妖力を霊力に変換し氷の塊をつくり、細長い棒をイメージしてその氷を大きくしていく。
できたのは私の3倍くらいはありそうな氷の柱。
妖怪の山の上空からその氷の柱を敵のいる方に落とす。
空高くから落とされたその氷の柱は、地面へと突き刺さると同時に砕け、その周囲の敵を破片が襲っていた。
我ながらよくこんなものを思いついたものだ、やっぱり勝つつもりで行くんなら安全なところからどんどん攻撃するに決まってるよねー。
私に気づいたのか、地上の方からいろんな色で光る謎の光弾が私を襲ってきた。
まぁ妖力でできてそうだから妖力弾とでも呼んでおこうか。
地上から放っているだろうから私には到底当たらない。
一応毛玉の状態になっておいて当たり判定を小さくしておこう、それと少しずつ距離を離す。
地上の方から飛んでくる人影が見える。
妖力弾を撃ってきてるけど、私のバックには太陽が待ち構えている。
眩しいのだろう、全く当たる気配がしない。
あと私いま氷作るのやめて毛玉なんだけど、よく見えるね?
人の姿に戻り、まだ落ちずに私の近くに浮いていた氷の柱を掴む。
私の下に向かってきている人影に向かって、氷の柱をもってくるくる回転しながら近寄らせないようにする。
浮かしているため重さが全くないとは言えど、空気抵抗はある。
霊力の衝撃波をだして加速しているけど、空気が当たって腕にそこそこの重みがやってくる。
でも回る分にはまだいける。
毛玉で長い間空中浮遊生活を過ごしていたおかげで、私の三半規管はちょっとやそっとじゃ悲鳴をあげることはない。
ローリング氷柱アタックをしながら敵の方へ向かっていき思いっきりぶつける。
鈍い音を立てて氷の柱に接触した敵は、ぐえっ、とか、あぐぁ、とか、色々な声を出していろんな方向打たれ空の彼方へと消えていった。
ホームラーン。
でもまだまだくるなこれ、いや見えないけど、くるくる回りすぎてて見えないけど妖力弾の数がバカみたいに増えてきている。
お前らぁ!グミ撃ちは負けフラグなんだぞ!やめろよそーゆーの!死にたいのか!
腕に謎の衝撃がくる。
どうやら敵に接触した時、とうとう氷の柱の耐久に限界がきてて砕け散ってしまったようだ。
あと私が早く回りすぎたのもあると思う、ってか指痺れた、頑張って氷の塊に指めり込ませて何とか振り回してたから凄い指が痺れてる。
そして減速した私の持っている氷の柱を敵の誰かが受け止めた。
まぁ軽いからね、誰でも簡単に持てるよね。
敵の顔を見るとなんかドヤ顔してた、ドヤってた。
「欲しいならやるよ」
この氷の柱は私の作った氷の柱で、氷ではあるがもとは霊力だ。
氷の柱の中を私の霊力を通して敵の掴んでいる手を凍らして手を離せないようにし、敵の体自体を浮かす。
そのまま振り回して地上の方に向けて氷の柱の浮遊状態を解除、そのまま敵と一緒に落ちていった。
ふぅ、疲れた。
じゃないじゃない!めっちゃこっち敵きてるし!
毛玉状態になり衝撃波を自分の上に発射して地面へ急降下していく。
私貧弱だから、ちょっと突かれたら死んじゃうから。
そのまま敵との距離を離し続け、河童の集落の方へ向かって落ちていった。
「うわぁ………なんですかあの氷の塊、大き過ぎませんかね」
「これは暑い真夏の戦場が涼しくなるなぁ、俺汗かくの嫌だから嬉しいぜ」
「何呑気なこと言ってるんですか、もう毛糸さん撤退したみたいですし行きますよ。あの氷のおかげで敵は随分混乱してますが、こっちも半分くらい同じような感じなってます」
でもまぁ、本格的に本陣がぶつかる前でよかった。
もし激戦区にあんなもの落としたら敵味方関係なく被害を被ってしまう。
その辺のことは彼女もしっかり考えていたのだろう。
周囲の天狗たちもどんどん敵の方向へと向かって移動している、私たちも移動しないと………
あの氷柱の被害を避けるために敵から離れていたから、早く向かわないと戦線を押し上げられてしまう。
こちらは山の中まで攻め込まれたら終わりのようなもの、戦線をできるだけ上げられないように敵の戦力を削ぎ落として追い詰めていくしか手がない。
「まぁ、あの氷のおかげでちょっとは勝てる希望がもてたかね」
「上は鴉天狗に任せて、私たち白狼天狗は下から攻めていきましょう、敵が混乱している今が好機です」
「いちいち説明しなくてもわかってるって………」
えっ。
「なんでそんなに驚いてんの?そんなに俺馬鹿に見えてるのか!?」
「はい」
「はい、じゃねぇよ!戦況把握くらいできるわ!」
「でもさっき、これで涼しくなるなぁ、とか言ってたじゃないですか」「緊張ほぐそうとしたんだよ!なんなんだお前はさぁ!二日酔いでくたばってろ!」
「そっちこそ、自分の足の匂い嗅いでくたばっててください」
「俺の足は臭くねぇ!………多分!」
「いやぁ、始まったね。でも激しくなるのはまだまだこれからだ」
「すみませんにとりさん、もうすでに激しさ絶頂まで行ってるんですけど、氷の柱が戦場に突き刺さってるんですけど………」
「え、あれるりにも見えてたの?なんだ幻覚じゃなかったのかぁ」
「現実逃避しないでくださいいい!あれどっちなんですかぁ!?」
「どっちって、なんのどっちだよ」
「敵か味方ですよおお!もしあれ敵の攻撃だったら、こんなちっぽけな山串刺しにされて終わりですよぉ!」
「まぁもし敵の攻撃だとしても、天狗たちがなんとかしてくれるでしょ」
「楽観的!」
はは、戦いなんてね、一生懸命考えるのは参謀のやることで、戦う兵は上からの指示に従って機械のように動いてればいいのさ。
この戦いに参加するのは、冷静な判断ができそうな河童だけを集めてきた。
といっても、そんなやつは臆病な河童の中でも珍しいやつなので、頑張って探しても河童全員の一割ほどしかいなかった。
河童が敵と正面からやりあったら負けるのは確定しているから、やることはまず第一に負傷兵の治療だ。
この戦いは戦力差が激し過ぎて、こっちの戦力が少しでも減るだけで一気に山を落とされかねない。
むこうの戦力は、それこそ山のようにあるだろうから、数百人倒した程度じゃ勝ちはまだまだ見えてこない。
一人でも多く、少しでも長く戦ってもらわないと。
文が集めた妖怪たちってのも、どれだけ役に立ってくれるかどうか………まぁ考えてもしょうがないか。
てか、考えるのは参謀の仕事だ、私のやることじゃない。
「はー、もうやだ引きこもりたい………にとりさん頭になんかついてますよ?」
「ほえ?」
頭に何か………
両手で頭の周りを探っていると、右側頭部のところになぞのもじゃもじゃした物体がついていた。
掴んで頭から引き剥がすと毛玉だった。
「………もしかして毛糸?」
毛玉にそう問うと、私の手から離れて瞬く間に人の体になった。
「いぐざくとりー、よく分かったねにとりぃん」
「にとりぃん?まぁいいや。そりゃあこの状況で現れる毛玉は君くらいしかいないさ」
「生きてたんですか毛糸さん、あたしはてっきりもう藻屑になったかと」
「おい私は毛玉だぞ、なるなら毛屑だろうがい」
「どうでもいいですよぉ………」
にとりんの次はにとりぃんか………にとりんはまぁわかるさ、語感がいいし。
でもりぃんはわからないよ、なんでりぃんなんだよ、りぃんにする必要あるの?いや、そんなことは今はどうでもいいか。
「あの大量の氷、出したの誰か知ってる?」
「ん?私ですけど?」
「へ?」
「へ?もしかして私、またなんかやっちゃいました?」
「なんか腹立つ、一回殴らせろこの毛屑が」
「ちょ、待てよ!早まるな!今ならまだ間に合う!話し合いをおうふ!………一回言ってみたかったんです、うざいってことはわかってるけど異世界チート主人公になってみたかったんです」
くだらない妄言吐き散らすより先にあの氷のこと説明してくれないかなぁ?あれが何回もできるなら戦況が大きく変わることになる。
「なんだよその目はぁ、わかりましたよ、説明しますよ。確かにあの氷は私が作ったものです、他に質問は?」
「あれ、あとどのくらいだせる?」
「えっとね………全部絞り出してあと3セットってところかな、でも妖力とかは温存しておきたいし、あんまりもう出したくないかなぁ」
「そうか………だったら——」
「毛糸さんって、ものを浮かせられるんですよね?」
「え?まぁ」
るりが自分から進んで話しかけた………だと。
「だったら、武器倉庫にある武器全部浮かしておとしたらどうです?氷の柱よりも数は多いですし、それなら敵もたくさん数を減らせると思うんですけど」
なるほど、それができれば随分楽になるだろう。
でもそれは………
「それまず味方を敵から引き剥がさないと、巻きぞえ食うじゃない、あと狙いをつけにくい」
「確かにそうですけど、敵の本陣に向けてやれば、敵も固まってますし大打撃を与えられるんじゃあ………」
「むぅ………じゃあ代替案として、アレ貸してよ」
あれ?
敵の位置を即座に把握し、待ち伏せしているところに真っ直ぐに剣を持って突っ込む。
柔らかい何かに刃が食い込む感覚。
背後から飛びかかってきた敵に刃を引き抜くと同時に回し蹴りで牽制、腕で防御したところを胴を斜めに切り裂く。
「やっばり!敵は雑兵ばかりのようですね!気配も殺気も隠すことを知らない甘ちゃんどものようです!」
「お前と一緒にすんな。お前は音もなく忍び寄って絞め落としてくるからな、世の中お前みたいなやつばかりだったら暗殺流行しまくってるぞ」
「べらべらと喋る余裕があるなんて、随分余裕そうですね!ちゃんと敵倒してますか!?足臭いくせに!」
「最後のいらねぇだろ!」
木々に囲まれた中で戦闘をするのは死角が多く、待ち伏せが基本的に有利、だからまずは敵の位置を把握することを念頭に置かなければいけない。
私たち白狼天狗は五感が優れている。
敵の呼吸、服の擦れる音、気配、殺気、様々なものを感じ取って敵のおよその位置を把握する。
前方から二人が切りかかってくる。
二人同時に腕を振り上げ剣を私に叩き込もうとしてくる。
こんなもの、懐に潜り込んで一気に——
「うっ、二日酔い……」
その場に伏せて口を押さえる、
まずい、戻しそう、あと斬られる。
顔を上げると、もうすぐそこまで刃が迫ってきていた。
その手に持った剣。、迷いなくそのまま振り下ろした二人。
しかしその剣の刀身は折れていた。
「ほら昨日言っただろ!そんなに飲んだら二日酔いでまともに戦えなくなるぞって!」
柊木さんが、その硬化させた腕で二つの刀身をへし折っていた。
そのままもう片方の腕で剣を振って敵の二人の腹に深い切り傷を刻んだ。
そのまま私の目の前まで近寄ってくる、
「二日酔い野郎の命助けるために俺はここにいるんじゃ——」
柊木さんの方に向けて剣を突き出していた。
「………」
「その二日酔いで死にそうになってる奴のおかげで命払いましたよ、よかったですね」
「お前なぁ………」
柊木さんのほうに向けて突き出した剣は、背後の額に突き刺さっていた。
「普通に気配消してくる敵、いるじゃないか………」
「こいつ、うちの山のとこじゃない白狼天狗ですね、空に鴉天狗もいたので敵の白狼天狗がいるのなんらおかしくないですけど」
「良い鍛え方してんなぁ、お前がいなかったら俺完全に死んでた」
「なんですか急に、いつになく素直ですね、そんなことしても足の臭さは改善しませんよ」
「お前もう良い加減にしろよ、そろそろ俺も怒るからな」
「お?やってやりましょうか?」
「やってやろうじゃねえか!」
柊木さんに本気で斬りかかろうとすると、突然立っているところが影になった。
お互いに動きが止まる。
日の光を遮っているその状態を探ろうとして、上を見ると、私の数倍はありそうな巨大な氷塊が宙を浮いていた。
投石機用の巨大な岩を凍らし、その周りを氷で何回も何回も包む。
私の多分10倍あたりの高さになった頃に浮かして、投石機乗せてもらい私と一緒にここまで飛んできた。
重さが無くなるなるからちゃんと投石機で飛んでくれるか心配だったけど、ちゃんとここまで来れてよかった。
「いやぁ、無茶なことしますねぇ」
「ま、鴉天狗がいなかったら私は飛んできた敵にすぐにやられてただろうからね、ありがとう文」
「いえいえ、この戦いに勝てるのならできることはなんでもしますよっと。後ろの人、もうちょっと加速しましょうか」
文が氷の玉を後ろで頑張って押している鴉天狗に命令する。
そのまま敵の本陣までもうすこしになると、一気に氷の玉を上昇させる。
どんどん氷の玉は空高くのぼっていき、人の形がめちゃくちゃ小さく見える高さで止まった。
わぁ、鴉天狗飛ぶのはやーい。
「おー、たかいたかーい、私高所恐怖症かもしれない」
「さて、このくらいの高さだったらいいでしょう、では、落としてもらえますか?」
「あいよっ」
体を氷の玉から離し、浮遊状態を解除した。
下に向かって落ちていく巨大な氷の玉は、どんどん速度を上げていき、敵の本陣のどまんなかに落下、とてつもなく大きな地響きを鳴らした。
「畳みかけましょう」
そういう文の横顔は、どことなく楽しそうだった。