毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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ようこそ

とりあえず我が家には、私のこの戦いにはついていけないから、日常用と宴会芸用の義手を置いてきた。

 

こんな家ひとつをわざわざ壊しに来るような集団じゃなきゃいいけど……まあ、大切なものは奥の方に埋めて隠しておいたので、そっちの方大丈夫だろう。家なんてね、壊れても作り直せばいいのよ。

やるのは河童だけど。

 

「………綺麗な月だなぁ」

 

雲一つない空、満月の明るさで周囲の木々や草は照らされている。

 

とりあえず奴らが転移してきたであろう場所へ向かって飛ぶ。

吸血鬼が攻め込んでくるとは言えど、大体はその吸血鬼たちの眷属だ、大した強さではない。と紫さんが言っていた。

 

転移してきた場所は霧の湖の近く、奴らの狙いはおおよそ人里だと予想されるので、えーとなんだっけ……紅魔館か。

紅魔館と人里の間あたりを目指す。

 

戦力をバラバラに散らばらせて行動するとは思うが、おそらく妖怪の山とかより優先的に人里を狙ってくるはず。

 

「……まあ今人里見えなくなってるらしいし、巫女さん達いるけど」

 

まあ流石に人里を防衛しながら吸血鬼達の相手をするのは骨が折れるだろう。

全部通せんぼというわけにもいかないだろうが、ある程度は戦力を削ぎ落としてやりたい。

 

 

 

 

 

そんな感じでどんなふうに立ち回るかを再確認していると、遠くの方から何やら小さな粒みてえな奴が見えてきた。

 

「あれって……」

『まあ間違いなく敵だろうね』

「あ、やっぱり?」

 

となると……この辺りが人里と紅魔館の間ってことか。

ふむ……他の人たちはまだ来てないか。どうせなら全員で一緒に来ればよかったなぁ……一人だと不安で不安で。

 

『私がいるよ?』

「お黙り、自分はノーカン」

 

手に大きめ妖力弾を生成し、周囲に浮かばせておく。

1つ、2つ、3つ………とりあえず奴らがこっちの射程範囲に入ってくるまで作り続けておく。

 

「………そろそろかあ?」

 

えーと……12個……あいつら飛んでくるのはえーな、おい。

 

「まあ、とりあえず投げますか」

 

12個の妖力弾が全部散らばるようにして、腕を振りかぶっていい感じに………こんな感じか。

 

「くらえ!」

 

波のように押し寄せてくる敵の方へ妖力弾をぶん投げた。

 

「イオ○ランデ!!」

 

爆裂系の最上位呪文が敵の軍勢に向かって爆発し、周囲に光と轟音を撒き散らす。

 

「何人くらいやったと思う?」

『50から200くらい?』

「範囲広くね?」

『そりゃあ相手の頑丈さとかにもよるし』

 

確かに。

 

ふーむ………煙が晴れて敵がぽろぽろと出てきた。

 

「これをやったのは貴様かぁ!ただで済むと思うな———」

「イオ○ズン!」

 

ヨシ!死んだな!

 

「貴様アァ!!」

「うわ生きてるよバケモンか」

 

爪を伸ばして斬りかかってきたので、こちらも氷の剣を作り出して受け止める。

 

「まだ話してただろうが!」

「るせぇ戦いは残酷なんだよバカヤロウ!」

 

ってかなんで使ってる言語同じなんだよ!なんで意思疎通できてんだよ!そんな気はしてたけれども!

 

「お前らと楽しくおしゃべりする気はない!」

 

爪を掴んで右手に妖力を込めて思いっきりぶん殴り、吹っ飛んでった先に追い討ちで妖力弾を数発打ち込んでおく。

 

会話したら殺しにくくなる。紫さんからは紅魔館にいるやつ以外は基本殺せってなんか言われてるし、殺っちまったほうがいいんだろう。

 

「……つーか、割とたくさん生きてるのな……」

 

腕が片方吹っ飛んでるやつとかいるけど、私を睨みつけて敵意を剥き出しにしている。

もちろん爆発でバラバラになったやつもいるだろうけど、私の目から見ても力の強いやつはそれなりに生きてるようだ。

 

「何者だお前!」

「はぁん?私はなあ!この幻想郷で一番雑魚な生き物の毛玉だ!!」

「お前のような雑魚があるか!」

 

いい返しをするじゃないか、友達になろう。

 

「だが死ねぃ!」

 

容赦なく妖力弾と氷を乱射する。

弾を避けてこちらへ接近してきた奴もいたが、腕に妖力を込めて衝撃波で吹っ飛ばしておく。

 

眷属ってやつはなんとなく弱そうってわかるけど、吸血鬼もそんなに強くないなぁ………

 

『そりゃ個体差があるんだと思うよ?』

 

個体差て……まあその通りなんだろうが。

 

氷の蛇腹剣を2本作り出し、両腕で何も考えずに振り回す。

何も考えていなくても、不規則に動き妖力を纏った氷の刃をくらえばタダでは済まない奴が大半だろう、悲鳴のような声をあげているやつもいる。

 

「………多い」

 

調子乗りすぎた……

氷の蛇腹剣を自分の身の回りを防御させるように振り回して敵が近づけないようにする。

 

流石に数が多すぎる。妖力弾で地形ごと吹き飛ばせば楽っちゃ楽なんだけど、本番は紅魔館に到達してからだしここでそんな妖力を使うわけにもいかない。

というか地形が変わるのはあんまりよろしくない。

しかしこのままじゃなあ……時間だけが経っていきそうだ、

 

そんなことを考えていると、かなりの大きさの妖力を感知した。

氷の剣を離して感知に集中する。

 

剣を離した私を不思議に思ってずっと見てる奴らがいるが……

 

「そこいると…….」

 

奴らの居た場所を極太のレーザーが通り過ぎていった。

 

「あなた、流石に甘すぎるんじゃない?」

「まあ別にこいつらに直接的な恨みがあるわけじゃないし……てか幽香さんが容赦ないんだよ」

「侵略者なんて有無を言わさずに消し飛すくらいで十分よ」

 

幽香さんがやってきた。

太陽の畑には妖怪達が来る理由もないし、私もいるからって理由で参戦することに決めたんだそう。

 

「……あ、アリスさんもいるんだ」

 

どうやら幽香さんと一緒に来てたらしい。

 

「流石に一人でこんな危なっかしいところ来ないわよ……あなた達異常者と一緒にしないで」

 

あら心外、異常者だってよ。

私は幽香さんに存在ごと消された妖怪達を憐れむ心があるのに……

 

そうしてる間にも幽香さんは無言で敵をレーザーで薙ぎ払っていく。

 

「流石幽香さんだ、もう私いなくてもいいんじゃね」

「何言ってるの、あなたもやるのよこれ」

「えー……レーザーはあんまし得意じゃない……」

 

レーザーってあれでしょ?こんな感じで手に妖力を溜めて、一点から放出するように………

 

「………」

「………」

「………」

 

なんかすっごい細いの出た。

 

「………まあ、好きにしなさい」

「あいあいさー!」

 

人には得意不得意があるんでね。私にとってそれはレーザーだったってだけの話ですよ、はい。

 

「で、アリスさんは何してんの」

「あなたたちの後ろに隠れてる」

「何ビビってんの〜」

「……八雲紫に頼まれたから来ただけであって、本当ならこんなところ絶対来たくなかったわよ」

 

それには同情する。私だって頼まれてなきゃ妖怪の山とかにいるもの。

 

「これも全部毛糸が悪いんだから、責任取って守りなさい」

「えぇ………」

 

幽香さんと一緒に妖力弾やらレーザーやらで敵を攻撃し続ける。

流石に私たちのことを相手してられないと思ったのか、四方にどんどん散らばっていく。

 

「へぇい!逃げられるなと思うなよへぇい!」

 

へいへい叫びながら妖力弾を妖怪達の方へ投げ込んで爆破する。

 

「なんでそんなにテンション高いのよ……」

「んー?一人じゃないから……かな」

 

あと普通に相手を殺してるので、叫んでもないとやってらんねえぜへぇい。

 

「叫ぶのはいいけど、前の方、それなりのが二人くらい向かってくるわよ」

「ふぅむ……あらほんと」

 

幽香さんの言葉で前方の方に意識を向けてみると、やたらと堂々と歩いてくる二人の人影が見えた。

確かに他のに比べたら強い。さっき私に直接攻撃しに来たやつよりも全然強い。

 

「でもまああの程度なら普通に……」

「そうね、じゃああれの相手してきて」

「はい?」

「流石にあのくらいのがここに居たら殲滅の邪魔になるわ。あなたより私が残った方が効率がいいし、そういうことよ」

「えーと……1人?」

「アリス守りながら戦えるの?」

「………」

 

ふぅむ……幽香さんがめっちゃ無茶振りをしてくる。

相手2人よ?私1人よ?不利じゃん。いくら私でも自分と同じ身体もう一個作って動かして分身みたいにするなんてことは……いや、案外できそうではあるけど。

 

「で、でもさ、流石に……」

「私と同じ妖力を持ってるくせに、そんなこともできないの?」

「んぐっ………行ってくる……」

 

そんなこと言われたらさぁ……行くしかないじゃない……

 

「幽香、本当に毛糸一人でいけるの?」

「心配ないわよ。あの程度の相手に苦戦するようなら、あの子はとっくの昔に死んでるわ」

 

さて…真面目にやりますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

敵の中に突っ込んで目標の二人に適当に弾をばら撒いて挑発し、幽香さんの大規模攻撃に巻き込まれないあたりにまで移動した。

 

「おいおい、俺たち二人にたった一人で挑むつもりか?」

「それは些かおこがましいんじゃない?」

 

えーと、男と女の吸血鬼か。

 

「………何してんのお前ら」

「あら、見てわからない?いちゃついてるのよ」

「ま、そんな頭してちゃそういう相手もいないんだろうがな!」

 

あらムカつく、ぶっ殺してやりてえ。

………つまりあれか、こいつらカップルってわけか。

かーっ、マジで腹立つ……人前で、それも戦いの最中にイチャつきやがって……おい、抱き合うな、殴るぞ。

 

「気をつけて、あんな頭だけどそれなりの妖力を持ってるわよ」

「あぁ、わかってるよハニー」

 

ハニーって……ハニーって……

 

「大丈夫、あんなマリモみたいなのに遅れは取らないさ」

「死ね」

 

まずは男だ、二度とそんな舐めた口聞けない体にしてやる。

抱き合ってる状態の男の顔面目掛けてストレートをぶち込む。

 

「ごばっ」

 

立て続けに女の方の髪を握ってそのまま地面に叩きつけ、顔面に蹴りを浴びせる。

女の身体は吹っ飛んでいき、私の手には奴の気持ち悪い髪が残ってた。

 

「こ、こいつ、的確に顔を……」

「よくも私の髪を……」

「人前でイチャイチャすんじゃねえ、腹立つんだよ」

 

あとまりもって言ったそこのお前はマジで殺す。どうせ紅魔館のやつじゃねーんだ、顔の原型わからなくしてやる。

 

「てめぇ……本気で俺たちを怒らせたな」

「うっわめっちゃ三下が言いそうなセリフ」

「やるわよ」

「おう」

 

そう言って二人の姿が消えた。

その瞬間に背中を切りつけられる。

 

「……早い」

 

二人して高速で移動し、私の周りを動き回りながら爪で切り裂いてきてるらしい。

爪の斬撃がとめどなく襲ってくる。

 

「ははっ!身体が軽い!これが俺たちの本来の力だ!」

「どうやら全く反応できないみたいね!」

 

うんまあ、正直めっちゃ速いよ?

幻想郷に入ってきて存在が安定したおかげで力戻っているのだろう、それでテンション上がってるのだろうが……

 

「とどめよ!」

 

多分10本くらいの爪が私の体を突き刺す。

 

「あのさぁ……」

「っ!?こいつ、なんで生きて……」

「お前ら言動とか全部下っ端すぎ」

 

足元から氷を生成して、奴らの体を氷漬けにして動きを止める。

 

「よいしょ…」

「こいつ傷が……なんで」

 

爪を折ったりして、体から引き抜く。

 

「ふぅ……とりあえずお前な」

「なっ…や、やめ——」

 

右腕に妖力を思いっきり込め、唯一露出してる頭に全力で拳を叩き込む。

 

鈍い音と気持ちの悪い感触を残して、男のクビを吹っ飛んでいった。

 

「うーし……次はおま………」

「もう終わったぞ」

「………あ、はい」

 

背の高い金髪の妖怪……ルーミアさんが女の首を手からぶら下げて、真顔でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「幽香さん終わったよー」

「そう、まあ想定通りの時間ね。……で、そっちのは」

「よう風見幽香、久しぶりだな」

「チッ……目障りなの連れてきたのね」

「あー……知り合いだったの……」

 

幽香さんの反応を見る限りあんまり良い仲じゃなさそうだが……やめてね、喧嘩しないでね、幻想郷終わっちゃう。

 

「なんでそいつ連れてきたのよ」

「え?いや、今度戦いあるんだけど、満月だしどう?って」

「なんでそんな軽いノリで誘ってるのよあなた……」

 

幽香さんの問いに答えたらアリスさんに引かれた。なんでや事実しか伝えてないぞ私は。

 

「わかってるでしょうね。あの時みたいに舐めたことしたら、今度こそ完全に息の根止めるわよ」

「わかってるって……てか今のあたしはあの時ほど強くねえよ。今やりあったら普通に殺される」

「そう、せいぜい身の程を弁えることね」

 

ひえっ……幽香さん怖い……

ルーミアさんもよく苦笑いしながら肩を窄めるくらいで済むね?

 

「……ねえ、お喋りしてるところ悪いけど」

 

アリスさんが指差した方向を見る。

 

「すごい弾飛んできてるわよ」

 

……うむ。

夜空に無数の弾幕が浮かんでいるのは、それはそれで綺麗なもんだ。

………うん。

 

巨大な氷の壁を前方に作り出し、障壁も張って衝撃に備える。

氷壁にヒビが入り、砕けてどんどん障壁に当たっていく。

 

「もういいわよ」

「うっす」

 

幽香さんの声に合わせて障壁を消す。

その瞬間に両サイドからとんでもない速度で妖力弾が二つ放たれた。幽香さんとルーミアさんだ。

 

こっちに向かって弾幕を撃ってきた妖怪たちの集団に向かって飛んでいき、大きな爆発が起こった。

 

続けざまに大きな氷の槍を作り出し、妖力を込めて回転させつつ、爆発と爆発の間にいる妖怪たちに向けて放った。

 

 

 

「ようこそ、幻想郷へ」

 

 

 

本当の蹂躙が始まった。

 

「………私なんでここにいるんだろ」

 

後悔したようにアリスさんが呟いた。

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