毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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力任せな毛玉

「うーん……うーん……?」

 

河童製の知恵の輪を上手く解けずに、首を捻り続ける誇芦を見つめる。

 

「やはりイノシシ、知能は私に劣るみたいだな……」

「は?突進するぞ?」

「さーせん」

「そんなに言うならやってみなよ」

 

イラついた様子で誇芦が知恵の輪を私に押し付けてくる。

 

「フッ……私の500年間使い続けてきたこの脳みそがあれば、こんな知恵の輪なぞ……」

 

ガチャ

ガチャガチャ

 

「………」

「………」

「ふんぬぅ!!」

「なんでぇ!?」

 

ムカついたのでぶっちぎってやった。

 

「いいか誇芦、世の中は腕力なんだよ。腕力さえあれば全てが手に入る、信用以外の全てがな」

「大事なもの失ってるけど」

「知恵の輪ってのはな、腕力で解くと言う結論に至れるかの知能を試されているんだよ」

「ごめん何言ってるのか全然わかんない」

「毛玉もそう思う」

 

まあ河童のやる知恵の輪だし、きっと頭のいい河童向けにめっちゃ難しく作られてたんだろう。

うん、そう思うことにしよう、そうに違いない。

 

……人里で売ったら流行るかな、これ。

 

「頭使って疲れた……なんか甘いもの出して」

「私のクッションに飛び込みながら甘味の要求してくんな」

「減るもんじゃないし」

「減るわ、クッションはともかくとして甘味は間違いなく減るわ」

 

全く…結構図々しいよなこいつ……んがっ?

 

「なんか……急にすごい妖気出てない?」

「猪もそう思う」

「家の前から発せられてない……?」

「猪もそう思う」

「お前外見てこいよ」

「どう考えても用があるのそっちでしょ」

 

いやだよ怖いもん!

……ん?いやまてよ、この妖力は……

 

「毛糸ー、いるかー」

 

藍さんだ。

 

「はーい、今行く!」

 

誇芦がほらね?って顔でこっちを見てくる。

腹立つ。

 

妖気の正体が藍さんであることに安堵しながら扉を開ける。

 

「どしたの急に。というか結構久しぶりだね?」

「あぁ、そうだな」

「あ、橙もいるんだ」

「久しぶり」

「おう、久しぶり。とりあえず中入って」

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、彼女はあの猪なのか」

「まあね、紆余曲折ありまして……」

 

橙と誇芦が何やら話をしていて、その様子を椅子に座った私と藍さんが見つめている。

あ、二人とも私のビーズクッションの上に座りやがった。なんでそんなに人のクッションにずかずかと乗れるの君たち。

 

「突然押しかけてすまなかったな」

「いえいえ全然暇なんで、というかむしろ、久々に橙と藍さんの顔も見れて嬉しいよ。最近はめっきりマヨヒガに呼ばれることもなくなっちゃったからね」

「あぁ、吸血鬼の件だったりで橙もマヨヒガから出て、私の手伝いをしてもらっていたからな。伝えるのが遅くなってしまった」

 

まあ橙との付き合いももう数百年単位になるのか。ずいぶん成長したもんだと私は思うが……藍さんや紫さんと比べたら可哀想だよね。

 

「たまには休めと紫様に言われてしまったからな、橙と一緒に久々に顔を見せにきた」

「そりゃどうも」

 

私がフランの中から帰ってきて三ヶ月間寝てた間も、藍さんたちは色々なことしてたんだろうな。

幻想郷の有力者への話をつけたり、異変の後始末だったり……そりゃあもう色々してくれているのだろう。

 

「それに、私の方から礼を言えていなかったからな」

「いいよ吸血鬼異変の件なら。それにあれで丸く収まったんだし、紫さんの目に狂いはなかったってことだね」

「君はいつも礼をいらないと言うが、それじゃあこちらの気が済まないことを理解してくれ」

「おっす」

 

本当に気にしないでいいのに……

 

「博麗の巫女の件もそうだし、君には本当に色々やってもらっている」

 

紫さんにいいように利用されてるだけだと私は思ってるが。

 

「橙のこともそうだし、油揚げの件もそうだ」

「まだ覚えてたんだそれ……」

「腕の件もあるし、やっぱり吸血鬼のことも……礼がしたいんだ、とにかくな」

「えー?」

 

律儀な人だなぁ……紫さんみたいに気にしないで普段通りにしてくれてたらいいものを……

いや、紫さんが適当だからその分藍さんがしっかりしてるのか?

 

「お礼を私にしたいのはわかったよ?でもなぁ……特にやって欲しいことないし……別に無欲ってわけじゃないんだけどさ」

「そう言わずに、何かないのか?年月が経つたびになんだか申し訳ない気持ちになってくるんだ」

「真面目だなぁ……」

 

初対面であれだけ睨みつけてきた人と同じとは思えねえなあ…

 

「やっぱり腕を……」

「いえ結構です」

「ならば……そうだ、彼女を式神にするのはどうだ?」

「誇芦ぉ〜?式神ぃ〜?」

 

それは……なんつーか……

 

「お前はどー思うよ」

「あ?何が」

 

あ?ってお前な……いや私のがうつったのかもしれないけど。

 

「この藍って人がお前を私の式神にしてくれるんだとよ、どする?」

「式神って具体的に何」

「……何なんですか藍さん」

「……簡単に言うとだな」

 

話によれば……

 

なんかこう、妖怪?妖怪の獣?とかをなんかこう…それ用の術式でなんやかんやしてパワーアップさせたもんらしい。

難しくてよくわからんかったけど大体こんなんであってるでしょ、うん。

 

「別にいらないかな」

「毛玉もそう思う」

「そうか……」

 

なんかそういう式神とかで縛り付けたいわけじゃないし。

別にパワーアップとかして欲しいわけでもないし……あいつ元からかなり頭良かったし、必要がないってとこかな。

 

というか、今この空間にいるの……

猫と猪と狐と毛玉……

 

私だけなんか……浮いてね?

 

「別にさ?私は見返りとか求めてやってたわけじゃないし、そんな思い悩むほどお礼のこと気にされたら、私もなんか居心地悪いよ」

「しかしな……」

「私に礼って言うなら、今まで通り友達でいてくれるのが一番嬉しいよ、私はね」

「……そうか」

 

フランにも同じこと言ったけれど。

こうやってわざわざ会いにきてくれて、友達としていてくれる。それだけで私は幸せなのだ。

それ以上を求める気はない。

 

「でも礼はいつか必ずするからな」

「曲げないねえ……」

「ていうかさー」

 

橙が口を開く。

 

「紫様もしろまりに色々やらせすぎじゃないかな」

「しろまり言うな」

「確かに……言われてみればそうだな」

「そうかぁ?」

 

……そうなのか?

確かに色々とやらされてるなーとは思ってたけど。

 

「毛糸、やはり君は大妖怪らしくどっしりと構えたほうがいい」

「いや……なんか前にも同じこと誰かに言われた気がするけど……私の!この!頭が!大妖怪って!頭に!見える!?」

「なら自分は普通の妖怪だと言い切るつもりか?」

「はい!私はどこにでもいる普通の毛玉です!」

「はぁ………」

 

なんかめっちゃため息つかれてるんですけど!

 

「鬼の四天王のうち二人と拳を交えて生き残り、風見幽香や妖怪の賢者である紫様と関わりを持ち、吸血鬼異変で大暴れ。これがどこにでもいる普通の毛玉で妖怪のやることか?」

「そのくらいやるんじゃないですかね!多分」

「いややらない」

「やらないでしょ」

「やるわけないでしょアホか?」

 

あの生意気なイノシシは後で首筋ひんやりの刑に処す。

 

「そりゃあ普通の妖怪じゃないって自覚はあるけどさ……大妖怪ってなんか、こう……イカついじゃん、近寄り難いじゃん。私は勇儀さんや幽香さんみたいな強者の風格ってのないし。というかあの辺の人たちと戦って勝てる気もしないし……」

「かと言って、普通の妖怪よりちょっと強いとかでは収まらないのは分かってるだろう」

「そりゃまあ……」

 

そもそも私を構成する大体のものが貰い物なのに、大妖怪とか大層なもん名乗っちゃいかんでしょ。

どうせやるなら、所詮奴は大妖怪の中でも最弱…とかにしておいてくれ。

というか大妖怪って何だよ、大ってつくだけで言葉の重み変わりすぎだろ。

 

「親しみやすいって事にしておいてよ」

「舐められやすいって事だと思うが」

「手厳しい……」

 

いいじゃん別に、変に威張り散らかしてぼっちになりたくないもん。

友達欲しいもん!友達100人作りたいもん!

 

「でも実際、こんなんだから妖精から藍さんに至るまで関係持ててるってことでしょ?なら私はこのままでいいよ、たとえこき使われようともね」

「…まあ、それが君らしいな」

「流石しろまりー」

「親しみやすい妖怪しろまり」

「ほら!人里でもまりも扱いされるからね!こんなにまりもまりもって言われて人妖からいじられてる妖怪私くらいだからね!」

 

でもあそこの生意気な猫と猪は後で服の中に氷の刑に処す。

 

「まあ……人からの印象はそこそこだけど、妖怪からは結構怖がられたりしてるんだよね」

「そうなのか?」

「この前なんか妖怪の山の近くで山の妖怪じゃないやつに出会ったんだけど、私の頭を見るなら「ヒィッ……わ、私食べても美味しくないです……」とか言われたんだよね」

 

泣きそうになった。

 

「まあ明確に組織として付き合ってる妖怪の山とか人里とかとかは違って、個人の妖怪とかだからそうなるのは仕方ないかもだけどさあ……どんな噂流れてたんだろうね」

「まあ、人に寄った行動をしていれば自然とそうなるんじゃないか」

「見かけた人を襲ってる妖怪全員引っ叩いて回ってたのがダメだったのかぁ〜」

 

ビンタくらいでそんなに怯えなくたっていいじゃないか。

 

「最近は人襲う妖怪も減ったからそういうのも無くなったと思うんだけど…私ってそんなに覚えられやすい頭してる?」

「あぁ、一度見たら数十年は忘れないだろうな」

「そんなに!?」

 

この世界割と髪色カラフルだからもっと早く忘れてくれ。

いや、髪色の問題じゃないんだろうけど、髪型の問題なんだろうけど。

 

……そういや、なんかこの世界の人ってみんな頭になんかつけてるよね。

目の前の藍さんや橙もそうだし、妖怪の山の妖怪もみんなつけてるし、霊夢魔理沙もリボンと魔女帽子かぶってるし、アリスさんも…

河童は帽子だし、妖精たちはリボンとかつけてるし、ルーミアも赤いのついてるし。

鬼の人は…帽子かぶってないけど、ツノあるし。

なんなら紅魔館の人もみんな………

 

………みんな頭になんかつけすぎじゃね!!?

 

ち、ちょっと待て……頭に何もつけてないのって誰がいる……?

私、誇芦……あと巫女さん……含めていいのかわからんけどりんさん……

 

……それだけ!?

いや霖之助さんは頭……メガネつけてたわ!

 

みんな頭に何かしらつけてるんだ……私がおかしいのか……?

……このもじゃもじゃが帽子の代わりってことにしておこう。

 

「そういやさっき式神うんぬんの話してたけど、藍さんってどういう経緯で紫さんの式神に?」

「ん?あぁ……その……なんだ……」

 

何故か言い淀む藍さん。

 

「大昔に色々あって……」

「なにー?今は真面目な藍さんも昔はやんちゃしてたとか〜?」

「…………」

「あ……ごめん……」

 

冗談で言ったらマジだったようで……

でも藍さんって九尾の狐だし、結構すごい妖怪だと思うんだけど。それがやんちゃしてたってことは……まあ、うん、触れないでおこう。

 

「私のことなんかいいだろう」

 

いえ結構気になります。

 

「そうだ、人里ではどうなんだ?」

「どうって……まあ、結構上手くやれてると思いますよ?顔も結構覚えてくれる人増えてきたし、最近じゃ雑用頼んでくる人なんかもいて」

「やっぱり舐められてるじゃん」

「完璧に舐められてる」

「親しくしてくれていると言え」

 

なんで要所要所で口出してくるんだよあの猫猪。

耳氷漬けの刑に処されたいか。

 

「人里に住んだりはしないのか?」

「人里?あぁ……うーん」

 

別に住んだって何言われなさそうだけど……現に慧音さんが人里でずっと暮らしてるし。

 

「別に人里に特別仲がいい人がいるわけじゃないしなあ……後絶対この家の方が便利」

 

河童の叡智が詰まってるからね、この家。

ほとんど私がるりにやらせたものばっかだけど。

 

「別に人里にずっと居たい理由とかあるわけでもないし、住み慣れたここの方が私はいいかな」

「縄張りだー」

「縄張り意識強めの毛玉」

 

追い出してやろうか貴様ら。

 

「それに、大妖怪ってぽんぽん棲家変えるもんでもないでしょ?」

「それもそうだな」

 

もちろんは私は大妖怪でもなんでもないが。

 

「そうだ藍さん、これやってみてよ」

「なんだ?」

 

近くからまだ一つ残っていた、私が力任せに解いた物とは違う知恵の輪を持ってきて藍さんに手渡す。

 

「これを全部バラバラに解く遊び、河童のやつだから結構難しいと思うよ」

「なるほどな」

「あ、さっき毛糸が引きちぎった奴だ」

「やかましい」

 

さて、藍さんが知恵の輪に苦戦している間に、私はあの二人に刑を執行するとするか………

 

「できたぞ」

「あぁうん。………はい?」

「できた」

「………マジですか」

「なかなかの手応えだったな」

 

あ、ちゃんと解いてる……力任せにやってなぁい……

 

「は、早くね」

「算術は得意なんだ」

「うん、算術じゃないけどねそれ」

 

私と誇芦が頭捻っても全然できなかった奴をこの人は……

こわ……


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