不便すぎる!
左腕使えないの不便すぎる!
物運ぶことで苦労することはないよ?浮かせられるもの。
しかし、しかしである。
今まで左腕使えないことなんてなかったから、体が左腕使おうとしても使えなくてそれでドジすることかなりある!
昨日なんてイノシシの突進両腕で受け止めようとしたら左腕動かなくて空いてるところにクリーンヒットしたからね!血反吐吐いたわ!
とにかく、左腕を使おうとして使えなくて物を落としたり血反吐吐いたりして辛いのである。
半壊してた家はまあ……気合いでなんとか形は元に戻した、形は。中身はまたるりかにとりんに来てやってもらわないとキツイかなぁ…流石に私には無理だ。
あと片腕キツい、両手使えないとまともに作業できない。
ていうわけで、生活水準は下がるし左腕使えなくて不便だし大ちゃんにめちゃくちゃ心配されるし……で。
作ろう、義手。
作ってもらおう、義手。
「というわけでやってきました」
「お、おう……というか文から聞いてたけど、本当に動かないんだね」
「まあね、感覚も当然のようにないよ。再生はできるんだけどなぁ……正直動かない物ぶら下げてるの邪魔だから引きちぎってやろうかと」
でもね……左腕引きちぎって、肩から先の傷口をうまく閉じたとしても気を抜くと生えてきちゃうんだよ……訓練が必要かもしれない。
左腕を生やさない訓練って何言ってるかわからんけど。
「で、つくれる?にとりん。前になんか醤油出る義手みたいな話してなかった?」
「あぁ、義手砲ね」
というか河童にも何人か義手つけてる奴がいるんだよな。じゃあ作ってもらおうじゃないかと。
「正直言って、今の時期はちょっと忙しいんだよね、妖怪の山自体まだごちゃごちゃしててさ。だから作れるのもうちょっと後になるけど……構わない?」
「全然いいよ、なんなら出直すし」
「あぁいや、話だけ聞くよ。作るってなると採寸とか神経繋いだりとか、色々やることあるからさ」
「神経繋ぐの?」
「まあね。あぁ、妖力とかで補助するならそこまで多くの作業はいらないけど……生半可なもの作ったらすぐ壊されそうだし」
否定はしない、というかできない。
でも話聞いてるとなんというか……某錬金術師の世界のアレが思い出される。
「………なあ、せっかくだしめちゃくちゃ多機能な奴作っていいかい?」
「もちろん、私もそのつもりできたし」
「いいのかい…?変なの色々詰め込んじゃっても」
「義手なんてロマンを詰め込むためにあるようなものじゃないかぁ…」
「………」
「………」
私とにとりんは無言で固い握手を交わした。
「さあ盟友、私たちの熱い議論を始めようじゃないか」
「望むところだ」
「うわぁ………なんか変なことしてる………」
「あ、いたのるり」
あれ?確か全身の骨が折れてるんじゃかったっけ?
「てかなんでにとりんのとこに?」
「あぁ、どうしても部屋に帰りたいって喚いてさ。でも全身の骨が折れてる体じゃそうはいかないだろう?私のとこで我慢してもらってるんだ」
「なるほど……」
というか、るりくらいだろう、あんな狭い部屋にいるのは。
他の河童はもっと大きな建物に自室を持ってたり、にとりんみたいに大きな建物に住んだりしてるのに。
よくよく見たら全身包帯巻きで電動車椅子に乗っている。左手でレバーを動かして移動しているみたいだ、ウケる。
「というかにとりさんもひどい怪我でしたよね?」
「お前ほどじゃないからいいんだよ、というか私が動かないと復興作業も始まらなかっただろうし」
「ふぅん、大変だねみんな」
「まあ死んだやつも少なくないからね……河童なんてその点大怪我したのはるりくらいだし、天狗たちに守ってもらった結果だよ」
「私は二人が敵の大将討ち取ったって聞いたけど?」
「あれはまあ……あの二人のおかげでもありますよ」
チルノと大ちゃんか、それはあの二人からもう聞いたけど。
「というか毛糸、やるならちゃんと息の根止めるまでやれよ。片腕だけ切り落とすなんて甘いだろ、そのせいで私たち死にかけたんだからな」
「えぇ……なんの話……なんかごめん」
「覚えてないんだ……うっ傷が…」
るりが痛そうに呻く。
片腕を切り落とす……なんの話……あ、あいつか!
あの地底にいくときに見かけたなんか自分を強いと勘違いしてたやつ!急いでたから腕切って殴ってそのまま行ったんだった。てか生きてたんだなあいつ、あれで死んだものかと。
「まあこの話はこのくらいにして、そろそろ早く義手の話始めようか」
「そうそう、私のアームキャノンね」
「まず初めに聞くけど、なんで腕が動かないのかわかってるの?」
「あぁ、なんか呪い?かなんかだって」
「呪い……まあそうか、左腕だけっていうなら……うん……」
なんかにとりんがぶつぶつ言ってる。
呪いだったらダメとかそういうのあるのだろうか。
「まあいいか、ここは今はどうせ……うん」
「どう?」
「まあ行けると仮定して話を進めよう、正直わかんないし」
「あ、はい」
「適当ですね……」
なんかるりも話に入ってきてる、暇なのだろうか。
「で、まずはご要望を聞こうじゃないか」
「普通の手の形から変形して義手砲になる感じがいい!」
「うーんいきなりめんどくさいこと言うね!でもいいねそれ私もやってみたかったんだ!」
「何この人たち…こわ」
アームキャノンは前々から気になってたんだよね……腕使えなくなったんならつける以外の選択肢ないでしょ。
「でも何を弾にするんだい?あんまり大きいのは…」
「いや妖力弾でも飛ばしとくからそれっぽい穴つけるだけでいいよ」
「適当かい!なんかもっとこう……あるじゃん!」
「じゃあ醤油出せるようにしてくれたらいいよ、その他調味料とか」
「あいわかった」
「いやいいんですか!?本当に!?嘘でしょ……」
「るりよ、そこでそうやってぶつくさ言うだけならどっか行っててくれ」
「そんなぁ…」
るりがにとりんに虐められておる。
ガチガチの銃火器搭載したところでなあ……結局妖力弾飛ばした方が強いからなあ……興味あるんだけどね。腕からミサイルとか出るの。
まあどこぞのバウンティハンターしかり、どこぞの青い戦士しかり、お前らどこに弾格納してんねんって話だよ。
「ふむ……となると……手が折れて醤油とかが出てくる穴があるだけの普通の義手になっちゃうけどいいのかい?」
「全然良いよ。………なあ、なんで私は腕から調味料でるようにしようとしてんの」
「考えるな毛糸、その勢いを途絶えさせてはいけない」
「なるほどこれが深夜テンションか…」
今真昼間だけどな。
「素材は何が良い?やっぱり丈夫なやつ?」
「そうだなぁ……私が全力で殴っても壊れなさそうなやつ」
「合金ね了解、正直全力で殴られたら壊れそうだけどまあ出来るだけ頑丈にしておくよ」
「合金の義手から醤油が出てくるって……二人とも今頭正常に働いてます?」
「るり」
「なんですか」
「そういうこと言ってると嫌われるで」
「え」
合金って重くね?って思ったけどそういや私物を浮かせられたわ、今人生で一番自分の利用価値のほとんどない能力に感謝してると思う。
「あと真面目な話さ」
「なんすか」
「戦うこと想定するなら義手何本か作っておいて、戦闘用とか宴会芸用とかにわけて必要に応じて付け替えるとかの方がいいんじゃない?」
「確かに……」
「宴会芸?宴会芸用の義手なんて作るつもりなんですか?あたし二人のことがもうよくわからなくなってきましたよ」
「考えるな、感じろ」
「ちょっとよく意味わかんないです」
でもそうか……お笑い要素と戦闘機能を両立させるのは厳しいよなあ。
「じゃあとりあえず日常生活に使える物を……さすがに毎日合金をぶら下げて過ごしたくはない」
「じゃあそれは関節可動域を広げようか。できるだけ軽い素材……あ、人工皮膚とかいる?」
「人工皮膚!?いる!てかあるんだねそんなの」
「見た目はそっちの方がわかりにくくて良いだろう?」
「確かに」
まあ左腕が鉄の塊になってたりしたら悪目立ちするだろうしね。人里とか行ったら変な噂立ちそう。
「でもそうなると簡単に付け替えられた方がいいよね……妖力で補助するとなると……どうしようか」
「………肩に接合部作って差し替えられるようにしたらどうです?」
「それだ!ありがとうるり。となると肩のあたり丸々鉄の塊になるけど……それでも構わない?」
「まあ、丈夫で服の上からわからない感じだったら」
「了解、期待しておいてよ」
毛糸さんとにとりさんが楽しそうに話している。
今は義手を何本作るのかについて話している、今のところ日常生活用、戦闘用、宴会芸用の三つで話が進んでいるみたいだ。
二人は仲がいい。毛糸さんなんか昔っからにとりさんのことを愛称?みたいなので呼んでいるし、にとりさんもそれを受け入れている。
……今更だけどにとりんって何なんだろう………
まあ、目の前でこうやって二人で楽しく話されていると少し……寂しいと言うか、疎外感というか……嫉妬って言えるのかわからないけど…そんな感じの気持ちが湧いてくる。
なんというか、あたしは二人とは性格が違うというか。
まあ引きこもりで人見知りなのが悪いんだろうけど……ちょっと二人についていけない。
「でさでさー………ん?るりどしたの」
「え?あ、いやあの、何でもないですはい」
「何でもないやつはそんな顔しないんだよ、何か言いたいことあるなら言っていいんだよ?私たちくらいしか相談する相手いないだろう?」
「そうそう、私たちに何でも相談していいんだよ」
「毛糸は誰にも相談しないだろ」
「え?いやそんなことは……あはは…」
「……あたしって、何かやり遂げましたか?」
私の質問の意図がわからない二人が顔を見合わせる。
「にとりさんは河童たちをまとめてるし、毛糸さんは妖怪の山から地底まで色んなところに行って敵を倒してたし……凄いじゃないですか」
「凄いかな?」
「まあ毛糸は凄いと思うよ……うん………」
「でもあたしって、せいぜいあのでかい人の意識奪うくらいで……二人はそんなに凄い人なのに、あたしがここにいていいのかなって…」
「ん…」
「ふむ…」
多分、二人ならそんなつまらないことで悩むなと言い切ってくれるのだろう。
でも私は……
「私はさ」
毛糸さんが口を開く。
「人…って言っても妖怪だけど、人一人が助けていいのは自分の手が届くとこまでだと思ってる。みんながみんな全部ひっくるめて解決できるほど凄いわけじゃないし、そんな奴はごく一部だ。だからまあ、言ってもしょうがないと思うけどさ、他人と比べて勝手に落ち込むのはよそう?」
「手の届かないとこまで図々しく手を伸ばそうとするとこいつみたいに腕を無くしたりするから気をつけなよ」
「あ、もしかして怒ってる?さっきまで楽しく義手について話してたのに怒ってる?」
「いや別に?」
自分の手の届くところまで……
あたしはあたしの範囲まででいい……
「それにさるり、私、お前がいなかったらきっと今頃死んでたと思うしさ。いていいとかそんなの関係なしに、私はお前に一緒にいて欲しいよ」
「にとりさん……言ってて恥ずかしくならないんですか」
「正直めっちゃ後悔してる」
「わあ照れてるーかわ痛い!!足蹴らないでごめんって!いたっ!いたいって!照れ隠しもかぐほあぁっ」
にとりさんが思いっきり毛糸さんの顔面殴った、凄く痛そう。てか顔から血出てるし。
「なんでい、意外と筋力あるやんけ……」
「とにかく、お前はお前にできること十分やってるって私は思ってるよ、人見知りで引きこもりにしてはね。ね、毛糸」
「ア…ハイ…全面的に同意デス…」
「言わせられてますよね」
「そんなことないよなー」
「ソダヨー、全然言わせられてないヨー」
………まあ。
まだ身体の傷は癒えないけど、まだ二人とこうやって話せている、それだけであたしには十分かもしれない。
それとは別に早く自分の部屋に帰りたい。
「よーし、大体考えはまとまったな……」
「じゃあ山が落ちついたら早速制作に着手…」
「したいのは山々なんだけどね……まず知りたいことがあってさ。毛糸、なんで腕が動かないのかわかってるかい?」
「なんで……いや、呪いのせいじゃないの?」
「そうじゃなくて」
じゃあどうだっていうのさ。
……あ、そういうこと?
「呪いで直接左腕が動かないようにされているのか、そもそも身体の構造が歪められてるのかってこと?」
「そういうこと」
「いやわかんない」
「うん、知ってた」
なんか腹立つ。
「ここで検査できたらいいんだけど、生憎時間かかるし…そういう設備はまだ空いてないと思うんだよね。重症患者まだ結構いるし」
「そっかぁ……じゃあ大人しく待っとくか……」
「まあそれでもいいけど時間がもったいないからさ、もしそういうのに詳しい知り合いとか、調べられるところに心当たりとかあるなら先にそこで調べてきてくれないかな。ここでやるのにも呪いってなると流石に未経験だから、正確さを保証できないし」
「………いるかなあ、そんな知り合い。探すだけ探しておくけど」
うーん……うーん……いなくね……?
誰かに聞いてみるか……