毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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何かに巻き込まれるのは決定事項と化したのであった。



「………それで、山の天狗さんが何の用ですか?私たちは何かした覚えがないんですけど」

「いえいえ、何もあなた達に用があるってわけじゃないんですよ。ちょっと探している人がいまして、すこしお伺いしたいなぁ、と」

 

胡散臭い笑みを浮かべながら質問をしてくる妖怪の山の鴉天狗。

後ろには二人の白狼天狗がいる。

 

「探している人って、どんな人ですか?」

「そうですねぇ。こう、髪の毛が白くてすごくもじゃもじゃで、割と小柄な人って聞いてるんですけど。合ってます?」

「合ってます」

 

後ろの白狼天狗の女の人が相槌を打つ。

髪の毛が白くてもじゃもじゃ………完全に毛糸さんだよね。

この場にチルノちゃんがいなくてよかった、多分この人たちに突っかかっていたから。

 

「その人に何の用なんです?」

「いえ、別に何かしようという気ではないですよ。ただちょっとお話をね………」

「………知りません」

「あやや。そうですか。残念です」

 

とりあえず知らないふりをしておこう。

妖怪の山の天狗が山の外まで出てくるってことは、何か絶対に面倒くさいことのはずだから。

毛糸さんがいったい何をしたのか知らないけど………

 

「ご協力感謝します。では失礼」

「あ、はい、さようなら」

 

意外とあっさり帰っていったな………また来るのかな?あとで毛糸さんにこのことを伝えておこう。

天狗の人たちはお互いに何かを喋りながらどこかへと言ってしまった。

 

 

「よかったんですか?あの子いつもあの毛玉と一緒にいる子ですよ」

「いいんですよ、別に妖精に用はありませんし、無理に情報聞こうとしたところでって話です」

「どうせ椛の千里眼で探すから関係ないとか考えてるんだろうなぁ」

「お、よくわかりましたね柊木さん!ご名答です」

「え、嫌なんですけど。あの毛玉見たら殺害予告してくるから怖いんですよ」

「まぁまぁそう言わずに、ちょっと見るくらいなら気づかれませんよ。さぁ早く!」

「はぁ、しょうがないですね………」

 

一度目を閉じたあと、瞑想のようなものをしてもう一度目を開けた椛。

その視線の方向は目の前の木に向けられていたが、そんな近くを見てはいなかった。

 

「………………見つけました。ここから近いとこにある洞窟の中にいます」

「おぉ、さすが椛、見つけるのが早い。では早速向かいましょう」

「貴女は行動が早すぎます、もう少し考えて………ってもう行ってるし」

 

はぁ、と同時にため息をつく白狼天狗の二人。

走りながら、早々に飛んで行った文のあとを追っていく。

 

「なんであんなめちゃくちゃぶりで俺たちより偉いんだろうなぁあの人」

「知らないんですか柊木さん、あの人、仕事できて戦いに関してもその辺の白狼天狗では手も足も出ないくらいつよいんですよ」

「え?そうなの?」

「それに加えて美人ですし、性格以外は最高の女性って噂されてます」

「ま、まぁ確かに美人だけども………」

 

そんな話をしながら文の後を追っていった。

 

 

 

 

「あ、いた!ちょっと文さんどんどん先に進まないでくださいよ」

「しっ、椛静かにしてください。今大事なところなんです」

 

洞窟の外から静かに中を覗き込む文、それに続いて椛と柊木も中を覗き込む。

 

「………なにやってるんだ、あれ」

 

洞窟の中では、毛糸が謎の動きをしていた。

 

「いっちにぃさんしっ、ごぉろっくしっちはちっ」

「………なんでしょうね」

「さぁ?わかりません。毛玉という種の独特の動きかもしれませんねぇ」

 

毛糸はただラジオ体操の動きをしているだけなのだが、無駄になまりのある掛け声と下手な体操が合わさって文達には謎の踊りか何かに見えていた。

 

「………よし、ラジオ体操終わり。今日も今日とてあのゲテモノ魚獲りにいきますか」

「あ、出てきますよ、隠れないと」

 

急いで近くにある茂みの中へ隠れる三人。

割と音を立てたが、毛糸がそれに気づくことはなかった。

 

「文さんいいんですか?話聞くんじゃなかったんじゃあ」

「いきなり押しかけたら向こうも警戒してまともに話すこともできなくなるかもしれないでしょう?それにいきなり接触するのも危険です。何事も下調べが重要なのですよ」

「へぇ、何も考えてないようで実はそこそこ考えてたんだなぁ」

「失礼ですね、私だって考え事ぐらいありますよ」

「例えば?」

「今日の晩ご飯!………すみませんそんな目で見ないでください傷つきます」

 

顔を伏せる文を冷ややかな目で文を見つめる椛を呆れた目で見つめる柊木。

逃げるように毛糸を追いかける文に2人はついて行った。

 

 

 

 

んー…………誰かが見ている、そんな気がしてならないのですよ。

というかもう、明らかに見ている、ついてきている、違和感が確信になってる。

最近はあの洞窟の中で過ごしているんだけど、入口の茂みでなんかガサガサしてたし。

いや、怖かったから放って置いたけどさ。

 

一人ではない、複数人私をつけている。

こっちから話しかける?いや、放って置いたら帰ってくれるかもしれない。

………もしかしたら、あの首を掻き切る動作で反応して近くまで来たの?やっべ、私死ぬじゃん。

もしあの感覚が本物で、あの動作が見られたのなら、私をつけているのは多分妖怪の山の天狗。

確かにさ?私は勝手に山に入って地底に侵入したさ。

でも不可抗力じゃん、わざとじゃないんだよ。

どちらにせよ、接触は避けられないかぁ………

 

「………隠れてないで出てきなよ」

 

後ろに気配のする方へ話しかける。

 

・・・

 

あれぇ?返事が返ってこない。

もしかして誰もいなかった?ただの気のせい?やばいやばい恥ずかしい、自信満々に出てこいとか言って誰もいなかったとか悲しすぎるでしょ、勘弁してください。お願いィ!誰か返事してェ!私を一人にしないでェ!!

 

「気付かれるとは………聞いた通り、なかなかの手練れのようですね」

「そりゃ気付かれますよ、そんなかっこつけないでください、翼がいろんなところに擦れて音立ってるんですよ。まずその翼折り畳んでから言ってください」

「ちょ、椛、今大事なところなんで水差さないでください。第一印象が大事なんです、天狗が舐められたらおしまいですよ」

「いや、多分もう手遅れだな」

 

………なんか騒がしいなぁ。

あーあー、私無視して言い合い始めちゃったよ、やっぱり私恥ずかしいじゃん。

 

「だいたい貴方はいつもですね——」

「そっちこそいつも人を振り回して——」

「あのぅ、すみません、そろそろ………」

「「部外者は黙っててください!」」

「なんでそこだけ息合うんすか、実は仲良いだろあんたら」

 

部外者て………そっちから話しかけてきたくせに、それはないでしょーが。

横の男の人は………

 

「立ったまま寝ている………だと」

 

なぜこの状況で寝ることができるんだ、そもそもなぜ寝るという行為にいたるんだ。

 

「こいつらこうなったらもうどうしようもないから、もう誰にも止めらんないから。諦めて寝ようぜ」

「お、おう………それでいいのかあんたは」

「考えるのやめたわ」

 

………なんか気が合いそうだな。

 

「名前は?」

「あ?柊木でいい、そっちは?」

「毛糸でいいよ」

「そうか」

 

………

やばい、やることがない。

前の二人が何かしてくれるまでなにもできない。

というか、言い合いの内容が相手の悪い点ばっか言い合ってるだけなんだけど。

そんなことのために私は今ここで待たされてるの?なんなん。

 

「………ところで柊木さん、どっかで会ったことある?」

「いや、会ったことはないはずだが」

 

そうか………声聞いたことある気がするんだけどなぁ、気のせいか………

 

「お前、地底に行っただろ」

「え?あ、うん」

「あの時お前を呼び止めたのが俺だ」

「………あ……ごめんわざとじゃなかったの!半分くらい拉致だったから!というか100%拉致だったから!」

「いいよ別に、給料減っただけだしな」

「………さーせん」

 

大丈夫じゃないね、目が遥か遠くを見据えてるね、ごめんね。

文句を言うならこいしに言ってね、

 

「………」

「………」

 

 

 

 

「おほん、失礼いたしました」

「本当ですよ、なんで毎回毎回こうなるんですか、学習能力無いんですか?」

「ちょっと椛、仕切り直そうとしてるんですから突っかかってこないでください。あと口悪いです、流石の私でも泣きますよ」

「いいですよ?帰ったらみんなに言いふらしますけど」

「あーもーキリがない!いい加減にしてくんない!?さっさと話ししてよ!こちとらさっきからずっと待ってんだよ!」

 

大声出したらなんか驚いてらした。

なんだろ、緊張感ってのがないんじゃないかな?もっとしっかりやりなさいよ、そんなんだったら舐められるよ?チルノに。

 

「すみません、じゃあ本題に入りま………」

「どうしたの?」

「いえその………私たちなにしにここにきたんでしたっけ」

「それ忘れたら駄目だろ、この毛玉について知りたいってあんたが言ってきたから俺たちが付き合ってやってんだよ馬鹿か」

「あ、あー!そうでしたね!すっかり忘れてました。あと柊木さん、敬語はどうしたんです?」

「あんたみたいな人に敬語使うのも面倒くさくなった」

「なんでこう、白狼天狗って口が悪いんですかね?まぁその方がこちらもやりやすいですけど」

 

なんだこいつら、いつまで経っても話が進まない、本当になにしにきたんだよ、帰っていい?

 

「申し遅れました!私、清く正しい射命丸と申します!以後お見知り置きを!」

「白狼天狗の犬走椛です、あまり下手な動きをしないでください、斬りますよ」

 

おうふ、しっかり警戒されていたでござる。

いや、警戒してさっきのあの言い合いしてたの?なんかスゴいね。

 

「ほら、柊木さん、貴方も自己紹介してくださいよ!」

「もうしたんだけど」

 

また呆れたような表情を浮かべる柊木さん。

間違いない、この人は苦労人タイプだ。

 

「じゃあ私も、白珠毛糸です、私に何か用で?」

「そうですそうです!毛玉でありながら野良妖怪以上の力を有している毛糸さんに是非お話をお伺いしたいなと!聞けばあの危険妖怪ルーミアさんをも退けたらしいじゃないですか!」

「いや、あの、そう一気に喋られたらなにから答えたらいいのか………あと、どこでそれを?」

「この二人が貴方を監視していたんですよ」

 

白狼天狗の二人かぁ。

見た目からして、さっきから文って呼ばれてるのが鴉天狗なのかな?

 

「じゃあ早速質問させていただきますね。普段はどんなことをなさってるんですか?」

「どんなことって言われても、まぁ普通にこの湖の近くで暮らしてるだけなんだけど」

「へぇ、では妖精たちとはどう言う関係で?かなり親しくしているようですが」

 

畳みかけてくるなぁ………私こーゆーガツガツくるタイプの人苦手なんだよなぁ、いろいろ知ってそうだし………あの椛って人は敵意むき出しだし、できれば穏便に済ませたいところ。

 

「まぁ近くに住んでるって感じかなぁ、時々遊んだりしてるけど、別に何か貴方が気になるようなことはないと思うんだよ」

「いえいえ、毛玉が人の形をしていて、それで強い力を持つなんて私も初耳ですので、どれも興味深いですよ」

 

笑みを崩さずに質問攻めをしてくる文。

こいつはあれだな、油断できないタイプの人だ、腹の中に獣を飼ってるとかそう言う人。

多分私に興味があるってのも本当だろうけど、一番は自分たちにとって私が害とならないか、その一点が気になるのだろう。

こっちだって向こうが何かしてこない限りは私だって何かしようって気にはならない、むしろ天狗なんて奴らとは出来るだけ関わりを持ちたくない。

 

「あとこれは別に咎めるわけじゃないんですけど、地底に侵入したのはどう言った理由でしょうか?地上と地底は不可侵条約を結んでいるので、故意に侵入したのであれば………」

 

ほら、本音が漏れた。

やっぱり私という存在より、私の腹の中を探ろうって気だ。

 

「あれは事故だよ、地底の人に拉致されたの。別に何か企んでとかじゃないから心配しなくてもいいよ」

「そうでしたか、それは災難でしたね。では最後の質問をさせていただきます」

 

雰囲気が変わった。

本人が一番聞きたいことを聞かれる。

私がそっちの意図に気付いたがバレたか。

 

「貴方が椛にしたという、首を掻き切る動作、あれはどういう意図があってなのでしょうか」

 

あちゃー、やっぱりそっちかぁ。

いや、これを好機と捉えよ、こっちだって面倒ごとはごめんなんだ。

 

「別にどうってことはないさ、ただ、私を変なことに巻き込むのは勘弁してってだけ。別に私は何かしようって気はないよ。ただし………」

 

霊力ではなく、妖力を前面に出す、相手を威圧するように。

自分の周りの空気が変わっていくのを感じる。

 

「そっちから仕掛けてくるってんなら、こっちも黙ってることはないけどね」

 

白狼天狗の二人が剣を握り構えをとる。

鴉天狗は私の目の前で様子を変えずに立っている。

さぁ、どうなる。

 

「剣を下ろしてください二人とも。この人は大丈夫ですよ」

「しかし………」

「大丈夫ですから。さて、毛糸さん。面倒ごとは避けて通りたい、それはこちらも同じです。そう威圧しなくたっていいですよ」

「………そうか。用が済んだなら帰ってくんないかな?」

「そうですね、此方もやりたいことはできましたし、これで帰らしていただきましょうか。では、またお伺いさせていただきますね」

 

背を向けて山へと飛び去っていく三人。

案外あっさり帰っていったなぁ………あれ?また来るって言った?

 

………

 

「いや、もう来るなよ………」

 

 

 

 

「よかったのか?放っておいて」

「いいんですよ、あちらも私たちが何かしない限りは手出ししてこないでしょう、それに」

 

後ろを向いてあの毛玉を見る射命丸。

 

「あれは上手く使えば、私たちにとって心強い存在となるでしょう」

「………やっぱりあんた、普段の間抜けっぷりは演技だろ」

 

また呆れた顔とため息をしながら、山へと帰っていった。

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