毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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2周年です、活動報告書いたので気が向いたら見てやってください


毛玉はめんどくさがる

「できた!家できた!」

「あぁそう………」

 

魔理沙のために家を作ってあげることになり、作り終えたのでアリスさんちに報告に来た。

 

「……流石に早すぎない?」

「めっちゃ頑張った」

「家とか言って本当は小屋とか」

「家だよ、あれが小屋だったらこの家も小屋だよ」

「いやでも早すぎるでしょ……開いた土地があるわけでもないのに」

「爆破して整地した」

「建材とか色々あるでしょう」

「河童で済ませた」

「家作ること自体時間が…」

「河童で済ませた」

「全部河童じゃないのよ。それじゃあなに、河童に魔法の森まで足を運ばせて作らせたってわけ?」

「いや普通に妖怪の山だけど」

「え?」

 

私が一人で家なんて作るわけなかろうて。

 

「じゃあその家は今は妖怪の山に……」

「チッチッチ……私の特技をおわすれかな?」

「特技?日常的に腕を生やしてること?」

「ちげーわ、物を浮かせられる能力ですー」

「あったわねそんなの」

 

嘘…私の能力、存在感なさすぎ?

 

「……てかあなたまさか…….」

「そう、そのまさか。家を妖怪の山で河童に作らせてから浮かしてここまで持ってきてやったぜ!へっ!」

「とうとうやったわねあなた、やりやがったわね」

 

だってこっちの方が楽なんだもん!

家を丸ごとでっかい木箱で動かないように固定しながら持ってきてやったぜ!疲れた!

 

「一応地盤とか耐久性とか色々考慮した上でだよ?妖怪ならともかく人間なら変な家作って崩れて圧死されても嫌だし……」

「……信用ならないから後で私が確かめるわよ」

「どうぞどうぞ」

 

まあ本人が使ってる間に色々改造することだろう、私も結構いじってるし。

 

「ってか、魔理沙は?」

「奥の部屋で一人練習してるわよ」

「あぁそう、いっつもやってんね」

「まずは魔力の扱い方からね。あの調子じゃ霊力もまともに扱ったことなかったんじゃない?」

「普通の人間は霊力なんて気にして生活しないし」

 

それこそ今人里で戦える人間なんてほぼいないんじゃなかろうか。自警団みたいなのはいたけど、陰陽師とかそう言う奴はめっきり見なくなったし……その辺は多分博麗の巫女に置き換わってるんだろうけど。

 

「それにしても……」

「ん?」

「ほら、魔理沙って人間じゃない」

「そだね」

「魔力量が成長してもそこまで多くならなそうなのよね」

「それが?」

「……そういやあなた、妖力量は多いし妖力自体も強かったわね」

 

呆れたような目で見られる。

なんか最近色んな人にその目されるんだけど、私泣いちゃうよ。

 

「魔力って、誰の魔力であっても大した差はないのよ」

「はぁ」

「つまり量が大事って話」

「なるほど」

「つまりあなたみたいに妖力の強さと量にものを言わせためちゃくちゃなことはできないってことよ」

「あぁそういうこと」

 

別にめちゃくちゃなことする必要ないと思うですけども……

 

「あの子派手好きだし…」

「というと?」

「あの子、多分適正で言えば水魔法の方があるんだけど」

 

なんか魔法に適正とか水魔法とかいう属性とかの知らない話出てきたけど黙っておこう。

 

「やたらと光の魔法を好むのよね、頑固なくらい」

「まあ本人の好きにさせればいいんじゃないの」

「だから奥で好きなようにやらせてるのよ」

 

光の魔法ってなんなんだろうか、白魔法とかその辺だろうか。

いや、私の知ってる白魔法は別に派手でもなんでもないけど。光……星とか?

 

「まあその辺の話私さっぱりだからアリスさんに任せるわ」

「あの子私が何か教えようとしたら嫌がるから私も大したことしてないわよ」

「そういう年頃?」

「さあ、私のこと嫌いなんじゃない?」

 

まあそういう性格なのだろう。私も好かれているという気はしないが。橙に似たようなものを感じる。

 

「あなたたちのせいで随分家が狭くなったわよ」

「賑やかでいいじゃない」

「よくないわよ」

 

二人して暇になったので机に突っ伏す。

 

もうこのまま寝ようかなと思っていると、家の外から気配を感じた。

人間……じゃないな。妖怪だ、多分。

 

「あなた見てきなさいよ」

「えー?しゃあないなぁ……」

 

立ち上がって扉の前に立つ。

ふむ……ノックしてくるのかな。

と思ってたら突然扉が開けられた。

 

「突然押しかけてすまな……うわすごい頭」

「まりもって言ったら氷漬けにして爆破してやるからな」

「な、なんの話?」

 

相手は男性だった、妖怪の。

白髪に眼鏡をかけている、結構珍しい風体だ。

 

「君がこの家の主かい?」

「いや私じゃなくて奥で暇そうにしてる人」

「そうか、突然押しかけて済まない、ここに人間の子がいると聞いて」

 

何やら焦っているようだ、魔理沙のことを聞いているようだが…まあ敵意とかは感じないし善良そうな人だが。

 

「まずは名前を名乗ってくれないかしら」

「あぁすまない、僕は森近霖之助。君たちは…アリス・マーガトロイドと白珠毛糸だね?」

 

どうやらこっちの素性は割れてるらしい。どこから情報仕入れてきたのか……私はともかくアリスさんのことを知る方法なんて……人里くらい?

 

「それで、あなたは何の用でここに?」

「いや、ここに魔理沙がいるって聞いて、それで……」

「…まあとりあえず座って話しましょう」

「そうさせてもらうよ」

 

また一人増えた。

家の中はまた一段と狭くなった。

 

 

 

 

 

「改めて、いきなり押しかけてしまってすまなかった」

「まあそこはいつも急に訪ねてくるもじゃもじゃいるから慣れてるわ」

「ゔっ…」

 

座って落ち着いた様子の霖之助って人。とりあえず魔理沙の所在が掴めて安心したらしい。

 

「とりあえずこっちの事情を話さなければならないね……僕は霧雨さんに昔お世話になっていて、魔理沙とはそこそこの付き合いなんだ」

「あ、それで家出て魔法の森にいるって霧雨さんに聞いて、心配になってここを訪ねてきたと」

「そういうことになるね」

 

そのあとも何やら話を聞いていると、この霖之助って人は魔法の森の入り口あたりに店を構えているそうな。

いや、全然知らんかったんだけど……いや、なんかそれらしい建物があったような……

まあとにかく、魔理沙が心配でいてもたってもいられず来てしまったという話だ。

 

「で、魔理沙は今どこに」

「奥で魔法の研究と練習」

「そうか……とりあえず無事だと確認できてよかったよ。邪魔をするのも悪いし、出てくるまでここで待っていていいかな」

「どうぞどうぞ」

「ここ私の家なんだけど、何あなたが勝手に許可してるのよ」

「ちっさいこと気にすんなって」

「………」

「………何か?」

「あぁいや、別に」

 

なんか霖之助さんにじろっじろ見られた。

 

「随分と温厚そうな人だなと思って」

「気をつけた方がいいわよ、そのもじゃもじゃ何かあったらすぐ妖力で全てを吹き飛ばそうとするから」

「失礼なこと言うなよ、氷漬けにしてから爆破だし」

「変わんないわよ」

 

実際爆破する相手は選ぶけども。

 

「私ちょっと魔理沙の様子見てくる。黒焦げになってないか心配だし」

 

そう言って席を立って奥の部屋へと向かう。

魔理沙はまだ子供だし、人間だし、色々と心配になる。

手足もげてないかなーとか、腹に穴空いてないかなーとか、黒焦げってないかなーとか、下半身なくなってないかなーとか。

いやそうなってたら大半死んでそうだけども。

 

「魔理沙ー、入るぞー」

「ん、もじゃまりか」

「お前今なんつった」

「もじゃまり」

 

なんか新しい呼び名増えた………

 

「毛糸って呼べ、毛糸」

「えーなんで。いい名前だと思うのに」

 

しろまりとかもじゃまりとか……しろともじゃはいいよ?まりってなんなん、なんでみんなまりって付けたがるんよ。

 

「調子どう?」

「ぼちぼちー」

 

子供ってのは純粋なのか、あんまり警戒されていないようだ。

人里の他の子供もそうだったけど、妖怪の恐怖ってものをあんまり知らないのだろうか。大人とか結構私の姿見てビクッてなるやついるんだけども。

 

周りには開きっぱなしの本が乱雑に置かれている。

 

「今何してんの?」

「星の弾幕作ってる」

「星?」

「ほら」

 

そういって魔理沙は手のひらに星形の魔力弾を作り出した。

 

「おぉ……すごいな……私そんなんできねえわ」

 

というか弾の形変えるとか考えたことなかったな……当たれば同じだし、見た目とか心底どうでもいいと思ってたし。

てか殴った方が簡単だし。

これからの世代はそう言うこと考えずに、華やかさとか派手さとかを追求するようになるのかね……

 

「そういや人来てるよ」

「誰?」

「霖之助って人?」

「こーりんか!?いく!」

「あ、おい。……子供って元気だね!」

 

私もそんなに年取ってるつもりはないが……若いっていいね。私も昔はあのくらい元気だったのかなぁ。

 

『昔の私は元気というよりうるさいだね、今も大して変わらないけども』

 

昔……なんだろう、やたらと前世の知識にあること連呼した記憶が………あの頃は飽きるほど言ってたけど、誰にも通じないって悲しいよね。ただ滑ってるだけの変な人になってたよ。

いつからか心の中に留めておくくらいになった。

 

「はぁ……」

 

なんか無性に寂しくなってきた。

 

「何ため息ついてるのよ」

「アリスさん…いやちょっとね。魔理沙と霖之助さんは?」

「なんか二人で楽しそうに話してたから、空気を読んでね」

 

これができる女か……

あの二人がどういう関係なのかは知らないが、部屋を飛び出していった魔理沙の様子を見る限り親しい関係なのだろう。

 

「霖之助さん人間と妖怪のハーフなんですって」

「へぇ、慧音さんみたいだ」

 

妖怪なんてこの世界に掃いて捨てるほどいるが、半妖ってのはなかなかいない。

てかそんなもんどこでできるのやら……人間と妖怪がくっついたってこと?そりゃあ珍しいわけだ。

まあ先天的だったり後天的だったり、いろいろあるらしいが。

 

「魔理沙の魔力量の話だけど、なんとかなりそうよ」

「へ?あ、ふぅん」

「霖之助さんって道具を作るのが得意みたいで、魔理沙のためのマジックアイテムを作ろうとしてるんですって」

「へぇ」

 

マジックアイテムかぁ……魔道具的なあれ?

魔力増幅装置みたいなのでも作るのだろうか。

………私の義手に似たようなのつけられないかな。

 

「まあもとより私には何もできないことだったし、適当に任せるよ」

「それはそうだけど、家のことはあなたが魔理沙に伝えなさいよ」

「あー………うん…………めんどくせぇ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、これがあなたの新しいお家です」

「おー!」

「浮かせて持ってきたっていうからどんな家なのかと思ったけど、案外普通ね」

「ごめん、今浮かせて持ってきたって言った?どういうこと?」

「霖之助さん、知らなくていいこともあるんだよ」

「え?あ、うん……?」

 

霖之助さんも家を見ておきたいとのことでついてきた。

とりあえず雑に紹介しておこう、面倒くさい。

扉を開いて中を見せる。

 

「内装はまだないそうです!」

「………」

「………」

「………」

「ちょっと死んでくるね!」

「いいから早く続けなさい」

「うっす……」

 

自分の発言に後悔しながら中を案内していく。

と言っても部屋のある場所とか台所とか寝室とかを見せただけなんだけども……

それにしても流石は河童、立派な作りだ。

 

「割と洋風な作りなんだね」

「そっすね。アリスさんの家を一応真似た感じにしたんで」

「でも魔理沙一人で使うには少し広くない?まだ小さいんだし」

「小さくない!」

「魔法の実験とかするならスペースとか結構必要でしょ。保管庫とか、実験用の部屋とか。その辺のこと加味した上でこの広さってこと」

 

それに成長していけば家も狭く感じることだろう。

 

「ちなみに拘ったポイントは冷蔵庫です。太陽光発電で動く優れもの。このために日当たりのいい場所を選びました」

「私もそれ欲しいんだけど」

「僕も欲しいな」

「私の特権な!」

「私も持ってるけどね」

 

水道電気ガスが通ってる世界ならともかく、この世界で人里の外で暮らそうとすると……もうほんっとうに色々めんどい。

ただこの森は基本どこにいても湿度が高いので、食べ物とか腐らないようにという配慮である。

 

「まあ家具とかはまだまだなんだけども……」

「あぁ、その辺は僕に任せて欲しい」

「あ、ほんと?じゃよろしく私帰るわ」

 

もうね、疲れた。

大きければ大きいものほど浮かせる時に霊力を使うわけで。

家とかいうバカみたいな大きさのものをゆっくり慎重に運んできたわけで。

妖力と霊力と精神がすり減ってる。

 

「帰る前に一ついいかな」

「はい?」

 

窓を開けて飛び出そうとしてるところを霖之助さんに呼び止められた。

流石に玄関から出た方がよかったか?でも早く帰りたいんだ私は。窓をぶち破らないだけ配慮してる方なんだ。

 

「僕の店は色々取り扱っていてね、珍品とか多いから気が向いたら見にきて欲しい」

 

珍品…?怪しい壺とか怪しい石とか怪しいお守りとか?

 

「非売品も多いけど外の世界の代物も置いてあるから、見にくるだけでも……顔が近いな」

「外の世界って言った?」

「言ったね」

「よし今度お邪魔するわそれじゃあ」

 

さっさと窓から飛び降りて家の方へと飛んでいった。

 

外の世界のもの……何があるのかわからんがとにかくめちゃくちゃ気になる。

今度気が向いたら行ってみるとしよう。


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