毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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ノリでいきたい毛玉

「なるほど……」

 

紅魔館から拝借した本を読み耽って、内容に感心して思わず声が出てしまう。

見たことのない本ばかりだったし……しばらく本には困らなさそうだ。

 

「……ん?」

 

ノック。

 

わざわざ私を訪ねに?

確かに霧雨魔法店って看板は出してあるけど……わざわざ訪ねに来るやつなんているか?看板なんて飾りだし。

 

霊夢……なら外から直接呼んできそうだし、そもそも私から会いに行くことの方が多いしなぁ。

となると……アリスかこーりん?

 

いや……まさか本の取り立てか!?

読み終わったのならともかくまだ半分も読めちゃいない、紅魔館の奴には悪いがお引き取り願おう。

 

私が返事をしないからか、またノック音が鳴らされる。

 

読みかけの本に栞を挟み、八卦炉を手に持って外を伺うように静かに扉を開けた。

 

 

「あ……やっほ」

「………まりも」

「開口一番それ?」

 

この前紅魔館で会ったばかりの毛糸が訪ねてきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うわ中きったね」

「遠慮ってのがないのか?ストレートに言うなよ」

「じゃあこれ綺麗にしようって気あんの?」

「茶でも飲むか?」

「聞けよ」

 

私でも家は綺麗にしてるのに……

まあ暇なのとそもそも置くものが少ないからなんだけども。

 

「とりあえず座れよ、な?」

「何ナチュラルに椅子の上のもの落としてんの」

「大切に扱わなきゃいけないもんはちゃんと別の所置いてるからいいんだよ」

「良くないわ掃除しろ」

「うるさいなあ、親でもあるまいし」

 

親元離れたから面倒見てやってたの私なんですが?

まあ親じゃないってのはそうなんだけど。

 

「で、何の用だ?」

「私の用事なんて後でいいから掃除しようよ」

「勝手に動かすなよ、何処にあるか私はちゃんと把握してるんだから」

 

部屋が汚いやつは決まってそう言うんだ。

 

「お前も女の子なんだからさ…」

「さっきからうるさいつってんだろ!?締め出すぞ!」

「もともとこの家お前にくれてやったの私だけどぉぉ?」

「なっ……おま……それはずるいだろ……」

「え……なんかごめん…」

 

思ってたより言葉の威力高かったみたい……

 

「……まあ、今はこの汚さを見逃すとして」

「わかったよ片付けるって……」

「買い物いかない?」

「……え?」

 

財布を懐から取り出して、親指を扉に向けてそう言う私。

何言ってんだこいつって顔の魔理沙。

 

「買い物」

「どうした急に……」

「いやさ、しばらく会ってなかったし、というか私が一方的に避けちゃってたし……色々負担かけてるし、埋め合わせしたくて」

「へぇ……そんなこと気にしてたんだな」

 

腕を組んで興味深そうにそう呟く魔理沙。

 

「で、本音は?」

「昨日食べ物を全部パーにされるっていう悲しい事件が起きたから買い出しに行かなきゃいけなくなったんだけど、そもそも最近人里には近寄らないようにしてたしなんなら今も行きにくいから心細いしどうせなら一緒に行きたいなーって」

「簡潔にまとめてくれ」

「寂しいから一緒に行こう!」

「なんで堂々とそんなこと言えるんだ?恥とかないの?」

「本音で簡潔にまとめろって言ったのお前だろ」

 

煽りスキルなんて手に入れなくていいのに……

 

「いいじゃん行こうよー」

「行かないとは言ってないけど……」

「私が全部払うからー、好きなの買っていいからー」

「よっしゃ行くか」

「現金な奴め…」

 

改めて、部屋を見回す。

面影が…私がこいつのために家運んできた時の面影が何処にも……

というかよくもまあここまでの物で埋め尽くせるな…やること多そうで羨ましいよ私は。

それはそれとして汚い……

 

「ねえ魔理沙」

「ん?」

「今朝は何食べた?」

「あー?確か……昨日のきのこ鍋の残り?」

「……普段は?」

「似たようなもんだな」

「…………」

「おい、なんだよその本気で憐れむ目は。言っておくが料理できないわけじゃないからな!?食材がないだけだからな!?」

「……………」

「なんでもっと可哀想な奴を見る目になるんだよ!!」

「美味しいもの食わせてやるからな……」

「やめろ、本当にやめてくれ」

 

まあ何事も、まず掃除してからの方がいいと思うんだけど……お前はアリスさんのことをもっと見習え。

 

「あーもうわかった!行こう!今すぐ行こう!私も話したいことあったし!だからそんな顔するのやめてくれ!」

「お昼何食べようか!」

「なんでもいいって……なんでそんなにテンション高いんだよ」

「無理やり高くしてんだよ察しろ」

「お、おう……やっぱ意味わかんねえ……」

「で、お昼何にする?何食べる?」

「あーもうやかましい!行ってから決めるぞ行ってから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お前本当に大きくなったなぁ」

 

空、箒に乗って飛ぶ魔理沙を見つめながらそう呟く。

 

「なんだよ、あんまりジロジロ見るなよ」

 

私の視線に耐えかねて、帽子を深く被って顔を隠す魔理沙。

 

思えばここ最近ちゃんと成長を見てた人間って咲夜くらいのような……そもそも人間と関わり断ってたし。

 

「初めて会ったときはこんなで、もっと子供っぽかったのに…」

「昔の話はよしてくれよ」

「父さんに会いたくなーいって、そんなこと言ってたころが懐かしいな」

「やーめーろーよー…」

 

何を恥ずかしがってるんだ?あれはあれで可愛かった……

あぁ……幼い頃の話、してる側は楽しいけど、されてる側は不愉快とかそう言う……

 

「それが今ではあんなゴミ屋敷に住んで……」

「ゴミ屋敷って言うなよ」

「私はそんな子に育てた覚えはありませんっ!!」

「私はお前みたいな奴に育てられた覚えはない!」

「お前結構自立してたもんな!」

「そうだよ!!」

 

どいつもこいつも立派なもんだ。

 

「で、話したいことって?」

「急に話変えるな……霊夢のことだよ」

 

あぁ……そういえば前も言いかけてたな。

 

「……話して大丈夫か?」

「なんで?」

「いやだってこの前……」

「………心配すんなって」

 

昨日一日でなんとか落ち着いたんだ。

それにあれは急な出来事だったからで…まあ……そりゃ心配はかけるよなぁ。

 

「……まあ、大した話じゃないけどさ。あいつは記憶に違和感を感じ始めてる」

「……もう?」

「もう?って……どれだけ経ってると思ってるんだ」

 

妖怪感覚だとついこの前のことのようで……

 

「まだ、何か変だなって感覚なんだと思う。けど、その違和感は近いうちに必ず確信に変わる」

「……私を見て、何も思い出さなかったのは?」

「まだその時じゃなかったってだけだろ」

 

………

 

「……あんまり思い詰めるなよ、今悩んだってしょうがないんだからさ」

「うん……でも、そう遠くないってことだろ?何がきっかけで思い出すか、わからないしさ」

「………そうだな」

 

正直、レミリアたちと戦っているのを見て安心した。

ちゃんと、妖怪に対して過度な敵対心を持たずに、かといって甘くもなく、博麗の巫女としての役目をこなしている、その姿。

 

記憶から私を消したのが、役に立っているのかはわからないけれど。

 

「………なあ、私あれ食べたいんだけど」

「え?」

「お前がいつも美味しそうに食ってた饅頭」

「あ、ほんと?じゃあ昼ごはん食べたらそこ行こうか」

「おう。……奢ってくれよ?」

「もちろん」

 

金だけはあるからね、金だけは。

働いてないのに。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「蕎麦……いいよなぁ……蕎麦……」

「………」

「あっちは…居酒屋……いいよな居酒屋も……色々あって…」

「………」

「焼き鳥屋……」

「お前さっきうどん食べたばっかりだろ!?」

「うっさい文明の味はいくら味わっても足りんのじゃ!」

「食いしん坊か!」

 

健啖家を名乗る気はないけど、美味しいものは食べたいじゃん。自分じゃそんなの作れない分。

 

「あ、毛糸さん久しぶり!」

「ん?あぁ久しぶり」

 

なんか顔も覚えてない人に話しかけられた……

 

「そっか、毛玉の妖怪ともなればそれなりに有名人か」

「まあ…それなんだけどね、人里に近寄らなかった理由」

「それ?」

「霊夢に会うのも困るし、私の噂があいつの耳に入られても困るし」

 

まあ私みたいな変な妖怪幻想郷中探しても私くらいしかいないだろう、そりゃ有名人にもなる。

 

「言ってた饅頭屋さんも、昔私が助けた人が開いた店らしくってさ」

「へぇ!随分繁盛してる店だけど、まさかお前がそんな関わり方をしてるなんて……あそこの饅頭が好きなのって、それが理由か?」

「んー?それもあるよ、まあ一番は普通にあそこのが一番好きだからなんだけどさ」

 

まあ私は基本なんでも美味しい美味しいって言って食べるけど……昆虫食さんはお帰りください、趣味じゃないです。

 

「まあそういうわけよ。会ってもまだ気づかれないとは思うけどさ」

 

私が会いたくないことの言い訳にしてるだけかもしれないけれど。

 

「別に、私はお前たちのことにどうこう言うつもりはないし、後悔のないようにやってくれればいいと思ってる」

「………」

「ただ、今どうしようもないってんなら、あんまり辛気臭い顔見せんなよな。笑ってる方が気は楽だ」

 

………私が一方的に迷惑かけてるはずのお前からそう言われたら、それだけで気は楽になる。

 

「妖怪なんだったら気長に構えてろよ、な?」

「……妖怪は基本気長だけど、盗った本はちゃんと返せよ」

「………何の話だ?」

「自分の心に聞いてみな」

 

昔パッチェさんから借りて魔理沙にあげた本も返してもらってないしなあ……てかあれどんな本だったっけ?

まあ魔理沙本人に聞けばわかるか。

 

「言っておくが、あれは盗んでるんじゃない」

「持ってきたのは認めたな?」

「借りてるだけだぜ、死ぬまでな」

「………」

「………なんだよ」

「バカなこと言ってないでさっさと返しに行け」

「マトモなこと言うなよ、らしくない」

「らしくないの!?」

 

言っていいことと悪いことがあるぞお前。

 

「私なんて妖怪の中でも随分……大分……比較的……多少常識ある方だよ!?」

「めちゃくちゃ自信ないじゃねえか」

「妖怪からしたら人を襲うのが常識みたいなもんだし」

 

いや違うな、それも過去の話だ。

時代が!私に!追いついたんだよなぁ!?

 

多分。

 

「あ、そうだ。お前、あの異変の時なんかしてたか?」

「え?い、いや?なっななんにもし、てないよ?」

「………」

「べっべつにフランのことけしかけたりしてないよ?」

「あ、なんだ、違うのか」

「え?」

 

なに、聞きたい答えこれじゃなかったの?

 

「あの時、なんかやたらと弾幕放ってくる毛玉どもが湧いてきたからさ。普通の毛玉って、文字通り吹けば飛ぶような存在だろ?お前がなんかしてたのかなって」

「あぁあれ……わかんねえだろ?私もわかんない」

「お前それでも毛玉かよ」

「よく言われる」

「よく言われちゃダメだろ」

 

うっさいわ。

私が毛玉からかけ離れた存在だなんてこと私が一番理解してんだよ。

 

「あれに関しちゃ私も本当にわかんないんだよ、突然変異毛玉ってことにしておいて」

「突然変異はお前だろって言って欲しいのか?」

「うん」

「じゃ言わねえ」

 

言えよ、待ってんだぞ。

 

「どうせそんなに強くないんだし、異変終わったらいつもみたいに戻ったんでしょ?じゃあもうどうだっていいじゃん、異変でテンション上がった毛玉ってことでいいじゃん」

「毛玉ってテンションで強くなるのか…?」

「妖怪なら割とありそう」

 

割とメンタル大事な種族だし……毛玉の場合は知らんが。

 

「………ってか」

「ん?」

 

周囲を眺めていた私の漏らした声に魔理沙が反応する。

 

「今更だけど、案外いつも通りの生活してんだね、人里」

「あぁ、あんな異変があったあとなのに、ってことか?」

「そ」

 

もっとどよめいたり、不安がったりしてても良さそうなもんだけど。

 

「まあたかが霧がちょっと出たくらいじゃ、もう引っ込んじまったし大したことないってことなんだろうさ」

「逞しい……そういうもんか、ここだと」

 

一応紅魔館の存在は示すことができたらしい、やべぇ吸血鬼が住んでる館……みたいな。

 

「そうだ、私の戦いぶり見ててくれたんだろ?」

「んあ?」

「どうだ?凄かっただろ?」

「めちゃくちゃ凄かった、正直尊敬してる」

「もっと褒めてくれていいんだぜ」

「憧れるしキラキラと輝いてる、霊夢の横に並び立っても見劣りしないし弾幕も派手で魔理沙らしい、そしてあの姉妹に勝つのはほんと凄い」

「よ、よせ、それ以上は照れる…」

 

フッ……可愛いやつめ。

 

「そうだ、私と弾幕ごっこでもしてみるか?」

「やだ」

「即答!?」

「なんというか……やったことないんだけど、多分私めっちゃ下手」

「えぇ…?」

 

防ぐ、耐えるだけならいくらでもできるけど、避けろって言われると……避けようとして当たる未来しか見えない。

よくみんなあんな弾幕潜り抜けられるよ……

 

「……あ、そうだ」

「ん?」

 

いいこと思いついた。

 

「今夜さ——」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリスさんっ!!」

「うわ何急に!?」

「魔理沙連れてきたっ!!」

「は……えぇっ!?」

「食材買ってきたから3人で料理しよう!!」

「……えぇ」

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