「・・・」を「…」にすれば文字数節約できるって今さら知ったよ!俺の
それではどうぞ。
感応現象の直後、レイジの意識はふっと消え、視界が真っ暗になった。まるで意識だけ持って行かれたように。そして目が覚めるとそこは見慣れた風景。彼はアナグラにいた。
レイジ「…」
周囲を見渡すが1人を除いて誰もいない。レンだけが傍にいて他に誰もいないのだ。異様なほどの静けさ。ここは自分の知るアナグラではない。そう悟った時、レイジは口元だけで笑みを浮かべた。
レン「…まさかリンドウではなくアラガミの方を、しかも原始的な攻撃をするとは…まさかこうなることを予想していたんですか?」
レイジ「(コク)」
レン「…となると先程の攻撃は何の根拠も確証もなしの賭け…てことですか」
驚きを通り越して呆れているのか、軽く溜息をつくレン。一方レイジは出発の準備をしている。リンドウがここアナグラにいるとは思えない。
レン「ならばもうここがどこかお気付きですか」
レイジ「(コク)」
予想が正しければここはリンドウの深層意識、精神世界であるだろう。リンドウが近くにいないのは想定の範囲内。これから向かう場所もレイジの中ではもう決まっている。
レン「なるほど…ならば早速彼の元へ向かうとしましょう。彼の意識は長くは持ちません」
2人は出撃ゲートへ向かい、リンドウを探すべく出発した。
~煉獄の地下街~
アナグラの外へ出た途端、いきなり煉獄の地下街が目の前に広がっていた。現実ならありえないが、ここはリンドウの精神世界。何が起こってもおかしくはない。とはいえ景色がそっくりそのまま、何も違和感がない。アラガミの数を除けば。
レン「わかっているとは思いますが、ここから抜け出すためにはリンドウの足跡を辿り、彼を見つけなければなりません。始めはここ、煉獄の地下街…彼はそこでスサノオを倒しました。特務…とかいう任務で」
そう言いつつレンはスサノオというアラガミのいる場所と思われる方向へ指を指した。かなり遠くに、マグマと道路の境界付近で佇むアラガミが見える。体の構造はボルグ・カムラン種のようだ。
レン「行きましょう。僕らもヤツを倒し、道を開かなければなりません」
いつまでもここで止まっているワケにはいかない。リンドウを一刻も救出するため、先制攻撃で大ダメージを与えようと考えた。スサノオの居場所へ走る2人。とはいえ、ここはリンドウの精神世界。幻想郷で発現した能力がここでも使えるかどうか―――
ガシャッガシンッ
…最近心配性になってきているらしい。刀身の仕込み刀が展開する音が聞こえたため無用な心配となった。スサノオは背を向けて佇んでいる。この機を逃す手はないと神機を振り下ろそうとした時―――
グルン!
突然振り返りながらの攻撃。スサノオの腕がレイジに迫る。彼は神機を降り始めているところだったため咄嗟に横に逸れるなどの行動は取れない。ならばこのまま振りぬいて腕を両断しようと、振り下ろしながら前に倒れこむ。倒れこんだレイジの頭上をスサノオの腕が通り過ぎ、刀身の刃にめり込んだ。
「ガアァッ!」
思ったよりも怯んでいる。刀身は「神斬りクレイモア 真」、もしかしたら神属性による攻撃が効いたのかもしれない。
レン「上手いですね。あの腕、神機の捕喰形態に似ているんです。下手をしたらいきなりやられるところでしたよ」
すぐに立ち上がってスサノオの腕をもう1度よく見てみる。確かに神機の捕喰形態時のそれと酷似している。レイジの攻撃を当てた左腕の方は神機の下顎部分が切断されていた。
レン「この調子で仕留めてしまいましょう」
すかさずレンがスサノオの口部へ銃撃。スサノオは残った腕で防御を試みたが間に合わず、直撃。かなり効いている。スサノオはボルグ・カムラン種であるとみて間違いないだろう。ならば次に狙うところは―――
「ガアアアッ!」
怒りで活性化。アラガミはこんなにも早く活性化するものだっただろうか。このアラガミは尾が剣の形になっており他のボルグ・カムラン種の持つ強力な刺突力に加え斬撃も出来るようになっているだろう。早めになんとかするべきだ。
レン「まずは尻尾の剣の破壊に集中しましょう!あれを破壊できれば脅威となる攻撃がかなり減るはずです!」
レンも剣を先になんとかするべきと考えていたようだ。尾を狙う際は足を攻撃して態勢を崩させてから、というのがセオリーだ。既にレンは足を狙って銃撃を始めている。レイジはスサノオの背後に回って後ろ足を攻め始めた。レンの銃撃の邪魔になるといけないので刀身は畳んで元の長さに戻しておく。
「ガァッ!」
ババババシュン!
この間にスサノオは何もしていないはずはなく、壊されていない腕と尻尾の剣先からエネルギー弾を薙ぎ払うように発射した。着弾すると同時に光柱が立つ。こういった攻撃は近距離で戦う者に被害が及びやすい。レイジはスサノオの真下に潜って攻撃をかわす。攻撃が至近距離にあると衝撃が直に来る上、何より眩しい。このアラガミも神属性を使うのだろうか。神属性の攻撃が通じる敵は神属性を扱うものが多い。この法則を頭の片隅に浮かべながら外へ脱出し、足を斬りつける。
グラッ…ドスン!
集中して攻撃したおかげか、予想より早く態勢を崩すことが出来た。尻尾が
無造作に垂れ下がる。すかさずレイジはチャージクラッシュの姿勢に入り、狙いを澄ませる。
「グァッ!」
ブンッ
レイジ「!」
ガキンッ!
レン「大丈夫ですか?」
体勢が崩れたとて、大技を狙って不用心に隙を晒せばこんな風に反撃を許してしまう。レンのサポート前提の上でのチャージクラッシュ。打ち合わせはしていないのでレンにとっては多少無茶振りだったかもしれない。そして溜めが完了し、敵の攻撃を防ぐレンに合図する。
レン「一撃で仕留めてください!」
あえて隙丸出しでチャージクラッシュをしようとしたのは、簡単に言えばさっさと倒して次へ進んでしまいたいからだ。ここはリンドウの精神世界。下手に長居すると自分たちもアラガミに意識を取り込まれてしまう恐れがある。何が起こるかわからない以上、迅速に行動すべきである。
叩き斬るのが剣だけでは致命傷になるとは考えにくい。いっそ最後まで振り抜いて胴体にもダメージを与えようと考えた。レイジの、敵を切り裂かんと紫のオーラを纏う大剣が振り下ろされる。空を切り、剣を叩き折り、胴体を切り裂く。胴を真っ二つにされたスサノオは少しの間痙攣した後、事切れた。そして跡形もなく消滅する。
レン「…やりましたね。お疲れ様でした。今更ですが、実はスサノオは第一種接触禁忌種なんです。ここまで完全に圧倒できたのは歴史上初めてなんじゃないでしょうか?」
微笑を浮かべるレン。歴史上初めてというのは大袈裟すぎではないだろうか。
レン「あ、そういえばこの間の人里での戦闘、あれもあんな少人数で凌げたのも歴史上初なんじゃないでしょうか?元の世界での常識なら無謀としか思えない戦いでしたよね。僕らも段々常識に囚われなくなってしまっているかもしれませんね(^ ^;)」
そうかもしれないとうなずきたいところだが、今は呑気に話している場合ではない。先を急ごうとレンを急かし、煉獄の地下街を抜けるべく走り出した。
~サヤカside~
レイジがハンニバルの口を引き裂き、何かを殴ったような動きを見せた後、彼はふっと力が抜けるように地面へ落下した。ハンニバルも同様にその場に崩れ落ちる。フランとサヤカが慌てて飛び出しレイジを受け止めた。
フラン「おっとっと…レイジ?」
レイジ「――――」
フラン「…ねぇ、レイジ…?」
レイジ「――――」
フラン「ねぇ起きてよ…ねぇ!」
サヤカ「何がどうなって…」
レミリア「どちらも気を失ったようだけど…状況がさっぱりわからない」
フラン「レイジ、死んでないよね…?」
レミリア「ちょっと見せて…うーん、意識だけ抜けちゃってる感じね。サヤカ、何か心当たりはない?」
サヤカ「あるにはあるんですけど、今回のような例は初めてなのでどう説明したらいいのか…」
~嘆きの平原~
スサノオを倒し煉獄の地下街の道を進んでいく。溶岩が溜まる場所はもちろん避けつつ。そうしている内にまた景色が一瞬でガラリと変わり、広い平原、平原の中央で竜巻が視界に入ってくる。どうやら今度は嘆きの平原に辿り着いたようだ。ここでリンドウに関する何かがあるのだろうか。
レン「…リンドウは1人で接触禁忌種のアラガミを倒していました。皆さんには「デート」って言ってましたね、覚えてますか?ここで彼が討伐したのは、ウロヴォロス。人数が少ないとより一層苦戦しやすい相手です。…え、人里で似たような敵を1人で倒したからなんとかなる?…とにかく油断せず、慎重に」
現在レイジ達は原作でいうスタート地点に立っている。遮蔽物が少ないため見晴らしがよく、目標となるウロヴォロスが巨大であるおかげで遠くからでも容易に視認できる。ただ、見晴らしがいいということは逆も然りで…
「ウオオオォン…!」
スサノオの時とは違い敵がこちら側を向いていたために容易に捕捉された。雄叫びが遠くにいるレイジ達にビリビリと響く。その後ウロヴォロスの複眼が光り出す。ビーム発射の予兆であることをすぐに察知し、レイジが左に、レンが右に分かれて射線を避けつつ接近する。ウロヴォロスの恐ろしさはやはり遠近問わず強烈な破壊力を持つことだろう。
レン「レイジさん、ここの広さなら刀身の延長をしても大丈夫だと思いますよ。少なくともリーチの広さが仇となることはないと思います」
レンに断ろうとする前に許可が出た。それなら遠慮なくと仕込み刀を展開、発射されるビームや地面から襲い掛かる触手攻撃を避けつつ懐に潜り込んだところで縦に振り下ろす。この一撃で少しでも多くのダメージを与えておき、有利な状況を作っておきたい。
ッドオン!
「オオオオオオオアアアアァァァァ……!」
レン「…え?」
たった一撃。たった一撃当てただけなのに、ウロヴォロスのその巨体は跡形もなく吹き飛ばされてしまった。レイジの神機の刀身はスサノオの時と変わらず神斬りクレイモア。その長大な刀身を深々とめり込ませるだけでは飽き足らず、人里で試し斬りした時のあの衝撃波で粉微塵に消し飛ばしたのだ。強力であることは理解していたつもりだったが、まさか一撃でウロヴォロスを倒してしまったことに驚愕する2人。虚無感を引き立たせる風の音が嫌なほど耳に残る感じがした。
レン「…ドン引きです」
レイジ「…」
レン「…まぁ、思った以上に早く終わりましたし、よしとしましょう。リンドウの居場所はもうすぐです」
気持ちを入れ替え、移動を始めるレンに追従する。リンドウが行方不明になった場所は贖罪の街。彼の意識が彷徨っていると思われる場所は恐らくそこか、鎮魂の廃寺。彼に関連する場所といえば、その辺りだろう。具体的な根拠はないが直感がそこだと言っているのだ。そして気になる点も1つ。今まで1つのエリアに1体ずつのアラガミと戦ってきたが、次に辿り着いた場所でもまたそのパターンなのだろうか。そこでもリンドウがかつて戦ったアラガミと戦うことになるのだろうか。思慮に耽りながらレンに次はどこに着くのか訊くと、贖罪の街と答えられた。思ったよりも早くリンドウの居場所に近づけそうだということに意外だと思ったその直後、進行方向から突然眩い光が溢れ出した。レイジは腕で目を庇い、光が収まった後に何事かと目を少しだけ開いて前を見る。すると辺り一面の景色が真っ白に変わっていた。何もない真っ白な空間。ここはどこなのか。周囲を見渡している時に、レンがぽつりと呟く。
レン「やっと…ここまで来られた…」
その直後、再び景色が変わる。教会のような建物の屋内、出入り口を塞ぐ瓦礫。ここは、あの時リンドウを置いていった時の―――
レン「リンドウはここでずっと…自分の中のアラガミと戦い続けてきたんですね…」
レンは瓦礫の方へ歩いていく。何かあるのか気になってレイジも顔を向けると、瓦礫にもたれてぐったりと座り込んでいるリンドウの姿が目に映った。ようやく見つけることが出来た。安堵の溜息を吐こうとすると、
レン「でも、もう限界です…彼の意識は消えかかっています…」
リンドウの頬に手を添えて容体を診るレン。意識が消えかかっているならば早めにここから脱出しなければならない。
リンドウ「ぅ…お前、誰だ…?ぐぅっ…!」
こちらの存在に気付き顔を動かすリンドウ。しかしレンの方に向き切っておらず、相手の顔が見えているのか微妙な位置で声を捻り出した。レンは彼の反応に心外そうな表情をしながら立ち上がる。
レン「つれないね、リンドウ…。せっかくの再開なのに台無しじゃないか…」
その後若干の間が空く。リンドウの反応を待っていたのだろうが、彼は片腕を抑えて返事をするふりを見せない。するとレンはこちらの方へ向いて歩み寄り、どこか憂えるような表情で口を開いた。
レン「これが多分、最後のお願いです。もう一度、リンドウに戦う力を与えてやって下さい…」
わかった、とうなずこうとした時、レンは不意に目を閉じて下を向く。すると彼の体が金色に光り出した。そして気が付けば左手にリンドウの神機が―――
レイジ「…!」
この時初めてレイジは気が付く。リンドウの神機を見て過去の記憶が次々に脳裏に浮かんでくる。思えば、レンの正体を仄めかすような場面はいくつかあった。
「リッカさん、いい人ですよね…あの人は神機のことを、ほんとによく理解してくれている…」
「…実は僕、リンドウさんと一緒に戦ってたことがあるんですよ」
「あ、そういえばレイジさんの初陣の時、オウガテイルと戦っていた時でも、やってましたね」
「うーん、リンドウさんにしては上出来の緊張のほぐし方なのかなぁ…」
リンドウ「なんだ…今…のは…」
過去を振り返っている内に、リンドウが立ち上がろうと動き出していた。消えかかっていた意識が戻ったのだろうか。
リンドウ「おう…お前か…。まったく、呆れたヤツだ、こんなところまで来やがって」
いつもの調子で話すリンドウに笑顔が零れる。こちらも釣られて笑みを浮かべる。
リンドウ「お前のでかい声、ちゃんと聞こえてたぞ…新入rおっと、もう新入りじゃないな、悪い悪い」
レイジ「…(スッ)」
リンドウ「「生きることから逃げるな」か…覚悟が出来てないのは俺の方だったな」
リンドウに左手に持つ神機を渡す。彼はまじまじと神機を見つめ、相棒の感触を懐かしんでいるように見えた。
リンドウ「…さーてと、さっそく生き抜くために、カッコ悪くあがいてみるかぁ」
その表情には一点の曇りもない。今のリンドウの意識は完全に生きる気力を取り戻したと言ってもいいだろう。
リンドウ「よう、リーダー…背中は預けたぞ?」
リンドウは神機を肩に担ぎ、歩き出す。レイジも並んで歩き出す。向かう先には、リンドウの意識を喰らおうとどこからともなく教会の高台に上ってきたアラガミ。リンドウの体を蝕んでいた、黒いハンニバル。このアラガミを倒さなければここから出られない。何となくだがそう感じる。
リンドウ「それにしても、こいつは新種か?特務でも見たことがない」
「グアアアアアアアア!」
リンドウ「そう熱くなんなって。言われなくても相手してやるからよ!」
いい加減とどめを刺そうとやってきたに違いない。だが負けるワケにはいかない。生きるために、2人は走り出した。
「グルォオアア!」
リンドウ「うおおおおおおお!」
敵は待ち構えたりはしなかった。向こうもこちらに向かって走ってきている。まさにかち合いが起ころうとしている。リンドウの神機が、ハンニバルの爪が、同時に衝突する。
ガッ!
リンドウ「チッ…!リーダー!」
攻撃が弾かれ、後ろに仰け反ってしまうリンドウ。そこですかさずサポートするようレイジの役職名を叫ぶ。現在のレイジの位置はリンドウのすぐ左後ろ。ハンニバルは右腕の籠手で裏拳をかまそうとしている。この位置からでは斬撃は届かない。仕込み刀を使えば届くだろうが展開する間に攻撃を許してしまう。ならば―――
ブゥンッ! ズドォ!
「ゴアァッ…!」
―――投げればいい。
リンドウ「おー、やるゥ」
レイジの神機はハンニバルの右腕を籠手ごと貫いた。もちろんこの後回収する手間は当然発生する。だが取りに行く間はリンドウより前に出ることになり注意を引き付ける陽動になる。
リンドウ「いいぞ、流石だな!」
レイジが右腕に組み付いて陽動を続ける傍らで、リンドウは神機を捕喰形態にし左腕を喰らおうとする。だが敵はさせまいと紫の炎を薙ぎ払うように吐いて接近を妨害した。慌ててリンドウは後ろへ飛び退いて回避する。
リンドウ「っと危ない…。くそ、こんなに火ィ吹いて暴れられちゃ近づけないな…!リーダー!お前の周辺が火の海になって少し近づけそうにない!しばらく持ち堪えてくれ!」
レイジ「…!」
暴れるハンニバルの右腕に組み付いているレイジに向かって叫ぶ。その声を聞くとレイジはアイコンタクトで「了解」と伝える。レイジとハンニバルの周囲は紫炎で囲まれ火の海と化している。リンドウの神機は旧型近接式のため銃撃が出来ない。今この時は、レイジに任せるしかなかった。
「グルァアアアアア!」
ブウンッブウンッブウンッ
レイジ「…ッ…!」
レイジは依然としてハンニバルの右腕にしがみ付き、そして突き刺さったままの自らの神機に片手をようやくかけたところである。レイジが神機を投げ、おもむろに取りに行こうとして陽動する、この行動にはまだ続きがあった。
刺さっている神機を半分抜き、そこから捕喰攻撃を行い無理矢理攻撃手段を減らすかなり大胆な策。リンドウは今でこそ生きる気力を取り戻しているが、いつもの調子で戦闘出来るかどうかが少し心配である。本人は何ともなさそうなので考えすぎかもしれないが、一応念のため、無理をさせるワケにはいかない。なるべく自分が前に出て多くのダメージを与えておきたい、そう考えたのだ。
まずは今神機にかけた片手に力を入れ半ばまで抜く。そこから神機を捕喰形態に変え、喰らおうとする。
「ガアッ!」
身の危険に気が付いたのか、腕を振り回してレイジを振り落とそうとするのをやめ、噛み砕こうとハンニバルの牙が襲い掛かる。不意に腕の動きが止まったのでレイジはバランスを崩し神機にぶら下がる体勢になった。しかしバランスを崩したのがケガの功名となったのか、ギリギリ攻撃を受けずに済む。だが安心は出来ない。レイジの周囲および下は紫炎で覆われている。このまま下りることは出来ない。今の体勢のまま捕喰攻撃をしてハンニバルの右腕を喰い千切れば、自然落下で紫炎に体を焼かれてしまう。そして今はゼロ距離での噛みつき攻撃や火炎放射のラッシュをなんとかかわしている一切気の抜けない状況だ。そんな中、状況は突然一転する。
リンドウ「うおおらあああああああッ!」
レイジ「!」
紫炎に阻まれて攻撃が出来ないはずのリンドウがハンニバルに向かって大ジャンプしているのが見えた。埒が明かないと思ったのだろうか。勢いをつけていたのか、人1人分の高さで燃え盛る炎の海をを軽々飛び越えている。そして彼は落下の勢いを利用して左腕に神機を突き刺した。リンドウもレイジと同様腕に組み付いた姿勢になる。
「ウガアッ!!」
リンドウ「ボーっとすんなリーダー!同時に両腕を喰い千切るぞ!」
レイジ「…!(コク)」
まさかリンドウもまた大胆な行動に出るとは思わなかったため、一瞬緊張が緩んでしまった。すぐに気を取り直し、捕喰形態にさせたままお預け状態にしてしまった自らの神機に喰らわせる。レイジの動きに合わせてリンドウも捕喰攻撃で喰い千切った。
「グギアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
腕を喰い千切り、自然落下を始める2人の体。その直後に2人はハンニバルの胴体を蹴って炎のない場所へなんとか飛び退いた。ハンニバルはバランスが取れず仰向けに倒れる。緊迫した状況から抜け出したからか、いつの間にか自分が方で息をしているのに気づく。
リンドウ「へッ片輪にしちまやこっちのもんだ…ん」
炎が収まり倒れたハンニバルの姿がはっきりと見えるようになる。その足元に気になるものが目に入った。黒い血溜まり。ハンニバルの腕の切れ目からも黒い血が。アラガミの血は人間と同じく赤いはずだが…
リンドウ「…なんかまだ臭ぇな」
まだ倒したという感覚がはっきりとしていない。アラガミは両腕を破壊すれば死ぬというほど柔ではない。人間なら出血多量で死ぬ可能性はあるが、これは少し面妖である。ハンニバルが黒い血溜まりに沈み、血溜まりだけが残る。
ゴボゴポッボコッ
黒い液体が突如泡を立て始め、そこを中心として床の上を黒い液体で覆われていく。次第にレイジ達のいる場所に向かって浸食し始める。
リンドウ「まったく…俺も厄介なヤツに好かれたもんだなぁ…」
ゴボゴボッボコボコッゴポッ
リンドウ「あくまでも俺を逃がさないってつもりのようだな。…よう、お前が出した命令だ、とことん付き合ってもらうぞ?」
レイジ「(コク)」
始めからリンドウを絶対に助けるつもりでここに来ている。躊躇いなど微塵もない。
ゴゴゴゴゴ…!
リンドウ「…来るぞっ!」
地の底から湧き出てきそうな、地面の下の何かが揺れているような音。それが段々地面に近づいていき、やがて轟音と共に飛び出した。
「ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
表れたのは、普通より数倍巨大な黒いハンニバル。体は元通りになり、下半身は沸騰したように泡を立てる黒い液体に沈んでいるが、その巨大さは見る者を圧倒する。予想外の展開に気圧されそうになるが、2人の生きる意志はこの程度で折れはしない。
とはいえ、この大きさだと生半可な攻撃では反撃は必至。どう攻めるか。先に動いたのは、ハンニバルの方だった。両腕を大きく後ろへ振りかぶり、2人を手で押し潰そうと襲い掛かった。リンドウは左腕を、レイジは右腕を装甲で受け止める。
リンドウ「ぐっ、おおおおおおおおおおおおお!」
レイジ「…!」
重い。とにかく重たい。一瞬でも力を抜けばすぐ潰されそうだ。その上長時間は持たない。早めに攻めに回りたいところだ。
「グルッ」
リンドウ「っ!?」
バシュッ
ハンニバルが息を吸い込むと口から紫色の光が漏れ、そして小さな光の矢を飛ばしてきた。その先にはリンドウ。彼がハンニバルの左腕を必死に食い止めているところにこの攻撃だ、庇えないし避けられない。しかしだからといって諦めはしない。
リンドウ「俺は…絶対に…!」
リンドウ「生きて帰る!!」
―――そうだ、それでいいんだ…リンドウ
リンドウ「!」
どこからともなく聞き覚えのある声が響く。それと同時にリンドウの神機が金色に光り勝手に動き出す。そして装甲が2つに分かれて分離しハンニバルの両腕を抑え、本体はなんとそのままリンドウを庇う形で、空中で光の矢に刺されることで攻撃から守った。まるで意志を持ったように動く自らの神機に驚きを隠せないリンドウ。さらにはいつの間にか人の姿になっているのだから尚更である。
リンドウ「お前は…俺の…!」
レン「リンドウ…やっとまともに話せたね…。今まで伝えられなかったけど、これだけはしっかり伝えたかったんだ…」
その身に光の矢が刺さっているのを気にもせずやっと果たせた再会を喜ぶレン。金色に淡く光っている姿は神々しさを感じさせる。
レン「僕は、全部覚えてる…。君の初陣の時の緊張も、救えなかった人への後悔も、戦い続ける日々の苦悩も…そして、愛する人たちを救うために…別れる覚悟を決めたことも」
リンドウ「…」
レン「リンドウと一緒に戦った日々は、僕の誇りだよ…ありがとう」
リンドウ「…ああ、俺もだ」
リンドウも笑みを浮かべて言葉を返す。相棒と共に戦った日々を思い返し、返したその言葉は短いが深みを感じさせた。
リンドウ「神機使いになって、ずっと…ずっと俺を救ってくれたんだな…感謝する」
レン「十分だよ…僕は…十分、報われた…」
レンが空中に浮かんだまま身を屈める。すると眩い光が溢れだし、辺りを包む。光りが収まるとレンの背後にいた巨大なハンニバルは跡形もなく消えてしまっていた。レンは地面に降り立ち、レイジの方へ向く。
レン「本当にありがとう、あなたのおかげでここまで来られました…」
レイジ「…」
レン「一緒に過ごした時間、楽しかったな…。リンドウのことで僕に掴みかかった時、「ああ…あなたの神機として生きていくのも悪くないな」と思ったくらいに…。あ、あと、白玉楼で食べたあの桃…。とても美味しかったよ。アラガミなんかよりもずっと、ずっと美味しかった…ありがとう…」
桃についての礼は幽々子に言うべきでは?と思ったが、今それを言うのは野暮というものだ。今思えば、神機であるレンにとってあの桃は確かに美味しかったものだっただろう。そもそもアラガミがどんな味であるかなど知ったことではないが。
レン「あなた…いや、「君」に出会えて、本当に嬉しかった…!」
真に幸せな顔とはこれを指すのだろう。本当に幸せそうだ。しかし幸せというものは儚く脆いもの。レンの体から光の粒子のようなものが出始める。
レン「あーあ…もっと君達と、色々話したかったなあ…」
レイジ「…」
レン「話す、ってもどかしくて、暖かくて、すごく好きだったよ…」
リンドウ「…」
レン「そろそろお別れみたいだ…」
そう言うと、リンドウの元へ歩き、片手を差し出す。リンドウはしっかりとレンの手を握りしめる。いわゆる握手だ。
レン「バイバイ…またね…」
リンドウ「ありがとう…俺の相棒。またな…近い内に、また会おう」
~迷いの竹林~
リンドウ「……ん…」
現実でリンドウは目を覚ます。だがまだ意識がはっきりするにはもう少し時間が掛かりそうだ。何やら騒がしい音がする。知らない声が度々聞こえ、ぼやける視界の中で何かが忙しなく動いている。体は起こさないまま目を擦って周囲を見る。
リンドウ「(何だ…こりゃ)」
彼の体は元の人間の姿に戻っている。右腕はアラガミ化したままだが、思い通りに動かせるようなので問題はない。傍にはレイジ。彼はまだ目を覚ましていないが、じきにに目覚めるだろう。それよりもリンドウが気になって仕方がないのはこの状況。自分は何故竹が生い茂る場所にいるのか。しかも自身の周囲でアラガミとの戦闘が起こっている。背中に羽のある10歳にも満たないであろう少女が2人、見知らぬ神機使いの少女が1人。その周囲にはアラガミの屍の山が築かれている。彼女達はまるで自分達を守るように戦っており、いや、守っているのだ。ゆっくりと体を起こして立ち上がり、聴覚もはっきりしてきた頃にそれがわかった。
「グガッ!」
「グギァッ!」
レミリア「もうそろそろ終わりそうね」
サヤカ「やんなっちゃいますよ、毎回出て欲しくない時に出てくるんですから…!…ふぅ、これで最後ですね。殲滅完了、周囲に更なる伏兵の気配なし。お疲れ様でした」
レミリア「まさかここで戦うことになるとはね…サヤカ、後始末をお願い…ん」
リンドウとレミリアの視線が合う。少しの間の後、レミリアの表情は驚愕にへ染まった。
レミリア「2人とも!ちょっと!」
フラン「?」
サヤカ「?…リンドウさん!?」
何か珍しいものでも見るような表情でこちらに駆け寄ってくる少女達。神機使いの方は涙が目に溜まっている。リンドウには何が何だかさっぱり。
サヤカ「よかった…レイジさん、うまくやってくれたんですね・・・!」
リンドウ「お前ら…誰だ?」
サヤカ「あ、忘れていましたね、私は5日前にフェンリル本部所属の特殊強襲部隊、FSATから極東支部へ配属されました行方サヤカと申します。以後お見知りおきを」
リンドウ「FSAT?…最近極東支部のメンツがすごいことになってるな…とそれより、そこのお嬢ちゃん達は?」
レミリア「自己紹介の時は、先に自分から名乗るものよ?」
リンドウ「おっと悪い、俺は雨宮リンドウ。サヤカってのと同じく神機使いってのをやってる。よろしくな、お嬢ちゃん」
レミリア「お嬢ちゃんじゃない、レミリア・スカーレットという歴とした名がある。で、こっちは私の妹の…」
フラン「フランドール・スカーレット!フランって呼んでいいよ!」
リンドウ「へぇ、なんかお嬢様っぽい名前だな」
サヤカ「実際そうなんですよ。レミリアさんは紅魔館というお屋敷の主なんです」
リンドウ「そうなのか。…随分とコスプレ好きなんだな、姉妹揃って羽なんかくっつけてさ」
レミリア「…これは生まれつきよ、人間」
リンドウ「そんな馬鹿なw、こんなのは伝説に出てくるような生き物でもなけれb……ん?」
サヤカ「信じ難いでしょうが本物なんです、それ。ここは私たちの世界の常識が通じない場所なんですよ…」
レミリア「…あまりベタベタと触らないでよ」
リンドウ「な、なんかワケわからなくなってきたぞ、どういうことなんだ・・・?そうだ、ここがどこなのかまだ聞いていなかったな、まずはそこから教えてくれ」
サヤカ「えっとですね…(神機使い説明中…)」
リンドウ「ふうん…アラガミ化で意識が朦朧としてた時に見慣れない景色が見えてたような気がしたが、そんなとこに迷い込んでしまったのか。…自然豊かでいい場所だな、空気が美味い」
フラン「…ねぇ、レイジがまだ起きないよ…?」
レミリア「え…!?」
そういえば、と全員がレイジの方へ向く。彼は仰向けになって眠るように横たわっている。
アーティ「…」
レイジ「―――」
レイジの傍らにはいつの間にかやってきたアーティが佇んでおり、レイジとは対照的に立った状態で彼を見下ろしている。
アーティ「…いつまで寝てんのよ」
レイジ「―――」
アーティ「(スッ)…ほら、こっちよ」
レイジの腕輪に手を添え、まるで小さな子供に話すような、アーティらしくない優しい口調で彼に話しかける。
アーティ「そう、こっち…皆待ってるから…早く目ェ覚ましなさいよ」
レイジ「…?」
暗闇の中で誰かの声が聞こえた気がした。何故だか懐かしさを感じる。
「おーいレイジー!今日はフェンリル支部で手続きする日なんでしょ!起きろよこの夜型ねぼすけナマケモノ野郎!」
相変わらずやかましい姉だ。稽古で男子を軽々のしているところは見てて「生まれる性別を間違えたんじゃないのか」と何度思ったことか。まさしく男勝りといえる。
「……~~~…皆待ってるから…早く目ェ覚ましなさいよ」
急に猫撫で声になった。どうせこれで起きなかったら再び怒声が飛んでくるのは目に見えている。叩き起こされる前にさっさと起きてしまおう―――
フラン「…あっ!レイジ……レイジいいいぃぃ!わーーんよかったああぁ~~~~!」
目を覚ませば、超スピードで飛び込んでかなりの力で抱きしめてくるフラン、そして自分を見下ろしながら一斉に安堵の表情を浮かべるサヤカ、レミリア。リンドウもその中に入っている。
リンドウ「ようリーダー、お前意外とねぼすけなんだな」
サヤカ「ホントにもう…すごいですよあなたは」
レミリア「…あなたが本当に人間なのか常々疑ってしまうわ」
視界の右端に人影が写る。顔を向けると、アーティが彼を囲む輪から少し外れた位置に立っていた。腕を組み、横目と共に微笑みを浮かべている。
アーティ「…やっと起きたか、夜型ねぼすけナマケモノ野郎」
スサノオ「解せぬ」
ウロヴォロス「訴訟も辞さない」
ハンニバル侵喰種「レン出てきてる間は空気読めって台本にあった。リアルだったらバックスタブ余裕ッスよ?」