毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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家に帰った毛玉

 

我復活。

 

「自由だ〜!」

 

内臓完治!元気いっぱい!しかし妖力すっからかん!

まさか起きてから全回復するまで三日もかかるとは……三日間何もせずにいるのは気が狂いそうになったぜ………

 

アリスさんが定期的にちょっかいかけてきてイラつかせてこなかったら発狂してたかもしれない。体ないけど。

 

「そう、よかったわね」

 

思わず扉の外に出て空に向かって叫んでしまった私を呆れたように見るアリスさん。

 

「これでいつも通りの生活が送れるぜ!はーはっはっはっは……はぁ」

「どうしたのよ」

「いやね……これから知り合いに対して説明祭りが待ち構えていると思うと……もうしばらく毛玉のままでここいていいかな」

「ダメ帰って」

「ですよねぇ〜」

 

とりあえすアリスさんから義手と刀を預かる。

 

「それじゃ、天狗の方にはあなたからお願いね。結局連絡しなかったし」

「はいはいー、お世話になりました。また今度何か礼を……できたらするよ」

「じゃあ実験の被験者にでも…」

「さいなら!」

 

逃げた。

 

 

 

 

なんとなく毛玉状態で空を飛んで移動する。

いや、理由はあるよ?

だって今の服装とんでもないことなってるんだもん、血みどろだわ破れてるわボロボロだわ……流石にこんな服装で空を飛ぶ勇気はない。

 

というわけで、最初は自宅に直行しようと思う。服欲しいしなんか食いたい。

 

義手はとりあえず左腕に付けるだけ付けて浮かしておくことにする。霊力が妖力かないと動かせないし、というか割とボロボロであんまり動かすとそのまあま崩れそうだし。

 

とりあえず家に帰れば服あるし義手あるし食べ物ある……いやまて3ヶ月経ってるんだぞ、ろくに食い物残ってない、というか全部腐ってるだろ。

 

………まあ、うん。

 

行ってから考えよう。

 

 

 

 

 

 

 

「……案外無事だねぇ」

 

戦いに行く前とそう変わらない我が家の姿を見て安堵する。

正直あの戦いに巻き込まれてたらどうしようかと思ったけど、無事だったようで何よりだ。

くる時にりんさんの墓もチェックしておいたけど、こっちも大丈夫だった。

 

「まあ、中が荒らされてる可能性もなくもないし……」

 

中に敵が潜んでるかもしれない。

………まあ流石にいないか。

 

もう色々面倒くさくなったので扉を勢い開ける。 

 

「ただいまァ!!」

「あ、おかえりー」

「………ふぁ!?」

 

誰もいないと思って大声でただいまって言ったらおかえりって帰ってきた……というか、この声は……

 

「ルーミア?さん?なんでここに」

「留守番ー」

 

この感じはルーミアの方か……まあ今昼間だしな。あの人出てこようと思えば割と自由に出てこられるらしいけど。

 

「留守番って、誰に頼まれたのさ」

「私」

「……あ、ルーミアさん?」

 

ややこしいことこの上ないな……

まあ、あれか、ルーミアさんが私の家のこと気遣って、こっちのルーミアに留守番をするように頼んだってことか。

 

「留守番してくれてたのはありがたいけど……何も変なことしてないよね?」

「んー………多分」

 

多分って……まあ家も見た感じ普段通りって感じだし、多分大したことはされてないだろう。

 

「置いてあった食べ物全部食べた以外は、なにも」

「あっふーん………まあ腐らせるよりマシかぁ」

 

3ヶ月も食える分だけの食糧が置いてあったとは思えないし、食うだけ食ってあとは普段通りに過ごしてたって感じかなあ。

 

「まあ食べ物を大切にするのはいいことだよな、うん」

「そーなのかー」

「……ひっっさびさに聞いたな、それ。流行らんよ?」

「流行れー」

 

絶対流行らん。

しかしあれだな、やっぱりあっちのルーミアさんとこっちのルーミアじゃまるで別人だな、こうも違うものなのか。

 

私ならかなり恥ずかしい。

 

「ふごっ」

「おっイノイアか、久しぶっへぇ!」

 

突進食らった、突進食らったって。

 

「おい何すん………あー」

「ふご……」

 

どうやらこいつも心配してくれていたらしい。確かにいつもより遥かに優しい突進だったしな……気遣ってくれてたんだろうか。

 

「悪かったな……ルーミア怖かったろうに」

「ふごぉ」

「何か言ったー?」

「言ってないー」

「そーなのかー」

 

イノシシにはまた後でしっかりかまってやるとして………

 

「とりあえず服だよ服………ルーミア、本当に他のものに手を出してないよな」

「食い物以外興味なーい」

「へー」

 

まあ人喰われるよりは私の家の食べ物を食べてる方が全然いいけどさ。

……こういう人喰い妖怪たちの食糧って供給制だかなんだかって聞いたけど、一体どこからそんなもん持ってきてるのだろうか………

 

ふむ……人里では誰かがいなくなったとかそんな話は聞かんし………あれか、外の世界の人間なのかもしかして。

今の外の世界が私がいた頃と同じくらいの時代だとしたら人間もかなりいるだろうし、もしかして行方不明だとか、そういう感じのニュースとかって紫さんが幻想郷に連れてきて妖怪たちに喰わせてるんじゃあ………

 

 

うん、やめとこ。

知らない方がいいこともあるよね、ウン。

 

「ルーミアこっちみんなよー」

「わかったー」

 

別に見られて困るものでもないけれども。

 

ふーむ………3ヶ月だろ?季節も変わってるし服も閉まってるやつ使わなきゃ気候に合わないからな。

 

「お、あったあった」

 

ふむ……まあそこまで暑いわけでもないし、長袖でも別にいいか。

 

とりあえず服脱いで………む、誰か来——

 

「やっと目覚めたんで——」

「セーフゥ!何見てんだコルァ!」

「え、あ——ひぃ!?」

 

あ、逃げた。

ギリギリ生まれたままの姿を見られずに済んだが………妖力足りなくて腕にしか妖力入らなかった。

 

踏み込みができたらちゃんと殴れたのに。

 

……とりあえず着替えよう、うん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、いきなり人の着替えてるところ覗くとかどういう了見だ、アァ?」

「い、いやー……まさか帰ってきて早々着替えてるとは思わないじゃないですか」

「ルーミアこいつ喰っていいぞ」

「勘弁してください」

 

とりあえず正座させて恫喝しておく。

 

「………まあ、冗談だけど」

「冗談で妖力込めて殴りかかるんですかあなた」

「こっちだってびっくりしたんだよ。てか見りゃわかるでしょこの服、穴だらけじゃん、血みどろじゃん、そりゃ着替えるでしょ」

 

あれだな、やっぱりちゃんとした服着ると気分も良くなるな、うん。

 

「別に私ガキみたいな体型してるし見られたところでだよ」

「じゃなんで殴りかかってくるんですか」

「びっくりしたからって言ってるだろ」

「びっくりしたら妖力込めて殴りかかってくるんですか」

「そりゃあ突然背後取られたら反射的に殴るよ、当たり前じゃん。つか私悪くねえから、急に押しかけてくるお前が悪いから」

「いやそれは……はい、すみませんでした」

 

……毛玉の裸って意味わからんな、まあええか。

 

「……というか、多分謝らなきゃいけないの私だよなあ」

「えぇまあ……本来なら怒ってる雰囲気で押しかけるつもりだったんですけど完全に勢い削がれました」

「なんで私が帰ってるって?」

「椛から連絡ありまして」

「なるほど」

 

便利なもんだなあ千里先が見えるって。

千里眼って言っていいのかなあれ。………私の目に移植したら使えたりするんだろうか。

 

「まあとにかく、今回は今まで以上に無茶したみたいで」

「いや、今回は死にかけてないから。前の方がマジで死ぬ寸前まで行ったから」

「そういう問題じゃないですし、3ヶ月も動けなかったんじゃないですか」

「しゃあないじゃん物理的な精神的ダメージ受けてたんだから」

「物理的なのか精神的なのかはっきりしてください」

「物理的な精神的」

「あぁはいもういいです」

 

なぜ呆れられなければいけない。

魂の体に直接攻撃入ってこうなったんだから物理的な精神的ダメージで合ってると思うんだけど?

……何を言ってるんだ私は。

 

「まあいつもみたいに訳のわからないこと言えてるのを見る限りでは、大丈夫そうで安心しました」

「実際、妖力がすっからかんなこと以外は大丈夫だよ」

「事の顛末はアリスさんから聞きました。よくもまあそんな見ず知らずの、それも敵勢力の妖怪にそこまで出来ますね」

「うん、それな」

「ふざけてるんですか」

「うん」

「引っ叩きますよ」

 

まあ実際、自分でもよくそこまでするな、とは思う。

 

「というか、本当にどこにも異常ないんですよね?」

「ないない」

「以前は左腕動かなくなってたじゃないですか」

「ないない、今回に至ってはないない」

 

ちゃんと内臓あるからオッケィ。

 

「あそうだ、私のことなんかどうでもよくって」

「よくないから私がここに訪ねてきたんですけど」

「妖怪の山はどうなった?みんな無事?」

「……まあはい、無事ですよ?どこかの誰かさんが敵の本隊を蹴散らしてたおかげでこっちまできたのは烏合の衆でしたし」

 

鴉天狗のお前が烏合の衆って言うのか……いやまあそれは置いておいて。

 

「じゃ、みんな無事なんだな?」

「はい、大した損害もなく、今はいつも通りの日常ですよ」

「そっかぁ……」

 

いやあ、別に私がどうなろうが知ったこっちゃないけど、みんなが無事でよかった。

あとは………

 

「地底と博麗の巫女を気にしてるようなら、その心配は必要ないですよ」

「なぜわかった」

「気にしてそうな顔してたので。地底に入り込んでいった敵は確認できませんでしたし、人里も博麗の巫女も無事だったそうで。まあ数はそこそこありましたけど、大概雑魚でしたからね」

 

つまりあのフランはマジでヤバい奴だったと。

 

そう考えたら戦力紅魔館に集中し過ぎじゃね?やっぱり最初から他のやつは切り捨てるつもりだったのか……結構えぐいな。

 

「……で、これからどうするんです?」

「どう、とは」

「椛たちには私から説明しておきますけど、他の方々には直接話をしてくださいよ?」

「他の方々……あぁ」

 

そういやそうだ。

とりあえず話をしなきゃいけない相手がいる。

 

「では私はこの辺で。落ち着いたらまたじっくり話しましょう」

「そうだね、さよなら」

 

そう言って文は外へ出て妖怪の山へと帰っていった。

やっぱめちゃくちゃ早いよなあいつ……

そして……

 

「おい起きろルーミア、起きろー」

「ぐぅ……」

 

やけに静かだなと思ったら寝てやがったこいつ。

 

「おい起きろって……チッこのアホが」

「あぁん?」

「んぴっ」

「………ぐぅ」

 

い、今一瞬ルーミアさん出てたって、完全に私に圧かけてきてたって、マジ怖かったって。

 

「……そっとしとこ」

 

さてまあ……あの2人探すかぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、いた」

 

あの2人は大体一緒にいる。

本当に仲のいいようで正直羨ましい。

 

「おーい、チルノー、大ちゃーん」

 

あ、こっち気づい………おっとぉ?

2人ともものすごい勢いでこっちに飛んできてるなあ?うーん……ちょっと顔が怖いねえ?

 

「ちょまっ、おちっ、落ち着けぇ!」

「うおりゃああああ!!」

「おっふぅ!?」

 

チルノの突進を左腕につけておいた日常用の義手で防御する。

しかしながら普通に体が貧弱なので押し負け、はねられて地面に激突した。

なんでみんな私に突進したがるんだ。

 

「おい……今私貧弱なんだから手加減しろ」

「とりあえず縛っていいですか」

「なんで!?………いや顔がマジだよ大ちゃん!?」

 

やだこの子たち怖い………

 

「心配したんですよ、私もチルノちゃんも……というかみんなで」

「それはごめん………チルノもごめんな」

「ふんっ!ふんっ!」

「やめい殴るな普通に痛い」

 

チルノが言語を捨てて暴力を振るってくる。

 

「ふんぐぅ!」

「やめろって言ってんだろ!痛えんだよ!」

「うっさいばーか!」

「はあ!?バカですけど何か!?」

「否定しないんですね」

 

否定できないし。

 

「チルノちゃん、そのくらいにしてあげなよ」

「子分が勝手にいろいろやりやがって!」

「あぁもう悪かったって………」

「ふんっ!!」

「ごべっ!」

「チルノちゃんチルノちゃん、毛糸さん死んじゃう」

 

せめて霊力で防御した方がいいな……普通の人間より貧弱なこの体じゃチルノの打撃もしっかり効く。

 

「心配かけたのは謝るから、もう勘弁してくれ……」

「………ふん」

 

え、何私嫌われた?そっぽ向かれたんだけど。

やだ普通に心にくる………

 

「チルノちゃん、ずっと心配してたんですよ、毎日気がかりな様子で」

「マジ?」

「マジです」

「そっかぁ……」

 

まあ、以前数十年くらい離れてた頃は、ちゃんと別れの挨拶してからだったと思うし、今回みたいに突然寝たきりとかなったら、そりゃあ心配するか。

 

「……ごめんよ」

「別に全然気にしてないけど!」

 

気にしてるやつやんそれ。

てか気にしてないなら殴りかかってこないで。

……でも。

 

「……はは」

「どうしました?」

「いや……ちょっとね」

 

フランの中で改めて感じた孤独感。

正直言って、改めて自分の存在を確認して、少しばかり気分が落ち込んでいた。

 

やっぱり自分は必要なのかと。

何を成そうと、誰と関わろうと、それの確証を得ることができずにいた。

 

けれど。

 

「悩み事があったけど……ちょっとだけ、どうでもいいかなって思えた」

 

大ちゃんやチルノもそうだし、文やアリスさん、他のみんなもだ。

 

これだけの人に心配してもらえて、想ってもらえて。

 

「幸せだな〜、って」

「………そうですか」

 

フランに偉そうに語ってたくせに、私自身自信がなかったようだ。

でも今この瞬間は、それを感じていられる。

私は独りじゃないんだと。

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