さとり、燐、空は、レイジを討つ準備を済ませ、レイジがいる四階へ足早に向かっていた。だが燐、空はレイジの行動を思い返し、侵入者にしては妙な戦い方をしていたなと疑問に思い始めていた。
さとり「(そういえば、こいしがいない…早く探さないと…。まったく、人間が…今更私達に何の用なのよ…!)」
燐「あの…さとり様…実はその…あいつのことなんですが」
さとり「何?」
さとりは「今私に話しかけるな」というような鋭い視線を燐に向ける。
燐「あ…いえ、何も…」
空「あの…さっき、あいつと戦ってて、少し思ったんでs」
さとり「大丈夫よ、あなた達は私が守るわ」
空の発言を妨げるように、さとりは言葉を重ねた。
燐「(うわぁ…完全にこいし様のことで頭が一杯になってるよ…)」
空「(こうなるとさとり様、心を読むことすら忘れちゃう時があるもんなぁ…)」
さとり「(この子達にも、こいしにも、もうあんな悲しい目には合わせたくない…絶対に守ってみせる…!)」
一方、レイジ達は―――――――
こいし「ぐすん…やっぱり、人間は悪い人だけじゃないんだね」
レイジ「…」
こいし「わかってたつもりだったんだけど、人間を見る度に、昔のことを思い出しちゃってね…でも、これで人間嫌いが少しは治るかも。あなたのような優しい人間に出会えたから…」
こいしは徐々に泣き止んでいるが、まだレイジの胸にしがみついている。
こいし「そういえば、まだ誤解して攻撃したことを謝ってないね。…ごめんね」
レイジは気にすることはないと微笑みかける。こいしも、彼の微笑みを見て安心したのか自然と笑顔になっていた。
暖かい雰囲気が彼らの周辺を包み込む。しかしそれは長くは続かず、一人の少女によって一瞬で打ち破られる。
さとり「こいし!」
こいし「お姉ちゃん!お燐、お空も無事でよかった!」
部屋の奥から現れたさとりは声を張り上げてこいしを呼ぶ。しかし後ろにいる燐、空の様子がおかしい。どこか不安そうな顔をしている。こいしは一瞬嫌な予感がしたが、深く考えず素直に家族の無事を喜んだ。しかし…
こいし「大丈夫!?ケガはない!?」
こいし「うん、大丈夫だよ。お姉ちゃんも大j」
さとり「人間め!私の妹に触るなあ!!」
こいしの予感は的中、今のさとりは今回の事件を人間の仕業と思い込み、家族を守ることに躍起になっていた。さとりはレイジに突進、彼の首を掴み、そのまま壁に叩きつける。レイジは振りほどこうとさとりの腕を掴むが、思っていたよりも力が強く、振りほどけない。妖怪故の力だろうか。
こいし「お、おおお姉ちゃん!?」
さとり「今の私達があの頃のひ弱な少女のままだと思いましたか…?もしそう考えていたのならば、それは大きな間違いですよ…人間…!!」
こいし「お姉ちゃん!やめてよ!お姉ちゃんなら心を読んでこの人の本心がわかるでしょ!?」
さとり「人間如きにこの能力を使うまでもないわ!人間は「悪」!人間はいつだって自分勝手で、自らの利益のために私達妖怪は住処を追われ、虐殺され続けてきた!」
空「さ、さとり様、別にそうと決まったわけじゃ」
さとり「そうに決まってるわ!これは事実なのよ!…ねぇ、人間。あなたにこの気持ちがわかりますか?妖怪退治と称して罪のない妖怪までもが虐殺され、毎日彼らに怯えながら過ごしていた私達の気持ちが…!」
レイジにとっては何が何だかさっぱり、さとりは滅茶苦茶なことを口走ってゆく。さらに首を掴む手をさらに強く締め付ける。
レイジ「…ッ!」
燐「さとり様!お止め下さい!」
さとり「あなたには、私達の苦しみの片鱗を味わわせてあげましょう…。妖怪の恐ろしさを、思い知らせてあげます」
レイジ「……!」
さとり「…何か言いたそうな顔ですね」
レイジ「…ふざ、けるな…!」
さとり「…は?」
レイジ「さっきから聞いてれば…言いたい放題言って…俺は…
レイジ「簡単な存在じゃない!!!!!」
レイジは思い切りさとりの腹を蹴り、首から手を離させる。レイジは強く首を絞められていたため、咳込む。
さとり「ぐッ…!そんなに死にたいのですか?いいでしょう、では眠りを覚ます
こいし「お姉ちゃん!!やめてえええ!」
さとり「想起「テリブルスーブニール」!!」
さとりはスペルカード名を叫びながら、レイジの目を覆うように顔面を掴む。するとレイジの視界には、あの忌まわしい事件の光景が…
一方、地霊殿周辺では―――――
レン「ふう、ようやく終わりましたね」
アーティ「そうね。…はッ!レイジが危ない!!」
突然アーティは地霊殿の入り口に走り出す。そして閉じられた扉を蹴破り、中に入っていった。
レン「アーティさん!?あっ待って下さいよー!」
レイジがまだゴッドイーターになる2年前――――――
夜、戌亥道場にて
レイジ父「よし、今日の稽古はここまで!!」
弟子「ありがとうございましたー!」
レイジ母「お疲れ様、あなた、カナ」
カナ「ねえ母さん、レイジは?なんか昼から見かけないんだけど」
母「ああ、あの子ならフェンリル支部からの呼び出しで出かけてるわ。あの子、神機使いになって人々を守るのが夢だって言ってたから、きっと張り切ってるでしょうね」
父「ははは、違いない」
戌亥一家は父、母、レイジの姉にあたるカナ、レイジの四人家族だ。戌亥家はみな武術に長けており父は柔道、母は剣道、カナは空手を得意分野としている。レイジはどれにおいても突出した才能を持ち、どれも得意だ。この日、レイジは神機の適合候補者に選ばれたということで極東支部で手続きをしに出かけていた。父、カナは稽古で掻いた汗を拭き、母は二人にスポーツ飲料を持ってくる。弟子達は雑談しながら帰宅の準備をしており、まるで絵に描いたように幸せな生活を送っていた。
しかし…
ズドーーーーーン!!
全員「!?」
?「お邪魔しまーすww」
なんと突然、アラガミ達が道場の壁を突き破って内部に侵入してきたのだ。幸せな日常は一瞬で地獄と化した。ふざけた口調で道場に侵入してきたアラガミは、上半身には妖艶な女性、下半身には禍々しい巨大な四肢。対照的な容姿を持つ、「ヴィーナス」だ。
ヴィーナス「さあお前達、こいつらが今日の夕飯だ、残さず食べるんだよ」
すると壁に開けられた穴からたくさんのアラガミが侵入し、弟子たちを喰らっていく。喰われた者達の肉片が飛び散り見るも無残なことになっていた。
父「お、お前ら…!!貴様ぁああよくも!」
カナ「あ、あれ…アラガミ!?」
母「逃げるわよ!あなた!早く!」
父「俺がこいつらを食い止める!その隙にお前らは逃げろ!」
母、カナは無茶だと父に逃げるよう急かすが、父は全く逃げる素振りを見せないため断腸の思いで二人だけで逃げ出すことにした。
ヴィーナス「おや、あたしらから逃げられると思ってるのかい?…お前達」
彼女が指示すると、そばにいたオウガテイル二匹が二人を追い始める。
父「くッ!させるか!」
ヴィーナス「おっと、あんたはあたしと遊ぶんだよ」
父「何が遊ぶだ!俺の可愛い弟子たちを殺しやがって!許さんぞおおお!」
ヴィーナス「おお、こわいこわい(笑)でも、あんたのような威勢のいいヤツは嫌いじゃないねぇ!」
そのころレイジは、念願の神機使いになれると意気揚々と帰宅の道を歩いていた。この知らせを聞いて家族はどんな反応をするか楽しみだ。想像を膨らませながら家に続く曲がり角を曲がると、
なんと上半身だけで倒れているカナの姿が。あまりに無残な状態なのでレイジはひどく驚愕した。
レイジ「…!?」
カナ「レイジ…なの…?」
レイジはカナの背中に手を回して抱きかかえ、顔をこちらに向けさせる。
カナ「かあ、さん……父さ…んが…」
そう言うと、カナは静かに目を閉じた。
レイジ「…!!」
ふとレイジはカナから続く血の跡を見つけ、目で辿る。現在の場所からそこまで離れていない場所に、誰かの左腕が無造作に転がっているのを発見した。
薬指に指輪をはめている。あれは恐らく、母の…
レイジはわけがわからなくなり、呆然と、ふらふらと家に向かう。その家もかなりの部分が破壊され、中に入っても、無残な死体、死体…
すると、父がいないことに気付く。辺りを見渡して探していると、
ヴィーナス「探しているのはこいつかなぁ?」
レイジ「!」
レイジの背後から声が聞こえる。振り向くと、レイジの父親―――――――
――――――の生首を持っているヴィーナスの姿が。
ヴィーナス「首から下はこのヴィーナスがおいしくいただきましたwwやっぱ引き締まった肉はうまいね~」
レイジは絶望し、その場にへたり込む。すると突然、レイジの目の前で爆発が起きる。運の悪いことに、爆発で飛び散った破片がレイジの両目を切り、彼は両目を押さえもがき苦しんでいた。
ヴィーナス「わっバカ!クアドリガ何やってんの!?勝手に邪魔すんじゃないよ!」
クアドリガ「ガウ…」
ヴィーナス「喰わないのかだって?もうお前腹一杯なんだろ!?ちょっとは腹八分を覚えたらどうだい!?まったく、あたし達が生きていくためにも、人間どもを余計にけしかけさせないためにも、無闇な手出しはすんな、いいね?」
クアドリガ「(´・ω・`)」
ヴィーナス「…本当はあたしだって自由に暮らしたいのさ…でもどこに移り住んでも、いつも行った先の住人に邪魔されちまう…もうこの世界が、あたし達の住める最後の場所なんだよ。あんたは長いこと一緒にいたからわかるだろ?」
ヴィーナスはレイジを片手で拾い上げる。レイジは目を押さえ、じたばたともがいている。
ヴィーナス「坊や、今日のとこは見逃してやるよ。ウチの連れが悪いことしたね。お詫びといってはアレだが、受け取りな」
すると、ヴィーナスは突然自らの両目を取り出し、レイジの目玉も取り出そうと指を動かす。
レイジ「…!!」
ヴィーナス「暴れるんじゃない…もう少しで終わるから我慢しな、男だろ?…よっ、こうして…ほい、交換終わった。…ちょっとものが見えにくいねぇ坊やの目は。まあさっきの爆発で切れちまったから仕方ないか」
ズバンッ!!
クアドリガ「グガァ!?」
ヴィーナス「!?」
突然、クアドリガが血を吹き出し倒れる。どうやら神機使い達がやってきたようだ。メンバーの中にはリンドウの姿もあった。
ヴィーナス「ちッ…ここに来たとなると、もう表のヤツらはやられちまったか…」
リンドウ「おい!お前、その子に何してやがる!!」
ヴィーナス「え?ケガの治療」
リンドウ「お前達アラガミに、そんな情があるとは思えないがな!…ん?お前、喋れるのか?」
ヴィーナス「そうだよ。それが何か?」
リンドウ「へ~…ってあぁったく、お喋りしてる場合じゃないだろ俺…。そいつを放せ!」
リンドウはヴィーナスに飛びかかり、一太刀浴びせようとする。ヴィーナスはそれを避け、
ヴィーナス「そのつもりだよ、こいつにはもう用はないし。じゃあね~」
ヴィーナスはポイとレイジを投げ捨て、道場を後にする。
リンドウ「あっこんの待ちやがれ!…くそッ、あの速さじゃ追いつけないな」
神機使い「さ、もう大丈夫だよ。立てるかい?」
レイジ「ッ…」
レイジは未だ目を押さえて苦しんでいる。
レイジの目の辺りを中心に、何かに蝕まれるような、痛みなのかよくわからない感覚に襲われる。とにかく苦しい。すると目を押さえていた手の内側から、目から流れ出たのだろうか、血が滲み、滴り出す。
レイジ「ううううあああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁあああぁあああぁああああああぁ!!!!!!!!!!!」
こいし「!?目から血が…!?」
レイジは蘇る感覚にたまらず絶叫し、目を覆うように顔を掴むさとりの手の内側から、血が滴るのが見え、それに一瞬怯むこいし。
さとり「痛いですか!苦しいですか!私達はそれを長い間経験してきたのです!」
さとりは握りつぶさんとするばかりに手に力を籠める。こいし、燐、空は見るに耐えられなくなり、三人がかりでさとりを羽交い絞めにし、レイジから距離を置かせる。
燐「さとり様…いくらなんでもやり過ぎです!」
空「私達は人間を憎んでなんていませんよ!」
さとり「放して!放しなさい…ッ!人間なんて…人間なんて!」
さとりは腰にしがみついて制止させようとしたこいしを振り払い、こいしはしりもちをつく。いつまでも暴走を止めないさとりに、こいしはとうとう堪忍袋の緒が切れた。
こいし「突撃「無視すんなゴルァアアアアアアアアアアアアア!!!」」
さとり「がはぁッ!?」
燐・空「!?」
まるでラグビー選手の如き低めの姿勢からのタックルでさとりに突撃。さとりは大きく体を反らしながら吹き飛んだ後倒れこみ、大きく咳込む。
こいし「お姉ちゃん!いい加減にしてよ!確かにこの人は人間だけど、私達を苛めたあいつらとは違う!ここを襲った怪物だって、ほとんどこの人がやっつけてくれたんだよ!!それに今の人間はお姉ちゃんが思ってるほど意地悪な存在じゃないの!実際、地底に引っ越してからは何事もなく楽しく暮らせたし、たまに地上に出かけても問題なかったでしょ!?ならもういいじゃない!」
燐「(やっぱり…おかしいと思ってたんだ。だからあたい達に極力攻撃してこなかったんだね)」
さとりはようやく我に返り、勢いだけによる行動を恥じる。こいしはその様子を見ると、普段の口調に戻し、
こいし「ここは全てを受け入れる幻想郷なんだよ?なら、人間も妖怪も、仲良く暮らしたっておかしくないんじゃない…?」
さとり「…」
燐「さとり様、今回はあなたが悪いです。今あなたがしたことは、罪のない者を苛めているも同然ですよ…。どうか冷静になって下さい」
空「うにゅ!外にいた怪物が皆倒されてる!」
燐「いい知らせだけど、肝心な時によそ見しないでくれるかなぁ…」
さとり「…ええ、確かに短絡的過ぎたわ。あのことが絡むと、どうもいても立ってもいられなくなってしまう…そこのあなた、…先程はごめんなさい。あの…少しよろしいですか…?」
さとりはレイジに語りかける。しかしレイジはぐったりとした様子で、目は虚ろになり、目からの出血も止まってきてはいるがまだ余韻がある。さとりは自身の能力で心を読もうとするが彼は完全に放心状態となっていたため、何も読み取れなかった。
さとり「あ…」
レイジ「―――」
燐「さとり様、今は彼の前にいない方が良いかと。精神に大きく傷を負っているようですから」
さとり「…お燐。私はここに残るわ」
燐「さとり様!」
こいし「いいんじゃない?多分、その方がいいよ」
燐「ですが…!」
こいし「私、この人のおかげで少しだけど人間嫌い、治ったんだ!お姉ちゃんもこの人とお話してごらんよ!きっと私みたいに人間嫌いが治るかもね!」
燐「ですが彼のあの状態を考えr」
こいし「いいのいいの!二人きりにしてあげよ!さ、邪魔者はとっとと退散しよっか!」
燐「わわわ…」
空「あ、こいし様ぁ、どこ行くんですか~?あ、お燐、その体勢のままHA☆NA☆SEって言ってみてw」
燐「誰が言うか!」
こいしは燐を引っ張って下の階へ行く。窓の外を見ていた空はそれを見て無意識につられてついていった。
さとりとレイジだけが部屋に取り残され、しばらくの静寂が場の空気を支配する。しかしいつまでも黙っているわけにはいかないと思い、さとりは口を開く。
さとり「先程は本当に申し訳ありませんでした。私は古明地さとり。覚の妖怪で、この地霊殿の主です。私をお姉ちゃんと呼んでいた子は妹のこいし。猫の風貌をしていた子はお燐、翼がある子はお空。あの二人は私のペットです。あなたのお名前は…?あ、無理に言わなくてもいいですよ。頭に思い浮かべてくれればそれを読みとりますので…(少女読心中…)戌亥レイジさん…ですね。まずは私の部屋に移りましょう。そこで少し横になって下さい」
レイジは大きな精神的負荷を与えられてしまったため、動くのもままならない。ゆっくりと立ち上がるレイジをさとりは補佐し、彼の歩くペースに合わせ、少しずつ彼女の部屋に向かった。
弟「ちょさとりん暴走させすぎだろ」
作「気が付いたらこうなってた。後悔はしていない」
弟「「無意識なら仕方ない」ってか?前書きであんなに未練たらしくしてたくせによ…」
作「レイジが初めて喋ったよ!トラウマも見せたよ!」
弟「でも喋らせた結果がこれだよ!カ〇ーユみたいになっちまってんじゃねぇかよ…」
小説を書くのは難しいですね・・・