毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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とりあえず進む毛玉

「で、どこに向かってんだ?」

「竹林」

 

道中魔理沙とアリスさんのコンビに行手を塞ぐ邪魔者たち……なんか見知った顔もいた気がするけど、それらをぶっ飛ばしてもらう。

 

「竹林って……あの竹林か?あそこなんもないだろ」

「いやあるんだなぁこれが……」

 

口外しないように言われてたからすっかり忘れてたけども……

 

「ほとんどの人知らないけど、あの竹林の中に屋敷?があるんだよ」

「……そうなのか?」

「いや、そういう話は聞いたことないけれど……でも確かに、何かを隠すとしたら、あの竹林ほど好条件な場所もないでしょうね」

「アリスさん行ったことあんの?」

「ものの見事に迷ったわ」

 

私はついこの前竹を取りに向かったばっかだったんだけどなぁ……いや、本当に竹の生えてる場所としか思ってなかったわ。

 

「なんであなたがその屋敷の存在を知ってるのかは聞かないでおくとして、確証は?」

「ないよそんなもん、ただ他に心当たりはないからなぁ」

 

出来そうで、やりそうなところってなると、他に候補はない。

輝夜姫のいるっていう、あそこ以外には。

 

「まあ闇雲に探すよりはそこ当たってみた方が良いだろ」

「そうね」

「外れてても責めんなよな」

 

うぅん……行ったところで迷いそうなのはどうしようか。

妹紅さんがいたら……と思ったけど、あの人も何かしら動いてるような気がしないでもないんだよなあ。

 

まあ…竹林破壊してゴリ押すのは最終手段で。

 

 

 

「………なあ、なんかおかしくないか」

「どったの?」

「なんで人里が見当たらないんだ?」

「………おかしいのはお前の目じゃない?」

「同感」

「は?え?どういう意味?」

 

急に意味不明なことを言い出す魔理沙。

 

「人里見当たらないって…めちゃくちゃあそこあるじゃん」

「あそこって…あそこってどこだよ」

「あそこはあそこだろうが」

「だからあそこにあるはずの人里がねえんだって!」

「いやあるだろ!あそこ!」

「ねえって!」

「あるって!」

「ねえ!!」

「ある!!」

「うるさい」

 

いや本当に何言ってんの?

あるじゃん、めちゃくちゃでかい唯一無二の人間の里あるじゃん。

 

「魔理沙、本当に見えてないのね?」

「逆にお前らは見えてるのか?」

「めちゃくちゃ見えてる」

「そりゃもうバッチリと」

「はぁ?わけわっかんねぇ……」

「とはいえ確かに不自然ね……」

 

人間にだけ人里が見えなくなる術?……なんの意味が?

 

「……誰か来る」

「あ?」

 

気配のする方をじっと見ていると、見知った姿があらわれた。

 

「なんだ、お前たちか」

「げっ慧音」

 

……もしかしてこれって慧音さんの仕業?

 

「魔理沙もいるのか……少し説明させて欲しい」

「説明、ってことはこれお前の仕業か!」

「魔理沙落ち着きなさい、弾幕勝負仕掛けても無意味よ」

「っ…だけどなぁ……」

 

 

 

魔理沙が落ち着いたのを確認した後、慧音さんが説明を始めた。

 

なんか初耳な情報が飛んできたのでずっと驚いてたけど……要約すると、歴史上で人里がなかったことにして見えなくした。

長く生きてる私とアリスさんには効果ないけど、魔理沙だけが見えなくて困惑していた……という話らしい。

 

なんかすんごい能力持ってるけど……忘れてたけどこの人、半分ハクタクだもんなぁ……うん…

 

 

「人里を守るためだ、混乱させて悪かったな」

「別にいいんだけどさ………」

 

やっぱりこの二人面識あるんだな。魔理沙は少し苦手そうにしているけれど………

 

「……あ、そうだ慧音さん」

「なんだ?」

「私竹林が怪しいと思ってるんだけど、どうかな」

「………」

 

黙って考え込んでしまった。

まあ慧音さんがあの屋敷のことどれくらい知ってるのか知らないけど……妹紅さんと仲良いのならある程度知ってそうだけどな。

 

「まあ、恐らく合っているだろうな。霊夢たちもそっちの方に向かったみたいだ」

「霊夢もここを通ったのか?」

「あぁ、隣に妖怪の賢者もいたが」

「紫さんが?」

 

霊夢と紫さんがセットで……

二人揃って解決しないといけないような異変ということだろうか。紫さんは自分から異変起こすような人じゃないだろうし……

 

「なら先に行ったってことか、負けてられねえ。アリス毛糸急ぐぞ!」

「えー私年寄りだから早く飛べないよぉ」

「同じくー」

「お前らもっとやる気出せよ!!」

 

そうは言われても……

あ、やめろ掴むな。

 

「魔理沙」

「あ?なんだよ」

「たまには父親に顔を見せてやれ」

「……うっせえ!余計なお世話だっての!!」

 

慧音さんに言われ、そう吐き捨てた魔理沙は私とアリスさんを急かしつつ箒で速度を上げて先に飛んでいく。

 

「随分と長い反抗期ね」

「…会える時に会っといた方がいいと思うんだけどなあ」

「魔理沙のこと、よろしく頼む」

「ん…」

 

慧音さんも魔理沙のこと気にかけてるのか。まああいつも人間だもんなぁ……

 

「心配しなくてもあいつは立派だよ。少なくとも、私よりは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前ら遅えぞ!霊夢に先を越されたらどうすんだ!」

「若いってのは元気でいいねえ」

「全くね」

「年寄りぶってんじゃねえよ」

 

箒でぐんぐん飛ばして行ったお前に追いつけるわけねえだろうが。

 

「で、どうする?まともに行って辿り着けるとは思えないけど」

「なんだ、何か方法でも用意してんのかと思ってたぜ」

「そんなもんねーよ。アリスさんは?」

「何も」

「そっかぁ……」

 

妹紅さんいたら都合が良かったんだけど……生憎いなさそうだ。

 

「飛んだらいいんじゃないか?」

「…確かに。魔理沙天才かよ」

「そう褒めるな、周知の事実だ」

「あんまり良くない噂聞くけどねぇ……上空を飛んでどうにかなるなら、迷いの竹林って呼ばれてないと思わない?」

「…確かに。魔理沙アホかよ」

「手のひら返してんじゃねーよ」

 

飛んでどうにかなるようなザルな隠蔽されてるとも思わないし……妹紅さんも飛んでなかったしな。

 

「…まあ、そういうことなら大人しくこの竹林の中通って行くか」

「あまり気は進まないけど、そうするしかなさそうね」

「焼き払うのは?」

「いいなそれ!」

「最終手段にしておいて、お願いだから」

もちろん冗談だが。

 

「入ればほぼ確実に迷う、運が良ければ出られる。どこにあるかもわからない目的地につける可能性は……考えない方が良さそうね」

「どっちにしろ進まなきゃ永遠につけないだろ、当たって砕けろだ」

 

そう言って竹林の中をぐんぐん進んでいく魔理沙。

 

「若いっていいねえ……あれこれ考えずに突っ走るのは若さの特権だよなぁ」

「じゃ、その後始末をするのは?」

「私たちなんじゃない?」

「…ま、それも悪くないか」

 

そう言ったアリスさんと共に魔理沙の後を追いかけ、竹林の中へと入った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこだここ!!」

「見事に迷ったわね」

「はぐれてないだけマシってとこかな」

 

この道を何の迷いもなく進んでいた妹紅さんって一体……

 

「…ってか魔理沙お前よ、道わかんないからって無闇矢鱈に速度上げて直進するのはどうかと思う」

「面倒なのは嫌いなんだ」

 

妖精どももどこからか湧いてくるし……ほんとどこにでもいるな。

こいつらが元気になったら異変起きてるって認識でいいんじゃないかな、もう。

 

「……なんだこれ、糸か?」

「んー?」

 

魔理沙の視線の先をよーくよーく目を凝らして見ると、確かに細い糸のようなものがあった。

竹林にあるにしては不自然だなぁ。

 

「罠じゃない?随分と古典的だけど」

「マジかよ、気づかずに引っかかるところだったぜ…」

「えい」

「は?」

 

思いっきり手でグインってした。

 

「あはァン!!」

「ちょ、何やってんだお前!!?」

 

横から腹に矢がinしてきた。

思ってたより殺意高かったんだけど……

 

「……毒無いな!ヨシ!」

「イカれてんのかお前…」

 

毒ありそうだったら部位ごと引きちぎってる。

間に合うかは知らん。

 

「まあそういうわけで、私が先行して肉盾になるから二人は後ろから———」

 

 

 

気配

 

知らないやつじゃ無い、忘れたくても忘れられないもの。

 

 

 

「……魔理沙」

「霊夢…」

 

向き合う二人。

 

一瞬固まった私は、落ち着いて矢をへし折って引き抜き、ゆっくりと視線を上げた。

 

 

「久しぶりっすね、紫さん。あ、そうでもない?」

「………」

 

無視、と。

 

「何でお前そいつと一緒にいるんだ?」

「それはこっちの……いや、別にいいわ」

 

一瞬私に視線を向けて、すぐに向き直った霊夢。

これはもう……色々と……

 

「先行くわよ、こっちは急いでるの、さっさと異変解決しないと」

 

そう言って私たちの上を通り過ぎる霊夢。

 

「あ、おい待て——」

「聞こえなかったかしら?」

 

突き刺すような声色。

威圧するような気配。

 

「急いでるの」

「っ………」

 

そう言われ黙ってしまった魔理沙は、そのまま竹林の中へと通っていく霊夢と紫さんの姿をじっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「あいつ……もう記憶が……」

 

気配もしなくなった後、そう溢した魔理沙。

 

「…まだなんじゃないかな」

「え?」

「戻ってるなら、私のこと殴りにくるでしょ」

 

そうであってほしい。

 

「……だとしても、あんな様子の霊夢見たこと…」

 

口元を片手で覆って考え込む魔理沙。

それを見ていると、アリスさんが後ろから私の肩に手を置いてきた。

 

「あなたは……平気なの?」

 

心配そうな顔だ。

 

「平気じゃないけど、取り繕うのは慣れたから」

「……平気そうな顔でそんなこと言わないでくれる?」

「…ごめん」

 

どちらにせよ、ここで頭抱えてたって仕方がないってことだ。

今は進むしかない。

 

「霊夢のこと心配?」

「は?そりゃ……お前だってそうだろ」

「ん、まあね。でもそれなら、後を追うしかないと思うけど?」

「……そうだよな」

 

よし、と顔を叩いて気合いを入れた魔理沙。

 

 

 

「追いかけるたって、竹林の中で追いつけないでしょ、迷ってるのに」

 

そこでようやくアリスさんが口を開いた。

 

「あっちは霊夢と紫さんだからあっという間につきそうだし、結局目的地で会えればいいってことよ」

「じゃあその目的地にどうやっていくんだよ」

「それはぁ……」

 

地面に転がってるへし折った矢に視線を向ける。

 

「……まあ、この罠を辿るしかないんじゃない?」

 

最悪全部焼き払っちゃえばいいし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なにこれ」

 

仕掛けた罠がどんどん作動していってる。

尋常じゃない速度だ、まるで罠なんて関係ないって言わんばかりに……

 

「おっそろしいなぁ……」

 

こんなのやるのは相当頭のおかしいイカれたやつに違いない。

罠全部作動させた上であっちこっち歩き回ってることになる、多分方向音痴でヤケになったアホ妖怪とかだろう?

 

「うーん……」

 

こんな馬鹿げたことするようなやつなら、竹林めちゃくちゃにしかねないし……そんなことされちゃたまったもんじゃない。

 

気は進まないけど、確認してみて竹林の外に誘導できそうなら誘導してみないと……

 

 

 

「……うげっ、近くまできてる!?」

 

竹へし折りながら突っ込んでるよめちゃくちゃやるなあ……

会うまでもなくこっちにやってきてるのか……流石にかち合うなら逃げ出してたけど、探ってる感じだと直進してるから急な方向転換とかしない限りはこっちにこないだろうけど……

 

 

「一旦逃げるか……ん?」

 

視界の端に映ったそれに目を向ける。

 

「……人形?」

 

あ、これ不味いやつ。

 

「———ぉぉぉおおおおっらあ!!!」

「ひぃっ!!?」

 

箒に乗った金髪の人間が猛烈や勢いでこっちに突っ込んできて、咄嗟にそれを交わして逃げ出す。

 

「チッ外れたか、おいこっちだ!居たぞ!」

 

迂闊だった。

あくまで罠突っ切ってるアホは囮か無理やり行動範囲を広げてるだけで、他のやつは私のこと探してたのか。

 

「おいこら待て兎!」

「べーっ!誰が待てって言われて待つかお間抜け!」

「んだとぉ!?」

 

ここまで接近されたのは不味いけど、一旦逃走しちゃえばこの竹林の中じゃ追ってはこれない。この竹林は私にとっちゃ庭みたいなもの。

 

「ちょ、ま、あぶね!」

「ほらほら、捕まえてみなよ、べーっ」

「こんのクソ兎がっ」

 

そうやって竹に当たらないように飛んでるうちは永遠に追いつけない。

 

このまま距離を離して安全なところまで逃げればなんとか……

 

「あ見っけ」

「…へ?」

 

 

声の方を見ると。

体の至る所を矢に貫かれ、竹が刺さり、血みどろで腹から内臓がはみ出ているもじゃもじゃ頭の化け物がいた。

 

 

「ひっ——あだっ!」

 

 

その場で飛び退いて逃げようとしたけど、右足が動かなくてこけてしまう。

 

「なっ、凍って…わっ!」

 

足元を確認していると両腕が木の根ようなものに絡め取られる。

 

 

「ちょ、体どんどん凍って…ひぇっ」

 

 

く、来る。

一歩ずつ、近づいてくる。

 

 

あ、ダメだこれ逃げられない。

 

 

「ま、待って、話!話をしよう!!」

 

必死にそう叫ぶが、その歩みは止まることなくこっちに近づいてくる。

 

 

「んー…?」

「も、目的は何!?案内なら得意だよっ!!」

 

すぐそばまで近づいて、ゆっくりと顔を私の方に近づけてくる。

 

 

「う、兎って食べても美味しくないんだよ…」

 

 

直視できなくて必死に視線を逸らす。

凍らされてる寒さか恐怖か、体が震え出す。

 

あ、これ本当に死ぬかも。

そう思った目を瞑った、その瞬間。

 

 

 

 

 

 

「……もしかして会ったことある?」

「……え」

 

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