毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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激しく動揺する毛玉

 

なんか気まずい雰囲気になったので、適当に言葉を交わして部屋を出てきた。

まさか大体同じくらいの歳とは……吸血鬼って成長遅いんかな?それともレミリアが極端に遅いだけ?

ふーむ………他種族のことはよくわからん。いや自分のこともよくわかってないけれどもね?

人のこと言えないし。

 

「さてと、パチュリーさんがいるのは……どの辺だっけ」

「案内します」

「うぉっ」

 

なんでいちいち驚かせにきてんのこのメイド長……いや、私が驚きすぎなだけ?

まあいいか、案内してくれるなら。

以前は紅魔館の中がぐっちゃぐちゃになってたし、パチュリーさんにどんどんテレポートさせられてたから構造なんて当然わからない。

 

「あの……お嬢様は素晴らしい方ですので」

「はい?………あぁ」

 

ちょっとギスギスしてたの見られてたのか。

こちらとしても正面からあんなこと言われなきゃ突っかかってなかったけど………いや、反応してる時点でダメなのか。スルーすればよかったのか。

 

「大丈夫、まあまだお互いのことよく知らないだけだし、上手く付き合うつもりではあるよ」

「そうですか……ありがとうございます」

 

つもり、だけどな!

まあ、この咲夜って子の反応を見る限り、相当慕われているのだろう。

妹思いなのは知っているし、こういう従者にも恵まれているから、別に嫌なやつってことじゃないんだろうけど………

 

あれ、つまり私にだけ当たりがひどいってこと?

………嫌われてるのか。

 

「……確か今紅魔館って何も行動しちゃいけないって言われてるんだっけ」

「はい。先の戦いで降伏し、現在は妖怪の賢者から自由な行動を禁じられている……私はそう伺っております」

「そっかぁ……むしろそれだけで済んで良かったのか?」

「まあ、幻想郷への侵略行為に関しては転移でしかほぼ関わっておらず、早々に降伏したことが良い方に働いたのではないかと」

 

まあそうか、紫さんが紅魔館の人は殺すなって言ってたのも、もともと幻想郷の勢力として取り込むつもりだったからなのだろう。

 

というか本当になんなのこの子、受け答えはっきりしすぎでしょ。この子普通じゃない、時間止められるらしいし絶対普通じゃない。

 

「それに、こちらはもう幻想郷をどうこうしようという気は全くないことをあちらも理解しているのでしょうね」

「まあ平和ならそれが一番だけどね」

 

まあ目先の大きな戦いは終わったし、これでしばらくは安寧が訪れることでしょう、というか続いてくれ。

 

「到着いたしました、それでは私はこれで」

「はいどうも」

 

すぐにいなくなったけど。

 

「やっぱでけえ……」

 

どうしてこんなに扉でかくする必要があるんだろう……オシャレ?そういうオシャレなの?確かに雰囲気すごい出てるけれど。

 

「えーと、こんにち、じゃなくてこんばんはー」

 

扉を押して中に入る。

意外にもそんなに力入れなくてもすんなり開いた、これも魔法の力か。

 

「いらっしゃい」

「お久しぶりですパチュリーさん」

 

 

 

 

 

 

 

中に入るとすぐに、椅子に座って本を読んでいるパチュリーさんを見つけた。

 

今は机を挟んで椅子に座っている。

なんか前は心の中でパチュリーって普通に呼び捨てにしてた気がするけど、今はなんか、普通にすごい人って印象が浮いたのでさんをつけておく。

 

「ごめんなさい、本当のこと言うとあなたの魂にダメージが入るのは分かっていたのだけれど、黙ってたの」

「いきなり謝罪……いいよ別に、多分聞いててもやってたと思うし」

「……お人好しね」

 

自分ではそうは思わないが。

 

「とりあえず、忘れないうちに質問いい?」

「えぇ、答えられる範囲なら」

「なんで最初、私をフランにけしかけたの?」

「あぁ、あなたの力をもう少し測っておきたかったのと、あなたとフランを前もって接触させておくことで、その後のフランの中で何か役に立つことがあればいいなと思ってね」

「私あいつに内臓持ってかれて、そのせいで三ヶ月何もできなかったんだけど」

「それは……ごめんなさい」

 

まあ過ぎたことだし、結果的にはフランも………フランも?

 

「そういやフランは今何して?」

「地下室よ」

「………」

「心配しなくても自由に行動できるようにはしてあるわ。そこがあの子の部屋だから」

 

それならいいんだけども……

 

「それにもうすぐ……けほっけほっ」

「ん?あ、え?なに咳?」

「気にしないで、持病だから」

 

喘息か……?

 

「私、喘息だと魔法のキレ悪くなるのよね……」

「あ、そうなんすか。じゃあ戦ったあの時は調子良かった………ってことだよね?」

「ベストじゃないけど、そこそこだったわね」

 

あれでベストじゃないってマジ?

……この人、本当に底が知れないな。一体どれほどの力を隠し持っているんだ……魔法使いってすげー。

 

「あ、そういやレミリアがパチュリーさんのことパチェって呼んでたけど、あれって愛称?」

「まあそんなところね、私はレミィって呼んでるわ」

「へぇ〜!」

 

愛称かぁ……いいなあ愛称!

めちゃくちゃ仲良さそうじゃん、実際仲良いんだろうし、互いに愛称で呼び合う仲……いいなあ!!

 

私なんてまりもとかしろまりとかもじゃまりとかだよ、てか愛称なのかあれ、蔑称じゃないのか。……まあいいけど。

 

それにしてもパチェとレミィねぇ……………

パチェ……パチェ……ハッ!

 

「………パッチェさん」

「…今なんて」

「なんでもないっす」

「………好きに呼びなさい」

 

よっしゃあ!

なんか頭の中に浮かんできたから適当にぼそって呟いただけだけどなんか許してもらえたぜ!やったぜ!

 

「んでんでパッチェさんパッチェさん」

「何よ」

「あの赤髪の人だれ」

「………あぁ、小悪魔ね」

「小悪魔!へぇ〜!」

「……さっきからテンション高いわね」

 

悪魔ですよ悪魔!悪魔って言ったらほら………あら?

悪魔って言ったら……なんだ?あれか?イオ○ズン唱えたけどMP足りなかったやつか?いやでもあれベ○ーサタンだしな………いやそれってつまり小悪魔なんじゃね?

 

「私はこあって呼んでるわ」

「名前つけたんだ」

「小悪魔は種族名だし、区別しやすいようにね」

 

あ、あの人お辞儀してくれた、礼儀正しい〜。

やだこの館常識人しかいないじゃん………私ここに住みた……くはないかな、うん。趣味悪いし。

 

「そんでもってパッチェさんパッチェさん」

「何よ」

「頼みがあるんだけどさ」

「頼み?あなたは恩人だし、できる限りのことはなんでも聞くわよ」

「恩人だなんてそんな……頼みも大したことじゃないし」

「常識の範疇でお願いね」

「大したことじゃないって言ったでしょ今。いやまあ、ちょっとここにある本借して欲しいな〜って」

「本を?」

「うん」

「そのくらいなら別にいいけれど………どんな本?」

「魔導書とか」

 

………わあすっごい訝しげな顔されてる。

何を疑われているんだ私は。

 

「何あなた魔法でも習得する気?」

「いやいやそんな……ちょっと世話見てる人間の魔法使いの子供がいるんだけどさ、魔導書渡したら喜んでくれるかなって」

「……そう」

 

要するに魔理沙だ。

霊夢もそうだけど、人間にはちゃんと誕生日ってものがある。

妖怪なんてのは親の腹の中からおぎゃってくる奴もいれば、自然発生していつのまにか存在してるやつもいる。

それに寿命も長い、だから誕生日とか年齢とか、割とそう言うのは曖昧だ。

 

だからまあ……誕生日プレゼントにでもしようかなって。

あ、でもプレゼントだったら返せなくね?

 

「あー、でももしかしたら長い間返せないかも……」

「ちゃんと許可取って、返す意思があるなら別に構わないわ」

「そっか、ありがとう」

「そんなことでいいのなら」

 

霊夢の誕生日プレゼントも考えないとな……つか、なんやかんやで聞くの忘れてて二人とも誕生日知らないんだけど。

……まあ、霊夢には人里のお菓子でも上げとくか、お高めのやつ。

 

「それにしても、あなた普通に人間と絡んでるのね……」

「ん?まあそうだね、なんかおかしい?」

「いやなんかというか……普通におかしくない?」

「そう?」

「そうよ」

 

なんか呆れたような目を向けられた。

私って呆れられる才能があるかも知れない。

 

「普通、あなたほど力を持つ妖怪は大妖怪と呼ばれて畏れられるわ。それなのにあなたは……」

「大妖怪って顔に見える?」

「全然」

「ちなみに人里にも入り浸ってる」

「えぇ………」

 

めっちゃ困惑してはる。

 

「そういうことだよ、私はそういう奴ってことで」

「………」

 

なんだその沈黙。

 

「あ、そういえばさっき言いかけてたんだけど」

「ん?なん——」

「やっほー!」

「ぐおぁっがふっ!」

「フランもうすぐ来るわよ」

「もう来てる……」

「もう来ちゃった!」

 

後ろから突き飛ばされてそのまま机に顔面をぶつけた。顔面崩壊した、治したけど。

 

「ってフラン……なんか感じ変わった?」

「私は元からこうだよ?」

「うっそだぁ」

「ほんとだぁ」

 

かわいいなこいつ………

いやいや待て、そもそも私とフランのファーストコンタクトって穏やかじゃなかったよね?なんなら私顔見た瞬間から危険信号がバンバン出てたもん。

その後すぐに頭のおかしいバイオレンスサイコパスサディストガールになっちゃったし……

心の中で会った時もすごいネガティブ?ナーバス?だったような……

 

少なくともこんな可愛げな少女じゃなかった、というかここまで来ると信用しねえからな私は。

今は可愛らしいツラしててもあとからまた目ん玉ほじくりだして来るんじゃ………

 

「久しぶりに会えるって聞いて嬉しくなっちゃった、えへへ」

「はうっ!!」

「はう?……さっきから何か変よあなた」

「気にしないで、持病だから」

「あらそう、納得」

 

納得された!?

 

というかフランの笑顔が眩しい………屈託のない無垢な笑顔、幼い容姿、可愛らしいセリフ……

あかん……純粋な笑顔が私の澱み切った汚え心に光が差すように入ってきて………

 

「じ、浄化される…」

「え?なに?浄化?」

「持病だそうよ」

「そっか!」

 

こ……これはあれだ。

こいしと同じタイプの奴だ、私の心にグサってくるタイプの顔だ……つーかどっちも妹やんけ!

え、なに、まさか私ってそういう……

 

いや待て、落ち着け、よく考えろ私。

よくよく考えるとこの世界美人美少女しかいなくね?

 

「ふぅ、落ち着いた」

「持病治った?」

「うん治った」

「その持病簡単に治るのね、羨ましいわ」

 

危ないところだった……よくわからんけど危ないところだった……

 

「私、毛糸がずっと寝てるって聞いて心配で……」

「いやまあ、寝てるって言うか毛玉になってただけなんだけど」

「今久しぶりに会えてホッとしたんだ」

 

私、その間の記憶ないから久しぶりに会えたって感覚ないんだけどね。

 

「ねえ、それでね。一つお願いがあるんだけど」

「ん?」

「しろまりさん…って、呼んでいい?」

「!?……!?……………!!!??」

 

えっ…………

今この子………しろまりって………え??????

 

「そ、それは……な、なんで?」

「そっちの方が仲良さそうじゃん」

「そ………そっ……かぁ…………い、いー………よ?」

「やった」

「凄く動揺してるみたいだけど、どうしたの」

「持病」

「再発してるじゃない」

 

な、なぜ……なぜしろまりに行き着くんだ?

なぜこうも……なぜしろまりに?

 

「と、ところでフラン、そのしろまりの由来って……」

「ん?白いマリモ」

「デ、デスヨネー、ハハッ」

 

初手でもじゃまり呼びしてきた霊夢は一体……いやいやそうじゃなくて。

 

なんでみんなしろまりに行き着くの?ほらもっと色々あるじゃん……モジャ公とか、アホ毛玉とか、毛屑とか、抜け毛とか、ゴミとか。

 

『ほぼ悪口じゃん』

 

なんでそう……なんでしろまり?

まりもから離れろや!私は毛玉って言ってんだろ!名前もすごい毛玉ってわかりやすいだろ!名前にまりも要素一つもねえだろ!つーか見た目にもまりも要素ねーわ!一体どこに白いまりもがいるって言うんだよ!あぁ!?藻じゃん!まりもは藻じゃん!私毛だよ!?毛玉だよ!?白いまりもってそれもうカビてるかなんかだろ!なんだ!?お前らは私の頭はカビてるって言ってんのか!?殴り倒すぞコルァアア!!!

 

『誰にキレてんのさ』

 

この世の不条理。

 

「はぁ……そ、そういえばフラン、狂気はどうなった?」

「ちゃんと私の中にいるよ。今はとりあえずまだ話し合い中かな、あんまり取り合ってもらえないけど」

「そっか」

「でも対話はできるようになったから、進歩はしてるよ」

 

偉いなあ……ちゃんと自分と向き合ってるんだもんなあ………

 

「どれもこれも、全部みんなのおかげだよ」

「……そうだね」

 

居場所があるってことは、とても安心する。

 

「失礼します」

「うおっ」

「あ、咲夜」

 

また唐突に現れたよこの子…てか驚いてるの私だけ?

 

「お食事の用意が整いました、毛糸様も是非」

「え、あ、私?あー……なんかもう疲れたしいいかな……ハッ」

 

こ、この突き刺すような目線は……

ふ、フラン……その物悲しげな表情をやめてくれ……そんな顔で見られたら私は……

 

「そうだよね……しろまりさん疲れてるもんね……」

「行きます、行かせてください」

「かしこまりました」

 

くっ……こいしといいフランといい……なんなんだその顔はマジでほんと……強すぎんだろ……とんでもねえ罪悪感が襲ってきやがる。

 

「いいの?」

「まあせっかくだし、ね」

「そっか!」

 

妹って恐ろしい……

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