「また来ちゃいましたーあははは」
「お引き取りください」
「そんなこと言わずに、ちょっとくらいお話しさせてくださいよー」
「お引き取りください」
「この前の話なんですけどね?ちょっと訂正したい部分があって」
「お、ひ、き、と、り、く、だ、さ、い」
「やっぱりあの部分なんですけどね?あそこはやっぱり東の方で」
「帰れや!あんたはタチの悪い宗教勧誘かなんかか!?勝手に話進めて行きよって!うちは無宗教じゃ!それともあれか!?N○Kかおめえはよぉ!うちにテレビはねぇぞコルァ!」
「ちょっと待ってください落ち着きましょう。別に宗教勧誘しに来たわけじゃないですしそのえぬえいちなんたらではありません、あ、ちょっと、石投げないでください、ちょ」
「かっえっれ!かっえっれ!」
「毛糸さんー、おちつきましょー、石投げないでくださいー」
「ひこうタイプにいわタイプは効果抜群なんだよ!知らんのかこのドンカ○ス!」
「なんの話ですか……」
よし参り始めてるな、これを後3日くらい続けたらもうこなくなるだろ。
また来ると言ってからすぐ、その日の夜に一回来よった。
内容は確か………忘れちゃった。
その日は確かもう寝るんでと言って帰ってもらった。
最近は朝は洞窟昼から夜まで湖にいるって感じで過ごしているんだけど、朝昼晩と、一日3回押しかけてくる。
1日3回凸られ、それを数日………もういい加減にしてくださいと言ったけれど、なんの意味もなく。
「あのねぇ文さん?何度も何度も言ってるけど、厄介ごとに巻き込まないでって、朝も言ったでしょーが。山の連中とは敵対も協力もしないから!おけ!?」
「まぁまぁ、そう言わずに、はい、差し入れのきゅうり」
「あ、どうも………じゃ、ねーよ!なんできゅうりぃ!?何ゆえキューカンバー!?きゅうりごときで私を落とせると思ったら大間違いだバーロー!」
「いて!もうー、きゅうりを人に投げつけるなってお母さんに習いませんでしたか?駄目ですよ食べ物を粗末にしちゃ」
「きゅうりで人を釣ろうとしたやつにそんなん言われたくないし!てか帰れよ!」
確かにきゅうりはカロリー低いよ?ヘルシーだよ?でもさ!毎日飢えてる人に差し出すのがきゅうりってどうなのさ。
「もう、そんなに帰れ帰れ言わないでくださいよ。こっちだって何の報酬もなしに協力してくださいって言ってるわけじゃないのに」
「そもそも協力するって何に?何に私を巻き込むつもりなんだよあんたは」
「え………一昨日話しましたよね?」
「話し長くて半分聞いてなかった」
「そんなぁ、酷いですよ。人が頑張って説明してるのを貴方は半分しか聞いてなかったって言うんですか?」
だって凄い早口だったんだもん、半分聞き取ったことを褒めてもらいたいくらいだわ。
「じゃあ今からもう一度説明しますよ?いいですか?ちゃんと聞いててくださいよ」
「いやいいから帰ってくれないかなぁ」
「それは無理な相談です、私もこれに給料かけてるんですよ」
「お前ら天狗は給料のことしか考えとらんのか」
「我々は今重大な問題を抱えています。それは我々の住む山が他の妖怪たちによって襲撃されそうという——」
「ちょいちょい、なに勝手に話進めとんねん」
「我々の山には昔、鬼が住んでいたことは毛糸さんもご存知かもしれません。地底で見たでしょう、角の生えた妖怪たちを。私たちは昔、彼ら鬼と天狗、その他の種族で山を支配していたのです。ですが地底で見たとおり、いくつかの種族は地底へ降りてしまったのです。私たちの山は鬼の圧倒的な力によって支配されていたので、彼らがいなくなると暴動が起きました。その暴動自体はなんとか終息したんですけど、周囲の他の天狗の集落に目をつけられまして。うちの山は本当に鬼の力に頼って、他の山に威張り散らしていたんで、鬼がいなくなったらそりゃあ狙われるわけですよ。今までなんとか凌いできたんですけど、そろそろ本当に潰されそうなんですよ。もちろん私たちの集落も簡単に落とされるほど弱くないんですが、周囲の山が全部結託して潰しに来られると本当にやばいんですね。戦力が足りないんです。地底にいる鬼に頼んでもきっと断られる、というかもうすでに断られたあとなんで、急いで戦力になり得る人たちを集めたいんですね。そこで近くの湖に突然現れた貴方という存在、もし私たちの力になってくれるのであればとても心強いというわけなのですよ。わかりましたか?」
「………」
いや、長い………長すぎるよそれは………
「ちょっと、聞いてました?」
「うん、まぁ、聞いてたよ?聞いてたけどさ、それ私関係ないじゃない。それであの山の天狗が全員死んだとしても、私はどうだっていいの。戦いから離れてたら私にはなんの影響もないし、別に移り住んだっていいんだよ。私は天狗同士の潰し合いになんて興味ない。だいたいそーゆーのは山に住んでるやつだけでやれば良いだろうに」
「そうですよねぇ、貴方が言うことも最もです。我らも急に出てきたよくわからなくて気持ち悪い毛玉に頼みたくはないんですよねぇ」
「おいてめぇもういっぺん言ってみろや羽もぎ取ったろか」
「おっと失礼、口が滑りました」
「おめぇなぁ………そんなに力を貸して欲しいなら、こんな毛玉じゃなくてもっと強い人に頼んだらいいんじゃないの?」
「いやぁ、そう簡単に見つかれば良いんですけどねぇ」
「あれは?あの、太陽の畑だっけ?あそこに住んでる人」
「………それはですね、自殺行為ってやつですよ毛糸さん。私だって考えなかったわけじゃないんですよ、でもあの方は論外です」
「なんでよ幽香さん強いでしょ?」
急に死んだ目をした文。
これあれだね、察した。
「この前、あそこを荒らした一人の妖怪が居たんですよ。あそこに住んでる風見幽香さんに喧嘩売りに行ったみたいですね。まぁそしたらあの方、すっごい形相でその妖怪に近づいてきましてね。太陽の畑の外まで蹴り飛ばしたんですよ。まぁ根性無しだったその妖怪は命乞いしたんですが、あの方、一瞬でその妖怪、消し炭にしたんですよ。見てた私は眩しかったんで何があったかはわかりませんでしたけど、目があっちゃったんでね。怖くてすぐに帰りましたよ。いやぁ怖かったですねぇあれ」
「そっか、生きててよかったね、うん」
「というわけですよ。それにあの方に頼んでも承諾してくれる気がしませんしね。つまり、一人でも戦力をかき集めたいからその辺の妖怪たちに協力を要請してるわけなんですよ」
事情は分かったけど………やっぱりそんなのやる気が起きない。
逆になぜ協力してもらえると思ったんだろうか。
「毛糸さんくらいですよ?こんなに拒否されてるの。他の妖怪ならちょっと食べるものをあげるって言っただけで簡単に乗ってくれるのに」
「結局物で釣ってるじゃないの」
「ねぇねぇどうしても無理ですかー?頼みますよー、生きるか死ぬかとかそういう感じのあれなんですよぉ」
「無理」
「はぁ………じゃあしょうがないですね、最終手段です」
「え?なに最終手段?こわいよ痛いのやめてね」
「そんな手荒な真似しませんよ。ちょっと山までついてきてもらいましょうか」
えぇ………
口に三本きゅうりを突っ込まれて、なにがなんだかわからない間に山の中へ連れてこられた。
「もがもが、もがもがもが?」
「口にきゅうり入れたまま喋らないでください、汚いですよ」
「あぁ!?」
人の口にきゅうり突っ込んだ奴が何言ってんの。
一気に入れるから噛み切れないんだよバカ。
「まぁいいよ………で?ここはどこよ」
「妖怪の山の中にある、河童の集落です」
「河童?」
河童といえばあれだよね、頭に皿を乗っけた顔色悪くてくちばしついてて川の中にいて人のあれのそこにある尻子玉というなぞの物体を抜き取ってくるやべーやつだよね。
「いや、なんで河童のいるところなんかに連れてきたし、私死にたくないから、抜かれたくないから。あ、もしかしてきゅうりって河童繋がり?」
「ご名答、この河童の集落ではきゅうりを全力栽培してます」
全力栽培て………きゅうり依存症かな?
「で、その河童さんとやらはどこよ」
「なに言ってるんですか、目の前にいっぱいいるでしょう」
え?目の前にいるのなんて帽子被った女の子たちだけ………
まさか………
「うっそだろぉ、これただの幼女の集団じゃないか、何でもかんでも女の子にすればいいって訳じゃないんだよ。これが河童とか冗談キツいんだけど」
「残念ながら正真正銘、私たちは河童だよ」
「うわっしょい!?ナニヤツ!?」
「あ、にとりさん、お久しぶりです」
「おー文か、久しぶりー」
「え!?なに!?お値段以上の方!?」
「値段をつけるなら思いっきり高値にして売りつけてやるよ、お値段相当かな、うちは」
「毛糸さん紹介しますね、この人は河城にとりさん、河童です」
「ちーっす」
「お、おう。なんか軽いな」
帽子被った青い髪のツインテールの少女が、きゅうりを咥えてサムズアップしてきた。
「こんな女の子が河童ぁ?冗談キツいぜあややん」
「あややん?いや、まぁいいです」
「私が知ってんのはもっと化け物みたいな奴なんだけど」
「失礼だね、私たちは正真正銘河童だよ。この人が前言ってた毛玉かい?」
「はい、白珠毛糸さんです」
「へぇ、毛玉ねぇ」
きゅうりを食べきったにとりがなんか申し訳なさそうな顔で見てくる。
「そんな顔してどうしたのよ」
「いやぁ、昔毛玉を気持ち悪い!って叫びながらこう、やっちゃったことがあってさぁ、なんか申し訳ないなぁって」
尊きもじゃの犠牲が発覚いたしました、毛玉殺害罪で逮捕致す。
「別にいいよ、気にしないし。それで文、私をここに連れてきた目的は?」
「あ、呼び方戻った。はいそうですね、毛糸さんならこの河童たちの作るよくわから………珍しい物を気に入ってくださるかと」
「おい今よくわからない物って言おうとしただろ、失礼だなぁ、私たちが作ってるのはとても素晴らしい論理に基づいたものだぞ」
「やれやれ、それも自分で見たら素晴らしいかもしれませんが、貴方たち河童以外から見れば変な論理なんですよ」
「言ってろ言ってろ、私たちの研究は上でふんぞり返ってる天狗どもにはわからんさ」
「他者との関わりも無視する協調性のない種族のことなんてわかりませんよ」
「なんだとこの鴉がぁ、やってやろうかこんにゃろう」
おう………なんかギスギスしてらっしゃる。
なんでみんな人を無視して言い争い始めちゃうのかなぁ?
もっと平和にいこうよ、平和に。
「だいたいこんな白くなったまりもに私達の研究がわかるわけないだろ!」
「誰が歳食って白くなったス○モじゃコルァァァ!!」
「はぁ………もう帰っていいかな?」
「ま、まぁそう言わずに、ひとまず見ていってくださいよ」
「ちょっと休憩しようか、疲れたよ」
三人揃って叫び散らしたあと、なんやかんやあってなんとか和解した。
私も火に油を注いだ気がするけど気のせい気のせい。
「はぁ………で、にとりたちはなにを作ってるの?」
待ってました!って感じのわかりやすい表情を浮かべるにとり、なんか可愛いな。
「よくぞ聞いてくれた!じゃあこっちへついて来てくれたまえ!案内しよう!」
「ちょ、ちょっと待ってください、もうちょっと休ませて………」
「しばらくここで休んでたら?先行っとくからさ」
「早く早く!」
「そう急かしなさんなって、今行くから。はぁ………元気だなぁ」
疲れ切った感じの文を置いて、にとりの後について行った。
「………よし、先に帰っときましょ」
「さぁここが、私達の研究の成果が詰まった神聖なる聖地だ!」
「おー、ただの小屋だねぇ、いい造形してるじゃないの」
「いや、建物じゃなくて中を見て欲しいんだけど」
うっさいなわかっとるわい、こちとら豆腐ハウスもろくに作れないんじゃ、少しくらい見させなさいよ。
入り口を入ったその先には、どこか見覚えのあるものがたくさんあった。
「どうだい!?これが私達が永い間作り上げてきた研究の成果だ!心が躍り血が沸き立つだろう!じっくり見てくれたまえ!」
「………ふーん」
研究の成果、ねぇ。
なんだろうこの、なんとも言えない感じは。
「えっと、この刃物が引っ付いてるやつはなに?」
「それはだね、この棒をこう回すと、そこの刃が回転してそこの台に乗っているものが三等分に切り刻まれるのだ!」
「なにするのそんな危なっかしいの」
「そうだな、例えば獣などを加工する際に、速度をつければ骨まで丸ごと一気に切れる!ほら!便利だろ!」
「ほーん………」
いや、それただの精肉機じゃないの?
いやでも、現代のあれこれに見慣れてるから反応が薄いのであって、実際はこれ………
「このレバーを回すだけで刃と下の台が勝手に回転するようになってるのか、下の台はベルトコンベアみたいだな。お?なんか印がある。そっかこれ、どこにおけば勝手に流れて刃で切られるのがわかるようになってるのか。その辺の微調整もしてあるのね。そしてそれをレバー一本でやってるのか。中には歯車とかもいっぱい詰まってるのかな?技術の使う方向性があれな気がするけど、これはなかなか、いや、私なんかとは比べ物にならないほどの技術力………恐るべし、河童」
「………えっと、つまりそれは、どう受け取れば」
「凄いよ、河童。こんな物を作るなんて」
「おぉ………おー!!そうか!わかってくれるか!いやぁ、今まで他人にこういうの見せることは無かったが、理解してもらえるってのは嬉しい物だなぁ!私はちょっと涙が出てきたよ」
それは大袈裟じゃ無い?
まぁでも、確かにこれはすごいなぁ。
あれ?なんか頭が痛くなってきた………しまった、脳のスペック低いのになんか頭良さそうな感じ出そうとしたから許容限界を超えそうになったか。
「まだまだ見せるものはある!まだまだ見て行ってくれ!まだまだ日は落ちない!さぁ!共に行こうではないか!我が盟友よ!」
「あんまり一人で突っ走んないでよぉ」
この後めちゃくちゃ見学した。