毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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話し込む河童たち

「秋はやっぱり映えるねぇ」

「そうですね……まあその分描くのに時間かかりますけど」

 

うづきさんと木々に囲まれた中で、画材を持ち出して、傾斜に腰をかけて風景画を描いている。

最近お互いに絵を描くのが好きっていうのが発覚して、せっかくだし一緒に描いてみようってことになった。

 

「それにしても驚いたよ、こんなに画材揃ってるなんて」

「まあ一応趣味なので…」

「趣味で集めてるの?」

「まあ……あぁ、あとそれと人里のものとかあったりしてるかなぁ」

「人里も?何かつながりが?」

「友達が人里に堂々と入り浸ってるから……以前買ってきてくれたんですよね」

 

毛糸さん……最近見てないけど元気かなぁ。

 

「まあ画材揃ってる一番の理由は……」

「……理由は?」

「仕事せずにずっと趣味に没頭してるからですかね!はは……」

「………」

「………」

 

何故か会話が途切れた。

何でなんだろう、自虐はいい会話の種になるはずなのになー。

 

二人揃って黙々と景色を眺めながら筆を進める。

 

「……河童って発明バカばっかりだから、こうやって誰かと絵を描いたことってないから新鮮です」

「私もだよ、まあそもそも絵を描くのが趣味の人を見つけられてないんだけど……」

「知らない人と話せないあたしよりは可能性あるじゃないですか」

「あぁ、うん、そだね」

 

人見知りはついぞ治ることはなく……

今まで生きてきて出来たまともな友人は三人……うち一人はつい最近…

 

「妖怪の山も数だけは多いんですけどねぇ」

「天狗の方とか、今の時期何か盛り上がってるみたいだけど」

「あー……なんでしたっけ、武道?剣術?かなんかの大会とかやってたような気がします」

「へぇ、私全然知らないや」

「まあ河童はそう言うの無縁ですからねぇ……あ、そこの色使い凄いですね」

「いやそもそもそっちめちゃくちゃ上手くない?」

「まあろくに人と話さずに河童らしいこともせず引きこもって趣味ばっかりやってた結果です、あたしみたいになっちゃダメですよ」

 

まあ河童ってみんなアホみたいなことしてますからね、うん。

側から見たら頭悪いですよ、無駄に規模がでかいだけで。

 

「……椛さん」

「え?」

「いや……あの騒動のとき駆けつけてくれた白狼天狗の人いたじゃないですか」

「あー……うん、いたね」

 

……思い出したくないことだったかな。

一応友達なくしてるわけだし……

 

「それで?」

「あ…えっと、その人がさっき言った大会みたいなのに毎年出てたんですけど、勝ちすぎて殿堂入りという名の出禁を食らったって話です」

「やばくない?」

「やばいです」

 

あの人なんであんなに強いんだろう本当……

 

「……どのくらい勝ったのそれ」

「30連勝あたりで出禁になったって」

「……30年も!?」

「らしいです」

「…逆によく30年も出させてもらえたなぁ」

「一部の熱烈な方々があの人に打ち込まれに……」

「え?なんか言った?」

「いえ何も」

 

どこにでも変人っているものだ……いっぱい。

 

「というか、詳しいね」

「まあ……ろくに働いてないですし」

「………それ言われても特に返すことないんだけど」

「あ、はい」

 

働いてないけど、その辺の河童より死にかけてる自信はある。

……生きてるだけありがたいけれど。

 

「……そういえばさ」

「なんです?」

「あの……よく妖怪の山に入り浸ってるっていう、白珠毛糸ってまりも妖怪いるじゃん?」

「毛玉ですね、まりもじゃなくて毛玉です」

「あ、そうなの?」

 

毛糸さん……

 

「で、前に聞いたんだけど……るり、その妖怪と仲良いらしいじゃん」

「まあ、多分そうですね」

「うっわぁ……」

 

なんの、うっわぁ……?

なんであたし今引かれたの……?

 

「やばいやつと交友あるんだ……」

「確かにやばくて頭おかしくて危険な人ですけど、悪い人じゃないですよ?」

「そんなに言ってない」

「そりゃあすぐ恫喝してくるしいつもふざけてるくせして戦ったらめちゃくちゃ強くて恐怖すら抱きますけど、そんなに言わなくたっていいじゃないですか」

「そんなに言ってない。やばいとしか言ってない」

 

あれ、そうだっけ。

まあ今あたしが口にしたのは全部ただの本心だけど。

 

「なんでそんなのと仲良くなったの…?」

「えーと確か……あたしの部屋の隣って空き部屋じゃないですか」

「うん」

「あれ毛糸さんの部屋なんですよ」

「………!?」

「で、たまたま横にあたしの部屋があって。確か無理やり部屋に入ってこられて、そのままなんか仲良く……だったかな」

「なんでその流れで仲良くなれるの」

「さぁ……」

 

悪い人じゃ……ないんだけどなぁ。

 

「……口調自体はうづきさんとそんなに変わりませんよ?まああなたの方が随分大人しいですけど……」

「ぇ…想像つかない」

「まあ基本いい人ですよ多分」

「基本……多分……」

「数百年前からこの山に勝手に出入りするし勝手に地底には入り込むし吸血鬼の館に乗り込んだりしてますけど」

「やばい人だ……」

 

何であの人そんなに首突っ込むんだろう……

いや、確かきっかけは一番最初に戦力増強とかで連れてこられたんだっけ?

何て妖怪を勧誘するんだ……

 

「まああたしはそのやばい人に命救われてますし、あんまり悪口言えないんですけど」

「さっき結構言ってなかった?」

「気のせいです」

 

代わりに物作りやら家やらで恩返しできてる……はず。

 

「どーしよーもない引きこもりで人見知りだったあたしを、ここまで普通にしてくれたのはあの人とにとりさんのお陰ですし」

「……普通?」

「そこに首傾げないでください、昔よりはマシなんです多分」

 

人見知りは治ってないけどこうやって外には出てるからいいでしょ!

他の人がいっぱいいるところはまだ無理だけど!

 

「そういえば、この前の紅い霧、結局何だったんでしょうね」

「あぁあれ、吸血鬼の館が起こしたって聞いたけど」

「懲りないなぁ」

「そうだねぇ」

 

吸血鬼とかいう種族に良い思い出ないから隠居でもしておいてくれないかな……

 

「正直あの光景は絵に残しておきたかったけど」

「あ、分かります。なんていうかこう……新鮮?幻想的?とりあえずなんかこう、この世の終わりみたいな光景でしたもんね」

「ちなみにその時何してた?」

「引きこもってました」

「うん、だよね、知ってた」

 

そんな怖そうなこと起こってる時にわざわざ部屋の外に出るわけないじゃないですかやだなー。

 

「博麗の巫女が解決したらしいけど」

「妖怪退治するやばい奴で有名じゃないですか、この山に来たりしませんよね」

「まあこの山が自分から大事起こしたことって、実はあんまりないし」

「あー……確かに、よくよく考えたら毎回なんか巻き込まれたり内部から反乱が起きてらような……」

 

それはそれとしてどうかと思うけど。

そう考えたら私も随分と長い間引きこもり生活してるなぁ……

 

 

 

「おーい!」

「ん…にとりさん」

 

坂の上の方を見上げるとにとりさんが大きく手を振って近づいてくる。

 

「どう?進んでる?」

「まあぼちぼちですかね、にとりさんは何でここに?」

「仕事終わったから」

「お疲れさまです」

「ん、ありがと」

 

うづきさん、なんかにとりさんには凄い敬意を払ってる。

尊敬する気持ちはわかる、よくわかる、すごいわかる。

 

「思い出すなぁあの時」

「あの時?」

「ほら、みんなでちょっと離れたところまで行ったじゃん」

「あー?あー……」

「せい」

「あでっ」

 

なんでチョップ……?

あ、でもなんか、うづきさんのおかげで思い出してきた……

 

「そんなことも……ありましたね」

「なんで遠い目?」

「いやだって実際結構昔じゃないですか」

 

あれから色々あったなぁ……

あった……よね?

 

「あの時も秋でしたよねぇ」

「毛糸が荷物持ちやらされてね」

「そうそう、嫌そうな顔してちゃんと持ってくれるんですよね」

 

戦ったら強いってだけで、基本的には温厚な人だし。

事実人間からの評判もいいらしいし、あの人。

 

「そんなに仲いいんだ……」

「そういやうづきは会ったことないんだったか」

「今度紹介しましょうか?」

「絶対やだ」

「やだ!?遠慮とかじゃなくてやだ!?」

「だって怖いし……」

「い、良い人なんですよ?」

 

まあ慣れてないとただの変人に成り下がっちゃうけど……でも最近随分まともなような……

なんだろう、第一印象でめちゃくちゃな人って印象づけられたからそれがずっとくっついてるのかな。

 

いや、話通じるってだけで変人は変人か。

 

「ちょっと座らせてもらうよー」

「あ、どうぞ」

 

あたしの隣ににとりさんが座る。

 

「まあ合う合わないはあるだろうけど、いい奴だよ?あのまりも」

「あ、まりもって本人に向かって言ったら不機嫌になるので言わない方がいいですよ」

「どういう地雷?」

「さぁ……昔っからですよね」

「昔よりは怒らなくなったけどねぇ」

 

まああの人どこから仕入れてきたかわからない知識持ってるし、意味のわからない単語を話し始めることもあるし……

感性が違う、とでも言うのだろうか。

溶け込んでいるようで、浮いている。

 

「友達思いっていうのはうづきさんと一緒ですよ」

「化け物と一緒にしないでほしい」

「は、話すと普通……ではないけれども。悪い人じゃないですし……」

「なんでそんなに会わせようとするの」

「だ、だってそりゃ、友達と友達が仲良くなったらもっと楽しいじゃないですか」

「安直」

「友達少ない奴の考え方だ〜」

「そ、そんなに言わなくなって……」

 

数少ない友達を大事にして何が悪い。

話していて筆が止まっていたことに気づき、再度描き始める。

 

「ねえうづき」

「はい?」

 

あたしの横に座ってくせに、わざわざ私越しにうづきさんに話しかけるにとりさん。

 

「こいつと、仲良くしてくれてありがとうなぁ……」

「え?いや、あ、はい。……え?」

「にとりさん……」

「こいつもうほんっと手のかかる奴でさぁ、人が多いところは嫌だわ肉体労働は辛いわ部屋の中でできる仕事がいいってほざくわ、無理しすぎたらなんか爆発してどっか行くわ……技術だけで言ったらかなりのものなのにそれを活かせる性格じゃないし……なんかもう色々とちぐはぐでさぁ」

「あたしを間に挟んで悪口言うのやめてください」

「まあ私も最初会った時には、声はうわずってるし噛むし何言ってるかわからないし……」

「でしょー?」

 

なんであたしのこと挟んで話すんだこの二人……

悪口が言いたいなら聞こえないところでやってよ……

 

「ただまあ、いい奴だし」

 

うづきさんが筆を置く。

 

「あの時私のために必死になって、支えてくれたのは感謝してるから」

「………」

「やる時はやる奴だからね……やるべき時にやらない奴よりは全然マシだよ。私もこいつとは長い付き合いだけど、楽しくなかったら一緒にいないしさ」

「………」

 

あたしも、筆を置いた。

立ち上がる。

 

「ん?どこ行くの?」

「もう切り上げるの?」

「……………ります」

「え?」

「小っ恥ずかしいので帰りますぅ!!」

 

叫んだ。

 

「あ、赤くなってる」

「いじりがいあるでしょ」

「確かに」

 

そこで意気投合しないで!

 

「ほらほらー、そんなこと言わずにここ座りなよー」

「まだ日が暮れるには時間あるし、描けるとこまで一緒に描こうよー」

「な、何にやにやしてるんですか……無駄ですよあたし帰りますからね!」

「そうか……ろくに他人と話もできないお前が一人で帰るのか……そうかそうか。頑張れよ、戻る時に不審な動きして牢屋に入れられないようにしろよ」

「………」

 

こ、この……このぉ……

 

「………」

「いらっしゃーい」

「あ、本当に帰れないんだ」

「そうだうづきー、こいつの恥ずかしい記憶思い出させてやってよ」

「なっ……」

「了解」

「ひぁっ……や、やめ、こっちにこな……に、にににとりさん!?なんで羽交締めを……ちょっうづきさん本当にやめっあっあっああアアァっあっあぉあぉあぁあぃぁぁ———」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

散々な目に遭った……嫌なことも思い出した……毛糸さんが黒歴史って言ってた類いの記憶が……

 

「………んふっ」

 

こうやってちゃんと自分以外の誰かと絵を描いたのって初めてで……なんだろう、成長したって感じがする。

数百年生きてきて進歩がそれだけって考えたら悲しくなるけれど。

 

「きな臭い噂もないし……」

 

そもそも、あたしも毛糸さんのこと言えないくらいには色んなことに首を突っ込んでるし。

この前の吸血鬼の一件だってそうだし……

 

まだ未完成の絵を机の上に置く。

 

スペルカードルールだっけ。

あたしはやるつもりはないけれど、なんとなく、平和だなぁって感じる。

 

なんとなく、今までとは違う幻想郷が見られるんだろうなって気がする。

 

「もっと外出てみるのもいいかも……いや」

 

やっぱり知らないところ一人で行くの怖い。

行くなら誰か誘って行こう……人見知りに一人は難易度が高い……

 

 

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