「ははっ、自由落下コワーイ、私落チテルゥ、スゴク落チテルゥ」
「毛玉なのに落ちるの怖いんですか?ってか飛べますよね」
「何言ってるんだ馬鹿野郎!私はなぁ!バンジーとかあーゆーの!やるのは良いけどやったらやったで途中で気絶するタイプだからね!ジェットコースターとか絶叫マシン系イキって乗って!絶叫して二度と乗らねぇってなるタイプだからね!多分」
「多分って、不確定なんかい。そろそろ地面着きますよ」
「イヤアアアアア!」
まぁ冗談はさておき。
落とした氷の玉は真っ二つに割れながらも地面にめり込んでいた。
流石の重量である。
あと何人か潰されたねこれ、南無三。
そう、あの氷の玉のしたには無残に潰された敵の死体が………
シィィィィ○ァァァァ!!
タバコ逆さだぜぇ………
地面に落ちる前に体を浮かし、少しずつ小さな衝撃波を下に向けて撃って減速、ある程度の高さで宙に滞空する。
肩からぶら下げたこの妖力銃、名前は今適当につけた。
霊力と同じ感じで流し込むとやばいくらい流れ込んでしまうので、慎重に少しずつ妖力を持ち手から流し込む。
妖力銃の筒の中に小さな妖力弾が作られたのを感じ、妖力の操作をやめた。
妖力弾を押し出すために溜まっていた妖力が一気に噴出、妖力弾をすごい速度で真下の方向に撃ち出した。
イ○ラッ!!
ようりょくが ぼうそうした!!
実際は暴走してないけど。
妖力弾がすごい威力なら、押し出す妖力もすごい威力なわけで、体を浮かしていた私は結構後ろに吹っ飛ばされた。
同時に敵の密集している地面へ着弾した妖力弾が爆発、黒煙を上げて爆心地にいた敵たちを吹っ飛ばした。
私の飛ばされたとこまで爆発の余波が飛んできて、さらに遠くへ飛ばされそうになった。
やっぱ幽香さんパナイわぁ、名前だけランクアップしてイ○ラにしたけどやっぱりイ○ナズンくらいの威力は出てますわぁ。
これイ○ナズン撃ったらイ○グランデを余裕で越した威力になりそうだよね、私怖いわ。
本当はイ○系だけじゃなくてメ○系も使いたいけど、妖力で火って出せるのかわかんないからできないや。
ヒャ○系ならできるんだけどなぁ。
そろそろドラ○エの話しは終わりにして、文たち巻き込まれてないよね?一応爆発範囲にはいなかったはずなんだけど。
と思ったらちゃーんとみんな避難してました、空高くへ。
なんか文がすごい速度と形相で近づいてきた、なんすか、その手をどうするつもりですか。
「やるならやるって事前に言ってくださいよ!」
「へぶし!」
ビンタを食らった………
「なんで私敵からより味方からの方が攻撃受けてる回数多いの?」
「あなたの妖力に気づくのあと少し遅れていたら私爆散してたんですが!何考えてるんですか!」
「明日の朝ご飯!」
「私の朝ご飯が今永久に無くなりかけました!」
ぶはっ!お前!女の顔をグーでなぐるなんて!
私をぶったな!大ちゃんにもぶたれたことないのに!
「そう言ってもわざとじゃ——ないッ!」
異様な寒気がし、身をひねると顔を細長い何かが掠めていった。
下を見下ろし、こちらに狙いをつけている射手を見つけ、さっき放たれたのは矢だと確認。
近づいてなんとかしよう、そう思った時には既にそいつはのされていた。
「不意打ちなんて卑怯ですね………」
文さん、仕事早いっすね。
いやまじで、目で追えないくらいの超スピードだったんですけど、瞬間移動でもしました?ヤードラッ○星で瞬間移動習得してきました?
「飛び道具なんて捨ててかかって来なさい!」
そう叫んだ文は、目にも留まらぬ早技で周囲の敵全てに後ろから首トンで意識を刈り取っていった。
首トンできるんだ、すごいなぁ、私もできるようになりたい。
まぁ文がしてるの、どっちかっていうと首ドンッ!!だけどね。
いや、ほんと………射命丸さんどうなってんの?あなたそんな早かったの?音速くらい行ってない?
前方から私に向かって斬りかかってくる白狼天狗を発見、着てる服が椛や柊木さんと違うので殴ってよし。
右足と右腕に妖力を込めて姿勢を低くし、土を蹴って敵の懐に接近、強化された右腕で思いっきり顎にアッパーを決めた。
「いったぁ………」
やばい、めっちゃ拳痛い。
本気でやりすぎた、敵さんも体1メートルくらい浮いてたし、もうちょっと手加減すればよかった。
散り散りになっていく敵の間から、一人の人影が目に入った。
「我が逸楽、見つけたり」
戦場に飛び交う怒号や悲鳴の中で、図太い声のその言葉だけが、やけにはっきり聞こえた。
耳に豪風のような音が入ってくる、そのあと耳を大きな爆発のような音が襲い、思わず耳に手を当ててしまった。
「大丈夫ですか?」
「文?今のは………ふぁい?」
左で腕を掴んでいる文の視線の方向を見ると、私のすぐ右の地面が深くえぐれていた。
「あの正面にいる男、わかりますか」
「——え、あ、あぁ、あのゴツいおっさん」
「あれは隣の隣のその隣の山を根城にしている天狗、うちで言うなら天魔級の化け物。名を——」
「
うわっなんだあいつ会話に入り込んできてまで自己紹介したよ、なんなの自己主張激しすぎじゃない。
あとなんだよ鬼葬って、ネーミングセンスどーなってんすか。
「鬼のように闘い敵を葬ることから付けられたその名は伊達じゃないですね………」
「えっ、そんな安直な由来だったの!?恥ずかしくないのおっさん!いい歳こいてそんな名前堂々と誇らしげに語ってんの!?ないわーそれはないわー、まじ引くわー」
私の名前も安直だとは言ってはいけない。
言ってはいけない!
「ちょっと!煽らないでくださいよ!」
「ほう?我のこの名を侮辱するか」
「侮辱じゃないっす、名前変えて来たほうがいいっすよ、そんなんじゃ恐れられるより舐められる方が多いと思うんすけど」
あ、血管浮き出てる。
「そうカリカリしなさんなって、カルシウム取った方がいいんじゃない?」
わざと煽る、煽りに煽る。
煽りはするが足はすごい逃げ腰だ。
こいつからはやばい匂いがするぜぇ………
どのくらいやばいかって言うと、あの夜のルーミアくらいやばい気がするんだぜぇ………
「口よりも闘った方が早かろう、行くぞ女」
「女じゃねえ!毛玉だ!」
「えっ、女性じゃなかったんですか!?」
「知らん!」
毛玉に性別ってあんの!?
おっさんは、近くにある私の出した氷の残った半分を軽々と手に取った。
もう半分はいつ使ったんだ?あ、さっきか、ありがとう文、君がいなかったら私は今頃ガメオベラしていたことだろう。
「来ますよ」
「危なくなったら救助頼みまーす」
「なに惨めなこと堂々と言ってるんですか!」
体を浮かし、おっさんが氷塊を振りかぶりこちらに投げてくる直前に霊力を全力で放出し、投げられて来た氷塊を避ける。
全身の毛が逆立つような感覚とともに轟音が響く。
おっさんはすぐに近くにあった武器………棍棒?棍棒を手に持って構えた。
「力より速さの方が重要なんですよっ!」
文が超速で接近しておっさんの顔面にビュウッという風を切る音を出しながら蹴りを入れた。
スパーンと気持ちの良い音があたりに響いたけど………
「いくら早かろうと攻撃が通らなければ意味を為さないな」
「——!」
「むぎゅ」
おわっ!なになに!?顔に何かが飛び込んできた!
そのまま後ろに倒れ込んでしまった、すぐに体を起こし飛び込んできたものの正体を探る。
文だった。
「いたた………近づきましたか、全速力で避けたつもりだったのに、攻撃の余波だけで吹っ飛んでしまいました」
「文のあの速度反応できるのか?」
鬼のような闘いっぷりからその名で呼ばれるようになったんだっけ?じゃあモノホンの鬼はどれだけ頭狂ってる強さなんですか!もう嫌になっちゃうね!世界って理不尽!
両手を胸の前で合わせ妖力を収束し、妖力弾を作る。
さっき撃った奴よりも多く妖力を使っている。
「文、私が合図したらあいつの近くまで私を移動させて」
「なにを………いえ、わかりました」
手の中の妖力がどんどん増幅していく。
大きくなりすぎないように、増えていく妖力を収束させてちいさな光の玉を作り出した。
「いけ!」
何も考えずにただただ手を前へと突き出す。
視界が一気に変わり、おっさんの背後に回り込む。
「む?」
む?って、む?ってなんだよ。
気づいたようだけどもう遅い、光の玉は私の手から離れてこちらに振り返ったおっさんの目と鼻の先まで迫っていた。
また視界が変わり、周りには味方の鴉天狗が何人かいた。
白い光がどこからともなく放たれ、そのすぐ後に爆発の余波が私たちを吹き飛ばした。
ぐるぐると視界が回る中、なんとか体制を立て直す。
空を見ると小さな点がたくさん吹っ飛んでいる。
あれ、人か。
「なんて爆発起こしてるんですかっ!」
「知らん!私だってこんなにやったの初めてだよ!」
体の中の妖力がごっそり持ってかれたのを感じる。
あと半分もないくらいか………
気づけばもう日が暮れかけている、時間の感覚が麻痺してたみたいだ。
しだいに土埃が晴れあたりの様子が見えるようになってくる。
「やりましたか………?」
「ちょ、それフラ——」
残ったのは二本の腕。
血を散らしながら地面へと落下し、地面を血が染めていく。
「なかなか良い攻撃であった。我もかなりのダメージを負った」
身体中から血を流しながらも、二本の足で立っている鬼葬。
いなくなった毛糸さん、地面に落ちている腕。
それが意味しているのは………、
「貴様ぁ………!」
「くるか、雑魚どもよ。ならば、この我を殺してみせろ」
・・・
寝てたらしい。
頭が痛む、だけどなにがあったかを思い起こさなければいけない。
たしか………吹っ飛ばされたんだ、倒せなかったから。
視界は真っ暗………目はどうなってる?
腕は………多分吹っ飛んだな、感覚がない。
足はあると思うけど動かない。
なんとか腕に妖力を纏わせて完全に直撃はしなかったから、なんとか生きているみたいだ。
私にしてはよくやったと思う。
「毛糸………」
その声はにとりぃん?
「毛糸さん………」
るりもいるのか。
「早く埋めてやろう」
「はい………」
は?
ちょ、なんか体持ち上げてるよね?え、ちょっと待って!ちょ!
なんか担がれてる!あ、今落としたな!?これもしかして穴!?穴ですか!?墓穴!?埋めるの!?私を!?
「絶対勝つからな………」
「あなたの死は無駄にはしません………」
生きてるよね!?私生きてるよねぇ!?
ちょ、なんか喋らないと、って声が出せないい!喉が潰れてる!?
妖力!妖力を喉に!
あ!今土かけただろ!やめ、やめろおおお!
「いぎでるうう!」
「「!?」」
はぁ、はぁ………
あれ、返答がないな。
「うわあああああああ喋ったああああああ!!」
「ひいいいい!成仏!成仏してくださいいい!!」
「生きてるって言ってんだろぉ!?」
「まったく、生きてるか死んでるか、ちゃんと確認してから埋めろよな!生き埋めにされるところだったわ」
「ひぃ、腕が生えてきてるぅ、おかしい、おかしいよぉ」
「いやだって………今目が見えないからわからないだろうけど、今すごいことになってるよ?誰が見たって死んでると思うよ。
「脈取った!?」
「………取ってない」
やっぱり!ま、許すけどね!
生きててよかった、ってか妖力残っててよかった。
まずは腕から再生していく、取れてるからね、ないからね、腕。
肩から肉が蠢く音がして、ものすごく不快だ。
ついでにいうとどんどん感覚が戻ってくる感じも不快、マジキモい。
腕に妖力を集中させるのと同時に、ズタズタになってるであろう足、それと体の中の方まで妖力を流しておく。
頭がどうにかなってるのか、痛みとか今は全く感じていないから再生自体は楽だ。
脊椎折れてたら治るのかな?これ、治るよね、きっと。
体の中身の方までめちゃくちゃになってて再生に時間はかかった、多分十分くらいかかった、でも治ったからよし。
目が完全に再生し終え、ゆっくり瞼をあげる。
昼間だったらうわっまぶし、ってなってたけど、今はすっかり夜らしい、満月と星々がが空高くで輝いていた。
「どのくらい寝てた?」
「そこまで時間は経ってません、まだ戦いは続いてます」
「そっか」
にとりぃんの視線が痛い。
めっちゃ突き刺してくる、串刺しにしてくる。
「本当、ひやっとしたよ、本当に死んだかと………それで?どうせまた行くんだろ?」
「わかってんじゃん」
あのおっさんの頭をハゲにするまで私は諦めないぞ。
「じゃあ行ってこいよ、やるだけやって、死ねばいい」
「冷たくない?」
「死ぬときは妖怪だって死ぬんだよ」
ま、そーだよねぇ。
妖力も、寝てる間に少し回復した、霊力はまだある。
「じゃ、行ってくる」
あのおっさん、絶対許さないからな。
「え?ちょっと、なんであたしの首根っこ掴んでるんですかぁ!」
「働け」
「殉職はいやあああ!!」
あ、やべ、あのおっさんどこにいるかわからねーや。
天狗の里の門の前、そこに私は立っている。
私の視線の先に、あいつがいる。
「やはり生きておったか、傷も全て治っておるとは驚いた」
「おっさんは結構ズタボロだなぁ?」
相手の体も傷だらけだ、私のあの爆発で負った傷もあるのだろう、血が体の至る所から滲み出ている。
だけど、その歩みは一切揺らぐことなく、真っ直ぐに私へと向かってくる。
「名を聞こう」
「………白珠毛糸」
「そうか………我に劣るが、良い名前ではないか」
あぁ?
妖力を足に込めて姿勢を低くする。
いつでも突っ込めるように。
「ほざけぇ!私の名前はなぁ!お前の3.14倍よく考えられてるわ!」
円、周、率!