毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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聞かされていない毛玉

 

「………」

「みかん無くなったんだけど」

「お前食うの早くない?」

「美味しいし」

「じゃあお前冬の間は朝昼晩みかんな」

「いいよ」

「いいの!?」

 

誇芦、そんなに好きだったんだみかん……

じ、自家栽培した方がいいかな……?

 

「まあ今度買ってくるけど……ほころんはさ」

「ん?」

「人間って好き?」

「別に」

「じゃあ嫌い?」

「別に」

 

ふむ、興味なしって感じか。

 

「今度さ、人里で雪合戦やるんだってさ」

「へー」

「それの優勝賞品でさ」

「ふーん」

「たくさんみかん貰えるって言ったらどうする?」

 

こたつから出て立ち上がる誇芦。

 

「全力で」

「おぉ」

「全員」

「おぉ」

「ぶっ潰す」

「おぉ〜」

 

思ってたよりやる気出たみたいだ。

うん、みかんが好きなバカでよかった。

 

「でも人里でしょ?私妖怪だし」

「人妖合同でやるんだってさ」

「合同?」

「人と妖怪がごっちゃ混ぜでチーム作って競うんだってさ」

「ふぅん」

 

興味あるのかないのかいまいちわからんなこいつ。

 

「でさぁ」

「全部察した」

「はい?」

「妖怪側の雪合戦に参加するやつ集めるように頼まれたとかそんなでしょ」

「うわすげぇ当たってる」

 

ちょっと得意げな顔になった誇芦。

 

妹紅さんと慧音さんに頼まれたのは、つまりそういうことだ。

妖怪でも妖精でもいいから、人間に敵意のなさそうな奴を探して参加者を募ってほしい。

結局参加者がいなければ何も始まらない、人間側に寄っていて尚且つ妖怪の知り合いが複数いる私は丁度いいってわけだ。

 

「チルノとかは?」

「もうすでにやる気満々、他の妖精もその気になってるみたい」

「単純だなぁ……なにその顔」

「いや別に」

 

決して、お前も単純だよとか思ってない。

 

「毛糸は出ないの?」

「私が出ちゃったら余裕で優勝しちゃうからなぁ〜」

「………」

「そんな目で見るなよ。……私は主催側に立つことになったから、参加はできない。まあ観客席からお前のこと見てるから安心しなよ」

「別に見なくていいけど」

 

そう冷たいこと言うなよな。

 

「じゃ、当日楽しみにしておくよ」

「もし優勝できなくてもみかん買えよ」

「生意気だなテメェ、いいけど」

「うっし出るだけ出てサボろう」

「ダメだからね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さあ皆さん、今日はお集まりいただきありがとうございます!」

 

人里からほんの少しだけ外れた、雪の積もった野原。

文が運営席から河童の作った拡声器を持って声を上げる。

 

「本日は待ちに待った人妖合同雪合戦!人間側からも妖怪側からも多数の参加者が募っていただきました!」

 

文の言った通り、なかなかの人数が控え席に座っている。

子供から大人、妖精から妖怪まで様々。

見知った顔も何人かいる。

 

……なんでいるんだよお前って奴も何人か。

 

「妖怪と人間の親睦を深めるために行われるこの雪合戦、優勝した陣営には豪華な賞品が用意されています!」

 

うん、そうだね。

食い物とかだけじゃなくて、なんか明らかに河童が作ってそうなのもあるよね。

 

「出場者の皆さんには大きく二つの陣営に分かれてもらいます!藤原妹紅さん率いる赤陣営!」

「おい待て聞いてないぞ」

「白珠毛糸さん率いる白陣営の二つです!」

「ちょっと待てお前どういうつもりだ聞いてない」

「実況は私、妖怪の山の射命丸文と」

「解説は私、上白沢慧音が行わせてもらう」

「慧音!?」

「慧音さん!?」

 

ねぇ待って急に知らない情報がポンポン飛んでくるんだけど!?

文は止まる様子ないし!

 

「さあ皆さん!優勝賞品のため人間と妖怪の関係向上のため!隣の人妖は今日限りの戦友です!種族の垣根を超えて戦ってくださいっ!!」

 

文の声と同時に歓声が一気に上がる。

そういう才能あるんだね、君………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「聞いてないぞ慧音!」

「そーだそーだ!」

「毛糸はともかく何で私が!」

「何で私はともかくなの?」

 

妹紅さんに同調してたら一気に突き放された。

 

「まあまあ、これにはわけが……」

 

一回戦目が始まるまでの間に慧音さんと文を問い詰める。

 

「お二人とも、人里では名の通った方じゃないですか」

「それは、そうだが……」

「妹紅さんは慧音さんと同じように人里で、毛糸さんは人里どころか幻想郷中で」

「ちょっと待て私そんな目立った覚え……あるけども!」

 

有名だからって理由でそんなわけわからん…代表?に選ばれたの私?

 

「それに……」

「「それに……?」」

「妹紅さん服赤いし毛糸さんも白いんでちょうどいいじゃないですか」

「妹紅さん今日一緒に焼き鳥しない?」

「賛成だ」

「ちょっちょっちょっちょっ待ってくださいって。ほらもう選手入場終わりましたよ、代表の二人は気の利いたセリフでも言ってきてあげてください」

「「はぁ!?」」

「おぉ、怖い怖い……」

 

ちょ、押さないで、そんな急に言われても心の準備ががが……

 

「………」

 

うわめちゃくちゃ沢山いる……

 

第一回戦は子供の部……妖精は子供って言っていいんだろうか。いや、いいのか。まあとにかく、私の目の前には人間の子供と妖精と力の弱い妖怪がいる。

 

「えぇ……私のこと知ってるよって人」

 

わぉめちゃくちゃ手上がったなおい。

 

「私が何の種族か知ってるよーって人ー」

「まりもー!」

 

おいそこの声高らかに叫んだガキ後で覚えとけよ。

 

「私は毛玉なんだけども、まあそれはさておき。みんながどう思ってるかは分からないけど、私は今日、みんなには隣にいる違う種族のやつと仲良くなってほしいって思ってる」

 

うん、自分がなに言ってんのかわかんない。

もしかしなくても緊張してるね、私。

 

「だから、みんなで協力して、楽しく遊んで……」

 

妹紅さんが演説している方を指差す。

 

「あいつらぶっ潰そうぜ!」

「「うおおおおおおっ!!」

 

………よし!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに今の」

「あらにとりんとるり、いたの」

 

しょうもない言葉を吐いたあと、文たちのいる席には戻らずに観客席の方に歩いて行くと見知った顔がいた。

 

「まあ優勝賞品には河童製の奴もあるし、提供私らだし」

「にとりさん、あたし帰っていいですか」

「ダメだったか……」

「なにが?」

「そろそろ人混みいけるかなって……」

 

ダメだったか……

少なくとも私がこいつらと知り合ってからずっとダメなんだから、多分もう死ぬまでダメなんじゃないかな。

 

「それと観戦に、ね」

「何か気になる奴でもいるの?」

「あれ、知らないの?」

「何が?」

 

にとりんが黙って、子供じゃない方、第二部の白組の方を指差す。

 

「……んん!?」

「見えた?」

「見えちゃいけないものが見えた……」

 

何でそこにいるんだ……椛……

 

「文が雪合戦の話をしたらやる気満々になったらしくて…」

「そんなに雪遊びしたかったのか……」

「もの飛ばすのならるりも得意だから出ればよかったのになぁ?」

「こんな集団の中で立ったら肉壁にしかなりませんよ……」

 

うん、容易に想像つくね。

 

この雪合戦、一回当たったらアウト。時間いっぱいまで投げ合って残っていた人数の多い方が勝ちらしい。

子供と妖精じゃ大差ないからあれだけど、これ二部になったら妖怪、というか椛の無双状態になるんじゃ……

 

「って、そういや肉壁……じゃなくて足臭…じゃなくて柊木さんは?」

「興味ないって言って来なかったらしい」

「うん、興味ないだろうね」

 

椛は白…髪色通りか。

 

「あ、あの毛糸さん、チルノちゃんたちは?」

「ん?あぁ、うん。今絶賛ドンパチやってると思うよ」

 

あいつ赤だからなぁ……

 

「あ、チルノちゃんやられましたね」

「なにぃ!!?」

「声でかいです……」

 

ば、ばかな……冬場のチルノが負けるだと…?

冬になると調子に乗り出してうざいあのあいつが雪合戦で負ける……!?

 

「だ、誰の球で…?」

「……あれですね」

「………誇芦ォ!」

 

お前……チルノに勝ったのか…!

そうか…お前チルノとよく一緒にいるもんな…行動パターンを見極めて確実に倒したんだな…!

 

「お母さん嬉しいよ」

「お母さん…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

「終了ー!第一部勝ったのは……白です!」

 

どっと歓声が上がる。

誇芦よ……お前私より体でかいのによくそこに入れるよな…案外溶け込んでるけど。

 

「観戦席には子供の親とかが多かったみたいだね」

「と、ということは次の部は人が少なくなる…?」

「いやぁどうだろうね」

 

にとりんとるりが話しているのを聞きながら、赤と白に出場してる奴らの顔を見ていく。

 

「………ちょっと行ってくるわ」

「ん?おぉ行ってらっしゃい」

「あぁ私の数少ない友達が……」

「うづき来なくて残念だったね」

「あたしもにとりさんに連れ回されただけなんですけどね…?」

 

 

 

 

 

 

 

「よっ、お前が白の代表とはなぁ」

「私もさっき知ったんだよ……魔理沙も来てたんだ」

 

さっき周りを見渡していたら、私の方を向いて手を振っている魔理沙の姿が見えたから飛んできた。

 

「まあ、な。……赤の方は見たか?」

「うん……なんで霊夢いんの」

「賞品目当て」

 

さっき見てて心臓止まるかと思ったからね、というか頭の中真っ白になったわ。

 

「まあそれだけだ。上手くいくといいな、この雪合戦」

「うん……なんか一気に疲れてきたんだけど……」

「ほら、後の奴らに声かけてこなくていいのか?」

「あぁうん、いらない」

「え?」

 

さっきはやったのに?と聞いてくる魔理沙。

だって……

 

「見ろよあの目」

「目?」

「もう敵しか見えてねえよ、あれ」

「……確かに」

 

どんどん入場していっているが、どいつもこいつも闘争心溢れた顔をしてやがる。私なんかのセリフで水を差しちゃ悪いだろう。

 

「お、始まるみたいだな。どっちかが勝つと思う?やっぱり赤か?」

「いや、白にもバケモンが……霊夢には敵わないと思うけど」

 

文がスタートのカウントを始めた。

 

「バケモン?どいつだ?」

「見てれば分かるよ」

 

3、2、1……

 

「始まっ——」

 

途端に怒号や轟音が辺りに響き渡る。

目の前にはさっきのが生優しく見えるほど大量に飛び交う雪玉たち。

 

「……見てれば、分かるのか?」

「退屈はしなさそうだね」

「まあ、確かに」

 

壁を作り始める人間と妖怪、最初は人間だけ壁を作っていたが、思ったより雪玉の飛んでくる数が多かったみたいだ。

第一部よりはるかに人数がいたが、どんどんと雪玉に当たりアウトになっていく。

 

そんな中、赤と白に一人ずつ、大立ち回りを繰り広げる奴ら。

 

「なんだあの二人すげえぞ!?」

「片方は博麗の巫女で……あいつは何だ!?」

「おいあいつ誰か知ってるか!?」

「いや知らないけど……妖怪の山の白狼天狗じゃないか?」

 

周囲がざわめく。

空気は寒いのに、場はどんどん熱くなっていく。

 

「……あいつか」

「あいつだね」

 

そんな事になるだろうなとは思ってましたよ。

自分に向けられる大量の雪玉を容易に見切り、一人ずつ着実に雪玉を投げてリタイアさせていく二人。

 

雪の壁から覗いている人たちも、その動きに圧倒されていく。

 

「流石ですね、博麗の巫女」

「あんたこそ、なかなかやるじゃない」

 

二人のそんな話し声が聞こえた気がした。

気づけば前線に立っているのは二人、他の奴らは人間も妖怪も含めてついていけずに壁に隠れてじっとしている。

 

文や慧音さんの声が聞こえるが、何を言ってるか分からないくらいに激しい戦いが目の前で繰り広げられている。

 

もはやタイマンとなっている雪玉の投げ合いがずっと続き……

 

「し、終了ー!」

 

決着はつかずに、時間切れが来た。

 

「な、なぁ、あいつ何なんだ?霊夢にあそこまで張り合うなんて……」

「まあ、おかしいやつだね。あと白負けたなこりゃ。残ってる人数が少ない」

 

てことは白と赤の一勝ずつで引き分け……

 

「嫌な予感がする」

「ん?」

 

残った人数を数えていき、赤の勝ちを告げる文。

 

もう待機している出場者はいない。

引き分けでは優勝なんて決まらない。

 

ならばどうするか。

 

「さて、お待たせしました第三幕!赤と白の決着をつけるのはこの人たちです!」

 

文の声が響く。

うん、察したよ。

 

「それじゃあ……行ってくるね」

「毛糸……?」

 

肩を回しつつ、会場の中心へと移動していく。

 

「藤原妹紅さんと白珠毛糸さんの代表戦です!!」

 

お前ほんとあとで覚えてろよマジでお前ほんっと許さねえからなマジでせめて前もって何か言っておけよそういうとこだぞお前本当に後で焼き鳥にしてやるからなおま———

 

 

 

 

 

 

 

 

「……これ、さっきも見ましたよね」

「うん」

 

思わずにとりさんに同意を求めてしまう。

 

「というか、これもう雪合戦じゃなくないですか」

「うん」

「あっちの人炎出してるし、毛糸さん氷出してるし」

「うん」

「これ、もう弾幕勝負になってませんか」

「まあ……盛り上がってるしいいんじゃないかな」

 

文さんも半ば諦めたような顔をしてるし……

 

「これ……決着いつになるんですかね」

「さぁ……」

 

雪合戦って……なんだっけ。

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