「珍しいわね、何の用かしら」
「それがですね……へへ」
幽香さんに会いに太陽の畑まで足を運んだ。
なかなかここまで来ないけど、今回はちゃんと目的があってここにやってきた。
「えーとですね……すっごいしょうもない頼みがあるんですがね?」
「私に頼みだなんて珍しいじゃない、いいわ、聞かせて」
「いや本当にしょうもないんですがね?」
「いいから」
言うのも憚れるくらいしょうもないんだけど……
「ビームの使い方…教えてほしいなーって……」
「………」
「あはは……はい」
「……要するにあれね?人間の子供二人が当然のように出してるのを見て、危機感を覚えたと」
「すっごい遠回しな言い方したのにすっごいわかりやすくまとめられた」
「子供っぽいとこあるのね」
ええそうですよ、子供っぽいですよ私は。
「とりあえずやって見なさい、どれだけ情けないのが出るのか」
「えっ……ここ室内だよ?」
「いいのよ、期待してないから」
泣きそう。
ええと、妖力をためて一点から放出……
「………」
「………」
「へにゃってるわね」
「へにゃってるね」
妖力ためすぎると妖力弾になってただの爆弾になっちゃうし、かといってそこそこにしたらあんまり威力でないし……
正直誰かにやり方教えてもらえないと一生できない気がする。
てか殴った方がコスパいいしい?
「一応聞くけど、あなた何年生きてるのかしら」
「大体500年っすね」
「才能ないわね」
「はい…」
そんな改まって言うことないじゃん……
「苦手苦手ってあんまり思ってると、出来るものも出来なくなるわよ」
「と言われましても……実際めっちゃ下手でしょ?」
「めっちゃ下手」
苦手意識が強すぎるのは確かにあるんだろうが……下手にも程があると思うんだ。
「幽香さんはいつもどんな風に?」
「まあ威力の弱いのなら手から雑に出したりするけど……」
「高いのは?」
「気合い入れてる」
「えーー」
そりゃねえぜ……なんの参考にもならん返答はやめてくださいな。
「じゃあ全力のやつ見せてよ、どんな風なのかさ」
「……わかったわ、外に出るわよ」
「結構離れたね」
「危ないから上に向けて撃つわ」
「うっす」
なんか軽い感じで頼んでしまったが、幽香さんの全力とかタダで済むはずがないのだ、とんでもないことを頼んでしまったかもしれない。
まいっか!
幽香さんが妖力を高め始めると同時に。地面から一輪の大きな……それはそれはとても大きな花が出てくる。
次第にそれは萎んでいき、まるで閉じた傘のような……持ち手のようなものすら表れ、それを握って天空へと先端を向けた幽香さん。
先端に妖力が集中し、大気が揺らぐような妖力の荒ぶり。
轟音を響かせながら、極太のレーザーが天空を昇って行った。
「………」
「とまあ、こんなものよ」
やっぱ幽香さんってやばいわ……
あそこまでの威力のものを私は見たことがない。
流石の私もあれをまともに受けたら文字通り消し炭になる自信がある、再生とかそう言う話ではないこれは。
「何かわかったかしら」
「………うん、なんとなく」
「あら、そう」
「あれでしょ、その花の傘みたいなの作ればいいんでしょ」
「あなた頭悪いのね」
「直球やめて」
花というか、妖力を突っ込む器みたいなのがあればいいはずなんだ。
えーと……確かこんな感じだったよな。
「むぅ………ん、出来た」
「そこまで出来るようになってたのね」
「まあ結構練習してたんでね」
見よう見まねでも案外すんなり行くものだ。
私の作った花の傘は……真っ白だけど。
「アホほど妖力を流し込んで、先端から一気に放つ……」
威力足りなくてもいやだから、幽香さんと同じくらいの妖力を……
……どんだけ妖力使ったんだこの人!?結構馬鹿にならない量使ってるよ!?
「ふんぬ……結構負荷すごい……これもう撃っていい?いいよね?」
「もうちょっと溜めてみなさい」
「ふんぎゅうう……」
お、重い……真上に花の傘向けてるからなおさら重い……
「いいわよ」
「発射ぁ!!」
妖力を放出したと同時にさらなる負荷が体にかかり、幽香さんと同じように轟音を轟かせながら、極太のレーザーが上に向かって放たれた。
妖力の放出が終わると、思わずその場に座り込んでしまう。
「……で、でた……」
「意外とすんなり行ったわね」
こ……これがかめ○め波……!
いや手から出してないけど。
「これが花の加護……」
「多分違う」
「出来た……ゴミでカスで塵芥で有象無象で学ぶと言うことを知らない低俗な生物の私でも出来た……」
「めっちゃ言うわね」
なんかあっさり出来すぎて、逆になんで今まで出来なかったんだ的な発想になる。
「心配ないと思うけれど、今のを無闇矢鱈に打たないこと。流石に威力が高すぎてとんでもないことになるわ」
「わかってますって……ところで、幽香さんのその傘の意味って?」
「気合い」
「あっ………さいですか」
気合い入るんだそれで………
「私もやる時はこの花出そうかな……って硬!?あ、開きはする……かった!?なにこの花!?」
「そこまで再現できたのね」
「なんすかこの花!?」
「日傘」
「あ、日傘なんだ。いやそうじゃなくって……」
「私たちの妖力で攻撃の衝撃に耐えるように創られた花よ、そのくらいの強度はあるわ」
「にしても硬すぎじゃあ……」
これで殴られたら痛そうだなあ……
硬い硬いと言っているが、それはあくまでも花にしては、と言う意味。多分私の妖力を流し込んだ氷の方が硬い……はず。
「なんか出し方のコツもわかった気になってるし、ありがとうね幽香さん」
「わかった気になってるだけなのね……まあ一度出せたらあとは簡単だと思うけど。……せっかくだし紅茶でも飲んでいく?」
「あ、いいの?それじゃありがたく」
「と、いうわけでな」
「どういうわけだよ」
あれ、私ちゃんと経緯話したよね。
「いやだからさ、この前『こんなのも出来ないのかよ!大したことねえな!!ゲハハハハハ!』って魔理沙馬鹿にしてきたじゃん」
「したけど私はそんな笑い方しねえよ」
「だから練習してきたってわけ」
「子供かよ」
「悪いかよ」
ミニ八卦炉とかいう超有能アイテムに頼ってるくせに調子乗ってんじゃねえぞガキ!ちょっと貸せよそれ!私も使ってみたい!
「じゃあ見せてみろよ、あの…ぷっ……ひ、ひょろひょろビーム?」
「ひょろひょろじゃねえしい?今の私はごんぶと破壊光線出せるし?」
「ほんとかぁ?」
「ほんとだしぃ?あまりにも強力すぎてここで撃ったらこの家吹き飛ばしちゃうくらいには強力だしぃ?」
「大層な自信なこって」
あのあとちゃんと練習してきたし、レーザーはちゃんと出せるようになったはずだ、多分きっと。
今まで散々できなかった分自信もそこまでないんだけど……まあ魔理沙相手にここまで言い切ったなら、ちゃんとやらなきゃなあ。
「あ、霖之助さんは元気?」
「気になるなら自分で会いに行きゃいいだろ?」
「顔見にいくためだけに会うような仲じゃないし」
「まあそれもそうか、元気だよ。お節介焼きだけどな」
そりゃあ人間一人魔法の森に置いてるんだから気になるでしょうよ、多少のお節介も当然だろう。
あの人結構心配性そうだし。
「てか、片付けなよ、家」
「勝手に動かすなよ、どこに何があるかこの状態で把握してんだから」
「いや別に何もしないけどさ……汚いと…あれだよ?嫁の貰い手とか……ね?」
「お節介」
「うるさいやい」
まあこんな俗世を離れた生活してる時点で、そんなことも考えてないんだろうなあ。考える年齢でもない、か?
「私はまだ魔法の研究で多忙なんだよ、あいつに置いてかれるのは癪だしな」
「霊夢すごいもんなあ、巫女さんも自分より全然才能あるって言ってたし」
「天才をこの努力の天才がいつか超えてやるぜ」
「その天才が努力した場合は?」
「もっと私が努力する」
「おう頑張れよ」
「おう頑張るぜ」
改めて部屋の周囲を観察する。
外から見ても分かるくらい家が改築されてたが、中は中でいろんなものが散乱していて見るに堪えない状態だ。
床に変なシミついてるし……
「ちゃんとしたご飯食べてるか?」
「ん?食べてるよ」
「1日3食?栄養偏ってない?運動は……してるか」
「なんだなんだ急に気持ち悪い」
「気持ち悪い言うな。私一応お前の親に面倒見るって約束してるからね?」
「そーいやそんなことも言ってたなあ……」
気が向いた時に霧雨さんには魔理沙の様子を報告しに行っている。
出て行ったとはいえ娘のことだ、元気にしているか気になるだろう。
「結構年も経ったよな、最初に出会ってから」
「まあそうだね、魔法の森で拾ってからね……たまには親父さんに顔見せに行ってあげなよ?」
「やだね」
「この親不孝者め」
「なんとでもいえ」
家族は大切するもんだよ、いや本当に。
「すっかり背も態度も大きくなっちゃってまあ……あの頃のちっさい魔理沙が懐かしいよ私は」
「昔の話はよしてくれよ……毛糸は昔っからなんにも変わんないよな」
「まあ妖怪だし」
「こうやって話してても、妖怪って感じあんまりしないけどなあ」
「大体みんなこんなもんだよ」
「流石にそりゃねえだろ」
まあ確かにみんな私みたいに頭がおかしいわけじゃないが……私からしたら妖怪だって人間味はある。
妖怪と人間にそこまでの差がないように思ってしまうのは、私が妖怪だからだろうか。
「案外話してみたらみんなフレンドリー、友好的だったりするよ」
「それはお前が妖怪だからじゃねえのー?」
「あぁ……それは、否めないが」
「……ま、アリスやお前、こーりんを見てたら、そうなのかもって思っちゃうけどな」
「……そっか」
人間に友好的な人外ばかり上げたなこいつ……あれ慧音さんは?
「あそうだ、お前、これまだ持ってるか?」
魔理沙が懐から何かを取り出す。
「ん?……あぁ、それね」
私も服の中を漁って、紐のついた木製の、魔理沙のと似た形のものを取り出す。
「ほれ、この通り」
「あ、ちゃんと持ってるのか」
「祭りに行った時に買ったんだっけ」
「そうそう、確か霊夢がな」
私と魔理沙と……巫女さんと、霊夢。
「こんなの欲しがるなんて、あいつも可愛いとこあるよなぁ」
「………お前も、まんざらじゃない顔してたの、私覚えてるけどね、マリちゃん?」
「ゔ……てかマリちゃん言うな!!」
「へいへい。……そろそろ見せようか、例のアレ」
「二度とマリちゃんって呼ぶんじゃねえぞ」
「わかったって………そんなに嫌だった?」
余波で家に何かあったら嫌なので、それなりに距離を置いて準備する。
妖力を操って地面から一輪の真っ白で大きな花を咲かせ、それを閉じて空へと向ける。
「よーく見てろよ」
「はいはい、わかってるって」
以前幽香さんの前でやったように妖力を込め始める。
流石に練習でアレと同じような威力を出すわけにもいかないから、アレよりは威力の低い練習ばかりだったが……それでも少なからず自信はついた。
もーちっと妖力いるかなぁ……
「お、おい……それ絶対こっちに向けるなよ」
「いや向けんわ」
生身の人間に放とうものなら、それこそチリ一つ残らないんじゃないか?
……なんかそう思うと怖くなってきたな、なんで私こんなとんでも光線出そうとしてんだろ。
「んっと……こんなもんか、3つ数えたら発射するぞ」
「お、おう」
「いーち」
撃った。
「2と3はぁ!!?」
「浜で死んだ」
もう何度目かの極太光線。
段々と細くなっていき、傘の先端から放たれる光が完全に収まると、私は肩の力を抜き傘を地面についた。
「はい、どうでしょう」
「すげぇ……」
「お?おう……ストレートな感想どうも?」
なんか想定してたより随分びっくりしてらっしゃる。
私はもう何回か見てるからあんまり驚かないんだけど、感覚の違いか。
「なんて言うんだ?それ」
「……え?なに名前?今のやつの?」
「ないのか?」
「そりゃあだって妖力集めてパーって出してるだけだし……」
「じゃあじゃあ!名前つけてもいいか?」
「え?あ……ま、まあ、どうぞ?」
別にこれ技名でもなんでもないんだけどなあ……だってただ妖力を力任せにぶっ放してるだけだし………
オリジナリティもへったくれもないからな、魔理沙が勝手に名前つけても問題ないだろう。
「うぅんそうだなぁ、何がいいかなあ」
「ハイパービームとかでええでしょ」
「は?舐めてんのか?」
「こっっわ」
そんな本気の目で見てくんなよ……およそ人間の少女がやっていい目じゃなかったって。
「マスター……マスタースパーク…なんてのはどうだ!?」
「………」
「なんだ、ダメか?」
「いや、うん、いいんじゃねえかな」
「よし決まりだな!」
まあ……ろくに名前つけられない私は何も言えんわ。
「さっそく練習してモノにしてやるぜ!」
「あ習得する気なんだぁ……まあ……うん、頑張れよ」
「おう!」
「ってことがあったんですよ、幽香さん」
「それじゃあ私が元祖ね」
「え?あ、はい。………え?」