毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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すこし吐露する毛玉

 

「それでね、その時魔理沙が——」

「うん」

 

あの日の出来事を嬉しそうに話すフラン。

よほど楽しかったのだろう、同じことを何度も同じような表情で伝えてくる。いい加減めんどくさいので適当に相槌を打つけど。

 

「フランが嬉しそうで何よりだよ」

「うん、ありがとうしろまりさん」

「おう」

 

見ている限りじゃ、ちょっと戦闘……弾幕ごっこしてる時は顔に狂気の面影が見えないこともないが……

それも多少発言が過激になったりならなかったりなので、もう狂気の心配は無くなったと考えていいだろう。

 

本人の努力の結果だ。

 

「しろまりさんは弾幕ごっこしないの?」

「私…は、いいかなぁ」

「どうして?」

「どうしてって……」

 

言葉だけなら色々出る。

下手だからとか、気乗りしないからとか。

でも、私の本音はそういうのじゃなくて、もっとこう……複雑な…

 

「………最近腰痛くてさ、動きたくないんだよね」

「そうなの?」

「う、うん……」

 

嘘をついた。

いやだって……ものすごい曇りなき眼で見てくるから…咄嗟に…

 

「マッサージしようか?」

「気持ちだけ受け取っておく」

「えー?お姉様には好評だよ?」

「いや、うん、その……なにその顔」

「いや別に?」

 

おい、こいつ絶対わかってて言ってるぞ、悪い顔してるもん。

マッサージなんて私にしようものなら私の体めちゃくちゃになることわかってて言ってるぞ。

あとお姉様には好評って、そりゃあいつの性格的に妹の善意無下にできないだろうし……いや、本当に気持ちいいのかもしれないけれど。

 

「しろまりさんと弾幕ごっこしたかったのになー」

「許せフラン、また今度だ」

 

まあどちらにせよ、フランと弾幕ごっことか遊びで終わる気しないし。エスカレートしてこの館破壊し尽くしそうだし、最終的に爆発しそうだし。

 

異変の時の損壊もなんかもうほとんど治ってるみたいで、私もこの館に住みたくなった。修繕とかあっという間にやってくれるの便利すぎでしょ。いやまあ、それは私がなんの役割も持たずに本当に住むだけっていう前提なんだけども。

 

「外には出てんの?」

「うん、美鈴が付き添ってくれてる。まだ館の近くとかだけど」

 

狂気の心配がほぼほぼ無くなったので、外出をし始めたらしい。

フランが魔理沙を気に入ったように、レミリアも霊夢を気に入ったようで、この前は神社まで足を運んだそうな。

 

なんかこの世界の吸血鬼って割とガバガバらしく、風呂には入れるし日光も日傘を差してたら大丈夫らしい。そんなもんで紫外線完全カットできると思うなよお前。

まあ特殊な日傘らしいけど……魔法でもかけられてるのかな。

 

「しろまりさんの家ってどこにあるの?」

「ん?うーんと……湖の周り?」

「周り?」

「どこって言われてもねえ……気になるなら咲夜に聞いてみ、知ってるだろうから」

「わかった、今度行くね」

「うん……うん?」

「ダメ?」

「い、いや、ダメってわけじゃ……うん」

 

来ないでほしい……私の安住の地を脅かさないで……

 

「しろまりさんもここに住めばいいのに」

「やだ」

「えーなんで」

「お前の姉ちゃんに殺される」

「それは……まあ……」

 

住みたいという願望があるからって、いざ本当に住みたいかと言われるとノーだ。

理想だからこそいいものだってある。

 

「……フラン」

「ん?」

「私の人形って……あったら欲しい?」

「欲しい」

「うわ即答」

「しろまりさんから貰ったものなら何でも嬉しいよ」

 

あらやだ良い子……とても私の眼球ほじくり出して内臓ぶち抜いてくれたイカれサイコ金髪美少女とては思えない………うん、あれも良い思い出だった、うん。

 

「まあその……自分の人形ってなんか気持ち悪くって……でもせっかく狂気克服したってことでまあ、知り合いに作ってもらって」

「……さっきから後ろに置いてる箱って」

「あっバレてた」

「バレてないと思ってたの?……しろまりさんは紅魔館のみんなと仲良いけど、住んでるわけじゃないし」

「まあ、そうだね」

 

人様の妹にとんでもないことしちゃったなって自覚はある。いやまあパッチェさんが依頼してきたことなんだけど……レミリアが憤っていたのも当然だ、勝手に人の妹の中に入り込んで色々やってきちゃったわけだから。

館以外の人とまともに触れ合ったこともほとんどないっていうし……まあ……

ちょっと懐きすぎじゃないかなとは、私も思う。

 

まああれだ、その分の面倒見る義務が私にはあるんじゃないかと思う。

 

………都合のいい奴だ。

 

「しろまりさん?」

「……え?あ、あぁ、箱ね、箱」

 

後ろに置いてあった箱をフランに手渡す。

 

「私が作ったわけじゃないけどさ、こういうの下手だし。一応本職?なのかな?まあとりあえず上手な人に作ってもらったけど……」

「わぁ……」

 

頭の白いもじゃもじゃだけで、誰を模しているのか一目でわかるその人形。

 

「あ、潰すなよ」

「わ、わかってるって」

「代わりはないからね」

「うん、大事にするよ」

「………」

 

優しく、抱いている。

 

ごめんよ、人形の私。

心の中で身代わり人形って呼んでて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、私には?」

「え?」

「だから、私には?」

「え?何が?」

「プレゼント」

「……………?」

「本気で意味がわからないって顔しないで」

 

なんで私の目の前の吸血鬼は私と同じ言語を話さないんだろう……

あそっか、出身が違うからか。

 

「なんで妹にはプレゼントがあって姉の私にはないの?」

「逆にもらえると本気で思ってんの?」

「うん」

 

こいつ本気だ…!

 

「逆に聞くけど何が欲しいんだよ」

「あなたの命」

「ワォ大胆〜」

「眷属にしてあげてもいいのよ?」

「はっはっはご冗談を、主より強い眷属があるか」

「は?」

「お?」

「やめてくださいね、もう修復作業はうんざりです」

 

咲夜が飛んできて嗜められる。

そして帰った、早い。

 

「いやプレゼントって言われても、いつもの手土産しか……」

「あるんじゃない」

「これでいいの?マジ?」

「いいわよ?」

「いいんだ……」

 

でもそうか……レミリアとも色々あったし、贈り物するってのもいいのかも。

………何贈っても嫌味言われてムカつく未来しか見えねえなあ?

 

「……吸血鬼って何が好きなの?生き血?」

「あなたのは不味そうだからいらないわよ」

「あっはっは、よく言われる〜」

「よく言われるんだ……」

「うん……」

 

まあ血というよりは肉だけど……私を食ってはまずいって言ってくる、食べ物への感謝がなっていない不届き者が。

てか私そもそも人間じゃないし、吸血鬼が好きなの人間の血だろ。

 

「割と綺麗なものは好きよ、それとあとは……赤ワインとか」

「綺麗なもの……ワイン………」

 

………

心当たりが全くと言っていいほどないな。

そもそもこんな館にないレベルのものなんてそうそう………ないだろうなぁ。

 

「フランにだけってのもなんだし、お前にも何か贈りたいんだけど……私みたいな下賤な妖怪でも用意できそうなものをご所望くださいますと嬉しい限りです」

「あなたの命」

「ハートならやれるのになぁ」

「うわきもっ」

「ガチ引きやめて?」

 

そんなに気持ち悪がられるとこっちも……うわきもっ、何今の発言本当に私か?

 

「別に何か献上してもらうって間柄でもないでしょ、私たち」

「献上言うな。そうは言っても、色々と世話なってるし、てか迷惑かけたし、色々やらかしたし……」

「変なところで律儀よねあなた、毎回手土産持ってくるのもそうだけれど」

 

はぁ……このままここで考えても何も思いつかなさそうだし、帰って何か考えとくか。

 

「それで?異変のあとの人間からの印象は?」

 

ちょうどいいタイミング、というか狙ってだろうか。レミリアが話題を変える。

 

「うーむ……なんかよくわかんないけど紅い霧だす紅魔館怖え、数年前に幻想郷を襲った吸血鬼の残党とか超怖え、博麗の巫女が出たってことは結構すごい出来事だったんだなぁ、吸血鬼怖い、あほ、間抜け、等々」

「最後私見入ってなかった?」

「いやいやそんなまさか」

 

まあ一言で言うなら、吸血鬼って恐ろしいんだなぁ、ってとこだ。

私だって吸血鬼怖いもん、姉はすぐ喧嘩売ってくるし、妹は悪気のない破壊をしてくるし。

他は……まあ……うん………

 

「狙いは大方成功?」

「そうね、妖怪の賢者からも上手くいったって言われたわ」

「それじゃあ……今度から酔狂なことを異変起こしてやるような変な奴が出てくるってわけかぁ」

「まあ異変のつもりで起こすのか、起こした後で異変と呼ばれるようになるのかとか色々あるとは思うけれど」

 

そもそも異変なんてかなりの力持ってないと起こせないか。

 

「あんたも起こしてみる?」

「勘弁してよ、そもそも目的もないのに」

「………毛玉の地位向上?」

「大した自我もなくふわふわしてるだけの存在の地位上げてどうするのさ」

「……人間の魂奪って毛玉に入れるとか」

「退治じゃ済まなさそうだから絶対やんない」

 

そもそもそんなことできないし。

できたとして本当にやったらもう……殺されそう、色んな人に。

 

「あ、そうだ、もし次異変が起こったら咲夜でも向かわせてみようかしら。面白そうだし」

「それってオッケーなの……いや、いけるのか。一応人間が解決するって範疇ではあるんだし」

「そして霊夢より先に異変を解決してやるのよ」

「従者けしかけて張り合おうとしてるよ」

「というか別に私が出向いてもいいんじゃないかしら」

「フランがなんで私も連れて行かなかったのって拗ねそう」

「じゃあ一緒に行くわ」

「鏖殺でもしにいくの?」

 

片方でも十分強いのに姉妹揃ってとか……あれは霊夢と魔理沙が二人がかり、あと弾幕勝負に強かったからいけたのであってだな……

 

 

 

ここに来るまでの途中で見た自然の景色を思い浮かべる。

 

「……もう秋かぁ」

「ここっていいわよねぇ、四季がはっきりしてて」

「季節めちゃくちゃにする異変とか起こったりしてな」

「楽しそうね」

「そうかぁ?」

 

季節ごとになんか強化される一部の方々が生き生きとしそうで私は怖いけど。

特に冬。

 

「秋は色々あるよ?食欲の秋、読書の秋、運動の秋」

「何それ」

「何ってまあ……ここだと一番過ごしやすい季節だから色々しようねって話だよ」

「軟弱な人間の考えそうなことね」

 

こいつを炎天下の日に外に放り出してみたい。日光ダメなの知ってるけどあの暑さを味合わせたい。魔法で室温調節した館でぬくぬくと過ごしてきたこの吸血鬼に痛い目見せたい。

 

「……あまり聞く気はなかったけど」

「んー?」

「……やっぱりやめておく」

「なに、霊夢の話?」

「わかってるんじゃないの」

 

お前が私に聞くの遠慮しそうな話題なんてそのくらいだし。

 

「何もないよ、なんも進展してない」

「そう……前見た時よりはマシな顔してたから」

「ん、まあ…肩の荷が一つ降りたからかな」

 

魔理沙のこと。

やっと話せたし、思っていたより恨まれてなくて……むしろ同情されてたな。気持ち的にはまあ、かなり楽になった。

 

「だからといって、なんの解決にはならないけどさ」

「……気休めだけど」

 

レミリアが紅茶の注がれたカップを机に置く。

 

「私の悩みはそれこそあの子が今まで生きてきた時間だけ、ずっと解決せずに悩んできた。解決する方法もわからなかった」

「………」

「だからその、なんていうの?」

「自分のに比べたら私の悩みはちっぽけだからそう気に病むな?」

「まあ、そんなところよ。もちろんあなたがそれに随分悩まされてることも知ってる。けれどもね」

 

どこか自嘲するかのように笑うレミリア。

 

「私みたいに……突然どこの誰ともわからない奴に解決されるかもしれないでしょう?」

「………ほんとに気休めだな」

「何よ悪い?」

「いや全然、ありがとう」

 

レミリアの言う通りだろう、ただの悩みとか、問題なら。

でも私のは……

 

「私のは、罪だからさ」

「………」

「肩の荷降りたとか、そのうち解決するとか、そういうのじゃなくてさ。罪、贖罪の仕方も分からない、分かってもそれが今できるようなものでもない。ただ、待つしかない」

 

記憶が戻るのを。

 

「こうなって悩んで苦しむのは、当然の罰。むしろ足りないくらいで……私は………あ」

 

あっという間に空気が重く……

 

「ご、ごめん。一回話しだすと止まんなくて……」

「あんたのそういう顔、私は嫌いじゃないわ」

「……俯いて辛そうにしてる顔?趣味悪っ」

「いい気味だなって」

「趣味悪っ!!」

「失礼ね、あんたのその顔が愉快なだけよ」

 

お前の方が随分失礼だよね。

 

「じゃあもういいよ、ここではずっとこんな顔しておいてやるよ」

「フランが私にあんたのこと相談してくるの不愉快だからやめて」

「注文多いなあ!!」

 

くっそ、こいつにもなんか恥かかせたい……

ゴキブリでもひっつけてたら飛び跳ねて驚いたりしないかな……

 

あ、そうだ。

 

「私の左手見てて」

「何よ」

 

秘技、手のひらドリル。

 

「………」

「………」

「………で?」

「帰る!!」

 

私こいつ嫌い!

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