「しろまりさんは私の隣ね!」
「しろまり……へいへい」
なんかすっごい広いところにすっごい長いテーブルがあってすっごい豪勢な料理たちが置いてある。
そんなことはどうでもよくって、しろまりさんってこれだけ人がいる場で呼ぶのやめてほしい。
切実に、やめて。
「うぐっ………あー……」
やべぇ……レミリアからの視線が超いてぇ……
なんだこれは……まさか嫉妬か?フランに横に座ってって言われてることに対して嫉妬してるのか?
いやいやまさかそんな、そんかしょうもないことで……
「チッ」
着席した瞬間に舌打ちされた。
間違いないこれ完全に隣に座ることに関して随分腹が立ってらっしゃる。つーか席近いんだよなあ……
レミリアはいわゆるお誕生日席のポジションに座っていて、私を挟んでフラン、反対側にパッチェさんが座っている。
………なんで私をこんな吸血鬼姉妹でサンドイッチするんだよ。
……てかパッチェさん何面白いもの見てるような顔してるんだよ、助けろよ、私胃に穴が開きそうなんだけど。
「はぁ……まあこれは歓迎会みたいなものよ、気は進まないけどね。咲夜が腕を振るって作ったから味わって食べなさい」
「すっごい棘あるなおい、そんなに帰って欲しいのなら帰るよ」
「あらそう、それはよかったわ」
「このっ……あ」
こ、この視線は……フランの………
「二人とも……仲良くしてよ…」
「………いや、仲良いよ?な、レミリア」
「そ、そうね、ぜひ楽しんでいってちょうだい」
「ぷっ」
「何笑ってんのよパチェ」
「いや別に」
あんな顔されたら誰も逆らえんわ、ずるいわこの子ほんと……
「……美味しい」
「そうでしょうそうでしょう、当然ね」
「なんでお前が誇らしげなんだよ作ってないくせに……でも本当に美味しいよ」
「お褒めに預かり光栄です」
後ろで待機してた咲夜がそう言う。
……こんな見た目の子供がこんな料理作れるって……マジでレミリアはこんな子供一体どこで拾ったんだよ。
まあ食卓に並んでるのは基本的に洋食って呼ばれるものばっかりなんだけど………私かなりテンション上がってる。
というのもだ、簡単な話、ちやんとした洋食食べるのが初めてだからだ。
そりゃあもちろん知識としては残ってるけど、この体で食べるのは初めてだし、私もともと和食より洋食の方が好きなんだよね。
アリスさんは割と和食よりの食事してるし、洋食っていうほど凝ったもの作らなかったからなあ……私はもちろん作れない。
「……あなた、普通にフォークとかナイフとか使えるのね……意外だわ。幻想郷ってそういうの普通に使ってるの?」
「いや……使ってないと思うけど」
フォークとナイフ……まあ、普通に体が覚えている。
マナーとかあってるかわかんないけど、まあ特に注意とかされないし普通に大丈夫なんだろう。
そーいやアリスさんち普通に置いてたな……あの人やっぱり海外から来てるだろ。たまーに使ってたんだよね、基本箸だったけど時々普通に洋食の時もあるから。
「でも……もういいかな」
「じゃあ咲夜デザート!」
「かしこまりました」
そもそもあんまりお腹減ってなかったしで、それとなくお腹いっぱいって伝えたらデザートまであるらしい。
一瞬で目の前の料理が下げられて、目の前にはゼリー状のものが一つ置かれていた。
「プリン……だと………」
「あら、知ってたの」
「プリンって美味しいよねー」
フランちゃん……君、前までずっと狂気に悩んでたのに今結構人生エンジョイしてるね?いや、いいんだけど、いいことなんだけどさ。
「プリンまで作れるの……?優秀すぎない…?」
「なんならこの館の家事清掃も大方一人でこなしてるわよ」
「マジっすかパッチェさん」
「パッチェさん?」
「それにこの館が広いのも咲夜の能力のおかげよ」
「マジかよ……万能かよ、凄すぎだろ……」
「私などにはもったいないお言葉です」
「もったいなくねえよ……足りねえくらいだよ……」
というか労働環境大丈夫?相当ブラックだよ?まあ本人も好きでやってるんだろうが……
「しかもめっちゃプリン美味えしよ………もう非の打ち所がねえよ……優秀すぎるよ……」
「実際凄いからね、咲夜」
「ふふん、そうでしょうそうでしょう」
「どこにいても呼んだら来てくれるしねー」
一家に一人欲しいんだけどこの子……
成長したら一体どれほどすごくなってしまうんだ……この子怖い、その辺の妖怪より断然怖いよ……
「……やっぱりもう一度しっかり話をしたいわね」
「………え?はい?私?」
「後で私の部屋まで来てくれる?」
「え……やだ」
「骨折るわよ」
「フッ、骨の一本や二本、折れたところで秒で治るわ」
「じゃあ心臓貫いてあげるわ」
「さーせん、行きます行きます」
「じゃあそういうことだから、私は先に行って待ってるわよ」
そう言ってレミリアは離席してしまった。
正直いない方が私は気が楽。
「……しろまりさんはお姉様のこと嫌い?」
「嫌いっつーかなんていうか……嫌いじゃないよ?別に恨みもないし。でもなんというかなぁ………」
「レミィ、きっとあなたのことを認められないのよ」
「あぁ……それで」
私だって向こうが友好的ならあんな態度は取らないが……
やっぱり一度、しっかり話し合っておいた方がいいんだろう。
「それでは私はこれで」
「あぁどうも」
また咲夜に案内してもらった。この子忙し過ぎない?大丈夫?ちゃんと休みある?あるよね?
「それじゃ……おじゃましまっふぅ!?」
「……普通に避けたわね」
「な、何すんだいきなり」
扉開けた瞬間に前方から赤色の妖力の塊が飛んできた。顔狙ってきてたんだけど、殺す気か?
……敵意は感じられないんだけどな。
「悪かったわ、本当にあんたが実力者なのかどうか確かめたくって」
「手合わせならお断りだぞ。というかさっき撃ってきた……槍?後ろの壁貫通してるけど」
「いいのよ、放っておいたら誰かが治してくれるから」
「なんてやつ……」
その誰かって咲夜だったりしないよな?
中で座っているレミリアの前に立つ。
「とりあえず今私が思ってることを言うわね」
「……どうぞ?」
「すぅ………なんで突然現れたあんたみたいなやつにフランが懐いてるのよなんで愛称で呼ばれてるのよ私なんて今までずっと一緒に生きてきてまだお姉様よ?いや別にそれはいいんだけどなんで一年も経ってないあんたが愛称なのよふざけんじゃないわよ喧嘩売ってんの?」
「色々あったんだしその事は直接本人に言えや色々あったんだよつかしろまり呼びは私も納得してねえし私に言うんじゃねえよ喧嘩は売ってねえわ」
「正直かなり嫉妬してるわ」
「言いやがったなてめぇ」
嫌われてる……らしい。
「見ず知らずの敵だったあんたにフランのことを頼むパチェもパチェだけど、それを請け負った上に自分は重症負いながらフランのことをきっちり解決してきたあんたにはもはや殺意すら湧くわ、ふざけんじゃないわよ」
「ふざけてねえし殺意は抑えてくれ」
「……なんでフランのこと受けてくれたのよ」
「なんで、って……」
そんな深い理由はないんだけどな……確かにあの状況で二つ返事で考えなしに頼みを聞き入れた私はバカなのかもしれないが。
「なんていうかな……頼まれたら断れないタチ…だからかなぁ」
「ぺっ」
「今唾吐いた?」
「そんなはしたない真似するわけないじゃない」
「あーそうですか」
こうも悪態をつかれると、一周回ってなんかこっちが落ち着いてくるわ。こういう奴なんだろうなあこいつ。
「感謝はしてる……感謝はしてるのよ。最愛の妹を助けてくれたんだもの、恩人なのよ、あんたは。でも……でもそんなのって……そんなのってあんまりじゃない」
「うん」
「あんたみたいな何考えてるかわからないもじゃもじゃより私の方がずぅっとフランのことを想ってるのよ?今までずっとフランのことを第一に考えてきたのよ?産まれた時から、狂気のことを知ったあとも、両親がいなくなったあとも、幻想郷に来る時も……今までずっとどうにかしようともがいてきたのに……」
……そりゃあそうだろう。
こんなぽっと出の奴が全部丸く収めて行く……自分の方が今までずっと足掻いてきたのに。
「納得できない、受け入れ難い……結果を認めるのは簡単よ、そういう運命だったってだけなのだから。でも、どうしても、悔しいし、情けないし、あんたっていうふざけた存在に憤りが募る」
「さりげなく罵らないで。……別に、私一人の力だけでどうにかできたわけじゃない。もちろんフラン本人の意思のおかけでもあるけど、一番は……」
「みなまで言わなくていいわ、当然だから」
「さりげなく腹立つ物言いすんな」
……実際、フランと話してる時に最後の一押しになったのがレミリアたちの想いだ。それが本人にもちゃんと伝わっていたからこそ、今のフランがある。
ただ、その事は本人もわかっている。それを理解した上で悩んでいるのだ。
「どこかで折り合いをつけなきゃならないのはわかってる、あんたを今この場で八つ裂きにして解決する話でもないし」
「さりげなく怖いこと言うな。……今すぐ折り合いつけなくったって良いんじゃない?私は私を否定されても文句は言えないよ。そっちがどれだけフランのことを想ってるかはよく伝わってるから」
たった一人の肉親、それはお互いにとってそうなんだろう。互いが大切で大切で仕方がない。
「ただそれでも、どうしても私のことが認められないって言うんなら…」
レミリアの目をまっすぐ見つめる。
「そんときゃ、いくらでも付き合うよ」
「………つくづく、腹立たしい奴ね」
「なんでさ」
こちとら体張ってお前の不満解消するために殴り合いでも果し合いでも殺し合いでもなんでもやってやるって言ってんだぞ。
「白珠毛糸、あなたに質問するわ」
「なんだよ」
「あなたにとってフランはどういう存在?」
めっちゃ返答に悩むタイプの質問きたー、下手なこと言ったら殺されそう………
「どんな存在って……別に、他人だけど」
「フランはそうでもないみたいだけど」
「はぁ?」
「この前本人に聞いたのよ、あんたのことをどう思ってるのかって。そしたら、自分のことを何も知らないのに手を差し伸べてくれて、自分を救ってくれたとても優しい人、って返されたわ」
「はぁ」
「あなたも分かるでしょう、あの子の異常な懐き具合を」
「まぁ……」
ただの他人でない事は確かだけど、流石にちょっと距離近すぎるんじゃないかなとは私も思う。
「もともと愛情とか友達とか、そういうのをちゃんと知らずに、理解せずに育ってきた子だから……あなたっていう外部からの存在との接触を得て、初めて出来た友達ってくらいにはしゃいでるのよ」
「……それが?」
「ただの友達なら良いわよ。でもあれ、もう一人の姉と言わんばかりの接し方よ?チッ」
舌打ちとか多いなぁこの人、怖いなぁ。
「あんたとフランがただならぬ関係ってのは理解してるのよ、それこそ心と心で会話したって奴でしょ?そりゃあそうなっても仕方がないんでしょうけれど……あんたに分かる!?この気持ち!」
「……まあ、わかるっちゃわかる」
「わかんないでしょうね!」
「わかるって言ってるじゃん……」
……まあ、所詮気持ちがわかるなんて言葉は想像と同情でしかないんだけど……同じ体験をしたならともかくしてないし。
「……改めて聞くわ、あなたにとってフランはどう言う存在?」
「どういうって言われてもなあ……まあ、私が好き勝手やって影響与えたのは事実だし、その責任は取るよ」
よそ様の妹に手を出してそのまま放っておくわけにはいかない。
なんか言い方がアレだけど、要するにそう言う事だ。
「………なんとなく、白珠毛糸っていう妖怪のことがわかったわ」
「…何がわかった?」
「気に入らないし腹が立つけど普通に良い奴」
「……私もお前の方がよーくわかったよ。妹思いだけど相手を思いやれない思ったことをすぐに言う感じの悪い奴」
「それはどうもありがとう」
「最初しか聞いてなかっただろお前」
こいつとは友達になれないわ、普通に合わない。と言うか向こうから突き放してくるんだけど。
パッチェさんよくこんなのと今まで付き合ってきたな……いや、私への当たりが強いだけか。
「まあ何はともあれ、感謝はしているわ、これからもよろしく」
「……こちらこそ」
そう言ってレミリアの差し出して来た手をとって固い握手をする。
「………ハハッ」
「………フフッ」
それはもう、固い固い握手を。
お互いに強く握り過ぎて骨の軋むくらいの握手を。
「………手ぇ離せや」
「そっちこそ」
「しろまりさん、お姉様とは仲良く出来そう?」
「絶対無理」