毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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『宙に浮く程度の能力』

「ん?何これ」

 

いつものように朝起きて朝ごはんの支度しようとしていると、机の上に2枚の紙がおいてあった。

手紙と地図?わざわざ家の中に侵入して机の上に置いたの?んなめんどうな……

その紙からは妖力とかは特に感じなかったので、普通にそこに書かれている文を読んでみる。一応術とか掛かってないかは確認しないと。

 

えーと、なになに…?

 

今日のお昼時、ここで待ち合わせ。

絶対来てね。

ゆかりんより

 

「oh………no……」

 

ゆかりんって……紫さん?

地図には……人里から少し離れた場所にバツ印がついている。

なんなのだろうか、罠だろうか、殺す気だろうか。

 

いやしかし、紫さんの名を語る全く違うやつって可能性も……いやそんなアホなやつこの世界に…割といそうなのが困る。

てかゆかりんってなに……

 

「行かないとダメなやつよなぁ……絶対来てねって書いてるもんなぁ……」

 

お昼時……とりあえず朝ごはんだけ食べていこう。

 

そういや以前に藍さんが、紫さんが私を使って何かしようとしてるとかなんとか言ってたような……その件だろうか。

 

とりあえず最後の朝ごはんになるかもしれないのでしっかり食べよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここかぁ…?」

 

一応待ち合わせの場所にはこれたはず……でも紫さんが出てこないな。……流石に寝てはないと思うけど。

 

しっかしなんでこんなところに……てか私に何をさせるつもりなのだろうか。

 

「思えば今まで散々色々やらかしてるし……」

 

あれだろうか、お前は自由に好き勝手やりすぎたって感じで始末されるのだろうか。

いやでも藍さんが命をとるようなことはしないはずって……いやでもそもそもの目的が私の始末だったら……

 

ええい落ち着け私、あの文面は明らかにそう言う感じのものじゃなかっただろ。ゆかりんとか書いてただろ。

 

てかここ本当にただの森の中だな……何かないか見てみるか。

 

「あの山…」

 

山とは違うような気もするが、結構高いところに建物があるのを見つける。

あれか、あれがかの有名な博麗神社か。

絶対妖怪殺す巫女さんがいるというかの有名な博麗神社か。

随分高いところにあるんだなぁ。

 

願わくば、博麗の巫女なんかと遭遇しないことを……

 

「あ?」

「へ?」

 

なんか人と鉢合わせた。

紅白の巫女服……なんかひらひらがついてる棒……強い霊力…

 

「どうもこんにちは」

 

とりあえずだけして穏便に…いきそうもない。

相手は手に持っていた棒をぶんと振ってきた。警戒はしていたのでそれは避けたが間髪入れずに投げてきた針は避けれずに、やむを得ず左腕の義手で弾く。

妖怪退治をしてる奴は大体武器とか道具に対妖怪用の術とかなんかを仕込んでることが多い、多分。

だから出来るだけ体で受けずに避けたり義手で弾いたりすることを心がける。

 

「すみません話だけでもしません、かぁっ!」

 

説得しよう試みるも、話をしてる途中にでっかい霊力弾が放たれた。

氷の壁を目の前に生み出して、さらに氷の剣を作って妖力を流しておく。

その霊力弾は氷の壁を簡単に砕いたが、思いっきり氷の剣を振ると真っ二つに割れて消えた。

 

「話をしよう!話せばわかる!きっと分かり合えるよ私たち!」

 

あ、ダメだこれ聞いてくれねえわ。

なんかお札飛ばしてきたもの、霊力こもってるやつ。

氷の剣を蛇腹にして振り回して、私の方に飛んでくるやつを叩き落とす。

 

……全力で走れば逃げれるか?

 

「っ!?」

 

どうやらお札を飛ばして、私がその相手をしている間に背後を取られていたらしい。

後ろを振り向いた瞬間に回し蹴りを頭にくらって吹っ飛んだ。

ついでに針も飛ばしてくるあたり追撃にも余念がない、体を浮かして霊力を放出、軌道を無理矢理変えて避けたが。

 

「首変な方向に曲がったしもう……」

「…再生能力が高いやつか」

 

首をいじって元に戻していると、何やら分析されているみたいだ。

 

「だったらどうなのさ」

 

そうは返してみたものの、相手の霊力がどんどん練り上げられていくのを感じる。

こちらも妖力を放出し備えておく。

 

「一撃で消滅させる」

 

お、おう……あかんあれ目がマジや。

博麗の巫女の頭上に大きめの霊力弾が一つ生成される。

大きさこそ大差ないが、さっきのそれとは威力が格段に違うだろうということがわかる。

食らったらひとたまりもねえなあれ……マジで消滅するんじゃね。

対妖怪特化ってやつか、食らったらまずいってのが肌で感じられる。

 

こっちはこっちで大きな氷の槍を生成する。

出来るだけ頑丈に、妖力を流し込んで強固に、形を整えてより貫通するように。

 

「消えろ」

「断る」

 

博麗の巫女が放った霊力弾と私の氷槍が正面からぶつかる。

 

「……は?」

 

ぶつかると思っていたんだけど……二つともどこかに消えてしまっていた。最初からそこになかったかのように。

 

あたりに轟音が響き空を見上げると巨大な爆発が起こっていた。

 

「そこまでよ」

 

聞いたことのある声。

同時に空間の裂け目のような場所から金髪の女性が姿を表した。

 

「紫…今までどこに」

「紫さん……何してたんですか」

「寝坊しちゃった」

「………」

「………」

 

なんかあの人とと心が通じ合った気がする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「人に会わせるならそう言ってくださいよ……てか博麗の巫女さんも急に襲いかかってこないでください」

「そりゃあ突然の目の前に頭もじゃもじゃの妖怪が出てきたら警戒するだろ」

「警戒どころか消滅させようとしてたよね?」

「そうだな」

 

こいつ…隠さねえ……

この博麗の巫女さん、見た目は長い黒髪に黒い目と普通なのだけれど、なんせ持っている霊力がその辺の人間とは明らかに違う。

なんかこう、本能が危険だぞって伝えてくる。

思えばりんさんもこんな感じの霊力だったような気がしないでもないが……こっちは鍛えられた感じというか、そんな感じがする。

修行ってやつか。

というか………

 

「似てる………」

「ん?」

「いや、なんでも」

 

雰囲気というか、なんというか……顔も似ているわけではないのだけれど。

りんさんの面影を感じてしまう。

同じ博麗の力を持っているからだろうか……てか脇出してるのね。

りんさんも博麗の巫女になってたらあんな巫女服着てたのだろうか………

なんか私の中のイメージが壊れるから想像するのはよそう。

 

「てかここ私いていいんですか?神社ですよね?」

「いいのいいの、どうせ参拝客なんてろくにこないし」

「おい」

 

こないのか……参拝客……

まあ確かに結構高い場所だが……ただの人間がくるには少々ハードルが高いんじゃなかろうか。

 

「さあ座って座って」

「あ、どうも」

「ここ私の神社なんだが」

 

というかなんともまあ……質素なところだなあ。

神社だから派手ってのもおかしい話だが………それにしても貧相だな。

 

「お前今貧相だなって思ったろ」

「え?あぁいや………自分でそういうってことはそういう自覚あるってことだよね」

「当たり前だろ」

 

なんだこの人………

さっきも紫さんが止めてくれなかったらいつまで戦いが続いてたかもわからないし……

 

「よいしょっと、それじゃあ改めて。毛糸、この紅白のが今代の博麗の巫女よ」

「どうも…なんと呼べば?」

「好きに呼べばいい」

「えぇ……じゃあ巫女さんで」

「馴れ馴れしいぞ」

「なんなんあんた」

 

そういうなら名前言えよ名前!なんで名前言わないのよ!

 

「で、このもじゃもじゃが自称毛玉の白珠毛糸ね」

「あ、あの噂の毬藻妖怪」

「すぅぅ………毛玉でえぇす……」

 

よし、我慢して偉いぞ私。

正直手が出そうになった。

 

「本当に毬藻って言われたら怒るんだな」

「わざとかい……」

「きっと気が合うわよ〜」

「「合わないだろ」」

「ほら息ぴったり」

 

偶然でしょうに……私こんな危険な人と関わりたくないんだけど……

 

「なんでこんな危ない人と…」

「はあ?」

「………博麗の巫女なんていう妖怪からしたら絶対に避けたい存在に会わなきゃならないんですか」

「理由は色々あるわよ。まあざっくり言うと……未来のためかしら」

 

そんなあやふやな……そんなよくわからんことのために私呼ばれたの?

 

「それともう一人会わせたい子がいるのよ」

「もう一人?」

「おい紫」

「大丈夫よ、この状況で何か馬鹿なことするような妖怪じゃないわ」

 

そうだよ、今のこの状況やばいからね?

妖怪の賢者と博麗の巫女と一緒にいるこの状況、下手をすれば存在ごと消されかねない。

 

「……それで、会わせたい子っていうのは?」

「霊夢、きなさい」

 

紫さんがそういうと、外から一人の女の子が入ってきた。

境内に入った時子供の気配を感じていたが、この子か。

 

「次代の博麗の巫女、博麗霊夢よ」

「誰このもじゃもじゃ」

「どうも、白珠毛糸だよ。もじゃもじゃだけどまりもじゃないよ毛玉だよ」

「ふーん」

 

あら興味なさそう……

………いや全く話が見えてこないな。

博麗の巫女に会わせて、さらにその後継者まで……

 

「紫さん、結局私はなんのため……に?」

「今からその話をするわ」

 

いやなんか周りの風景変わっとるんですけど……あ、ここ神社の屋根上か。

なんか前もあったなこういうの……やるならやるって言ってほしい。

 

「てか、あの二人に聞かれちゃまずい話なんですか?」

「そういうわけではないけど……話が拗れると面倒だし、まずあなたから了承を得ないとね。大丈夫、幽香からはもう許可を得てるわ!」

「なんで幽香さん!?」

 

いや本当になんで……なんでここで幽香さんが出てくるんだ。

 

「まあ数百年前の話だけど……あなたが了承したらいいってね。だから幽香に何か吹き込まないでよ?あいつ怒ると手がつけられないから……」

 

紫さんにこうまで言わす幽香さん……やっぱあの人やばい人だったんだな……

それにしても、了承、かあ………

やはり藍さんが言っていた、私を使って何かしようとしてるって話だろうか。

 

「………」

「………?あの、どうかしました?」

「ええと……何か言いたいことあるなら言っていいのよ?」

「え?なんすか?寝坊したこと謝ってないことっすか?」

「それはごめんなさい。じゃなくて………藍から聞いたんでしょう、あの時のこと」

「あぁはいなるほど」

 

紫さんが私の家の近くを通るように仕向けたって話か。

そんなことも……あったなぁ。

 

「私は別に…気にしてませんよ?というか紫さん相手に文句言えるほど強くて偉いわけでもないですし」

「流石に謙遜しすぎよ?」

「えぇまあ……自惚れていいこともないですしね。要するに気にしてないってことですよ。まあ謝ってくれるなら謝って欲しいけれど」

「それなら……ごめんなさい」

「あー頭下げないで」

「謝って欲しいって言ったのあなたよ?」

「いやそうですけど……慣れなくって」

「慣れなくっても、あなたと対等な関係を築く上でやってはいけないことを私はしてしまったわ。ごめんなさい」

 

そう何回も謝らないでよ……てか私は対等な関係なんて思っちゃいないんですがね?

てか本当にもうさ……藍さんもそうだけど簡単に頭下げちゃダメでしょ……もっとこう、風格というかなんというか……

まあ、気持ちは伝わったけれど。

 

「別に、いいですよ。頭上げてください」

「よし頭下げたからこれで対等ね」

「あっはい」

 

なんだこの人……まあ話が進まないし別にいいけどさ。

 

「さて本題よ、あなた、自分の能力について考えたことある?」

「能力?あー、千里眼だったり硬くなったり姿とか音とか消したり心読んだりするあれですか?」

「そう、それ」

「私自身の能力……宙に浮くくらい?」

 

いや本当に、私自身の個性なんてそのくらいなものだ?

大体人からパクったものだしね!

 

「あなたの能力と呼べるものは、それはまあ色々あるわ。それを一つずつ挙げていくわね」

「はい」

「まずは氷を生成したりできる能力、これはあの氷精の能力ね。冷気を操るとも言えるわ」

 

パクったやつだ……

 

「そして植物を操る能力、幽香のものね。本人は花を操るって言ってるけれど」

 

これもパクったやつだ……

 

「次に再生能力の高さ。これは少し微妙だけど、能力とも受け取れるわね」

 

霊力の体に幽香さんの妖力が上手い具合に合わさっただけのやつ……つまりこれもパクリ……

 

「次、魂を二つ持っていること」

「知ってたんすね」

「まあね。これは異質ね、本当に異質」

 

そりゃあ異質なんでしょうけれども……てか知ってたなら教えてよね!

どうぜ自分で気づくのが一番とか言うんでしょうけれども。

 

「最後、宙に浮いたり浮かせたりする能力。これが一番あなたの存在をたらしめる要素と言ってもいいわね」

「存在?」

「えぇ、あなたの場合、ただ毛玉だから宙に浮いているんじゃない。この幻想郷に未来から毛玉として転生した。その事実があなたを世界から浮かしている」

 

世界から……浮く……

 

「それが故、あなたの存在を定義するのは『宙に浮く程度の能力』」

「わあそのまんまだあ………結局何なんですか」

 

結局どういう意味なのかそこを教えてもらいたい。

 

「幻想郷を統治するには、他の追従を許さない圧倒的な存在が必要不可欠。人間のね」

「へぁ……でも紫さんや幽香さんみたいなのに圧勝できる存在なんて……それも人間に」

「勝つ必要はないわ」

「え?」

「負けなければいい」

 

た、確かに……

 

「あなたの能力を複製、発展させて霊夢に移植して、その存在をたらしめるものとする」

 

『宙に浮く程度の能力』を、あの子に……

 

「その能力というのは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『空を飛ぶ程度の能力』」  

 

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