毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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うじうじしてる毛玉

 

「やっほ」

「あ…しろまりさん」

 

フランのいる地下室へやってきた。

可愛らしい人形が部屋に並んでいる、以前とは違い、綺麗な状態のものが。

 

「気分どう?」

「うーん……実を言うとあんまり」

「あれまあ、そうなんだ」

 

フランにも、この異変のことは伝えてある。この後もフランには動いてもらおうと思っているんだけど………

 

「また、色んなもの壊しちゃったらどうしようって考えると…」

「怖い?」

「……うん」

 

不安そうにそう答えるフラン。

 

「そうならないように、今日まで色々してきたんでしょ?……まあ、怖いもんは怖いか。気持ちわかるよ」

 

狂気との同化をし始めてから、狂気がまたフランを飲み込まないようにできるだけ刺激を与えないようにしてきた、本人もそれは知っている。

 

それを今日弾幕ごっこをするって言うんだ、狂気がまた復活してくる可能性も、ないわけではない。

 

「それに、相手は人間なんでしょ?そんなの……」

「安心しなって、私なんかよりよっぽど強いよ」

「そうなの?しろまりさんより?」

「弾幕ごっこはね。それに、戦うわけじゃないんだよ、これは」

 

私の言葉に、不思議そうにフランが首を傾げる。

 

「競うんだよ、美しさを。相手を叩きのめすんじゃなくって、見惚れさせた上で、相手を倒す。それが弾幕ごっこ」

「美しさ……」

「作ったんだろ?スペルカード。じゃあ、それを思いっきり相手にぶつければいい。そしたら、ちゃんと相手は答えてくれるよ」

 

パッチェさんと魔理沙の弾幕ごっこを離れたところから見ていた。

最初こそ、気づかれないかなとビクビクしてはいたけれど……すぐにそんな考えは吹き飛んでしまった。

 

のめり込んでいた、その戦いに。

引き込まれていた、その弾幕に。

 

「二人いるんだけどさ、片方は咲夜を倒したし、片方はパッチェさん倒してたよ」

「パチュリーと咲夜を!?」

「うん」

「すごい……」

 

霊夢の方も、水晶玉越しに見ていた。

時間停止を見抜いてあっというまに攻略して……本当に凄かった。

 

「……私も、パッチェさんもレミリアも、お前のことをよく考えて、お前のためにこの異変を起こしたんだ」

 

きっかけこそ紫さんだけど、この異変はフランのためのもの。

 

「私が言えたことじゃないんだけどさ。怖がらずに、楽しんでほしいんだ、弾幕ごっこを」

「………」

「そしたらさ、ちゃんと狂気うんぬんで悩まなくて良いようになったらさ。色んな場所に行けば良い、色んな人に会えば良い」

 

フランの心情も、悩みも。

ある程度はわかっているつもりだ、レミリアとフランと関わって、今まで色んなことがあったんだってことも……

 

でも。

私が言えたことじゃなかったとしても。

 

「幻想郷は、良いところだよ」

 

そろそろ魔理沙がくる。

 

「だからさ、行ってこい。遠慮しなくて良いから、思いっきり楽しんでこい。それがみんなの願いだよ」

「みんなの……」

「……分かったなら、行ってきな」

 

私がそう言うと、フランは笑顔で一言

 

「うん!」

 

そう言って、部屋を出て行った。

 

「………ほんと、立派だよ」

 

勢いよく出て行ったその背中を見て、そう呟く。

 

私なんて……さ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ!いざこう見ると本当に知らない本ばっかりだな、読み応えがありそうだぜ」

 

あのパチュリーとか言う紫もやしの魔法使いは凄かった。

同じ魔法使いとして参考にするところしか思い浮かばない、まあ弾幕ごっこじゃ私の勝ちだが。

 

「………」

 

あの時毛糸がくれた本ってどこのものだったんだろうか。

もしかしてここの……

 

図書館から拝借した本を眺めていると、辺りの景色が不自然なことに気づく。

 

「……どこかしらに誘導されてる?」

 

この館に入った時の違和感とはまた別の……

そもそもこの館、見た目に反して中が広すぎる。やっぱり空間魔法でも使っているんじゃないだろうか。

 

こうしている間にも霊夢に先を越されたらと思うと、いても立ってもいられくなって、箒の速度を上げて道中のメイド服を着た妖精やらを撃破して突き進んでいく。

 

「あー?なんか……なんだここ」

 

道が一本しかないわけじゃないのに、どの道を通っても同じ場所に行き着いている感覚。

引き返そうにも、振り返れば今通ってきたはずの道とは別のものがそこにはある。

 

「本格的にきな臭くなってきたなあこりゃ」

 

心なしか下の方へ誘導されているような……いっそ天井ぶち抜いて無理やり上がるか?

まあこれもさっきのもやしっ娘魔法使いの仕業なんだろうが……こうも空間をポンポン操作されると、なんか格の違いを見せつけられてるみたいでなんか腹立ってくるな。

 

「……ん?」

 

おや?おやおやおや?

 

「こいつぁビンゴってとこか?」

 

この気配、普通の妖怪じゃない。

それにさっきからわらわらといたはずの妖精のメイドどもの姿が見えなくなっている。

 

「………」

 

ミニ八卦炉を構えて、奥の方からやってくる気配に備える。

 

出てきたのは、枝のような翼に宝石のようなものをぶら下げた、金色の髪に紅い目の少女。

 

「あなたが遊び相手?」

「なんだ?弾幕ごっこならいくらでも付き合ってやるぜ」

「ふぅん……」

 

……なんかじろじろと見られてるな。

 

「人を見るより先に名乗ったらどうだ?」

「あそっか。フランドール・スカーレット、レミリアお姉様の妹だよ」

「ったー!妹かー!」

「?どうしたの?」

「こりゃ霊夢の方が当たりっぽいな」

 

そりゃあそうだよなあ、こんな地下っぽい場所に黒幕がいるわけないもんな。

黒幕ってのはこう、一番奥の高いところで椅子に座って待ってるような奴だろうし。妹より姉の方が黒幕に決まってるもんな……偏見だけど。

 

「っとと、それはまあいいか。私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだぜ」

「魔理沙ね……それなら、早速で悪いけれど」

 

妖力が辺りに迸り、肌がピリつく感覚と共に紅い弾幕が視界を埋め尽くす。

 

「思いっきり遊んでよ」

「いいぜ、遊んでやるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当にこの先で合ってるんでしょうね…」

「負けたんだからいちいち嘘つかないわよ」

「………」

 

時間を止める人間……本当にそんなのがいるだなんて。

別に、妖怪側についてるからどうこうしようってわけじゃないけれど……時間に干渉する人間なんて、明らかに普通じゃない。

妖怪でもあり得ないくらいだ、それこそ神とか……

 

「お嬢様はあなたが来るのを待ちわびていたわ」

「倒されるのを自ら望んでるって解釈でいいのかしら?」

「私の知るところではないわ」

 

そのくらい知っておきなさいよ従者なら。

……魔理沙は今どこで何をしているのかしら。

 

さっさと親玉をぶっ飛ばしたいけれど、何せ位置がわからない。

別に勘を頼りにしてもいいんだけど……

 

「……近いわね」

「あら、分かるの」

「職業柄ね、こうもビンビンと気配出されてちゃそりゃ気づくわよ」

 

これだけ離れていてもこの妖気。

わかってはいたけれど、一筋縄では行かなそうね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あよっこいせっと」

「あら、戻ったの」

「まあねぇ……服焦げてるけど、大丈夫?パッチェさん」

 

地下室でフランを送り出して、大図書館まで戻ってきた。

移動したのは魔理沙や霊夢を避けるためであって、二人はもう交戦を始めてしまったから、隠れている必要もない。

 

「なかなかできる奴だったわね……人間であの歳であれほど魔法への理解が深いとは……相当努力してきたのね」

「あっわかる?そうなんだよあいつ頑張ってんだよなぁ」

「なんであなたが嬉しそうなのよ」

「そりゃあ、長い間面倒見てきたし……どの口が言ってんだろ」

 

我が子のように思ってるってわけじゃあないけれど、そりゃあ小さい頃から知ってるんだ、情だって相応に湧く。

 

「ん、水晶玉出してくれないの?」

「あれ結構面倒なのよ。というか、あれは動向を最低限探るためのものであって、弾幕を眺めるようなものでもないわ」

「えー」

「せっかく観に行ける距離でやってるんだから、気になるんだったらその目で直接観ればいいじゃない」

「そりゃあ……そうだけどさ」

 

んなことほいほい出来たら魔理沙とも……

 

「私は図書館の修復に取り掛かるから、そう構ってもいられないのよ。魔力使ったばっかりだから疲れてるし、こあに押し付けることになるけど」

「いいようにこき使われる使い魔……」

「使い魔はこき使うものよ」

 

実際そうなんだろうけども。

 

「博麗の巫女とも知り合いなんでしょう?」

「ん……まあね」

 

向こうは覚えちゃいないだろうけど。

 

「なら、この異変はあなたの知り合い同士の戦いってことになるわね」

「…まあ、そうだけど」

「その目で見届けた方がいいんじゃない?」

「………」

「別にいいなら、ここでゆっくりしていけばいいわよ」

 

ぬぅ……この人は……

 

「分かったよ、行きゃあいいんでしょ、行きゃあ。そんなに私は片付けの邪魔ですか」

「何もそこまで言ってないわよ。ほら、さっさと行きなさいな、すぐに決着着いちゃうかもよ」

「………はぁ」

 

気を遣ってくれてんのかな……うじうじしてるからだろうか。

 

「あ、あとあの人間の魔法使いに何冊かここの本強奪されたから取り返してきてくれてもいいわよ」

「えぇ……えぇ?何やってんのあいつ……」

 

泥棒?泥棒なの?というか押し入り強盗?いやまあ本ってのが実に魔理沙らしいところではあるけども……

 

「親が聞いたらどう思うかね……」

 

というか、普通にパッチェさんに勝ってるんだもんなぁ、あいつ本当に弾幕ごっこ上手いんだな……

 

「まあ……そのうち取り返してくるよ」

「そうしてくれるとありがたいわ。まるでここに通い詰めるみたいな言い方だったから怖いのよね……」

 

ま、魔理沙………

 

 

 

 

 

 

 

 

「………何をなさってるんですか」

「しぃっー!隠れてこそこそなんとか覗き見しようとしてるの」

「趣味悪いですね」

「言うねえ」

 

霊夢とレミリアが色んな場所を移動しながら戦ってるせいで、なかなか追いつけないし、見つからないようにしないといけないから見にくいったらありゃしない。

 

そんなこんなで怪しい動きをしている私に咲夜が声をかけてきた。

 

「……よく見たらボロボロじゃん」

「えぇ、負けてしまったもので」

「しょうがないよ、正直相手が悪い」

「ああも完璧に対応されると、言い訳すら出てこないです」

 

時間を操る相手に悠々と無傷で勝つの、本当におかしいと思う。

ただ時を止めるだけじゃないからね、聞いただけだけど本当に色んなことできるからねこの子……

 

「よければ見えるところまで私が連れて行きましょうか?」

「あ、ほんと?じゃあお願いするよ、ありがとう」

「いえいえ、それでは失礼します」

 

 

咲夜がそう言った瞬間、一気に視界が変わって、レミリアのものと思われる弾幕が霊夢と思われる小さな人影を飲み込もうとしている光景に変わった。

 

「気づかれない距離となるとこの程度が限界でした、申し訳ありません」

「いちいち謝んなくていいよ、これくらいでも普通に見えるくらいには華やかな景色だし」

 

時間を操るねぇ……使えたらめちゃくちゃ楽しいだろうなそれ、私も欲しい。

 

「………」

「浮かない顔ですね」

「ん……まあねぇ」

 

確かに弾幕は綺麗だ。

レミリアの弾幕も、霊夢の動きも、見ていれば引き込まれるものだろう。

 

だけどそれよりも先に、他の色んな感情が湧いてくる。

霊夢のその姿を遠巻きに眺めているだけなのに、頭の中で色んなものがぶつかり続けて、もう何が何だかわからない。

 

「不安だよ、なんとかするつもりではあるけれど。何言われるかわかんないし、責められるようなことしかしてないし、正直怖い」

 

すっごい簡単に言ってしまえば、怒られるのが怖いって話だ。

ずっと会うのを後回しにしてきた結果がこれだよ、本当に馬鹿らしい。

 

「……ん?あっこれ来るか?」

「どうかし……まさか」

 

館が揺れている。

レミリアたちの戦いのせいじゃなくって、もっとこう、何かを突き破るような音。

 

その音はどんどん近づいてきて、私たちの近くの床を突き破って二つの人影が上昇してきた。

 

「フランと魔理沙……」

「あとで直しておかないと……」

 

直すって思考に先になるのがすごいよねこの子………というかなんでもできるよねこの子……

 

登ってきたフランと魔理沙、まあそんな気はしてたけど、案の定ここまで上がってきた。

というか、フランがレミリアのいる方に向かってきたんじゃないかな、これは。

 

「こりゃ乱戦になりそうだなぁ」

「………あの、気休めにもならないかもしれないですけど」

「ん?」

 

咲夜がレミリアたちを見つめながら話しかけてくる。

 

「大丈夫だと思います、あなたなら」

「……ん」

「事情に詳しいわけではないですけれど……見てください」

 

弾幕ごっこを続けている4人の方を指す咲夜。

 

「妹様、笑ってますよね」

「………そうだね、楽しそうでなにより」

「ああやって笑えているのは、あなたのお陰です」

「………」

「それにお嬢様も、今はあなたとも楽しそうに接していられて」

 

楽しそうに見えるのか……悪口言い合って睨み合ってるの。

 

「お二人とも、今ああやって笑っていられるのはあなたのお陰です」

「………」

「ですから、そうやって関係を築くことのできたあなたなら、不安に思わなくても大丈夫だと、私は思っています」

「……そっか」

 

だったらいいけどね……

 

「だから、今は難しいことは考えずに、目の前の景色を楽しみましょう」

「……それもそうだね」

 

姉妹って感じのするいい連携で密度の濃い弾幕を展開していく二人。

慣れっこだと言わんばかりの動きですいすいと潜り抜けて攻撃を続ける二人。

 

 

その色とりどりな景色、今までに見たことのないような……初めて、この目で見るその光景を見て。

 

「綺麗だ」

 

自然とその言葉が口からこぼれ落ちていた。

 

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