毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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とりあえず頭は隠す毛玉

「………ちょっと早く来ちゃったか?」

 

私としたことが浮かれて急ぎすぎてしまったようだ。いや、そんなことはないけど、ないはずだけど。

待ち合わせってあんまり好きじゃないんだよなあ……集合場所間違ってないかなーとか、日付間違ってないかなーとか。

ついて誰かいればいいけど、どうせ行くまでの道で悶々とすることになるし……誰もいなかったらもう絶望ものである。

 

つまり今の私は待ち合わせの場所にきたのにも関わらず誰もおらず絶望している。誰か助けて、私の知り合いきて。

 

そのまま、多分20分くらいの時間が流れた。

 

「おぉ、早いな」

「まあ待ち合わせの時間がお昼時って言うあやふやなもんですからね……念のため早く来たら早すぎちゃった感じ」

「アリスはまだなのか」

「みたいっすね」

 

慧音さんが人里から出てきた。

待ち合わせの場所は人里に入る門の近く。慧音さんの付き添いがないと人里へ入らない……わけではないが、なんか面倒ごとが起きても困るので慧音さんも一緒に行くことになっている。

 

「世間話でもして暇を潰そっか」

「そうだな、そうしよう」

 

慧音さんと他愛もない話を始める。

最近何があったかーとか、人里でこんなことがーとか。

そういえば慧音さんにはまだ見せていなかったので、手のひらドリルを見せておいた。びっくりしてた。

もうこれ持ちネタにしようかな…結構みんな驚く。

 

そうこうしてるうににアリスさんもやってきた。

 

「あれ、待たせた?」

「いや、私もさっき来たところだ」

「めっちゃ待った」

「あなたはどうせ浮かれて早く来すぎたとかそんなのでしょ」

「そっそそそっそっそんなわけないじゃん」

 

だってこの三人で集まって人里に行くことなんて初めてだし……そりゃあちょっとドキドキしますやん!

 

「それじゃあ行こうか」

「そうね」

「ゴーゴー」

 

かくして、人外3人組は人里へと乗り込むのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「おー!ぜんっぜん変わんねー!」

「そうか?私からすればかなり発展しているんだが…」

「毛糸の言うことは支離滅裂だから気にしなくていいわよ」

「アリスさんさっきから酷くない?」

「いつものことでしょ」

「そういやそうでした」

「そうなのか…?」

 

まあ変わってないと感じるのは私が期待しすぎているからだろう。

数十年も人里に訪れないことなんかザラなんだから、ちょっとぐらい現代みたいに発展してるでしょ、みたいに決めつけているから何も変わらないと感じる。

 

現代日本が変わったのは文明開花とかそういうのがあったからであって、外界と遮断されているこの幻想郷ではそんなものが起こることもない。

まあ独自の文化が段々と発展している感じはする。

 

周囲の光景を見てみると、まあ人でごった返している。

年月が経つ度に人が増えていっている。まあ人口増加はいいことだ。

妖怪が積極的に人間を襲わなくなったことも関係しているのだろうか。まあ迂闊に人里の外に出たりしたら妖怪の餌になりにいってるようなもんだから、死んでるのを見かけることもあるが。

 

結局逆らうやつってのはどこにでもいて、人間を見つけてすぐに殺そうとするやつや、じみーに危害を加えるやつとかいろいろいる。

そういうのは、かの有名な博麗の巫女様が退治しているらしい。私は人間にすごい友好的だから退治される心配はないね!!うん!きっと大丈夫!

 

私たちの見た目はやっぱり目立つのか、結構視線を集めている。私は一応フード被ってこのもじゃもじゃ頭をちょっと隠してるけど…まあそれでも髪色は白いし目立つだろう。しっかり見たらもじゃもじゃということもわかるし。

アリスさんは人形を操ってはいないが身につけてはいる。

 

うん、やはり黒髪ばかり見てるとここは日本なんだって感じするよね。横には金髪魔法使いと白髪半妖がいるんだけども。

 

「慧音、人間たちの妖怪への感情はどうなってるの?」

「そうだな……やはり少しづつ恐怖が薄れている感じはするな。もちろん根強くそういう感情が残っている者もいるがな」

 

まあ幽香さんとか普通にまだまだ恐れられてそうだが。

結界…博麗大結界だっけか。まあ張られてからそれなりに年月経ってるけど。

あれが張られてからどうやら私たち妖怪の存在がちょーっと変わったらしく……なんかよくわからんけどそこまで恐怖が必要じゃなくなったらしい。

原理とかは頭痛くなりそうだから考えないことにする。思考放棄が安定策だ。

 

「何人か、ここを出入りしている妖怪もいる」

 

私たちを差し置いて?

いや、ずーっと人里に近づかずにいた私が言えることじゃないけど。

きっとそいつらはちゃんと信頼を勝ち取って入ることを許されたんだろう。もしくは隠れてこそこそ入ってるか。

 

「ま、私もこれからは人里にちょくちょく出入りしようとは思ってるんだけどさ」

「そうなの?」

「うん。いい加減白いまりも妖怪とかいう噂をなくさなきゃならん」

「あ、そっち」

 

私はまりもじゃない毛玉だ。

というか、なんで毛玉より先にまりもが出てくるわけ?この幻想郷には毛玉いるのになんでいないまりもが湧いてくるわけ?

毛玉の別名まりもだったりする?

 

「あぁその噂なんだがな。今人里ではその妖怪が毛玉なのか毬藻なのか、よく議論されているんだ」

「………へ、へー」

 

滅ぼしたろかこの猿どもめ。

毛玉だろうが、色とか見てもどう考えても毛玉だろうが、なんでそうなるのよ。

 

「所詮私はまりも妖怪よ……」

「今度髪の毛緑色に染める?目に優しい色に」

「今度は何飲ますつもりだあんた」

「最近飲んでくれないからストックが結構あるのよね」

「捨てろや、私使って処分しようとするなこんちきしょー」

「君たちは何の話をしているんだ……?」

 

慧音さんが困惑してらっしゃる。

まあこの3人で集まって何かするのは初めてだし、私とアリスさんの関係を知らないのも当然だろう。

アリスさんは他人で実験しようとするやべーやつ。

私はなんやかんやで怪しい液体口にするやべーやつ。

 

世の中やべー奴ばっかよ。

 

「しっかしみんな元気そうだねえ。私の記憶じゃ薄暗い表情してるやつも結構多かったけど」

「まあ、妖怪に怯える必要が少し減ったってだけでも大違いだと思うわよ。妖怪といえば人を襲うってイメージ強いし、とにかく危ない奴らって思われてるわ」

「まるで自分は妖怪じゃないかのような物言い」

「私は魔法使いよ」

「そういやそうだった」

 

魔法使いねえ……アリスさんどちらかといえば人形使いなイメージの方が強い。

人形劇とかすればウケそう。金取れそう。というか普通に見てみたい。金払うからやってほしい。

 

「……ん?あそこすごい行列」

「あぁ、あそこは……ほら、覚えていないか?」

「覚えてって………何?」

「あのお婆さんのだよ」

「おば……」

 

お婆さん……お婆さん……

 

ヘイカモン私!お婆さんって誰!?知り合いみんな若々しい女性ばかりだから全く記憶にございません!!

 

『君ねえ……はいはい、わかったよ』

 

ふむ……あー!あの!あのおばちゃんね!

私が初めて……初めてはりんさんに連れられてだったか。懐かしい。

それはそれとして、私が慧音さんに連れられて人里を訪れたときに出会ったあのおばちゃんだ、いやー懐かしい。

 

「あの人の……めっちゃデカくなってるね!?」

「あの頃からずっと店は続いているからな。今日は特別繁盛してるみたいだか、それでもいつも人がよく訪れているよ」

「ほえぇ……そっか、あのおばちゃん大昔に死んでんのか……」

 

悲しくはないけど、少し寂しくはある。

ついさっきまで忘れていた身だが、もう一度あってみたいものだ。

 

てことはいつも慧音さんに頼んで買ってもらう饅頭ってあそこのなのか?……並ばせてるならちょっと申し訳ないな。

というかそうだよ私いつか金返さなきゃじゃん。いやでも私お金持ってないじゃん。

働く……?この私が……?

働きたくないでござる、絶対に働きたくないでござる。

 

「あぁ、前に毛糸が持ってきてくれた饅頭ってあそこのなのね。美味しかったわ」

「誰に渡しても基本喜んでくれるからね、あそこのは間違いない」

「そうだな、あれでいて手頃な値段だからな、いい店だよ」

 

3人で一斉にあの店を褒める。

ありがとうおばちゃん、あなたは偉大だ。

 

 

 

 

 

 

 

「ん?」

「どうした?」

 

引き続き人里を散策していると、やたらとデカいお屋敷が目に入った。

………表札あるし。

稗田…?

 

「稗田さんってなに?偉い人?」

「あぁ、稗田家か。あれはまあ、なんというか……まあ、偉い人と言えば偉い人だな」

「稗田……あぁ、あれか」

 

アリスさんが一人で納得がいったように呟く。

 

「なんだっけ、幻想郷縁起だったかしら。それ書いてるのよね」

「幻想郷?縁起?なんのこと?」

「まあ、簡単に言うと妖怪のことを記した本ね」

 

……辞典?

 

「あなたのことも書かれてるんじゃない?毬藻妖怪として」

「よーしちょっと殴り込みに行ってくるわ」

「落ち着け、ちゃんと毛玉って書いてたから落ち着いてくれ」

「うっす」

 

というか書かれてたんだね私のこと……本人の許可取ってねえぞオラァ!!くっ、幻想郷に法律があれば訴えられたのに…!

 

「てか私変な内容書かれてないよね」

「自分が毬藻だと言うことを受け入れられない自称毛玉て書いてるんじゃない?」

「ちょっと爆破すっかー」

「頼むやめてくれ。アリスも煽るようなことは……」

「どうせ口だけよこの子」

「あぁん?…そうだよ」

「そ、そうか……ならいいんだが。一応言っておくと君の内容に関しては私が情報源だから変なことは書いていないぞ」

「あ、そうなんすか。じゃあ安心」

 

それにしても幻想郷縁起かあ………そんなのあるんだね。

というか、人間側が出版してる奴なら内容も人間側に偏るんじゃないの?

いや、ほぼ人間しか読まないんだったらそれでもいいのか。

まあ機会があったら読ませてもらおう。

 

 

 

そのまま歩いていくと、またもや目を引く建物があった。

なんというか、他と作りが違うだけなんだけれども。

 

「あれは?」

「あれは寺子屋だな」

「あそっか、もうあるのか。慧音さんはあそこで?」

「あぁ、子供たちに色々とな」

 

以前に寺子屋で色々教えているとは聞いていたが、ここかぁ。

子供に色んなことを教えるのは慧音さんの数百年前からの夢だったはずだし、叶ってよかった。

それもこれも本人の努力のおかげだろう。

 

まあその寺子屋は今日は休みのようだけれど。

でもなあ……勉強かあ……いいな、そういうの。私も慧音さんになら勉強教わりたい、教えてください。

 

「……あ、すまない。用事があったのを思い出した」

「忘れ物?」

「そんなところだ。少し待っていてくれ、すぐに戻る」

 

そう言って慧音さんはそそくさと建物の中に入っていった。

 

「寺子屋かあ……」

「なに、行きたいの?」

「いやそういうわけじゃ」

 

というか、読み書きも計算も人並みにはできてるはずだから、行ったところでって感じする。

 

「あなたちっさいんだから混じっても案外バレないかもよ」

「この頭で?バレないと?」

「黒くする?」

「何も飲まんぞわたしゃ」

 

第一毛染めするなら普通に染めればいいじゃん、なんで口から体内に入れて染める必要があるんだよ。

 

「全くさあ………なんか見られてない?」

「見られてるわね」

「どこから?」

「あそこ」

「………子供じゃん」

 

なんか子供たちが不思議なものを見る目でこちらを見てみる。

アリスさんが手招くと恐る恐るといった様子でこちらに近づいてきた。

 

「あ、あの……」

「何か用かしら」

 

一人の女の子が私たち二人を何度も目を動かして見つめる。

 

「慧音先生の友達なんですか?」

「…まあ、そんな感じかなあ」

 

私がそう言った瞬間、子供たちの目つきが変わった。

これあれだ、好奇心が溢れてしかたないって目だ。

 

「その髪ってやっぱり妖怪!?」

「何歳なの!?」

「変な頭!」

「その人形は何!?」

「慧音先生より強い!?」

 

畳み掛けてきよった。

 

慧音さん以外の妖怪を知らないのか、私たちに興味津々のようだ。あと変な頭って言ったやつ顔覚えたからな。

 

「えーっとね、私たちは…ちょ何触ろうとしてんの!」

「それ刀?やっぱり刀?」

「そうだけど触っちゃダメ」

「お人形さんかわいい!触っていい?」

「いいわよ、ほら」

 

あかん、元気すぎる。

これが若さの力か……恐ろしい…

アリスさんは人形に女の子が釘付けだし、私はりんさんの刀に男子が興味津々だし……

 

慧音さんはよ来て……

 

 

 

 

 

慧音さんが私たちを見つけた瞬間険しい表情になったのを見た子供達は一目散に逃げ出した。

後で怒られるぞ、どうせ。

 

「すまない!私がいない隙にあいつら……」

「いやいや大丈夫だよ、慧音さんも好かれてるんだね」

「あなたやたら髪の質問されてたわね」

 

そりゃあ人間の子供達からすれば私の頭なんて初めて見る動物みてえなもんでしょうよ。

 

「何か悪さはしなかったか?」

「普通にいい子たちだったわよ」

「まあ普段相手にしてる妖精達に比べたら可愛いもんかな」

「そうか、ならよかった」

 

あいつら霊力弾飛ばしてくるんだもん……普通の人間の子供と比べたらいかん。

 

「そろそろ帰るわね。別に一度でそんなに回る必要はないし」

「あーそっか。じゃあそうしようかな」

「わかった。いつでも待っているよ」

 

少しずつ認知度上げて、安全な妖怪だってことをわかってもらおう。

そして何よりまりも妖怪という噂を根絶するのだ。


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