毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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とにかくふざける毛玉

 

「あぁあぁあぁあぁあぁあぁあぁ」

「なーにーしーてーん、のっ!!」

「げっほぁ!」

 

蹴られた……

 

「床の上で転がるな!獣か!」

「獣はオメーだろ!!」

「大ちゃんあたいも転がっていいかな」

「ダメだよ?」

 

なんかもう最近もう……なんかもう嫌なんだもおおおおおおん!!

 

「転がらなきゃやってらんねえようおおおおおお!!」

「目障りなんだよカスマリモ!」

「はぁ〜!?泣くぞ?」

「は?」

「みっともなく泣くぞ?私今まで生きてきてまともに泣いたことないけど、お前のその暴言によって赤子のようにほぎゃほぎゃ泣き喚くぞ」

「ぐっ………言い過ぎた、ごめん」

「わかればいいんだよ」

「私ついていけないや……」

 

大ちゃんが引くのを感じながら体を起こす。

 

「うぅむ………」

「なに?今度は回転しながら空でも飛ぶ?」

「それでもいいんだけど」

「いいんだ…」

「あたいもやる!」

「ダメだよ?」

 

たまにこの二人、というかチルノが来てそれに大ちゃんが引っ付いてくるだけなんだけど。

誇芦もいるせいでかなり賑やかだ、変なこと考えずに済む。

 

「お前ら連れて人里に行くのってどうなのかと思ったんだけど……手に負えずに迷子になって苦労する未来しか見えないからやめとく」

「そうだぞしっかりしろよなほころん」

「バカがよく言う」

 

てめぇら二人ともだけどな?

私だって面倒見いいわけじゃないしさぁ……

 

「あーあーもうすぐ秋終わっちゃうよ〜……」

「冬!冬早く来い!ずっと冬になれ!」

「やめろ」

「やめろ」

「やめて」

「なんで!?」

 

そらみんな寒さに堪えてるからに決まってるでしょうよ。

レティさんとチルノの合わせ技、この世の全てを凍てつかせる勢いである。もう天災認定していいかな。

 

「家から出れなくなるし……」

「そろそろこたつ出す?」

「みんなで冬楽しもうよ!雪玉投げたりしようよ!」

「チルノちゃん、投げるより先に自分が雪玉になっちゃうんだよ」

 

二人が揃わなきゃ全然いいんだよ?チルノが調子に乗るくらいで。

たまーに二人揃うからダメなんだよ、お分かり?

 

「私も冬眠しようかなぁ、どこかの誰かみたいに」

「私は森に帰ろうかな」

「私は……その時になったら毛糸さんの家に居ますね」

「なんでみんなあたいのこと置いていこうとするの!?遊ぼうよ!!」

「………」

「………」

「………」

「なんか言ってよ!!」

 

みんな心苦しいんだよ、そりゃお前と遊んでやりたいよ。

でも命は惜しいんだ……

 

「冬になると凍えて動かなくなった妖精とか普通に居ますしね……」

「本当に天災じゃん」

 

一回レティさんのこと誰かが退治したほうがいいんじゃないかな……

 

「ふんだ!あたいは最強だから冬以外でも最強だし!季節とか関係ないし!」

「夏〜夏よ〜こい〜」

「このバカを溶かして欲しい」

「チルノちゃん、夏もいいよね」

「………」

 

あ、泣きそうになってる。

 

「ごめんて」

「毛糸なんて毛玉のまま雪の中に埋もれて死んじゃえばいいんだ!」

 

何で私だけ?

そしてそのままビーズクッションに飛び込んで沈んでいくチルノ。

 

「……そういや誇芦、冬服ってなかったね」

「え?いいよ今あるので間に合ってるし」

「いやせっかくだし近いうちに頼んでおくよ、私もボロボロになってきたまま放置してるし……大ちゃんのも頼んでおこうか?河童製はあったかいぞ〜」

「お願いします、本当に」

 

切実な願い。

 

「私なぁ、一応冬が一番好きなんだけどなぁ、布団の中でじっとしておくのがたまらん」

「夏」

「私は…春かなぁ」

「ふゆー!!」

「はいはいわかったわかった」

 

あれ、今綺麗に四季分かれてなかった?

 

「頼むから冬に異変とか起こらないでくれよなー」

「そんなこと言ってると本当に起こる」

「いやいやそんなまさか、フィクションでもあるまい……いやこの世界私からしたらフィクションみたいなもんだけど」

 

ハッ……レティさんが冬に異変起こす可能性もあるのか……!?

幻想郷常冬計画……な、何て恐ろしい……

もしそうなったら、私はあの人を……

 

「や、やるしかない……」

「今何の決意固めたの」

「今のこの、お前たちがいる暮らしを守るための……戦う決意」

「そういうこと言う時は大したことじゃないの知ってる」

「深刻だと言えば深刻だし、どうでもいいと言えばどうでもいい」

 

ほころん勘いいな……というか私のことをよくわかっていらっしゃる。

 

「毛糸!これなんだ!」

 

チルノが物置から何か見つけてきたらしい。

 

「んー?あー……お面」

「お面?そんなの持ってたっけ」

「買ったんだよこの前」

「これは何!」

「猿」

「これは!」

「鳥」

「これは!!」

「バカ」

「へぇ……え?」

 

何で買った?って視線を誇芦が向けてくる。

 

「いやまあ…顔を隠したい時が来るかなあって」

「………」

「あの、毛糸さん」

 

誇芦がなんとも言えない表情をしていると、大ちゃんが扉を指差している。

 

「誰か来たみたいですけど」

「ん?んー……お」

 

この感じは……何か言われて来たのかな?

 

「チルノそれもらうね」

「さっきバカって言った?」

 

無視して面を被り、扉を開ける。

 

「突然すまな……何、その仮面」

「たぬき」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやそれにしても久しぶりだね…や、そうでもないか」

「そう、だな」

 

少し気まずそうに藍さんが机を挟んで座っている。

後ろの方に目をやれば、橙やチルノたちがきゃっきゃと私の物置から引っ張り出して来たものを弄っている。

 

「わざわざ来たってことは、ただ遊びに来たってわけじゃないんだろうけど……最近何してたの?」

 

緑茶をすすめるが、口をつけない。

 

「最近色々あったからな」

「あー、弾幕ごっことか、異変とか。紫さんも顔出さないし忙しいんだろうなとは思ってたけど」

「………そうだな」

 

ふむ……なんでそんなに居心地悪そうなんだい?訪ねて来たのはあなただろう?

 

「……あのこと気にしてるなら、藍さんがそんな顔する必要は……」

「それは、そうなんだが……」

 

チラチラと、私の顔を見てくる。

 

「……なんでまだお面をつけているんだ」

「なんとなく。ちなみに外す気はないよ」

「え、えぇ……」

 

……変な顔は見せたくないし。

 

「な、なぁ、あの事なら紫様に代わって私が謝る、その……も、元に戻ってくれないか」

「………藍さん」

「な、なんだ?」

「私ね……」

 

意味深な間を置く。

 

「元々こういう奴」

 

数秒の沈黙。

 

「そういえば、そうだったか…?いや、きっとそうなんだろう、うん…」

「そうそう、気にしないでいいよー」

「…なんでたぬき?」

「狐がたまたま売ってなくて……」

「え?いや、え?」

 

あ、そろそろ困惑で頭が弾けるって顔してる。

 

「せっかくだからその戸惑った顔に言ってやる」

「え」

「謝罪とか求めてないから、というか藍さんは関係ないし、そんな顔しなくていいから。とりあえず私一押しのこの饅頭でも食べて落ち着こうぜ」

「……………え?」

 

え?て言いながら饅頭食べないでくれ。

 

「美味しい?」

「美味しい……」

 

わあいそりゃよかった。

 

「………いやいや待ってくれ!!」

「何を?」

「何って……私は何を待てと言ったんだ?」

「まあまあ落ち着いて、茶でも啜って」

「あ、あぁ………ふぅ」

 

一息ついたね、ちょっと畳み掛けすぎたね、ごめんね。

 

「とまぁ、見ての通り」

「………」

「何も変わんないでしょ?そりゃ色々あったけどさ、藍さんがそんな顔しなきゃいけない理由はないよ」

 

とは言っても、この人は優しいからなぁ。

きっと……

 

「…いや、巻き込んだのは紫様だ。そういうわけには……」

 

そう、言ってくれるんだろう。

 

「だったら、私は紫さんに直接伝えたいよ、気にしなくていいって。それとも……」

 

お面越しに、藍さんの金色の瞳を見つめる。

 

「その目で本人、こっち見てるとか?」

「………」

「なんてね」

 

見られてるって気配はする、するけどそれは藍さんと同じ視線だったから。

 

「……すまない」

「………ついこの前、華扇って人に会ったよ」

「それは…!」

 

やっぱり知り合いだったか。

 

「聞いたよー?紫さんのこと。気にしてるって」

 

正直に言えば、そんなことはわかっていた。

あの日、私に本当にいいのかと聞いて来たあの人の表情は……

 

「何度だって言うし、紫さんも分かってるだろうけど。私は誰も恨んじゃいないし、変わらないよ」

「………」

「だからさ、そんなに下見てないで……」

「いや、違うんだ」

「え?」

 

違うって、何が。

下見てるのが、気にしてるからじゃない……?

 

「その……そのお面をつけて真面目な話されると、その……笑ってしまいそうで」

「………ひょっとこもあるよ」

「ぷふっ」

「………」

「………」

 

へぇ。

 

「い、いや違うんだ今のは」

「違うって、何が?」

「決して、話を真面目に聞いていなかったとかそういうわけではなく……」

「まあこの面の狙いはそれだったし」

「え?」

 

今日何度目かの、困惑した表情。

 

「もう飽き飽きしてんだよそう言う話、私気にしてない藍さん気にする必要ない!以上終わり!解散!」

「いや待ってくれ!話をさせてくれ!頼む!」

「断る!」

「そんな…」

 

作戦成功!話を逸らせた!今日はもう遊ぶぜ!いや仕事してるわけでもないからいつも遊んでるけども!ニートだけども!

 

「ま、待ってくれ!私は——」

「橙が猫のお面被ってる」

「えっ」

「嘘だよ」

「………」

「………」

 

ゆっくりとこちらに視線を戻す藍さん。

 

「………それで、話の続きなんだが」

「りんご剥いたら食べる人ー!」

「「「はーい!」」」

 

あらいい返事、毛玉さん頑張って剥くね、指を血だらけにしながら。

 

「藍さんは?どう?」

「……いただくよ」

「そっか」

 

フッ……勝った。

私は一度ボケると決めたら止まらない女だ。

堅物の藍さんに私が止められると思うなよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このりんご毛玉の味する」

「おいてめぇどういう意味だバカイノシシ」

「本当だ毛玉の味するー」

「ほんとだー」

「バカネコとバカ、叩くぞ」

「………美味しいです」

「大ちゃん……」

 

優しい君が私は好き。

 

「ん、藍さんりんご嫌いだった?」

「いや、そうじゃない」

 

口をつけていないのを見てそう聞くが否定される。

一つ口に入れた後、美味しいと言ってくれた。

 

まあ私は切っただけなんだけどね?

なんならさっき饅頭を藍さん出したけど……まあ後の3人には出してなかったし。

 

「正直、救われたよ」

「ん?」

 

画面を少し傾け、りんごを齧っている途中で、ぽつりとそう呟かれた。

 

「あぁ、君のいう通りだ。私は負い目を感じていた」

「……ねえその話は」

「頼む、少しだけでいい」

「………そっか」

 

少し噛んで抉れたりんごを、今度はちゃんと噛み切り、噛んで甘さを感じ取って飲み込む。

 

「分かっていたんだ、こうなるだろうなってことは。人間と……博麗の巫女とどう関わりを持つというのがどういうことになるのか、私は分かっているつもりだった。最後には、どうなるのか」

「………」

「でも、何も言わなかった、しなかった。分かっていたのにな……君がそうなるだろうってことは」

 

下を向き、自嘲するような笑みを浮かべて言葉を綴る。

 

「だから、謝りたかった。紫様へもし恨みを抱えているのなら、それもどうにかしたいと……」

「恨みって……そんなこと思うわけないじゃん」

「あぁそうだ、君はそういう人だからな」

 

……そうだよ、私はそういう奴。

 

「だから、君がそうやって無理矢理にでもふざけて、私に話させないようにしてくれて……安心した」

「今こうやって話されてるけどね」

「ふふっ、そうだな」

 

そう、そうやって笑っていてほしい。

私なんかのために、暗い顔する必要はない。

でも、どうしたって私のためにそんな顔をするから、私は……

 

「謝罪を受け取ってくれないのなら、こう言うよ」

「え?」

「ありがとう」

「………」

 

私は身勝手に、自分がされたくない話をされないようにしてるだけなのに……

 

「感謝されても、困るんだけどなぁ」

「なら謝ろうか?」

「いやいいよ」

 

でも…そっか。

 

「……あのことなら、私が蒔いた種だから。私がどうにか、自分で解決する」

「………」

「私のことが違う意味で心配なら、安心して欲しい。私の居場所は、ここだけだから」

 

わざわざ自分の居場所を無くすような真似はしない。

 

「そう、伝えておいて」

「……了解した」

「よし、ならもうこの話終わり!」

 

りんごをもう一切れ食べて立ち上がる。

 

「生意気なガキンチョどもー!」

「あ?」

「お?」

「は?」

 

ほころんや、君は自分がガキンチョだと思っているのかい?私より体でかいくせに。

 

「今から私とジャンケンして勝った奴、私の残りのりんごくれてやる」

「潰す」

「泣かす」

「ぼっこぼこにする」

「な、なんで3人ともそんなに殺気立ってるの?たかがりんごでしょ?」

 

いい目をしている……食欲に塗れた目だ。

やはり食欲の秋というわけか……

 

何考えてんだ私。

 

「ほらいくぞ!じゃんけん——」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐああああ全員に負けたあああ!!」

「…そんな気はしてました」

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