毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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勝負事は大体弱い毛玉

「ふんぐ!ほぁっフゥッ!」

「あんた奇声発しすぎなのよ!黙ってなさい!」

「これも作戦の内っヒュポン!」

「その口縫い合わすわよ!!」

「………」

 

パッチェさんの呆れたような目が私とレミリアを貫く。

 

「ほれ!ほれほれ!この私を捉えられるか、なああああ!!?」

「このままその指へし折ってやるわ!!」

「うがああああああっ!!!」

 

あ、折れた。

 

「負けたあああ!!クソァ!」

「5勝4敗で私がリードよ、そろそろ格の違いってのが分かったかしら」

「てめクソ生意気がよぉ…」

「フッ、せいぜい吠えてなさい」

「………さっきから何してるの」

 

私が膝をついてレミリアが上から見下してるところに、パッチェさんが声を上げた。

 

「何って…」

「指相撲」

「指……いや、あなたたちがしょうもないのは今に始まったことじゃないからいいけれど」

「しょうもないって言うなよ」

「そうよ、これは正真正銘の真剣勝負なのよ」

「くだらないことに心血注いでるんじゃないわよ」

 

呆れたようにため息吐かれた。

 

「なんでわざわざ私の視界に入ってやるのよ」

「公平性のためだけど?」

「そうそう、誰かが見てないとどこのアンポンタンが能力使ってズルするかわかんないからねェ〜?」

「はぁ〜?あんただって腕相撲で私のところ凍らせて滑らせたじゃないのよ」

「先にジャンケンで運命見るとかいうせこい真似したのはどこのどいつだおぉん?」

「使えるもの使って何が悪いのかしら」

「そのまま返してやるよ」

 

次は何で勝負してやろうか。

滝行耐久勝負でも仕掛けてやろうか、負ける気がしないな。

 

「ねえ、普通に迷惑なんだけど」

「いいじゃない、放っておいたらあなた図書館でカビ生えてそうだし」

「そーだそーだ、本の虫、引きこもり、読書家、もやし、知識人」

「あなたたちのノリに付き合わされるのは勘弁してほしいわね」

 

これでも平和にやってる方なんだけどな。

殺し合いじゃなくて楽しく競い合ってる方なんだけどな、お互いに煽り散らかしてるけど。

 

「あなたたちみたいなのがそうも大声上げてみっともなくはしゃいでると、妖力その他諸々で空気が強張るのよ」

「そうなの?」

「ほら、あっち見てみなさい」

 

パッチェさんが指差した方を見てみると、本棚の影から顔を出してこちらを伺う人影が……あ、隠れた。

 

「こあも怯えてこっち来ないのよ」

「主人を避けるとはいい度胸してるわね」

「そんなこと言ってるから避けられるんじゃね」

「はあ?」

「お?」

 

というか、そんな状況でも平然としてるパッチェさんもなかなかだと思います。

 

「いつもそうやって睨み合って、よくもまあ飽きないものね」

「だってそれは…なあ?」

「ねえ?」

「その曖昧な感じはなんなのよ」

「私たちにしか分からないことがあるんだよ、な?」

「何言ってんのあんたきもちわる」

「お?潰すぞ?」

 

まあ放っておいたら発するセリフの3回に1回は相手を煽ってる気がしないでもない。

 

「わざわざこんなくだらないことするために紅魔館に来てるの?あなたは」

「誰がこんなスカポンタンに会うために来るかいな、フランの顔見にだよ」

「なんでこんな奴を大事な妹に会わせなきゃいけないのかしらねぇ?」

「過保護過干渉は嫌われるぞ」

「嫌われること覚悟で守ってあげるのが姉の努めよ」

「実際に嫌われたら落ち込むくせに」

 

まあ向こうが会いたがってくれてるのと、定期的に会わないと、次会った時に全身の骨を折る勢いでタックルorハグをかまされかねないという懸念もある。

 

「あ、そだパッチェさんこれ」

「?これって……魔理沙に盗られた本じゃない」

「ちゃんと盗り返してきたよ」

「……まだまだ盗られてるのあるんだけど」

「気が向いたらね」

 

適当に積まれてもうやること終わってそうな本だけ回収してきた。一応何が盗まれたかは、何故かここにくるたびにパッチェさんに言われるので……存外覚えてた。

もう読み終わったんなら無くなっても気づかんやろ理論である。もし気づかれても私は何も間違ったことをしていない。

 

「まあいいわ、ありがとう……ひっ」

 

本を手渡したらなんか引かれた。

 

「あ、そういや指折れたままだった」

「ちゃんと治しなさいよ……」

「ごめんごめん……レミリア、フランどこにいるかな」

「さあ?部屋にいなかったら知らないわ」

「チッ使えねえ奴」

「あんたのその口を使い物にならなくしてやろうか?」

「おお、怖い怖い」

「待ってレミィ、大図書館で暴れるのだけはやめて」

「やーい諌められてやんのー!」

 

うわ槍飛んできた、逃げよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ん迷子ォ!」

 

あっれぇ…また館の構造変わりました?並んでる部屋の数で道覚えてるからちょっと変えられると何もわからなくなるんですけど……

 

「…まあ適当に歩くかぁ」

 

一人だと余計なこと考えて堂々巡りを始めるからなぁ……ええい離れろ面倒な思考。

 

「…紅魔館、かぁ」 

 

一つの建物……まあバカでかいけど、家、と言って差し支えないだろう。

妖精メイドはただの従業員?として……レミリアにとってただの従者に収まらないのが何人かいるのは、他人の私にでもわかる。

 

それこそ、家族と言っても過言でもないようなものが。

 

「………家族」

 

居眠り門番に時止めメイド、図書館に万年引き篭もる魔法使い。

直接血が繋がってるレミリアやフラン以外にも、これだけの人が家族のように接しているんだ、実際、レミリアのカリスマって奴もなかなかなもんなんだろう。

 

私はそういうのとは無縁だからなあ、色々と。

血が繋がってなくたって、そういう関係性にならないわけじゃない……

 

「そもそも血縁ってのがいらんのかねぇ」

 

実際、妖怪の腹から生まれる妖怪ってどのくらいいるのだろうか。いたとして、その妖怪にとって血の繋がりとはどれほどの重みを意味しているのだろうか……

 

もちろん、そんなのは種族や人によりけりなんだろうが…

 

種族って話だと、私毛玉だからなあ。てかもはや毛玉であるかも怪しいからなあ。

 

同族って言えるのはせいぜいもう一人の自分くらい…

 

『呼んだ?』

呼んでない。

 

 

 

まあ、もう一人の自分と言いつつ、結局そいつも自己なんだという自覚はあるあたり、結局私は私一人しかいないのだろう。

 

そう、別に家族じゃなくたっていい。

仕事仲間とか、主人と従者とか、師弟関係とか、親友とか……恋人とか。

親しい誰かがいるのなら、それでもいい。

 

 

繋がり…巡り合わせ…

 

 

そういうのを望まないし、全て断てるような強い奴には私はなれなかったわけだが。

 

望んだところで手に入らないってのは虚しいもんだなあ……

 

「……いかんいかん、また変なこと考えだしてるよもう」

 

もう変なこと考えないように独り言しまくってやろうかな……

 

「てかここどこだよ!!」

 

迷路というか迷宮だよここ……あれでしょ?入り直すたびにマップ変わるタイプのダンジョンでしょ?さて最上階か最下層かどちらを目指そうか。どこも目指さねえよ迷子だよ!!

 

「気づいたら構造変わってんのほんっと厄介だなぁ…」

 

なんで屋内で十字路に遭遇しなきゃいかんのだ……

前後左右、どちらに進もうか……どっちいったって変わらんだろうけ——

 

 

 

 

「わっ!!」

「ほぎゃあああああああ!!!?」

「ええええええええ!!?」

「クセモノォォォ!!」

「ちょ——」

 

 

後ろから発せられた声に反射で裏拳を壁にぶち込んでしまった。

 

「って、フラン?」

「あ、あはは…しろまりさんって怖がりなんだね…」

 

なんだ…ただのイタズラか…驚かせやがって……

 

「心臓飛び出るかと思った…」

「こっちのセリフだよ…」

 

心臓の代わりに手が出たけど、当たらなくてよかった……壁は吹っ飛んだけど。

 

「いやだって気配全くしないからさあ……」

「あ、やっぱり?咲夜に気配の消し方教えてもらったんだ」

 

教えてもらってすぐマスターしたの?やだこの子アサシンの才能あるのかも……私が鈍感なだけ?いやいやそんなわけ。

 

「全く…今度から驚かす時は今からビックリさせますよって合図送ってからにしてよね」

「それって驚かせる意味あるのかな」

 

あるかないかで言えばないですね。

 

「というか、追いかけておいて何だけど、なんでこんなところにいるの?」

「迷子」

「あ、そっか、しろまりさん方向音痴なんだっけ」

 

はいそうです。

でもこの館が面倒臭い構造してるのが八割…いや、六割くらい悪いと思います。

 

「お姉様には?もう会った?」

「会った」

「今日は何したの?」

「指相撲」

「相変わらずスケールちっさいね」

 

だって大きくしたら色んな人から文句言われるから……

 

「で、どっちが勝ったの?」

「フッ……もちろん私の惨敗」

「しろまりさん圧勝か惨敗かしかしてなくない?」

「そんなもんだよ勝負事なんて」

 

適当言ってるけど。

 

「たまには私とも何か勝負しようよ」

「いいけど…例えば?」

「弾幕ごっこ」

「却下」

「だよねぇ…」

 

まあ弾幕勝負なんてやる機会ないと思ってたからスペルカードもあんまり考えずに作ってたけど……この前やったからなあ。

人に見せて恥ずかしくないようなもの作りたいなと思って、今現在進行形で見直してる最中だし。

 

「じゃあ目ん玉ほじくり合い」

「グロい」

「人形破壊競争」

「闇が深い」

「殴り合い!」

「バイオレンス」

「じゃあ何だったらしてくれるのさ!」

「お前と遊んだら私が無事じゃ済まないんだよ!」

「いいじゃん治るんだから」

「いいけどさ、治るし」

 

もうちょっと平和な遊びしようよ……って思ってオセロ挑んだら初戦でボッコボコにされて勝負にならなかったのはいい思い出、でもないか。

 

レミリアとの勝負にボードゲームを使う手もあるけど、多分私が手も足も出ずに負けるのでやめておく。

煽られるのムカつくし。

 

「じゃあ昔話でもしてよ」

「昔話って……お前とそう歳変わんないけどね?私」

「しろまりさんの話聞くの私結構好きだよ?」

「あらそう…」

 

まあ我ながらそれなりに壮絶な人生送ってる気がしないでもないけど……りんさんのこととかいい話のネタになるかなぁ。

 

「じゃあ私が図書館に戻るまでの間だけな、そこまでちゃんと案内してくれたらいいよ」

「分かった、わざと道間違えるね!」

「やめろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………何よその顔」

 

私の歪んだ顔を見てレミリアも同じように機嫌の悪そうな表情を浮かべる。

 

「帰ろうと思ってたのに、お嬢様がお呼びです、とか言われたらこんな顔にもなるって」

「私の誘いが迷惑だって言いたいの?」

「たぶんそう、部分的にそう」

「貴方は招かれてるってことの自覚が少々足りないようね」

「今更だぁ」

「それもそうね」

 

まあ確かに自覚足りないのはそうだな……今度からはもっと慎もう、気持ち程度に。

 

月明かりに照らされたベランダに机一つと椅子二つ。

口には出されていないが座れ、ということだろう、妙に改まっているので嫌な予感がしつつもその席についた。

 

「自分で入れて飲みなさい」

 

瓶とグラス一つを目線で指すレミリア。

 

「うぇぇ…私酒は飲めないって」

「安心なさい、お子ちゃま向けのただのぶどうジュースよ」

「マジ?私ぶどうジュース大好き!」

「………」

「………」

 

やめいやめいそんな目で見るな死にたくなる。

 

「咲夜から聞いたわ、春雪異変、随分と活躍したそうじゃない」

「うわこれめっちゃ美味しいんだけど何これ……」

 

空気が凍りついた。

 

「………その割には、宴会には来てなかったみたいだけど」

「え、これ持って帰っていいかな、一人で飲むのはちょっと…」

「………」

「………」

「……そんなに本気でやり合いたいのかしら?」

「すみませんでした」

 

素直に謝った。

 

「はぁ……あんた相手に変な前置きしようとした私がバカだったわ」

「あ、バカって認めた。…待て、落ち着け、その槍をしまえ、話をしよう」

「私は!ずっと!!話を!!!してるんだけど!!!?」

「…………さーせん」

 

手を膝に置いて大人しくすることにした。

いやだってこういう雰囲気苦手で……

 

「……フランがね、あなたの様子を私に聞いてくるのよ」

「フランが?」

「一回魂でなんやかんやしたからなんでしょうね、なんとなくどういう心情なのか分かるって言ってたわ」

「oh……」

 

そんな弊害があったとは……

 

「私の能力についてちゃんと話したことはあったかしら?」

「いや、なんとなくだけど……運命を操るとかだっけ」

「まあそんなところよ。詳しくいうなら——」

 

いくつもの枝分かれした運命を観測し、無理のないようにそれを操作する能力……

 

ちょっと話難しくてよくわからんかったけど、私なりに噛み砕いた結果がこうだ。

 

「別に私はあんたが何で悩んでようが、何を抱えてようが知ったこっちゃないのよ。でもフランはそうじゃない」

「………」

「私だって、あなたにはフランの件で貸しがある」

「別に私は…」

「あんたがよくても、私とあの子はダメなの」

 

随分とまあ、まっすぐな目で私を見てくる。

 

「だから、私の能力で、あなたを縛っているそのしがらみを——」

「それはダメだよ」

「………」

 

 

なんて甘い言葉。

きっと、能力一つでどうにかなるものでもないのだろう。レミリアだって無茶な運命の改変はできないはずだ。

 

 

それに、もしそれが可能であったとしても、私が許さない。

 

 

「私の問題だからさ」

「………そう」

 

私と、あいつの問題だから。

 

「これ持って帰るけどいいよね?」

「好きにしなさい」

「……じゃ、もう行くよ」

 

瓶を持って、その場から逃げるように部屋を去った。

 

その間、レミリアはたった一言も話さずに、じっと月を見上げていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かってたわよ、そう言うってことは」

 

 

誰もいない空間で一人、そう呟く。

 

 

既望を静かに眺め、自分の中で渦巻く思いを、ワインと一緒に飲み込んだ。

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