毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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毛玉と藍とこいしと橙

「すまない、待たせたな」

「いや全然、ほらこいし行くぞー」

「わかったー」

 

申し訳なさそうにやってきた藍さんが開いたスキマに、こいしと一緒に入り込む。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここがマヨヒガだよ」

「おぉ〜、あっ猫!」

「おいだからふらつくなって何度も言ってるでしょうが!!」

「大丈夫だ、結界は張ってあるからそう簡単にはここからは出られない。見失ってもすぐ見つかるだろう」

「あ、そすか」

 

前にこいしに地上のどこかに連れて行ってあげるとかいう約束したような気がしたので、さとりんと藍さんに許可をとってマヨヒガに連れてきてもらった。

理由としては……まあ〜、橙となんか……合いそうだからこれでいいかなって。はい特に考えてません。

 

「向こうのほうには橙もいる、先に仲良くなってもらっておこう」

「そっすね〜、まあ二人なら多分仲良くするでしょ、うん」

「それにしても、なんでここを選んだんだ。事情は把握しているが、妖怪の山でも魔法の森でも霧の湖でも、どこでも行くところはあっただろう」

「んー、まあそうなんだけど…」

 

……ん?今霧の湖って言った?

あれって確かチルノが考えた名称じゃなかったか……浸透してたんだあれ、すごいな、私はずっと使ってたけども。

 

「やっぱりこいしも同い年……じゃないけど、なんていうかこう、似たような雰囲気の方が親しみやすいかなって」

「確かにそうかも知れないな」

「それと…」

「ん?」

「個人的に藍さんに用がね」

「………場所を変えようか」

「うん」

 

あっという間に周囲の景色が変わり、民家の中のような場所に机と椅子が用意されていた。

 

「いや凄いな……」

「紫様の式だからな、これくらいは当然だ」

「紫さんはもっと凄いんだもんな……」

 

そりゃあ、そんな人ならこの土地を結界で閉じることだって可能なんだろうな。

 

「まあ座って話をしよう」

「そだね」

 

藍さんもまあ……最初こそめちゃくちゃ敵意向けられてたけど、今はある程度親しくしてくれてる。いやほんと最初の頃めちゃくちゃ怖かったな〜……

 

「それで話は?」

「単刀直入に聞くけど、幻想郷で結界を閉ざした後戦いは起こると思う?」

「まあ起こるだろうな」

 

わあすんなり帰ってきた。

 

「残念なことに妖怪という種族は頭の良い者ばかりではない、そういう者たちが他の者に流されて戦いを仕掛けると言うことはまあ……想像に難くないな」

「やっぱりぃ〜?だよねぇ………」

 

まあ藍さんが言うなら起こるの確定みたいなもんだろうし……平和な生活とも一旦お別れかぁ……思えば暇としか言ってなかったなこの数百年。

 

「その話は誰から?」

「私が今日連れてきた子の姉から」

「あぁ彼女か、そうか紫様は彼女にも……」

 

正直結界張られてもなんやかんやで穏便にすまないかなぁー、とか思ってたけどダメそうですね!畜生め!

 

「結界は、いつ頃張るとかってのはわからない?」

「あぁ、結界を張るのも時期を決めるのも紫様だからな」

「そっかぁ……せめて時期さえわかればなんとかなるかなとは思ってたけどダメそうだなぁ」

「その様子だと、君は結界を張ることに賛同してるみたいだな」

「はい?まあそりゃあ……」

 

さとりんから話を聞いた後、結構考えたけれど、さっさと張ってしまうのが一番なのかなと思った。私の中に反対するっていう選択肢はない。

 

「この幻想郷の中に永久的に閉じ込められるってのに反対する奴らの気持ちもわかるけど、私たち妖怪が存在を維持するには必要なことだろうし……」

「その言葉が聞けて安心したよ、君とは戦いたくはなかったからな」

「いやそれはこっちのセリフ……藍さんとまた戦うって……考えただけでも震えてくるんですけど!」

「いやあの時は本当にすまなかった……でもあの頃からそれなりに時間も経っているし、今の君を倒すのはなかなか骨が折れそうだ」

「そうっすかね……」

 

正直また丸焦げにされて四肢がなくなる未来しか見えない……なんというか、格が違うよね。

 

「……別に君が、その反対勢力と戦う必要はないんだぞ?」

「へ?」

「そんな奴ら無視して、ことが収まるまで誰もいない場所でじっとしていてもいいって話だ。考えたことなかったのか?」

「………」

「なかったのか……」

 

いやだって……いやほら………あの………うん……………

 

「今まで散々厄介なことに巻き込まれてきたからそんな選択肢なかった……」

「まあ、同情するよ」

 

うん、その厄介なことの中にはあなたのことも含まれてるんですけどね?自分のことは厄介じゃないってか。

 

「それにまあ……友達が巻き込まれるんだったら、それを手伝いたいかな。私こんなだけど一応それなりの力は持ってるし……」

「優しいな、君は」

「そうっすか?」

「人間を襲わない、妖怪も襲わない、戦いは好まない。でも友人のためなら戦うことを厭わない。珍しい奴だよ」

「私の周り、そういう風なやつ結構いる気がするけど」

「そんな君だからこそ、周りにそういう者たちが集まってくるんじゃないかな」

 

はぁ……

まあ、良い友達を持ってるとは思う、みんな優しいし。

 

「まあそれなら尚更、そんな良い友達たちを見捨てて自分だけ安全なところに行くってのはできないかなあ」

「君のことは紫様も気に入っているみたいだから、くれぐれも死なないでくれよ」

「あ、ハイ」

 

紫さんか……正直ちゃんと会って話してみたい気持ちより、掴みどころがないから会いたくないって気持ちの方が勝ってる……私の何がそんなに気になるんだろうなあの人。

 

「橙も悲しむからな」

「本当に悲しむ?あの子。あんまり好かれてる気がしない…」

「そんなことないさ、あまり私以外に甘えないからな、橙は」

 

 

 

 

 

 

 

 

「それでそれで〜…あ、しろまりさんだ」

「しろまり?」

「あ、気にしないで藍さん、うん」

「あ、あぁ」

 

藍さんとの話を終えて戻ると、橙とこいしが何か話をしていた。

 

「久しぶりー橙」

「うん、久しぶりしろまり」

「オイこいしオイオイ」

「ん、なーにー?」

「……………別に良いけどさ!!」

 

というかこいしはいつまで私のことをしろまりと呼ぶんだ……あれって白いまりもを略してしろまりだからね!まりも扱いだからね!なんかだんだん腹立ってきたわ。挙句橙がそう呼んでくるし……

 

「ぬぅ……まいいや、こいし、橙となんかしてた?」

「お話ししてたよー」

「例えば?」

「しろまりさんのことー」

「こいしオイオイこいしオイ」

 

私のことなんて話の種にはならんでしょ……いや案外なるのか?それはともかく、絶対それで橙がしろまりって言い始めたんでしょ。

 

「今日は藍様も一緒なんですね」

「あぁ、今日は特別だ」

「で、しろまりも一緒と」

 

……藍さんの方は喜んでそうだけど、私の方に関してはなんか………なんか冷たくない?やっぱ私のこと嫌ってる?いや嫌ってはないんだろうけど……もうちょっと愛想良くしてよ!

 

…あ、そういや慧音さんからもらってたお菓子まだ渡してなかったわ。

 

「はいこれ橙いつもの」

 

私がそう言った瞬間に荷物を奪い去って行った、さらに早くなったなお前。

 

「橙、お礼を言いなさい」

「えぇ〜……ありがと」

「んにゃ、別にいつものことだしいいよ。あ、こいしと一緒に食べてね」

「なになになんの話〜?」

「いつもすまないな」

「いいよ別に。それとこれは別で藍さんに」

 

もう一つの荷物を藍さんに渡した、不思議そうに見つめている。

 

「これは?」

「油揚げ、前に橙から好物だって聞いて、せっかくだから人里で作られてるのを持ってき……藍さん?」

 

なんか……下向いて黙ってるんだけど……

 

えっこれ怒ってないよね!?好物であってたよね!?橙に嘘の情報つかまされてないよね!?えっでも好きなものもらってこんな反応する!?私大丈夫!?殺されない!?

 

「毛糸……」

「はい!?」

 

下を向いたまま私の肩に手をおく藍さん、急でびっくりして体が少し震えてしまった。

 

「この恩は必ず返す」

「はい、はい?」

 

あ、どっか行った………と思ったら荷物どっかに置いて帰ってきた。

 

「そんなに好きだったんすね」

「大好物だ」

「さようで」

 

そんな急に恩を返すとか言うほど好きなんだ……あんまり喋った事ないから知らなかったけどそういう一面あるんだなこの人。

 

「思えば橙の面倒を見てくれている分のお礼もまともにできていないな」

「いやぁ気にしなくていいですよ?こういうの買ってくれてるのも私じゃないし、橙も面倒そんなに見てないし……そういうの別に良いよ」

「む、そういうわけにもいかない、そのうち何かさしてもらうさ」

 

律儀だなあ。

 

「ねえねえしろまりさん、せっかくだし四人で何かしようよ」

「ん?いいけど」

「私は遠慮しておこう」

「あそう?」

 

藍さんはやめておくらしい、なんでだろ。

 

「私が入ったら気を遣ってしまうだろう?」

 

………とのことです。

 

「ってことで3人だけど、何する?」

「いつものでいいんじゃない?」

「いつもの?」

「私がしろまりに攻撃当てるやつ。……ぷっ」

「おい、笑うなよ。自分でしろまりって言っておきながら笑うなよ」

 

にしてもあれかぁ……お互いが怪我しない程度にジャブで殴ったりするやつね、平和的で好きよ。正直運動する気はなかったんだけど。

 

「こいしもそれでいい?」

「いいよー」

「ん、でも3人いるけどどうすんの?全員敵でやる?」

「いや、二対一でやる」

「じゃあその一人のやつを決めないとね。………なんで二人してこっち見てんの」

「別に?」

「なんでもないよ〜」

「………」

「………」

「………」

 

………逃げるか。

 

「あ、待て!」

「逃がさないよー!」

「もうやだこの子達!」

 

とりあえず二人から距離を離す。

 

「3回被弾で終わりでいいね!?」

「いつものだね」

「負けないよー!」

 

んもうやだこの子たち!

橙一人でも結構キツいのにこいしとか……そういえばこいしとこういうことやるのは初めてか。

まあ適当に3回当たってはい終わりでも私は構わんのだけども……まあ二人が納得しないだろうし、私もなんか悔しいからやってやろう。

 

橙は足が速い、多分こいしが私の後ろを追ってきて、橙が私の行先を先回りしてくるだろう。

そんでもって挟み撃ちだ。

 

「前から弾幕後ろから弾幕、うーんやだ帰りたい」

 

適当に氷の壁を出して遮断するけど……まあ橙が突っ込んでくる。

 

「フッ、当たらんぜ」

「むぅ」

 

流石に何回もやってきてるから、お互いにやることはわかってきている。

で、問題なのはこいし……あれいないねぇ。

前見て右見て左見て、姿が見えない。

 

「となれば後ろ!にもいなかったから上!」

 

真上からこいしが降ってきていた。橙が突っ込んできて私の気を引いてる間に移動してたのか。

 

とりあえずその場から飛び退いて回避、ついでに弾幕をばら撒いておく。

 

「痛っ!」

「さとりんに何か言われたら嫌だから優しめにしてお痛っ!」

 

気遣って話しかけてる間に橙が後ろから殴ってきた。

というかこれ、私はこいしと橙の二人を3回ずつ攻撃当てなきゃいけないわけ?

………あー……

 

「ダメそうですね!」

 

周囲に氷の弾を大量にばら撒いておく、当たるとは思ってないけど行動の制限になればいい。

弾幕をばら撒きつつ高速移動する橙を一番気をつけながら、いつ何してくるかわからないこいしにも気をつけつつ……あらまたいない。

 

姿を見失ったのはまずいが、橙が常に飛びかかってくる。とりあえず左の方から飛び込んできた橙を避ける。

 

「って後ろにいたんかあっぶな!」

 

橙の後ろを追従するようにこいしが突っ込んできた、けどこいしの突撃をなんとか避ける。

 

「ってあらら?」

「ふふーん、離さないよ?」

「待て離せ!どうなってんのそれ!てかやばいって!」

 

なんかやたら器用な姿勢で私に絡みついてくるこいし。

あー橙向こうのほうからこっちきてるよもう……

 

「絶対離さない!」

「じゃ私も離さない」

 

こいしの手を掴んで私の手ごと凍らし離せないようにする。あとは腕力に物を言わせるだけだ。

 

「うわわ!」

「そのまま離さないでよこいし!」

「ちょっと待って今来ないで!」

 

だが残念なことに橙はめっちゃ速い、そして急には止まれない。

腕に妖力を込めてこいしを振り回し、橙の方向に向けて盾にする。

 

……ごめんよさとりん。

 

「あだっ!」

「へぶっ!」

 

橙とこいしが当たると同時に氷を溶かして再び距離を取る、当たったら負けの戦いにおいてはある程度の距離は保っておきたい。

 

「やーいやーいあたってやんのー!これで橙は1回こいしは2回、あとは半分だな!」

「今のはしろまりさんの攻撃じゃないから含めないでよ!」

「いやでーす含めまーす」

「うわぁ……」

 

橙から引かれた気がするけどそんなの関係ねえ!

今のところは私が有利、意外とこのままなんとかなるのでは?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「普通に負けた……めっちゃ普通に負けた……」

「まあもとより数も不利だったし、手加減もしていただろう、よくやったと私は思うぞ」

「藍さんに慰められてる…」

 

ええ人やな……最初に会った時はあんなだったけど。

いやほんと、今日知り合ったばかりのくせして連携取れてるんだもんな……適応力高いわ。

 

「ふぅ、疲れた」

「じゃあさっきの菓子でも食べるか、全員でな」

「そうしよっかな……」

 

んー……そろそろ腹括るか。

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