「るりー、破れた服持ってきたよー」
「急に部屋に押しかけてくるのやめてもらえます?」
「無理」
「なんで」
「私とお前の仲じゃーん」
「こき使ってるだけですよね」
「バレたか」
それでも最近は戦うこともなくなったから服がダメになることも大分減ったんだけどなぁ。あの頃は本当に酷かった、全身まる焦げにされたり下半身なくなったりね?
「一応感謝はしてるからね?うちにあるのほとんどるりが作ってくれたやつだし」
「あの時は住まわしてもらうお礼に……まあ毛糸さんの家の中身が酷かったってのもありますけど」
「そりゃお前ら河童と比べられたら大体酷いわ」
「とりあえずそこに置いといてください、時間がある時に直しておきます」
「お、ありがとねー」
るりの座っている椅子の隣あたりに服を置いておく。
「ん?なにやってんのそれ」
「これ?仕事ですけど。あたし人が多いの苦手だから工場とかに行けないじゃないですか。それでにとりさんにこういう、誰かが直接やらなきゃいけない仕事を任されてるんです」
「いつになったら人見知り治るのお前」
「死んでも治りません」
まあ人それぞれだとは思うけど、ここまで極端なのは今まで生きてきたけどこいつくらいだ。
「で、その紙何」
「設計図です、構造的に問題のあるところとか、おかしいところがないかとか見てるんですよ」
「はえー、何書いてるかぜんっぜんわかんない。それなんの設計図?」
「これは……きゅうりの匂い拡散爆弾って書いてますね」
「は?え?なに?」
「きゅうりの匂い拡散爆弾」
「しょうもな……」
「まあそれだけ平和ってことですよ、くだらないこと考えられてるうちが一番です」
しょうもないのベクトルが凄いんだよな……くだらないんだよな……
「てかお前らいつもくだらないこと考えてるだろ」
「それは……否定はしませんけどね?」
まあ兵器ポンポン作られるよかマシだけど……
「でもここもあんまり代わり映えしなくなったねぇ……前は来るたびに新しい建物増えたりしてたのに」
「その前ってのがいつかは知りませんけど、無理に研究進める必要なかったらそんなものですよ。昔はそれこそ武器とか作ったりしなきゃいけなかったですし……」
「今でもきゅうりの匂い拡散爆弾とかいう兵器作ろうとしてるだろ」
「これでどうやって戦うんですか」
「知らんわ」
本当に河童はきゅうりきゅうりって……尻子玉はどこやった。
「毛糸さんは昔から何も変わりませんよね」
「はん?」
「性格とか、見た目とか、服の好みとか……昔からずっと変わらない」
「お前だって昔から引きこもりで人見知りなの変わらんだろ」
「そ、それはしょうがないじゃないですか、駄目なものは駄目なんですよ」
そもそも妖怪自体歳をとりにくいんだから変化なんて少なくて当然だと思うんだけど……
「それにあたしたちはそれこそ戦いとかしてた頃は落ち着きがなかったですけど、今と比べたら結構変わってると思いますよ」
「私は戦ってた頃とあんまり変わってないと?あとそれ平和ボケって言うんじゃね」
「戦いに対して恐怖とか、緊張感とかが足りないんじゃないですか?」
「そうかぁ?」
「どうせ、腕取れてもすぐに生えるからどうでもいいや、とか思ってるんでしょ」
「実際すぐ生えるし」
「ほらそういうのですよ、中途半端に力を持ってるからですかね、戦ってても死があんまり身近に感じてないんじゃないですか」
うーむ……確かに普通命の取り合いしてたら緊張状態に入るだろうけど、私はそんな感じなかったかな……いやだって怪我しても治るし……
「あいにく、普通の妖怪なら腕取れてもそんな簡単には治らないんですよ。種族にもよるけど、天狗なら切断された腕を引っ付けてしばらく安静にしておかないと治りませんからね」
「治るは治るんだね?やっぱ妖怪だわ」
「ちなみに河童は最悪義手にします」
「やっぱ河童だわ」
時々サイボーグみたいなやつ見かけると思ったらそれか………やべえちょっとだけ興味あるな……
もし私の腕が治らなくなったら義手でも作ってもらおうか……いやせっかくだからアームキャノンみたいなのがいいな。多分作れるだろ、うんうん。
…そういや昔作ってたな、醤油出るやつを。
「まあ言うてね、私も性格変わったと思うよ?」
「そうですか?」
「うん、昔に比べて暴れなくなった!」
「いや今も暴れてますよ」
「あれ、おかしいな、昔に比べたらマシになったはず……」
まあ毛玉になってから色々あったから、そういう経験に置いての変化はあるんじゃないかな……あると思うんだけどなぁ。
「まあ確かに昔の毛糸さんは人の部屋に扉を蹴破って入り込んでくるような人でしたけど」
「でしょー?………そんなことしたっけ」
「してましたよ、忘れたんですか、全く」
いやぁ、昔のこと覚えてなくて……
「…あ、にとりさんにはもう会いましたか?」
「ん?さっき見たたけど忙しそうだったからこっちに来た」
「呼んだかい?」
「うん正直近くに来てるのは気づいてた」
「あたしも気づいてました」
「え」
気づかないふりしてたけど結構ガサガサしてたからね、音立ててたからね。
「なに、仕事かなんかしてたでしょ、あれどしたの」
「ふっ、どうせくだらないものを作るだけの作業だからやってもやらなくても同じ同じ」
自覚あるんだね、一応。
「というか何も言わずに部屋に入ってくるのやめてくれません?」
「やだ」
「やだ」
「なんで!?」
「なんとなく」
「なんとなく」
「………」
あ、拗ねた。
「ん、そういやにとりん何しに来たの」
「暇だったから来た」
「仕事は?」
「知らん!」
「あたしちゃんとやってるんですけど!?」
「知らん!」
「えぇ………」
まあもし私も働いてたらめっちゃサボってると思うけどね?真面目にこなしてるるりは偉いと思うよ?うん。
「あそうだ、これ作ったから見ておくれよ」
「いいよどうせ醤油だろ」
「お酢だけど」
「え?あ、うん。……え?あ、うん?うん」
「なんでそんなに反応に困ってるんだよ」
「じゃあどう反応するのが正解なんだよ」
醤油の代わりにお酢出されましても……というか何出されても困惑するわ、てかなんでお酢やねん。
「あのさぁ……なんで醤油やらお酢やら、やたらと調味料でくだらないことするわけ?」
「やることないからに決まってるだろ察しろ」
「あ……そう」
「あの、あたし仕事してるんですけど。くだらない話するなら他の場所でやってくれます?」
「オラお前もくだらない話に加わるんだよオラ!」
「ちょ、なんなんですか離してください!」
「今日は仕事休んでいい、私が許可する!」
「えぇ……」
「せっかく毛糸が来てくれてるんだから、仕事なんてしてないで他のことしようよ」
「いつもは仕事しろって口うるさく言ってくるくせに……」
「どうせくだらない設計図を見つめるだけのくだらない作業だろう?そんなの休んだって変わらないさ」
「いや、あなたがそれ言ったら終わりでは」
まあ天狗と比べたら大分河童は自由にしてるように見えるけどな。……私河童と天狗以外のこの山に住んでる妖怪あんま知らない。名前は知ってるけど……会ったこともほとんどないな。
「まあたまにはサボったっていいんじゃね、年中働いてない私が言うのもなんだけど」
「ほんとですよ!なんでいつも好きあらば暇暇ぼやいてるくせに働いてないんですか!羨ましい!」
「そういうならお前もこの山から抜け出して一人暮らしすればいーじゃん」
「安全に!引きこもりが!できないじゃないですか!」
「はいはいわかったわかった」
言うて今時みんな平和ボケしてるから適当なとこに住んでも安全に過ごせそうだけどなぁ。
「まあ確かに仕事するだけで衣食住が確保されるのはいいよなぁ……私も食料確保とかしてたら結構時間過ぎるもん」
「この点は集団の利点だよねぇ、実際河童って一人だと非力だからなあ」
いや火器大量に所有してる奴らが非力って……いやまあ、うん、非力なんだろうけどね?
「まあその集団の利点ってのは全員が真面目にそれぞれの役割こなしてる前提なんだけどね」
「そらそうよなぁ〜」
「………なんですか、何こっち見てるんですか」
「いや別に」
「特に何も」
まあ私の知り合いでそういうやつがるりだけってだけで、探せばそれなりにいると思うけどね。
「んー、で、るりは最近どうなのさ。しんどくなったりしない?」
「あ、はい最近は大丈夫ですね、何故か知らないけど」
「ふぅん………じゃ私は一旦帰るわ、服取りくるの明日くらいでいい?」
「えぇ………明後日で」
「おっけ明日な〜、ほらにとりんも出るぞ、私の服のために」
「はいはいわかったよ、邪魔したねー」
「そんで、るりとは最近どう?」
「まあ、普段通りかな」
「そっか……でもちょっと気は使ってるでしょ」
「そりゃまあ……うん」
るりが私の家に逃げ込んできた時に、にとりんは結構気にしていた。多分るりがストレスがあまり溜まっていないのは、にとりんがそういう風にしてるんだろうとは思う。
「本人気にしてないんだし、考えすぎだと思うよ?」
「向こうが気にしてなくてもこっちが気にするんだよ。……自分のせいで友達傷つけたら落ち込むじゃないか」
「そりゃそうだろうけどさ〜」
まあ二人の関係にあまり詳しくない私がそこまで言うもんじゃないんだろうけど。
「ん、まあ仲良くやってるならそれでいいよ。………そういやにとりん、最近私のこと盟友とか言ってないけど、そもそもなんで盟友って呼んでたの?」
「気分」
「あっふーん………」
「真面目に言うと、河童以外で私たちの作ってるものを理解してくれてるのが毛糸くらいだったからね。仲良くなりたいなって意味でそう呼んでたよ」
「盟友って言葉の意味理解してる?」
「してるけど気分で呼んでたね」
「あっふーん………」
……まあ昔っから一貫してにとりんって呼んでる私も私だな!
「しっかし長らく平和だねぇ、お陰で変な研究が捗るよ」
「変な研究って自分で言ってるし」
「迷走ってやつさ」
「へー」
……まあ科学的な研究突き詰められて妖怪とかの存在が危うくなったりすることに比べたら変な研究してる方がいいのか。そう考えたら意外とグレーゾーンでは?
あ、でも妖力動力にしたりしてるやつもあるからその点は……どうなんだろうね。
……研究ねえ。
「ねえ」
「ん?」
「もしかしたらの話なんだけどさ」
「なんだいそんな真面目な顔して、珍しい」
「普段腑抜けた顔しかしてないみたいな言い方やめろよ」
「そう言ってるんだけど?」
「殴るぞコラ」
どいつもこいつも、私に対してなにかと酷いのなんで?なに、もっと急にわんわん泣いたりした方がいいの?やらんけど。
「ってそんなことはどうでもよくてさ……いやどうでもよくないけども」
「はいはい悪かったって。それで?」
「……適当だな、まあいいや。多分なんだけどね?私も人から聞いた話だから、本当にそうなるかわからんけどね?」
「どんだけ自信ないんだよ」
いや話が話だし……
「近いうち、そう遠くない時に、騒乱が起こるかもしれない出来事が起きるって話」
「ん……そりゃまたなんで」
「なんでってまあ……いろいろあるの、いろいろ」
「そこはぐらかすか……まいいや、それで結局何が言いたいのさ」
「最近ここって兵器とか作ってないでしょ?」
「そうだね、必要ないから」
「ぼちぼち、そういうの作るのも視野に入れた方がいいかもってこと」
これは私の予想だけど、多分紫さんは多くの妖怪に知らせる前に、外とここを遮断する結界を先に張ってしまうだろう。
幻想郷で力を持つ者にだけ話を通しておけば、張ってから暴れるのなんてそこまで力を持たない奴らだ。だったらそんな奴らを説得なんかせずにさっさと張って、後から始末した方が多分簡単だろう。
ただ、その暴れそうな奴らがどこから出るのかわからない。その辺の野良妖怪が集まるのか、この山からも出るのか……まあこの山のお偉いさんの天魔?って人には話し通してそうだけど。
「まあ……それだけ」
「ふぅん……これって言いふらさない方がいい奴だよね」
「そうだね、てか言ったら混乱を招くし」
「それ以前に信じてもらえなさそうだけど、まあ毛糸がわざわざ言うってことは起こりうることなんだろうなあ」
「なんで私がわざわざ言ったらそうなるのさ」
「自分の交友関係振り返ってみればいいんじゃないかな」
「あー……確かに……」
言うてこの話聞いたのはさとりんからだし、妄想も混じってるけど。
「まあ私たちのこと心配してくれてるってことだろ?ありがと」
「そりゃあ……危ないし、死なれたら嫌だし」
「優しいねえ」
「普通だよ、普通」
平和は長続きしないって、誰かが言ってたっけ。