毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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いくつかのお知らせが活動報告にあります、時間の空いた時にでもどうぞ。


化物扱いされてる毛玉

 

「毛糸さん、マシになったらしいですよ」

「へぇ」

「素っ気無いですね」

「最近会ってないしな」

「まあ、そうですけど」

 

互いに休みになって、あてもなくふらついていると、椛と出会って、立ち止まり、流れていく川を見つめる。

 

「お前も暇か?」

「えぇ、まあ」

「お互い、何の趣味もないんだな」

「そうですね」

 

やりたいことも、特にない。

ただただずっと、流れていく時間を見過ごすだけ。

 

「強いて言うなら、鍛錬ですかね」

「今日はやらないのか?」

「今まで磨き上げてきたものって殺すための技ですし、これから先のことを思えば、もっと他の時間の使い方を探した方がいいのかな、と思いまして」

「これから先ねぇ……」

 

俺みたいな小物には、何が起こるのかさっぱりだが。

何かが変わるんだろうなって予感は、確かにある。

 

「柊木さんこそ、何かないんですか?」

「あー?強いて言うなら……美味いものを、食べるくらい?」

「つまらない人ですね」

「おう悪かったな」

 

俺みたいな奴に面白みを求めるのが間違いだと思うんだがな。

せめて足臭までにしとけ、いや嫌だけども。

 

「……いい天気ですね」

「……そうだなぁ」

 

ずっと見てきた、変わらない風景。

 

「せっかくですし毛糸さんのところ行きましょうか」

「そうだな……あ?」

 

突如として変化が訪れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………」

「………」

「おう、何見てんだよ」

「無様だなあ、と」

「見せもんちゃうぞ!散れ!散れ!」

 

簀巻きになって木の枝から吊るされたもじゃもじゃが、身体をくねらせながら抗議してくる。

 

「ってか、何二人してわざわざこんなところに……ハッまさか……ま、また山に面倒ごとが…?」

「別にそんなんじゃないが」

「お前らの山呪われてんじゃねーの……?いっそ山の頭すげ替えたら?」

「違うって言ってるだろ、てか冗談でもやめろ、洒落にならん」

 

過去最大に面倒なことになりそうだから本当に勘弁して欲しい。

 

「毛糸さんこそ、なんでそんな無様で惨めな姿になってるんですか」

「めっちゃ言うね?いやさ……紆余曲折あって、大ちゃんとチルノに怒られて巻かれて吊るされた」

 

昔もこんなことあったなあ、と遠くを見つめて呟く毛糸。

あれだけの力持ってるのに妖精にこんなにされるんだもんな……相変わらず、威厳もへったくれもない。

 

「……で、結局どんな厄介ごとを持ってきたの?」

「いや違いますって」

「お前ら二人で私のとこくるとか今までなかったじゃん。じゃあ何か?暇だから遊びに来たとでも言うつもりか?」

「そうだな」

「そうですね」

「マジ?」

 

文はともかくとして、俺は本当に山から離れたところに行かないからな……

 

「…‥そうなった経緯は?」

「二人とも暇だったので、最近様子がおかしかったらしい毛糸さんをからかいにきました」

「帰れ」

「そんなこと言っていいんですかー?」

「あ、おい待て何をする!!ゆ、揺らすなっ、揺らすなぁっ!」

 

揺らすだけか……優しいな。

 

「フンッ」

「あ、抜けた」

 

抜けようと思ったら抜けられるんだよな、こいつ。

一瞬毛玉になってたが、あの程度普通に力で捩じ切れそうなもんだけどな。

 

「別に私のこといじりにくるのはいいけどさ」

「いいのか……」

「その…‥何?二人でゆっくりその辺散歩してきてもいいんだよ?」

「何でです?」

「あー、いや、うん、何でもない」

 

文からは随分と様子がおかしい様子がおかしいと言われ続けたが……特に普段と変わらない。

いつも通りの、おかしな奴だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はいどうぞ……何の面白みもない家ですが」

「…‥そういや俺、中に入った記憶がないな」

「そうだっけ?」

「記憶に残ってないってことは、あっても一回とかでしょうね。ちなみに私は一度一人でお邪魔してますよ、ちゃんと覚えてます」

「だからなんだよ」

 

生活感のある家。

所々修繕したような痕跡があるが、基本は綺麗に整頓されていて、掃除とかもそこそこまめにしているように見える。

 

「うわ白っ」

 

奥の方にいた、一人の見慣れない妖怪が俺たちを見てそう呟く。

 

「彼女が?」

「うん、元イノシシ」

 

あぁ、話には聞いていた……

 

「3人固まると白っ」

「そうですか?山に来たら白狼天狗が掃いて捨てるほどいますよ」

「まあ確かにこう見たら全員頭白いからな」

「私たちは見慣れてるから、そうも思わないけど」

 

天狗は割と色で見分けがついたりするからなぁ……

 

「なんか毛糸が増えたみたいで気持ち悪いから外出るね……」

「おいどういう意味だコラ」

「そのままの意味だけど?」

「お前今日の夕飯覚えとけよ」

「何かしたら突進するだけだからあ」

 

………出て行った。

悪態はついていたけど、要するに居心地が悪いのと、気を遣ってくれたってことなんじゃないのか、あれ。

 

「仲がいいんですね」

「あ?そりゃまあ……付き合いは結構長いし。好きなとこ座っていいよ、でもここは私のところだから」

 

そう言って大きな座布団のようなものに埋まる毛糸。

……楽しそうだな。

 

「せっかく来てくれたけど、特になんもないんだよね……あ、海苔ならあるよ、食べる?」

「なんで海苔なんだよ」

「いただきます」

「え食うの?……じゃあ俺も」

「どぞ」

 

……食感がいいな。

 

「最近ちゃんと会って話することありませんでしたし、そちらは色々あったと聞きまして」

「それで話聞きに来たと?お前らそれは流石に暇を持て余しすぎだろ」

「お前が言うなお前が」

 

こいつにだけは暇とか言われたくない。

 

「別に話すのはいいけども……何話したもんかなぁ」

「文さんから毛糸さんの様子については何度か聞いていました、今はどうです?」

「ん、見ての通り」

 

両手を広げて自分を強調している。

別に普段と何も変わらない様子だが……

 

「文さん、それはもう物凄い心配っぷりでしたよ」

「うん知ってる……悪いことしたとは思ってる」

「お前がそこまで変わるってことは、何かしらがあったんだろうとは思うが……」

 

さて、何があったか聞くべきか、聞かないべきか。

 

「言いたくは、ないかな、あんまり」

 

少し、暗い表情でそう言った毛糸。

 

「……んまああれだよほら、昔私がこの家に引きこもってたころあったじゃん、ここを離れる前の」

「あったらしいですね」

「あれと大体同じだよ」

 

わからん……

 

「いやあ……文には言わないで欲しいんだけどさ、気づいたら指は自分で取ってるし味覚と嗅覚はなくなるしすぐ放心するしで、ついでに心情的にも辛くって……」

「さらっととんでもないこと言ってないか」

 

味覚と嗅覚がなくなって……自傷行為か?

 

「よく今そんな茶化した感じで話せますね……」

「まあ過ぎたことだしぃ?文に聞かれたらしつこく追求されそうだから言わないだけで」

「分かりました伝えておきますね」

「やめい」

「しつこく追求されそうって部分を」

「そっち?いやでもやめい」

 

………想像もつかないな。

精神が病むって奴だろうか、普段から普通じゃない言動をしてる奴ではあるが……

 

「で、何で立ち直ったんだ?今そんな風にしてるって事は、何かあったんだろ?」

「そーなの!って、文からは聞いてないのか」

 

文には言ったのか。

毛糸と文はよく会ってるし……まあ、文が一方的に心配してるっていう構図な気がしないでもないが。

 

「まあ色々あってさ、全部語ってると時間がかかるから色々端折ると」

「別に私たち暇なのでゆっくり話してくれてもいいんですよ」

「私が面倒臭いから端折ると」

 

わざわざ言い直すか、そんなに面倒か。

 

「心臓ブッ刺されてなんか闘争本能が湧き上がってきてガチンコぶっ殺し合いしてたら色々吹っ切れた」

「端折りすぎです」

「同感」

「色々あったんだよ……色々、ね」

 

なんか遠くを見つめて口角を上げながらそれっぽく言うのやめろ。

普通に腹立つ。

 

「そう!そんなことより私心臓貫かれても何とかなったんだよ!治ったんだぜすごくね!?」

「別に意外じゃないですけど」

「同感」

「えっ」

「もとより化け物なのは承知の上ですし」

「同感」

「えっえっ」

「もしかして自分は普通の妖怪として扱われてると思ってたんですか?だとしたら相当な間抜けですね」

「同感」

「えっえっえっ」

 

自分が山を訪れる度に天狗達がざわついているのを知らないのだろうか。

 

「こんなに親しみやすくて賑やかで頭もじゃもじゃで友好的なのに?」

「そういう点が普通じゃないとも言うんだよ」

「そもそも実力的な話ではありますが……」

「そんなこと言い出したら椛だって普通じゃないやん!」

「私はちょっと殺すのが得意なだけです一緒にしないでください」

「いや同じ穴の狢だと思うが」

「次舐めたこと言ったら足首の骨折りますよ」

 

脅迫……

 

「妖怪の山を普通に出入りする、気軽に地底に侵入する、幻想郷の反乱者や吸血鬼を制圧する、妖怪の賢者とも繋がりがある、などなど………さて、普通の妖怪である根拠はどこにあるでしょうか」

「ぐ、ぐぬぬ……吸血鬼に関しては私そんなに大そうなことしてないもん!誇大な噂だし!」

「じゃあ他は?」

「事実です」

「そういうことです」

「ぐ、ぐぎぎ……」

 

何で今更否定しようとしてるんだよ、なんなら出会ったころから普通の妖怪じゃないっての。

 

「そもそも普通の妖怪の定義ってなんだ」

「………」

「………」

「答えられないのかよ」

 

種族の中での普通なら定義付けることもできるが、色んなやつ……それこそ毛玉の妖怪とかいるのに、普通もくそもないんじゃないか。

 

「まあ、さ。暇だから来たのか気になって来たのかわからないけど……私はこの通り、平気だからさ」

「正直そんな毛糸さんを見たかったという気持ちはあります」

「あらそう……」

 

見たかった、というか。

想像つかないから、気になるって感じだ。

 

「……いいよなぁお前らは、同族いっぱいいて」

「どうした急に」

「毛玉なんて探せばいるじゃないですか。……そうでもない?」

「そういう問題じゃないんだけどさあ……ごめん、やっぱ今の忘れて」

 

同族なんて、わらわらいるだけでそこまでいいものでも……すぐ裏切ったり馬鹿したりする奴いるからな……

 

「………身近な人なら、さっきの妖怪がいるじゃないですか」

「違うんだよ……いや、違わないんだけど、そうなんだけどね……?」

 

その表情からは、どこか諦観したような……

 

「……ま、そんな話は置いといて。思い出話でもする?」

「そうですね……吸血鬼異変のこととか、何があったのかちゃんと聞いてはなかったですし」

「俺特に何も話すことないんだが」

 

他愛のない話が、続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どう思いました?」

「何が」

「毛糸さんですよ」

「どうって?」

「様子ですよ様子」

 

帰り道、唐突に椛がそう聞いてくる。

 

「いつも通りに見えたけどな……いつも一緒にいるわけじゃないし、あいつも立ち直ってはいるんだから、様子の違いなんてわからんだろ」

「まあそうですが……思い出してみてくださいよ」

 

ほらあの時、と指をくるくる回しながら想起を促してくる。

 

「毛糸さん、何があったのかは詳しく言ってくれませんでしたけど、数十年くらいどっか行ってた時期があったじゃないですか」

「あー……俺があの薄気味悪い刀ずっと預かってた時か」

 

そういやあれを取りに来たの随分後だったような……

 

「遠出してしばらく帰ってこないような心境にはなったと思うんですよね、あの時と同じことがあったっていうなら……」

「……無理して平静を装ってると」

 

それを踏まえて思い返せば、確かにところどころの動きや話し方がぎこちなかったような気がしないでもないが……

 

「というかお前、毛糸の様子くらい普段から見れただろ」

「なんで特に理由もないのに知り合いの私生活覗かなきゃいけないんですか、非常識ですよ」

「お前常識的なのかそうじゃないのかはっきりしろよ」

「あなたを黙らせるためになら非常識にでもなりましょうか?」

 

当たり前って言えば当たり前なんだがなぁ……

 

「柊木さんって、割と普通そうでしたよね」

「あ?」

「あなたも友人無くしてたじゃないですか」

「あー」

 

そりゃまた随分前のことを……

 

「なんともなかったんですか?あの時」

「さあ、覚えてないな」

「覚えてないってことは特に何もなかったってことですよね」

 

名前……なんだったっけか。

 

「まあ…別れっていうよりは決別だったしな。勝手に裏切って勝手に処刑されたやつに流す涙は持ち合わせてねえよ」

「冷酷な人ですねぇ、柊木って名前つけたのその人とか言ってませんでしたっけ」

「最近は足臭って呼ばれることの方が多いけどな?」

「お気の毒です」

 

言い出したのお前だろうが。

……何も、なかったわけじゃない。

多少は気分も落ち込んださ。

 

「ま、あいつがいなくなったとしても、お前らがいたからな。うるさくてめちゃくちゃで、賑やかな奴らが」

「………なら、もし私が死んだら?」

「お前が死ぬような時は先に俺が死んでるだろ」

 

……まあ、もし本当に死んだとしたら。

 

「もし死んだら、盛大に悲しんでやるよ」

「……じゃあ私は、柊木さんが死んだら鼻で笑っておきますね」

「おう盛大に笑っとけ、鼻歌でも歌ってろ」

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