しい名前だ。「みこと」の時点で神か何かの名前にしか聞こえない上攻撃する気配がみられない。何をするのか全く読めない中、フランの弾幕が迫ってくる。依姫は回避行動に移るが、その避け方が非常に特異なものだった。
フラン「あれ・・・?」
レイジ「・・・!?」
妖夢「これは・・・」
レン「踊っている・・・!?」
アーティ「・・・(避け専用のスペカ・・・?でもそれだけではないはず・・・)」
避けているはずなのに、舞を踊っているようにしか見えない。刀を使った演舞を見ているかのようだ。その美しい動きに思わず魅了されそうになる。
依姫「この舞はただ避けるためのものではない」
フラン「う~、当たれ当たれ!」
フランは弾幕を当てようと必死になるが、依姫は華麗な動きで避けていく。この状況がしばし続いた後、状況は悪化する。
ドンッ!
突然依姫は刀を地面に突き立てる。すると地面から再び無数の刃が現れ、フランの体を拘束した。身動きが取れなくなり、弾幕も消えてしまう。
フラン「うっ!!」
レイジ「!」
刃を断とうと神機を振ろうとするが、今度はフランが身動きが取れないような配列になっており、断とうとすればフランをも傷つけてしまう。しかもフランがもがけばもがくほど刃がより強く縛り付けてしまうため、すぐに助けられない。素手で外そうとしてみるがやはりビクともしない。刀の峰の部分が体に当たっているため傷をつけられてはいないが・・・
依姫「フランドール・・・と言ったわね。そろそろ終わりにしましょう。大丈夫、殺しはしないから・・・「天照大神(あまてらすおおかみ)」」
依姫は刀から手を放し、目を閉じて小さな声で詠唱を始めると、段々彼女の体を包む光が強くなる。天照という言葉を聞きレンが急に走り出し、レイジに向かって声を張り上げた。アーティも遅れて走り出す。
レン「レイジさん!装甲を展開してフランさんを守ってください!早く!」
アーティ「ちょレンッ!急にどうしたの!?・・・ああそゆこと、把握」
突然のことだったのでレイジはレンの言っていることに一瞬頭が追いつかなかったが、すぐに理解した。恐らく日光を放つかもしれないから三人で日陰を作ろうということなのだろう。日光を放つとすれば吸血鬼にとって危険な技だ。レンの心中ではまず自分が神機の装甲を展開し、フランから見て前に立つ。アーティはフランの眼前で装甲を展開、レイジはレンの右隣で防御体勢に入って影を作る。この構想をレイジとアーティに伝えようと口を開いた時、
レン「えっ!?」
アーティ「レイジ!?」
フラン「う~っ動けない~!」
なんとレイジは装甲を展開しながら依姫に向かってダッシュしているのだ。
思いもよらない行動に二人は驚愕する。
依姫「~~~・・・(ドガッ!)はぐッ!!?」
なんと装甲を構えながら詠唱中の依姫に体当たり。そのまま押し倒す体勢になる。レイジは装甲をたたみ刀身を依姫の首筋に宛がう。
依姫「くっ・・・しまった・・・!」
レイジ「・・・」
アーティ「なる、あたし達が防御体勢を取ると先読みして詠唱に集中してるとこを狙ったのね」
レン「結果的に「装甲を展開してフランさんを守り」ましたね・・・」
フラン「レイジ~・・・」
妖夢「さっきから私空気すぎる・・・」
依姫は無念と思いながらに目を閉じる。抵抗しないことから死を覚悟しているのだろう。しかしレイジは殺すようなことはしない。
依姫「・・・止めを刺さないの?」
レイジ「・・・」
レイジは神機を持っていない方の腕でフランのいる方向へ指を指す。その後妖夢の方にも指を指した。
依姫「・・・?解放しろと・・・?」
レイジ「(コク)」
レイジが立ち上がった直後、遠くから誰かの声が聞こえてきた。
豊姫「あなた達!何をしているの!?」
依姫「お、お姉様・・・」
レイジ「・・・?」
レン「レイジさん、ひとまず彼女に状況を説明しておきましょう。また怪しまれるかもしれませんし」
アーティ「こいつより物分かりがいいと安心だけど」
レイジ「(コク)」
~数分前、白玉楼、居間~
豊姫「幽々子さん」
幽々子「んー?あーい?(訳:んー?なーに?)」
豊姫「先程から妙な気配がするので大食い勝負一時停止してもよろしいですか?」
すると幽々子はピタッと固まった。
豊姫「あ、すみませんそっちじゃないです。少し外の様子を見に行きたいので一時中断をs」
幽々子「よっひゃんうウェひょ?むっしゃむっしゃ(訳:よっちゃんでしょ?)」
豊姫「ええ、神霊を降ろしているかもしれないので・・・」
幽々子「よっひゃんそんあこほれきうお?すをいわえ~。ああほれはほもかく、いっへらっひゃい。もぐもぐ(訳:よっちゃんそんなこと出来るの?すごいわね~。まあそれはともかく、いってらっしゃい)」
豊姫「すぐ戻ってきますね」
~現在、白玉楼へ続く階段~
レイジは豊姫にこれまでの状況を説明した。途中で
豊姫「さっきのあの体勢を見て思ったんだけど、私の妹に何をするつもりだったのか教えてくださる?」
笑顔なのにドス黒いオーラを背後から放ちながら訊いて来たりとまたまた誤解されそうになったが、しっかりと説明したので納得してくれた。依姫も誤解していたことをようやく理解し、レイジに謝罪した。
豊姫「ごめんなさい、この子は一度こうだと決めたら中々考えを改めないところがあるの。決して悪気があったわけじゃないので、どうかお許しください」
畏まってペコリと頭を下げ謝罪する豊姫。そこまでする必要はないと頭を上げるように言う。
豊姫「ありがとう・・・。依姫、2人を」
依姫「あ、はい」
依姫が地面に突き刺してそのままだった2本の刀を抜き、フランと妖夢を解放する。
フラン「う~・・・おおっやっと抜けれた!」
妖夢「ふう、一件落着ですね」
依姫「二人とも・・・ごめんなさい」
妖夢「いえ、いいんです。自分が間違ってたことに気付けたのなら」
フラン「次は負けないんだからね!」
なんとか一件落着。しかし豊姫は依姫のやったことに憤りを隠せないでいた。先程レイジに向けた「笑顔だけど怒ってる」表情を依姫に向ける。それを見た瞬間、依姫の顔は真っ青になっていった。
豊姫「依姫。私あなたに地上で神降ろししちゃいけないって言ったでしょう?第二次月面戦争が起きる少し前、博霊の巫女さんが神降ろしの練習してたことを月の皆はあなたがやってると思い込んでたの、忘れていない?危うく反逆罪になるとこだったのよ?」
依姫「あ・・・はい」
豊姫「あの時はあの巫女さんが偶々月に来たから誤解を解くことが出来たけど、今回はそうもいかないのよ?あなた後先のこと考えてた?」
依姫「う・・・」
豊姫「・・・表、出ましょうか」
妖夢「ここ、表ですよ・・・」
豊姫「あ・・・ゲフン、じゃあ、ちょっと屋上へ行きましょ・・・久々に・・・キレちゃったわ」
妖夢「ここから白玉楼までちょっと距離あるんですけど・・・」
豊姫「・・・。じゃあ白玉楼に着いたら二人きりで「お話し」しましょうか・・・」
豊姫は満面の笑みを浮かべる。対照的に段々涙目になる依姫。
依姫「ひぃぃ・・・!」
アーティ「まあ自業自得ね・・・ってなんでこいつこんなに怖がってんの?」
レン「あまり考えるのは止めておきましょう・・・」
フラン「ねーねーよっちゃん、なんでそんなに怖がってるの?お説教くらい私は泣かないで聞けるよ?」
依姫「そのことについてはノーコメントで・・・(よっちゃんって・・・)」
豊姫「どうしたの?」
依姫「ひぎぃっ!?nnnn何でもありません!!」
~白玉楼、居間・縁側~
幽々子「おふぁえり~。あら、おひゃふはん?むぐむぐ(訳:おかえり~。あら、お客さん?)」
豊姫「ええ、依姫が盛大に持て成してくれていました」
依姫「う・・・」
妖夢「幽々子様、口に食べ物を含みながら喋っちゃいけまs・・・ってゆーかこんな数の桃がどこから!?」
幽々子「ああ、ほよてゃんわもっへきへくれはをよ、もぐもぐ(訳:ああ、豊ちゃんが持ってきてくれたのよ)」
妖夢「いったいどうやってこんな量を・・・」
アーティ「・・・あいつ何言ってるかさっぱりだわ」
レン「僕もです。それでも通じるってすごいですね・・・」
フラン「???」
幽々子「よっひほよてゃん、おおんいひょうぶおトゥドゥきやうわよ!もごもご(よっし豊ちゃん、大食い勝負の続きやるわよ!)」
豊姫「すみませんが、今からこの子に話さなくてはならないことがあるので、それが終わった後でよろしいかしら?」
幽々子「(ゴックン)む~、早くしてよね。私食欲抑えるの苦手なのよ」
豊姫「それでは失礼」
豊姫と依姫がその場を後にする。
幽々子「で、そちらは確か、レミリアの妹さんだったわね。え~っt」
フラン「フランドール!」
幽々子「そうそうそうだったわね。で、あなたは初めましてかしら」
レイジ「(コク)」
幽々子「とりあえず上がってきなさい。桃でも食べながら二人が戻ってくるのを待ちましょう」
妖夢「(さりげなく食欲抑えるの諦めた・・・)」
フラン「はーい」
レイジ「(コク)」
レン「お邪魔します」
アーティ「邪魔するなら帰r」
レン「そこでボケはいりませんよ」
アーティ「・・・い、言ってみたかっただけよ、そんなスッパリいくことないじゃない」
幽々子に誘われるがまま白玉楼でお邪魔することになったレイジ達。小腹も空いてきたところだったので、居間を埋め尽くさんばかりの桃を何個か頂くことにした。
アーティ「ん、なかなかいい」
レン「僕は桃を生で食べるのは初めてですね。今までこんなに美味しいものを食べたことはないような気がします」
フラン「んぐんぐ、おいしー☆」
幽々子「こらこら、食べ物を口に含んだまま喋らないの。お行儀が悪いわよ」
妖夢「どの口が言うんですか」
幽々子「いいこと教えたげる。桃はね、7月中旬から9月上旬くらいまでのものが美味しいらしいの」
フラン「へー」
妖夢「無視ですか・・・」
幽々子「それと、美味しい桃の選び方はね、傷がないのはもちろん、色が綺麗なもの、左右対称で形がいいもの・・・」
いつの間にか幽々子が桃講座を始め、そのまま数十分間集中して聞いていた。
幽々子「――――とまあ、こんな感じね。何か質問ある人~」
シーン
幽々子「じゃあ、これでおしまいとしましょうか。あなた達はこれからどうするの?」
レイジはポケットから結晶を取り出す。騒ぎが終わった直後だからか結晶に反応はない。特に行かなければならない場所もないので、しばらくは厄介になることを伝える。
幽々子「そう。こんな所でよければ、ゆっくりしていってね。あそうだ、丁度形のいい桃をいくつか見つけたから分けてあげる」
フラン「ありがとー♪」
レイジ「(コク)」
フラン「・・・あ、なんかトイレ行きたくなっちゃった」
幽々子「トイレならそこを右に進んで、縁側沿いに歩いて行けば着くわよ」
フラン「わかった・・・うっ、なんか暗い・・・。レイジ~ついて来て~」
アーティ「じゃあたしもついてこうかな、暇だし」
居間にある時計を見てもまだ昼近くだ。どうして依然として暗いままなのかわからないが他にやることもないのでついて行くことにした。
妖夢「今日はいつになく食べ物関連で力説してましたね」
幽々子「まあね。本当はフランちゃんのためにやったようなものよ」
妖夢「え?何故ですか?」
幽々子「あの子、何百年も地下に幽閉されて生きてきたそうじゃない。あのままで大丈夫なのかなーって思ってね」
妖夢「・・・はあ」
幽々子「ここに来ているということは、自由になれたのかもね。でもレミリアがそう簡単に解放するとは思えないから、きっと彼のおかげかもしれないわね」
妖夢「彼は・・・外来人・・・?ていう人なんでしょうか」
幽々子「でしょうね。彼はきっとお家事情を知らないまま紅魔館に迷い込んで、フランちゃんと出会い、あの子が自由になるきっかけを作った。フランちゃんも彼と出会って外に興味を持ち、レミリアをなんとか説得、外に出れるようになった・・・ってとこかしら」
妖夢「へえ・・・よくそこまで読めますね」
幽々子「確信はないんだけどね。まあどういう経緯があったにせよ、フランちゃんはようやくこの世に生まれることが出来たってことね。・・・ああ社会的な意味でよ?あの子にはいろんなことを知って、経験してほしいわ」
妖夢「あの、何故そこまで・・・?」
幽々子「ふふ、まだ小っちゃい頃のあなたを思い出してね。あの頃もああしてあなたに色々教えてたっけねぇ・・・」
妖夢「ええ、食べ物の話ばかりでしたけど」
幽々子「食べ物ナメちゃいけないわよ、料理のノウハウも私が教えたんだから(ドヤッ)」
妖夢「まあ確かに、素材の選び方とかも幽々子様の教えのおかげですし、料理が上手になった時も・・・」
幽々子「ふふふ、あの子が将来レミリアに負けないくらいに賢くなったらどうなるかしらw」
妖夢「そっちが本音ですね、わかります」
縁側を歩きながら外を見ていると、白い風船みたいなものがいくつも飛び回っているのが見えた。先程の桃講座で幽々子がさりげなくここが冥界であることを教えてくれたので、大体想像はつく。白玉楼には真珠などなく代わりに幽霊が沢山いるようだ。トイレに着き、レイジとアーティはトイレの傍で壁にもたれながら外の景色を眺める。いくつもの霊魂が踊るように空を飛び回っている。それらを見ている内に、レイジは段々切ない気分になってきた。
レイジ「・・・」
死んだ家族を思い出す。父、母、カナ、三人の魂はここにいるのだろうか。あんなにも無残な死に方をしたのだ、さぞや無念だったに違いない。レイジの目頭が少し熱くなる。
アーティ「・・・家族のことでも思い出したの?」
レイジ「・・・」
アーティ「・・・あー・・・、気にしちゃったなら、ごめん。・・・それにしても、幽霊って見えないモンだと思ってたわ。幻想郷(ここ)では違うのね」
レイジ「・・・」
アーティ「こんなにはっきり見える幽霊なんて、あたしは全然怖く思えない。見えないからどこにいるのかわからなくて、恐怖を生み出すのに」
レイジも幽霊と聞いたところで怖いとは思わない。会ってみたいと思ったことはないし霊感もないので見たこともない。アラガミの方がよっぽど恐ろしく思えてくる。しかし、今だけは・・・会ってみたい。たとえ幽霊でも、いなくなった家族とまた会いたい。
レイジ「――――――」
アーティ「ん、何か言った?」
レイジは何も言っていないと首を振る。だが彼の表情で言いたいことがわかったような気がした。
アーティ「(・・・・・・)」
しばらく二人とも黙ったまま景色を眺め続ける。まさに幻想的な風景だった。しかしそれはレイジに過去を思い出させ、憂鬱な気分にしてしまう。実はアーティはこのような辛気臭い雰囲気の中にいるのが苦手だったりする。
アーティ「・・・フラン、遅いわね」
レイジ「・・・」
アーティ「腹でも壊したかしらね」
レイジ「・・・」
アーティ「・・・」
レイジ「・・・」
アーティ「・・・・・・ああもうやだこの空気!辛気臭いったらありゃしない!何よたかが景色を見ただけでひどく感傷的になっちゃって!あんたはホントワケのわからないやつだわ!」
レイジ「・・・」
レイジは何も反応しなかったため再び沈黙が訪れる。アーティは気分が落ち着かないので適当に言葉を探し吐き出していく。
アーティ「・・・もうここに迷い込んで四日目・・・か。
確かにそうだ。今頃極東支部ではパニックになっているに違いない。極東支部の主力である第一部隊の隊長を務めるレイジがいなくなることは支部に大きな打撃を与えるだろう。それだけでなくレンやアーティ、ここ最近極東地域に強力なアラガミが増えていることを考慮しフェンリル本部がFSATの人員を割いてまで極東支部に派遣したサヤカまでもが行方不明になってしまったのだ。(実はサヤカはFSATの中でも屈指の狙撃精度を持っていたため、その才能と実績が認められて上層部は彼女を狙撃隊の隊長に昇格させようかと検討していた)
こんな突然の出来事があっては本部も動揺を隠せないはず。幻想入りしてから四日目。もしかしたら四人仲良くMIA (作戦行動中行方不明、死亡扱い)になっているかもしれない。リンドウと同じように。
そんなことを考えていると、フランがようやくトイレから出てきた。腹の調子でも悪かったのだろうか。
フラン「ううん、トイレから出ようとしたらレイジがなんか落ち込んでる顔してたのが見えたから気になって様子見てただけ。何かあったの?」
レイジ「・・・」
フラン「・・・何もないならいいけど。じゃあもどろっか」
レイジ「(コク)」
居間に戻ろうと来た道を戻るレイジ達。途中にある襖の前を通り過ぎようとした時、襖の向こうから聞き覚えのある声が。
依姫「ああッ・・・ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴペンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイ(ry」
レイジ・アーティ「・・・!?」
フラン「レイジ、早く行こ。もうすぐ1万字越しちゃうから」
アーティ「メメタァ・・・」
居間の襖が見え始める。すると縁側でレンが桃を手に一人佇んでいるのが見えた。フランは暗い所が怖いのか、さっさと中に入っていった。
アーティ「レン、一人でどうしたの?あんたも昔のことを思い出してる感じ?」
レン「よくわかりましたね。その通りなんです。実は、リンドウさんのことで・・・ちょっと」
アーティ「ふーん。さっきこいつも同じような感じで泣きそうなツラしてやがったのよ。ここの景色、そんなにすごいの?」
レン「ええ、とても。話が変わりますけど・・・あ、ちょっと愚痴入るかもしれません。・・・実は僕、リンドウさんと一緒に戦ってたことがあるんですよ」
アーティ「・・・へぇ」
レン「彼は僕にとって最高のパートナーでした・・・。はぁ・・・リンドウさん、ひどいですよね・・・。皆置いてけぼりにして、一人でどっか行っちゃうなんて」
レイジ「・・・」
レン「そんな今でも、リンドウさんは本当に皆に慕われているんですよね」
懐かしむ表情でレンは空を見上げながら話し続ける。
レン「数も数えられないような、
アーティ「さりげなくひどいこと言うわね」
レン「あ、そういえばレイジさんの初陣の時、オウガテイルと戦っていた時でもやってましたね」
レイジ「・・・?」
レン「うーん、リンドウさんにしては上出来の緊張のほぐし方なのかなぁ・・・」
なぜそんなことを知っているのか?レイジは不思議に思った。
レン「そんなあなたももう・・・立派なリーダーなんですよね・・・。神機使い達を導き、皆に慕われてる・・・」
レイジ「・・・」
レンはレイジに顔を向ける。その表情は真剣そのものだ。
レン「だからこそ、あなたに伝えるべきことがあります。「アラガミ化した神機使いの処理方法」です。ここで言うのもなんですが」
アーティ「おいちょと待て。なんで今その話をするワケ?これからの行動を考えるのが先じゃないの?」
レン「確かにそうですが、レイジさんはこのことを知らないかもしれませんし、僕はリンドウさんが死んだなんて信じたくないんです。彼をまた捜索する機会があった時のことを考えれば、知っておいて損はないでしょう?」
アーティ「・・・」
レイジはアラガミ化という言葉自体は何回か聞いたことがある。ほぼ言葉通り、人間がアラガミになってしまうということだろう。処理方法についてまではまだ知らない。
レン「アラガミ化は、偏食因子の定期的な供給が無くなった結果、オラクル細胞が暴走することによって起きる急速な変異現象です」
レイジ「・・・」
レン「アラガミ化が進行した結果、二度と人間には戻れません」
アーティ「だろうね」
レン「また、人間によって培養されたオラクル細胞は極めて多彩な変異を遂げる傾向にあり、一般的な神機が通用しない事態が極めて多い・・・」
アーティ「・・・あれ、そうだっけ?」
レン「ええ」
レイジ「・・・」
レン「・・・そんな、アラガミ化した神機使いの処理方法として、最も効果が高いのは・・・」
アーティ「・・・(wktk)」
レン「適合した者にしか扱えないという矛盾が孕むため、決定的な対策とは言えませんが・・・」
レイジは段々レンの話を聞くのが嫌になっていた。というより寧ろもう先を聞きたくない。無意識のうちに彼は首を横に振っていた。
レン「アラガミ化した本人の神機を用いて――――」
レン「――――殺すことでs」
ドンッッ!!!
アーティ「!?」
レイジはこれ以上喋るのを止めろと言わんばかりにレンの両肩を掴み思い切り壁に押しつけた。レンが手にしていた桃が叩きつけられた拍子に手から落とし、縁側をコロコロと転がっていく。レイジは怒りが籠った目でレンを睨みつける。彼の瞳の色はスカイブルー。しかし心なしか瞳の色が赤みがかっており、怒りの感情が表れているのがわかる。それを見てレンは彼の言いたいことをすぐに理解した。
レン「・・・あなたの言いたいこともわかります。でも今は研究が滞ってて、こうするしかないのが現状なんです」
レイジ「・・・!!!」
アーティ「・・・レイジ・・・」
レンの淡々とした口調にさらに怒りを募らせるレイジ。
レン「・・・リンドウさんを探して、運よく彼に出会えたとしましょう」
レイジ「・・・」
レン「・・・もし・・・その時、彼がアラガミになっていたらどうしますか?」
アーティ「え・・・?」
レン「あなたは、その「アラガミ」を殺せますか?」
そう言いながら、レンはレイジの腕を掴む。するとレイジの視界が歪んだ。なんと感応現象が起きたのだ。咄嗟のことに思わず目を瞑る。
レイジ「ッ・・・」
ゆっくりと目を開けると、リンドウを置いて逃げる少し前の場面が見えてきた。サクヤが瓦礫越しに必死にリンドウに声を掛けているのがわかる。コウタの説得でやむを得ず撤退する第一部隊。リンドウはサクヤ達が撤退していく足音を聞きながら呟く。
「・・・行ったか」
リンドウはぐったりとした様子で瓦礫にもたれかかっている。口には煙草が。煙草を吸い、フーッと一息吐く。その直後、アラガミが教会のステンドグラスが割れてできた隙間から入って来た。ディアウス・ピターだ。
「はあ・・・ちょっとぐらい休憩させてくれよ・・・体が持たないぜ・・・」
リンドウはまた煙草を吸い、大きく煙を吐く。煙草を投げ捨ててゆっくり立ち上がり、アラガミのいる方へ歩き出した。
その後は激しい戦闘が繰り広げられる。体が持たないと言っておきながら、中々善戦しているリンドウ。そんな中、リンドウとピターの攻撃が同時に出た。その時、
ガキンッ!
お互いの攻撃が弾かれたと思うと、リンドウは突然右手首を押さえ苦しみだした。ピターの攻撃が腕輪に当たったらしい。
「シクッたな・・・・・・やるな」
痛みでふらつきながらも、彼の表情から絶望はみられない。ピターは捕喰しようと頭を前に突き出してきた。リンドウはカウンターを狙おうと突きを繰り出す。
ズシュッ
口の中にまでリンドウの腕が入り、一瞬喰われたのかと思われた。しかし喰われたのは神機と腕輪。腕輪は腕と融合しているのでよっぽどのことがなければ外れない。ピターを怯ませたものの、無理に外れたからか彼は激痛で屈み悲鳴を上げる。
「ぐっ・・・うおぁおおおぉぉぉ!!」
神機も、腕輪も喰われた。まさに絶体絶命の状況。すると高台から人影が見えた。よく見ると、なんとシオがそこにいた。
シオは無言のまま高台から飛び降り、リンドウをチラと見てからピターの方へと歩いて行く。ピターは雄叫びを上げて威嚇する。しかしシオが目の前に立ってじっと見つめると、ピターは急に大人しくなり教会から去っていった。リンドウはそれを見て安心したのか倒れ込み、意識を失う。シオがリンドウへ近づき、様子を見ているところで視界がブラックアウトした。
・・・この記憶は一体何なのだろうか。何故レンではなくリンドウが出てくるのか?レイジに考える時間を与えず、視界がまた明るくなる。
今度は鎮魂の廃寺。夕方のとある小屋の中に彼らはいた。リンドウの腕が異形のものに変貌している。恐らく腕輪を失くしたことによりアラガミ化してしまったのだろう。シオは彼の腕の様子を見ているようだ。
「くっ・・・」
「!」
リンドウが右腕を押さえ呻き声を上げる。シオはそれにびっくりしたのか、ガラクタが山積みになっている場所の裏へ隠れてこっそり顔を覗かせる。
「ん・・・?」
リンドウはシオへ目を動かそうとすると、右腕に違和感がした。
「腕・・か?これは・・・俺の腕・・・か?」
急に瞼が重たくなり、また意識を失うリンドウ。シオは動かなくなったのを確認すると再び彼の腕を見つめるのだった。
夜。再びリンドウは目を覚ました。しかし体が思うように動かせないようだ。
「腹・・・減ったな・・・」
「ハラ・・・ヘッタ・・・ナ?」
「んー?お腹空いた・・・だ」
「オナカ・・・スイ・・・タ・・・ダ?」
「お腹空いた・・・」
「オナカ・・・スイタ・・・」
空腹で頭が正常に働かない。殆ど意味のない会話が続いた後、空気は一変する。
「ぐっ・・・ぐあああ・・・がぁああああああああああ!!!」
リンドウの右腕からもやのようなものが溢れ出し、途端に激痛が走り悲鳴を上げる。シオはそれを見るとすぐにリンドウの右腕に手を添えた。するともやが出なくなり、右手の甲に青い光が灯りだした。リンドウの表情が穏やかになっていくのを見る限り、痛みを押さえているようだ。
「お前・・・ありがと、な・・・」
「・・・(ニコ)」
レイジ「・・・ッ」
視界がまたブラックアウトしたかと思うと、目の前にレンの顔が見えた。記憶の再生が終わったらしい。驚きの事実にレイジは唖然とし、レンの肩を掴む腕から力が抜けていく。レンは静かに腕をどけ、落ちた桃を拾って彼に背を向けながら口を開く。
レン「・・・この世界はいつだってわがままで、理不尽な選択を迫り・・・それが、歴史として連綿と続いて行く」
レイジ「・・・」
レン「あの時のリンドウさんの選択は・・・皆を幸せな現実に導いたのでしょうか・・・?彼なら逃げようと思えば、逃げられたはずなのに」
レンは頭をレイジの方へ向け、さらに意味深な言葉を投げかける。レイジは壁の方を向いたまま俯いている。
レン「そしてあなたは、どんな選択をするんですか?」
レイジ「・・・」
レン「・・・・・・僕にしては変な話をし過ぎましたね。ちょっとトイレへ行ってきます」
レンは桃をかじりながらトイレの方へ歩き出した。レンは普段の口調に戻していたが、彼の言葉がレイジの心の中で、体の中で反響しているような感覚がしてしまっていた。何故か体が動かない。
アーティ「一体何なのよあいつ・・・。それに
レイジ「・・・・・・」
幽々子「あ」
妖夢「?」
幽々子「彼と自己紹介するの忘れてたわ。どおりで名前が浮かばないワケね」
妖夢「あ・・・」
作「なんかさ、意味もないのに後書き書くのダルくなってきた」
弟「てかこんなとこ読むヤツなんていんの?こんなgdgd感maxな後書きなんか」
作「報告することがあったら書くこと出来んだけどな」
弟「・・・」
作「・・・」