毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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毛玉、家を建てる

「よぉ迎えに来たぞ」

「どのツラ下げてきやがったァ!丸焼きにしたろか己ェ!」

「落ち着け、俺はただあの迷惑な鴉の尻拭いをしにきただけだ。お前を放って帰ってきたって言ったから代わりに俺が来てやったんだよ」

「余計なお世話じゃいこのワン公がァ!」

「おっそうかじゃあ帰るなー」

「待って待ってちょっと待って一旦落ち着こうね柊木さん」

「はぁ………とりあえず返答だけ聞いとく。あの件、受け入れるのか?」

 

あの件………ってなんだっけ。

あ、あれか、山に協力するとかしないとか………そのことなら寝れていないあの時間に考えていた。

 

「状況次第ね、前向きには検討しとくけどあんまりにもこの山の状況が悪かったらその場で協力すんのは無し。今はまだ様子見ってとこ」

「協力するんだなわかった」

「待って本当に聞いてる?ちゃんと今言ったこと上に伝えといてよね」

「わかってるわかってる、腹立つよなーあれ」

「おいなんの話ししてんだいい加減にしろよこのケモ耳が、腹に拳ねじ込んでやろうか」

「やれるもんならやってみろよ」

 

ほう………?貴様、本当に良いんだな、怪我しても知らんぞ。

正拳突きィィ!

腰を落とした構えから放たれる渾身の一撃ィ!

 

「オラァ!………硬っ!?何お前腹硬すぎんだろこわ!ちょ、これ手の骨砕けてない!?めっちゃくちゃ痛いんだけど!?硬化でもした!?物質系能力者かテメェ!」

「知らねぇよ、俺を殴ろうとしたお前が悪い」

「絶対物質系能力者だわお前!硬化できるんだろ!」

「そうだよできるんだよ、もう良いだろその話」

 

良いわけあるか、この世界は異能力系バトル漫画の世界じゃないんだよ、妖精とかがいるよくあるファンタジーな世界なんだよ。

こちとら既に知り合いに冷気操る妖精がいるんだよ、このままいったら絶対に風を操るとか水を操るとかその辺の奴らでてくるよ。

 

「で?その後ろで震えてるのは誰だよ」

 

柊木さんが、私の背後を指差す。

 

「あぁ、隣の部屋の紫寺間るり、引きこもりのシャイガールだから無理やり外に引っ張ってきた」

「へぇ………」

「ひっ」

 

ひっ?柊木さんが目を合わせた瞬間にひっ?初対面の相手と目があっただけでひっ?どれだけ人見知りなんだよ。

 

「な、なんなんですかその目はぁ!なんでそんなっ、社会の屑を見るような目で見てくるんですかぁ!」

「え、何普通に目が合っただけなんだが、なんでこんなに怯えられなきゃいけないんだよ」

「あー、柊木さん目つき悪いからなぁ、私はもうこういう目の人って思ってるけど、初めて会ったら怖いよねぇ」

「それよく言われるんだが何でだ?俺はいたって普通のつもりなんだが」

「知らんよ、あんたの目つきが悪い、それ以上でもそれ以下でもなく、それ以外の何でもない」

「ただ眠いだけなんだけど………」

「ひぃっ!またこっち見た!助けてください毛糸さぁん」

「知らんがな、さっさとその人見知り直してくれない?」

「何でそんなこと言うんですかぁ!はっ!騒いだせいで周りから視線が………もういやだぁ帰りたいぃぃぃ!」

「誰もお前のこと見てないよ、アウトオブ眼中だよ、誰も興味なんか無いよ」

 

そーゆーの、被害妄想っていうより自意識過剰というのではないか。

あと眠いから目つき悪くなるんだったら寝ればいいと思うんだけど。

そう伝えたら、無職にはわからないよな、と白い目で言われた。

無職じゃない、そもそも職がないんだ、そんなこと言ったってしょうがないしゃないか。

まぁもしかしたら前世はニートだったかもしれないけど。

そもそもニートってのは働いていない奴のことを指すのであって、今の私は一歳未満、現代だったらそもそも働けない。

つまり私はニートではない、というか実質赤ちゃんだ。

うん、これで全てが解決したね、そもそも私は人じゃないとか気にしない気にしない。

 

「で、帰るのか?道わからんだろうから送ってやるよ」

「あ、どうも。でも荷物があるんだよ」

「じゃあ一緒に持っていけばいいだろ、さっさと持ってこい」

「じゃあはい、荷物」

「………」

「………いや、これ荷物じゃなくてさっきの河童………」

「いやだって、なんかついてくるって言うからさ」

「は?なんで」

「ほら、聞かれてるぞ、答えろよ」

 

るりにそう急かすとゆっくり口開いた。

 

「………この人、家、無い、だから、作りに、行く」

「はい、そーゆーこと、わかった柊木さん?」

「いや、わかったっていうか………もう知らんがな。勝手にしろよ、河童のすることにどうこう言うつもりないし」

「うぇーい話の分かる犬だ」

「狼だ、白狼だ。いいかよく聞け、俺の前ではまだいいが椛の前で犬呼ばわりするなよ、四肢もぎ取られて失血で死を待つだけになるからな」

「うわ、なにそれバイオレンス。こわっ」

「怒ると怖いんだよあいつ、そういや同僚が一人あいつの逆鱗に触れた時行方不明になったんだよな、そんで二日後に帰ってきたと思ったらごめんなさいしか言わなくなってたんだよ」

 

それもう廃人決めてますやん、やばっ。わぁ、ケモ耳だぁとか思ってたらそんなバイオレンスな人だったとは………人は見た目によらないねぇ全く。

 

「じゃあ行くならさっさと行くぞ、資材とか持ってかなくて大丈夫なのか?」

「現地調達、する」

「お、おう、そうか………完全に怯えられてるんだが、そんなに俺の目つき悪いか?流石にちょっと傷つくな」

「ほら、さっさといくぞ、私迷子になっても責任とれんのか」

「自分勝手すぎるだろ、そうなったら放って帰るわ」

「見殺しとは外道め」

「言ってろ」

 

そう言い合いながら、るりの首根っこを掴んで帰っていった。

 

 

 

 

「………で、なんですかこの死体」

「死体じゃないよ大ちゃん、河童」

「死体なら凍らしていい?」

「死体じゃないからだめ」

「………ぐふっ、外界の空気………あたしには重すぎ………骨は拾ってください………」

「ほら生きてるじゃん」

「今死にましたけど」

 

大自然の空気を吸って死ぬとは、なんと軟弱なやつよ。

換気の悪い部屋の中に閉じこもってた方が死ぬと思うんだけど、どうなってるんだろうその肺は。

 

「毛糸さぁん、なんですかこの生えた幼女たちは」

「妖精だけど、知らんのか」

「ふふん、このあたいを知らないとはばかなやつだな!」

「しかも片方は頭が随分平和なようですし………」

「頭が平和?どう言う意味?」

「知らなくていいんじゃないかな」

 

無知って残酷だよね。

 

「それでどうするんだ、家作るんじゃなかったのか」

「あ、柊木さんは帰っていいよ、特に用ないし」

「いや、お前はともかくその河童はどうするんだ、そいつも一人じゃ帰れないだろ」

「じゃあそのうちもう一回きてよ、そんときに持ち帰ってもらう」

「やっぱ自分勝手だなぁお前」

「そっちの都合で変な争いに巻き込まれるのほぼ確定になったんだからこのくらい許されるっしょ」

「はぁ………じゃあ俺一旦帰るわ、一応仕事あるし」

 

おうおう社畜なこって。

またため息をついて、山へと帰っていった。

ため息つき過ぎじゃない?一日に20回くらいため息してそう。

 

「急に帰ってきたと思ったら家を作るって………なんかもうめちゃくちゃですね」

「自覚はある、けど私には家が必要なのだよ」

「そ、それで、どこに作るんですか?この辺りは見通しが良くて落ち着かないんですけど………:」

「あ、そう?じゃああっちの洞窟近くに作ろうよ」

「え、洞窟?………暗いのやだなぁ、でもこんなに見通しのいい場所に比べたら幾分か………」

「じゃあこっちついてきて」

 

 

 

 

「あー、いいですよぉ、この洞窟いいですよぉ。洞窟の入り口にちょうど光が入り込んでくるおかげで適度な明るさが保たれて、それでいて閉鎖的なこの空間。風が入り込んでくるのも相まって、引きこもりをしながら自然に包まれてるって感じがしますぅ」

「気に入ったならよかった、それでどこにつくる?」

「そうですねぇ………すぅ」

「………おいおいおい寝るなよ」

 

どんだけ居心地いいんだよ、さっきまでヒイヒイ言ってた奴が洞窟入った瞬間これだよ、切り替え早いなおい。

 

「安住の地を見つけたって感じですね」

「先に私の安住の地作ってくれない?」

「ちょっと待ってください、今考えてるんですよ」

「あ、そう」

「………」

「………」

「………すぅ」

「寝てるやんけ!」

「もううるさいですね………洞窟に蓋をするように家を作りましょう、これならもし敵が攻めてきて家が壊されても、洞窟の中に引きこもって飛び道具投げとけば獣くらいなら簡単に倒せます」

「お、おう………絶対引きこもるのが前提なのな、それ」

「当たり前じゃないですか、引きこもりと言ったらあたしの構成物質の八割をしめてますよ、あたしから引きこもりを抜いたらもうそこに残ってるのはただの河童の亡骸です」

 

こいつ、引きこもることを中心に置いて生活してやがる。

引きこもりだってな、引きこもりたくて引きこもってるわけじゃないんだよ、外に出てもうまくいかないから引きこもってるんだよ。

 

「嵐がきてもこれなら洞窟で隠れられます。もうここなんて洞窟というかほぼ洞穴ですし、もうなんならこの洞穴に扉つけて家ってしてもいいんじゃないですか」

「引きこもること中心にしないでくれない?もうそれは家じゃないし」

「引きこもりに家設計させるのが悪いんですよ」

「お前ちょっと調子乗ってんな、いったん引き摺り出して改めさせてやる」

「ひぃぃぃ!虐めないでくださいぃ!」

「もう………なんなのこいつ」

 

 

洞窟の中で司令官気取りしてるるりにまずやれと言われたのが木材集め。

モノによって違うが、サバイバルゲームは基本最序盤に木こりをする。

某有名サンドボックスゲームなんかは、素手で木を殴り倒している。

普通素手で木を切るなんて頭がおかしい、そんなことをゲームに言っても仕方がないのはわかっている。

まぁなにが言いたいのかと言うと、斧をください。

だってだって、私貧弱毛玉だもん、道具も持たずに木材をとれるわけないじゃない。

 

困ったときはオカルトなモノに頼ろう。

妖力をほんの少しだけ腕に込める。

妖力のエネルギーの塊ではなく、妖力自体を腕に込めた。

普通に木を殴れば、私の拳が悲鳴を上げて終わりだ。

かといって気円○みたいなものが出せるわけでもない。

なら、妖力を直接ぶつけるんじゃなく、腕越しにぶつけてみる。

この妖力は幽香さん由来、私の身に余るものだ。

下手に使えば妖力が暴発して私まで巻き添えを喰らうことになる。

なら、腕の中の妖力が暴発しないようにしながら木を殴れば、木を折ることが可能と考えた。

 

まぁここまでながったらしいこと考えておいてあれだけど、物は試しだ、考えるな感じろ、当たって砕けろ。

 

「せいっ!」

 

木の前に立ち、妖力を込めた腕をその幹へと真っ直ぐ突き出した。

突き出された拳はなかなかの勢いで飛んでいき、その幹を貫いた。

そう、貫いたのだった。

 

「ちょっとこれは予想外かなぁ………」

 

まさか木の幹に腕が刺さるとは………つくづく道具って大事だなと思いました。

まぁそりゃそうだ、決して小さくはないこの木、まっすぐ正面から力を入れればそこだけ貫通して穴が開くだけだろう。

刺さった腕を全力で引き抜く。

ならばこんどは横向きに力を加えよう、貫くことはできたんだからやり方としてはあってるはずだ。

もう一度腕に妖力を込めて、こんどは裏拳をするような感じで木の幹に拳をねじ込んだ。

 

バキッ、という音が辺りに響き、殴った部分が吹っ飛んでいた。

支えを失った木が横向きに倒れ、土埃が舞う。

成功した………よかったぁ。

これならあれだ、もしなにかと戦うことになっても、妖力をぶつけて自分も自爆しそうにならなくて済むかもしれない。

まぁこれ殴ってるだけなんだけどさ。

 

あとはこれ、枝でももぎ取っておけばいいかな。

腕に妖力を込めて枝の付け根に手刀を打ち込む。

バキッという音がして簡単に枝が取れた。

いやぁなんだか楽しくなってきたねぇ、こういう単調作業なかなか好きよ。

 

しかしあの河童も変な奴だ。

普通ほぼ初対面のやつに家を作るなんて言えますか?普通は言わないよね、だって初対面だし、家を作るなんて面倒くさいことするわけないもの。

実はあいつ、コミュ力めちゃくちゃ高いんじゃないかな。

そんな初対面の相手に家を作るなんて私には到底真似できそうにない。

いやそもそも私は家を作れないのだけど。

大丈夫かな、変なセンス発揮されてきゅうりが二本刺さった豆腐みたいな感じにならないかな。

 

ボロボロになったその丸太とは到底呼べそうにないその物体を見て、なんだか凄い不安になってきた。

そうだなぁ、もう少しとってこようか、運ぶのは楽だしね。

 

いやぁ、森林破壊は楽しいZOY。

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