「………」
「………」
「えっと…何しに?」
「暇だから遊びにきた」
「そ、そうなんですか……」
困惑するるり。
その気持ちわかるよ……気にしないけど。
「でもここに来るより他のみんなの方行った方が……」
「探すのめんどい」
「あ、そうですか……」
連絡せずに行くのもなんだかなぁと思い続けてはや数百年。
もう……いいや……
「まあこの部屋も変わんないよねぇ……場所も中も」
「まあ引っ越すのめんどくさいですし」
「飽きないの?」
「毛糸さんが言います?それ」
「私は色んなとこ足運んでる方だし」
今の生活に慣れたから、引っ越すにしろ別荘建てるにしろ、そっちの家でも今のと同じくらいの設備整えなきゃいけないし…めんどいし。
結局面倒臭いのである。
「休みの日って何してんの?てか今日休み?」
「休みですけど……色々ですよ。絵描いたり工作したり…」
「じゃあ外行こうぜ」
「何がじゃあ!?」
「引きこもりを連れ回したい」
「じゃあその辺の引きこもりを連れ回してくださいよ!」
その辺の引きこもりって何だよ。
「いいじゃん行こうよ〜天狗の集落見て回るだけでいいからさぁ〜」
「何で種族の違うとこに行かなきゃいけないんですか」
「じゃあ人里行く?」
「今の聞いてました?」
「暇なんだよおおおおん!!」
「知りません!」
今年の冬なんか長引いてるし…ずっと寒いしチルノは生き生きしてるし。
「暇なのはいつものことでしょうに…」
「じゃあ仕事手伝う…」
「あたし今日休みなんですけど」
「休日出勤!」
「嫌です」
「なんかしようよ!」
「今こうやって話してるじゃないですか」
「つめて〜」
冬場は人の心をも凍り付かせるか……
「大体あたし、今日は予定が……」
「え、なに男?」
「ちょっと黙っててくれます?」
「ごめん」
ガチトーンで言われた。
「友達と予定あるんですよ」
「え、なにおと——にとりん?」
「違います」
「えっっ」
じゃああれか、新しくできたって方の。
「何すんの」
「何って……お茶?」
「女子ぃ〜」
やだお茶会とか私初めて遭遇……
いや待てよ、お茶するだけならアリスさんと何回もやったか?
「一緒に今の妖怪の山社会に文句垂れようかと」
「話題が暗くない?」
「じゃあ明るい話題ってなんなんですか」
「それは………」
………なんだろう。
「毛糸さんもあたしと同じ側の妖怪なんですから、そんな明るい話なんて出てくるわけないですよね、知ってます」
「人を陰気妖怪みたいに言うなよ」
「違うんですか?」
「ちがっ……違わないのか…?」
ふざけてる時は陽気かもしれない。
「毛糸さんと会ってると変に周りから注目されるんですよね…」
「人気者じゃん」
「………」
「………何さ」
「別に」
なんだよその目は、別にって目じゃないだろそれ。
「全く…少しは自分がどういう妖怪なのか自覚してくださいよ…」
「どういうって、親しみやすくて人間に友好的な小さな毛玉ですよ?」
「強大な力を持ったどの勢力にも属さない困った毬藻妖怪ですよ?」
「まりもて……」
まりもは毛玉でいいじゃん……そこは毛玉でいいじゃん……
「本来毛糸さんみたいな人が山に来たら大天狗が出動する案件ですからね?」
「なんでさ」
「……紅魔館の吸血鬼が突然山に来たらどうなると思います?」
「阿鼻叫喚戦闘態勢」
「そういうことです」
「なるほど」
私だって突然知らないつよつよ妖怪が訪問してきたら全力でお帰り願うもん、当たり前だ。
私は昔っから入り浸ってるからもう当然みたいな空気になってるけど……もし幽香さんが山に来たら本当に大慌てになるだろうな。
「大体そうやって刀提げてる時点で随分と物騒ですからね?」
「いいじゃん形見なんだから」
「……形見なら、もっと安全な場所に…」
「盗られたらいやじゃん」
「誰も取りませんよそんなおっかない妖刀…」
妖刀コレクターがその辺にいるかもしれないじゃないか。
「人の大事なものにおっかないとか言うなら私帰るもんね!」
「お気をつけて〜」
「つめてぇ〜」
まあいいや、友達と遊ぶならその時間を邪魔するのも悪いし、今度は柊木さんにでも……
そう思いながら扉を開けると。
目の前には知らない河童が。
「あが……」
「…あ、どうも」
「出たあああああ毬藻おおおおお!!」
「誰がまりもじゃオォン!?」
「ひゅっ」
あ、気絶した。
「………あれ」
「あ、起きた。うづきさんすぐ気絶するんだから…」
……なんだろう。
お前が言うなよって言いたい。
「私……あ」
「ん?」
「ぎゃあああああまだいるうううううぅ!!?」
「うっせ」
失礼だとか思わないんですか、人の顔見るなり叫び散らかして。
「落ち着いて、悪い毛玉じゃないですよ〜」
「あばっ、けだっ、まりもっ……まりもっ!」
「すぅぅ………はは」
またキレたらまた気絶されそうだから笑っとこ。
「ほら、笑ってますよ、怖くないですよ〜」
「こ、怖くない……?」
「………」
……なんだろう。
二人まとめて殴りたい。
「すぅ…はぁ……」
なんの深呼吸だよそれは。
「ふぅ………」
……こっち見んな。
「………ねえ、あれってあの毛玉?」
「そうですね」
「本当に?」
「そうですね」
「毬藻じゃないの?」
「………へへっ」
潰すぞ。
「私の友達の白珠毛糸さんです」
「……友達は選んだ方がいいよ?」
なんなのこいつ、さっきから失礼極まりないんだけど。
処していい?処していいかな?
「……とまあ、毛糸さんはこんな風に恐れられる妖怪なんですね」
「私それなりにこの山に通ってるけどここまで怯えられたの初めてだよ」
「河童は臆病ですからね」
見ただけで叫ばれるようなことした覚えな……ない……あるけどさ。
「こっちは私と同じ河童の黄梅うづきさんです」
「名前覚えられる……殺される…」
本当に殺ってもいいんだぞぉ〜??
「えっと……毛糸さんは今日たまたまここに来てて…」
「ひっ……」
「その……うづきさんは結構すごい人で……」
「はぁ……」
「………」
何よ、なんでジト目で見てくるのよ。
「毛糸さんもっと気を遣ってくださいよ……」
「これでも妖力極限まで抑えてる方なんだけど?」
「もっと物腰を柔らかく…」
「私は柔らかい方だけど…」
「じゃあもう見た目相応の振る舞いしてください」
「無茶言うなや」
………できる?
『無理』
だよねぇ。
「……その、うづきだっけ」
「ひぇっ」
いちいち怯えないでほしい。
「私はその……結構るりと付き合いあるけどさ。こいつ何百年も新しい友達できなくってさ」
「………」
「だからさ、まあ仲良くしてやってよ」
「保護者かなんかですか?」
「それはにとりん」
「えっ」
実際のところるりには借りしかないし……
家とか家とか家とか家とか…
「………あの」
「……はい?」
「ちょっと外行こうって言っても誰もいないとこしか嫌だって言って…」
「そんなの可愛いもんだよ、昔なんて扉開けた瞬間銃弾飛んできたんだよ?」
「えぇ……」
「もちろん自己再生した」
「凄い…」
……あれ?
「今でこそ落ち着いた方だけど、最初の頃なんて一言目に叫んで二言目に叫ぶような奴だったからね」
「今とそんなに変わらなくない?」
「いやいや、昔はもっと酷かった」
なんか……私をダシにして打ち解けてる?
「毛玉さんって強いんだよね」
毛玉さんって呼ばれてる……
「まあ、多分」
「じゃあ何度もこの山に味方して戦ってるってのも?」
「2回くらいなら…」
「すご……」
なんか仲良くなってる…!?
「やろうと思えば妖怪の山のてっぺん取れるって噂で聞いたけど…」
「出来るかは知らんけど、わざわざ友達のいるところに面倒ごとは持ち込まないよ、興味ないし」
「温厚…!」
なんかめちゃくちゃ毛糸さんのこと褒めてるし、毛糸さんは毛糸さんでまんざらじゃなさそうだし……
「山も手を出さずに黙認してるのがよくわかる……そもそも下手に手を出したら手痛く仕返しくらいそうだもん……」
「しないけどね?……いや、限度によるけど」
「るり…凄い人と友達だったんだね…!」
「あ、はい、そうですね」
そ、疎外感……
疎外感を…感じる…!!
「……まあ二人とも仲良くなったみたいでよかったです」
「思ってたより親しみやすかった…!」
「思ってたより話しやすかった…」
「……そうですか」
蚊帳の外って感じだ……辛い。
別に仲良くなってくれる分には構わないし嬉しいけど、除け者は……仲間外れは辛い……
「るり」
「へっ?あ、はい。毛糸さんどうしたんですか?」
「どのくらいか忘れたけど一緒に住んでたことあったよね」
あ、あぁ。
そんなこともあった。
「えっと…私が仕事から逃げ出した時のやつですね…」
「そうなんだよ!こいつ仕事嫌だからって一人で山抜け出して私のところに逃げ込んできたんだよ?やばくね?」
「やばぁ…」
「まあ、あれはあれで楽しかったけどなあ」
……まあ。
あれは確かに楽しかった。
他人のほぼいない場所で仕事もせずに好きなことをのんびりと……
かなり贅沢していたとは思う。
「普段臆病なくせに、変な時に行動力あるんだよなぁ」
「あ、わかる。私の時も友達いなくなったって言ったらすぐに探そうって言ってくれて……」
「色んな意味でやる時はやるんだよなぁ」
「そういうとこが私は好き」
「わかる」
……恥ずかしいんだけど?
目の前でそう言う話しないでよ…本人無視して盛り上がらないでよ…
「るりって絵上手くない?」
「わかる、一緒に描いてたけど正直劣等感が……」
「あ、気にしなくていいよ。絵が上手くてもろくに仕事できないポンコツだから」
「それもそうだ」
………はぁ。
「さっきから好き勝手言わないでくれます!?」
「事実だし」
「それはっ……そうですけど……」
何も言い返せない自分が憎い……
「大丈夫だよ……私たちはそんなるりが好きだから」
「ポンコツでもいいじゃん、それ含めてお前だよ」
「なんで慰められてんですか私」
「毛糸さん紅茶淹れるのやっぱり上手ですね」
「まあ…多少はね」
「……ずっと気になってたんだけど、毛玉さんのこの刀……」
私が腰に差してる刀を指差すうづき。
「妖刀です」
「やっぱり…なんか禍々しいと思った」
人の形見に禍々しいとかおっかないとか好き勝手言いやがるでほんまぁ!
「誰が打ったとかわかる?」
「わかんないけど……元々持ってたの私じゃないし、その人もただの刀身が黒い刀って……」
「ただの…?」
気になるようなので、少しだけ刃を抜いて見せてみる。
「………そもそもただの刀じゃない」
「そりゃ妖刀ですし」
「そうじゃなくって」
違うんですか。
「そもそも刀身が黒いって時点で普通とは明らかに違うし」
「あ、ですよね。私も思ってましたそれ」
「安価な刀じゃ妖刀になる前に壊れる方が先だし……打った時から既に妖刀ってわけじゃ?」
「ない」
ふぅんと、考え込んだうづき。
「ねぇ、うづきって刀に詳しいの?」
「さぁ………」
「あ、昔生産に携わってて」
とのこと。
まあ生産に関わるってだけでそこまでの見極めがつくあたりさすが河童ってとこだろうか。
「……まあ、今更どうこうって確かめる手段もないか。はい」
「どうも」
慎重な手つきで返される。
「でも、さも突然のように妖刀を振るなんて……やっぱり凄い人だ」
この人の私ヨイショが止まらない。
「……まあ、そろそろ帰るよ私」
「あ、そうなんですか?」
「もとより長居する気はなかったし……帰ってやることあるし」
「じゃあさようなら、話せてよかった」
「私も、さようならうづき」
「本当に仲良くなりましたね二人とも……」
まあそう会うこともないと思うけどね。
「………ふぅん」
「どうかしました?」
「いやね、この刀って結局何なのかなって思って」
「刀って……」
りんさんの刀。
私が勝手に名付けた名前は『凛』
「大ちゃんはこの刀からなんか感じる?」
「いえ何も……」
「そっか」
私も肌身離さず持ち歩いてるせいで禍々しいとか言われても全然ピンとこなくなっちゃったんだけど。
思えばこの凛、りんさんの刀ってこと以外私は知らない。
「………」
仮に。
人里で打ったものだとするなら。
探せば見つかるのではないか、この刀を打った人が。
まあ死んでるだろうけど……
もし店が残ってたり後継がいたとするなら、そことりんさんは間違いなく関わっていたはずで。
確かめようのないことではあるけど、気になるっちゃあ気になるんだよなぁ……
まあ考えても仕方がないんだけど。
「それにしても今年は寒いなぁ」
「そうですね……そろそろ雪とか落ち着いてきてもいいと思うんですけど」
「はやくリリーをお目にかかりたいよ私は」
春ですよーって言って欲しい。
「……なんか、春の気配が全然近づいてる気がしないんですよね」
「まさかそんな。いつもより冬長めってだけでしょ」
「だといいんですけど……」
まさかそんな。
幻想郷を常冬の楽園にしようとするやつがいるわけ……いや、しそうな人いるけども。
もしそんなことする奴がいたらぶっ飛ばしてやる、冬は嫌いじゃないが暮らすには厳し過ぎる。