「子供って……元気でいいね」
外で双方飛び回り弾幕を飛ばしまくる霊夢と魔理沙を見てそう呟く。
「どうした急に」
「いや別に」
何があったか、それは10分前のこと。
魔理沙を博麗神社に連れてくる。
魔理沙が霊夢を煽る。
霊夢も魔理沙を煽る。
キレる。
で、弾幕を飛ばしまくるってわけ。
「子供ってさあ、バカしても誰かが後始末してくれるわけじゃん、尻拭いしてくれるわけじゃん。いいよなぁ」
「………まあ、そうなんだろうな」
魔理沙は箒に乗って、霊夢は能力で空を飛んで、大人顔負けの空中戦を繰り広げている。いや、普通の大人は空飛ばないけども。
そういや霊夢は『空を飛ぶ程度の能力』を得た。
私と霊夢を寝かせて、その間に紫さんがちょいちょいっとやったらしい。
気付いたら昼前から夜になってたから、それなりに時間かかった……のかな?基準がよくわからないけど。
でもそのあと帰ってから体がだるくてぼーっとする時間が増えた。まあそれも数日で治ったから些細なことだけど。
「子供は成長早くていいよなぁ、魔理沙は努力してるけど、霊夢なんか次会った時にはもう普通に空飛んでたもん、自由自在に旋回とかしてたもん。いいなあ子供って」
「………お前も見た目子供だろ」
「成長したくてもできないんだなこれが」
子供には大人っていう成長先があるから子供なのであって、私の場合その成長先が何百年経っても見えてこない。
ってことはそれもう子供って言えないじゃん、私からしたらこの姿が大人なわけだ。
つまり私は生まれながらに大人ってわけ、子供時代なんてなかった。
私もルーミアさんみたいに背伸びないかなあ……
「にしてもあの魔理沙っての、やるな」
「巫女さんから見てもそう思う?」
「あぁ、ただの人間、それも子供にしちゃあよくやってるよ」
流石に空を飛ぶのは箒に頼ってるけど、それでも空を飛んでるのには変わらない。
まあ本人普通に空飛ぼうと思えば飛べるらしいけど。
なかなか安定しないのと、箒使った方がカッコいいんだそうな。
まあその方が魔女って感じするもんね、わかるよ。
「あの手に持ってるのも相当な代物だな」
「手?あぁ、ミニ八卦炉」
そっか、もうあの二人はあれの調整終えたのか。
アリスさんにとんでもないのをぶちかまされた経験があるから少し心配だったけど、まあ見る限りでは本人も上手く扱っているので上手いこと調整できたのだろう。
星形の流れ弾が神社の方へと飛んでくるが、見えない壁のようなものに触れて光の粒になって消えた。
「ちゃちゃっとこの神社を覆う結界作るあたり、流石は博麗の巫女って感じだね」
「まあ結界は得意分野だからな、博麗の」
別に結界術に詳しいわけじゃないけど、この結界がどれほど丈夫なものかはわかる。
多分私が割と本気で殴ってもヒビしか入らないほどなんじゃないかな。
……ヒビを入れる私っておかしい?
まあ今まで相対してきた人間たちの結界は殴ったら簡単にパリンっていってたので、やっぱり巫女さんは凄いということだ、うん。
「………よくよく考えたらこの状況、私結界に閉じ込められてるんだよね」
「そうだな」
これが敵対してる相手の結界だったらかなり危ない事態になってるんだけども。
自分の身を守る結界だけじゃなくて、封印結界とかいろいろあるしね。もしこれが封印結界だったらとんでもなくやばい状態だった。
「霊夢は?その後どう?」
「見ての通りだ、今や飛行はお手のものだよ」
「あれは?あの、能力使った凄い術」
「あれは?って、あれに限らず基本博麗の技は秘術だぞ、他人のお前に言うわけないだろ」
「そりゃそうだけども……能力の元は私なわけだし、気になるじゃん」
別に教えてくれなかったらそれはそれでいいんだけども。退治する対象に技のこと教えるのもおかしな話だし。
別に全然教えてくれなくていいしぃ?
「………はぁ、あれは過去に開発した本人しか会得できなかった技だ、そもそもまだ習得する修行の段階ですらない」
「あ、そうなのね」
誰にも負けない巫女を作る。
それをするためにはその技を習得するのが1番重要だって話だし、いつかは絶対にやらなきゃいけないんだろうが。
そもそもそんなに絶対的な強さの巫女を作ることが必要なのだろうか、私の目には別に今のままでも十分安寧を保ってると思うんだけど。
まあその辺のことは賢者のお偉いさんにしかわからんのでしょう、私みたいなヘンテコなやつにゃわからんのです。
「ま、まだ子供だしじっくりやってくか」
「……じっくりやってる暇なんてないんだがな」
「ほえ?」
「私だっていつまでいっしょにいられるか……」
「…そういうこと言わない」
「……そうだな、忘れてくれ」
あの人の顔がチラつく。
何百年経っても鮮明なあの人の顔が、脳裏に焼き付いて離れないあの顔が。
巫女さんもいつかりんさんみたいに……
考えるのはよそう、辛いだけだ。
「そういやお前って家族いるのか?」
「私?天涯孤独の毛玉だけど」
「そりゃそうか、毛玉が毛玉産むわけじゃねえ……し……?」
「……ん?」
「……冷静に考えて、お前毛玉なわけないよな」
「いや毛玉ですが?紛うことなき毛玉ですが?」
「だって普通の毛玉手足ないし」
「私は普通じゃない毛玉ってことでしょ」
毛玉は自然発生する精霊みたいなもんだけど……
そもそも毛玉ってなんなのだろうか、と考え続けて数百年、未だ答え出ず。
「いやでも、毛玉……お前が?」
「疑うならほら」
毛玉フォルムに一瞬なって証明する。
「ほら、毛玉でしょ?」
「化ける妖怪なんて珍しくないしなぁ…そもそも毛玉は妖怪じゃねえし」
「私は妖怪毛玉ですよえぇ」
自分の存在なんて考えるのは飽き飽きしてる。
だって考えても答え出ないんだもの、私お得意の思考放棄だ。これで今まで生き抜いてきた。
「そもそも霊力と妖力持ってる時点でおかしいだろ、普通は有り得ない」
「私は普通じゃないってことでしょ……諸事情あるの、色々あるの」
妖怪退治の専門家からしても私はそんなに珍しいものなのだろうか。
うん、頭もじゃもじゃの妖力だけバカ強い再生力がおかしい霊力と妖力を持ち合わせて義手から醤油出す自称毛玉のまりも妖怪なんて珍しい要素の塊みてえなもんだったわ、そういやそうだった。はっはっは、はぁ……
「……それにしても割とすんなり話聞いてくれたよね巫女さん」
「何が」
「霊夢に他の人間の子供会わせるって話」
「あー……まあ、あいつにも友達は必要だろ。真っ当な人間の」
「真っ当……?箒で空飛んでるのが真っ当……?」
「異常者の友人は異常者にしか務まらないさ」
「霊夢と魔理沙のこと異常者って言ってる?」
「そうだけど」
まあ実際普通の人間に比べたら異常なんでしょうけれども。
「いって!くっそぉ……」
「フッ、いい気味ね」
「んだと!?今に見てろよこの野郎!」
魔理沙が箒から落ちて地面に落下した。
普通あの高さから落ちたら大怪我だと思うんだけど、そこは魔法使い、なんかよくわからんけど落下の衝撃を軽減してるみたいだ。
またすぐに箒に乗って霊夢との撃ち合いを再開した。
どうやらお互いの被弾数で競ってるみたいだ。
今ので霊夢0回、魔理沙2回か……
「強いなあ霊夢」
「そりゃあ私の弟子だからな、あんなガキにゃ負けないさ」
「……それはどうかな?魔理沙だってやるよ」
「いーや霊夢には敵わない」
「いやいや魔理沙もなかなか」
「いや霊夢の方が」
「いや魔理沙の方が」
「やんのかお前」
「やってやろうじゃねえかこのやろう」
「はいそこまでー」
私と巫女さんがガンを飛ばし始めると、突然どこからともなく現れた紫さんが、私と巫女さんの間に割って入ってきた。
「親バカみたいなこと言ってんじゃないわよ貴方達…」
「我が子は可愛いもんだろうが」
「そーだそーだ」
「いや実の子でもないでしょう……」
「それで、何しに来たんだ?面倒ごとはごめんだぞ、紫」
「少し話をしに来ただけよ」
「面倒ごとはごめんって言ってるだろうが」
「え、何?私の話って面倒ごとなの?嘘……」
あ…なんか傷ついてらっしゃる。
まあ紫さんが持ちかけてくる話大概面倒だと思う巫女さんの気持ちはわからんでもない。
「私の話は面倒……」
「あ、あー、その紫さん、それで話ってのは?わざわざ伝えにくるってことは大事な話なんですよね。……あ、これ私席外した方がいいやつ?」
「……いや、あなたにも聞いてもらうわ。そのためにわざわざ一緒にいるところを訪ねてきたのだから」
「あ、そうなんすか」
「ほら面倒ごとだ」
割とスパスパ紫さんにもの言える巫女さん、やっぱりすげー胆力だな……いや、博麗の巫女が妖怪に対して気を遣っちゃダメなのか。
「で、話ってなんだ」
「面倒ごとなのに聞くの?」
「聞かない方が後で面倒だろうに」
あ、これ紫さん気にしてるな……まあ日頃の行いってことだろう、うん。
「………私はここ数十年、幻想郷の結界外の勢力について少しずつ調査してきたわ」
「結界外……まだいるんすね、外にも妖怪とか」
「まあ、一定数はね。まだ信仰されてる神とかもちらほらといるわ」
まあ、要はその存在が否定されていなければ妖怪やら神やらはこの幻想郷の外でも存在することができるんだ。まだそういうのがいてもおかしくはないか。
「で、問題はその結界外の勢力なのだけど」
「来るのか」
「え、来るの?」
「えぇ、来るわね」
「だろうな」
「来るんだ……」
一体どんな奴らなんだ……どこからだろう?そもそもこの幻想郷自体どのあたりか私は知らんのだが。
沖縄とか北海道とかから来るかな?それならちょっと楽しみ。
「どこから来るんです?そいつら」
「そうねえ……ヨーロッパとかその辺かしら」
「ヨーロッパァ!?」
「ん?なんだそれ」
ヨーロッパという単語を知らない巫女さんだけ聞きなれない単語に首を傾げている。
いやしっかし、てっきり日本国内だと……まさか海外とは……って待って?
「え、なに、ヨーロッパからここまで来るの?遠いよね?」
「まあヨーロッパって言っても大まかな妖怪の分布の話だから、かなり大雑把になるけどね」
「徒歩でくんの?」
「そんなわけないじゃない……転移魔法とか、そんな感じの大規模なものを用意してるみたいね。あまり詳しくないから確証は持てないけれど」
あ、そう、転移魔法………まあそりゃそうか。ヨーロッパの妖怪とかが軒並み空飛んで日本に来たらもう日本中大パニックだが。
……ヨーロッパの妖怪?
「……その妖怪たちって、例えばどんなのが……」
「まあ、一言で言うと吸血鬼と愉快な眷属たちって感じね」
「あぁ……さいですか……」
吸血鬼……ですか。
ヴァンパイア……ですか。
あの、蝙蝠になったりする、血を吸うやつ。
「こわ……こわぁ………」
「…?紫、こいつがこんなになるくらいその吸血鬼って奴らは凄いのか?」
「いや、毛糸なら普通に殴り勝てると思うけど」
「殴り勝てるかと怖くないかは別問題なんですよ……」
吸血鬼……吸血鬼……?
いやでも……よくよく考えたらこの世界……見た目美少女な妖怪ばっかじゃない?
妖精から妖怪の賢者にいたるまで女性ばっかりじゃね?
そう考えたら吸血鬼も力強いやつは女性なんじゃね?
なんか怖くなくなってきたわ。幽香さんとか勇儀さんとかの方が随分怖いわ。
「で、そいつらはどうするつもりなんだ?存在が消えそうなので幻想郷に入れてください……そうはならないだろう?」
「えぇ…残念なことだけど、奴らはこの幻想郷に攻め込んで支配するつもりよ」
「支配ねえ……」
バカじゃねーの。
いくら私でも名前を知ってるほどの妖怪、吸血鬼でも、この幻想郷の頂点に立つ真のヤベーやつらを下す気でいるとか……片腹痛いぜ!
「でも攻めてきたら妖怪たちで反撃すればいいだけですよね」
「それがそうもいかなそうだから困ってるのよ」
「はい?」
「あなたも感じてるんじゃない?最近の妖怪たちのこと」
「最近の妖怪?……まあやる気というか、覇気がないなぁとは思わなくもないですけど」
確か人間を襲っちゃダメみたいな御触れを出されてみんな萎えてるんじゃなかったっけ。知り合いの妖怪に人間を積極的に襲うやうそんなにいないからあまり感じないけど。
「そんな気力のなくなっている妖怪たちに突然、外部からこの幻想郷の支配を企んでる輩がやってくる、なんて出来事起こると…どうなる?」
「……テンション上がりますかね」
「つまり?」
「吸血鬼側についちゃう?」
「正解」
「あっちゃー……」
私がいうのもなんだが、妖怪ってバカだね!ほんとバカ!
「まあ相手の詳しい動向は今後も探っていくけど、数年後には幻想郷とそいつらが戦ってると思ってくれていいわ」
なんともまあ物騒な話だが……まあ幻想郷のみんなは逞しいし、きっとなんとかしてくれることだろう。みんな頑張れ、私は応援するぞ。
そんなことを考えていると、突然紫さんが私の肩に手を置いた。
「はい?なんです?」
「期待してるわよ」
「………」
えーと、最後に本気で戦ったのはいつだっけ。
えーと、えーと……結界張った直後くらい?
……まあ、それなりに平和が続いた方じゃないかなあ。
よーし、頑張るぞー………
「はぁ………」
そういえば被弾数は
霊夢3回、魔理沙5回になっていた。
魔理沙頑張った。