毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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貫いて

「……あれ?」

 

さっきまで何して……確か…あの兎耳の奴が目に入った瞬間毛糸がおかしくなって……どっかに走って行ったと思ったら視界が変な感じに……

 

「気づきましたか?」

「……妖夢」

 

声がして、ぼやける視界で徐々に焦点を合わせていくと、刀を戻しているところの妖夢か映っていた。

 

「何やら術にかかってそうなので斬りました」

「おう………お!!?お前今なんつった!?」

「斬りました」

「私をか!?」

「はい」

「何やってんだおま……」

 

いや……でも傷はないな?

 

「何を勘違いしてるのか知りませんけど、直接切るわけないじゃないですか」

「お、おう……そうだよな、ありがとう」

 

まだ混乱している頭で必死に状況整理を進めつつ、妖夢の後ろにいる人物に視線を向ける。

 

「アリスと…幽々子?」

 

ってことは妖夢と幽々子も異変解決に来てるのか。

 

「あ、魔理沙も正気に戻ったのね」

「も、ってことはお前もか」

「えぇ。幻覚見せられて足止めくらってたみたいね、二人が来てくれなかったら解除するのに時間がかかってたわ」

 

くらった感じ、あの紅い目を見ると何かしらの幻術にかけられる感じか?次あったらボコボコにしてやる。

 

「4人で先に進むことにしたわ、異論はある?」

「は?ちょっと待て毛糸はどうすんだよ」

「放っておいてもなんとかするわよ、あの子なら」

「私もそう思います」

「ふふ、その通りかもね」

 

な、なんかやたらと毛糸への評価高いなこいつら……

まああいつがすごい奴だってのは冥界で十分に思い知ったんだけど……確かに自力でどうにかしてそうだな。

 

「霊夢を追わなきゃでしょ?探してる暇はないわ」

「……そうだな」

 

多分毛糸も、私探してる暇あるなら先行けって言いそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「——で、そこのウサギの目を見た瞬間意識飛んで……気づいたらここにいて、追いかけっこしてたらレミリアたちが来た」

 

レミリアと咲夜に知っている情報と経緯を話す。

意識飛んでるの状況は自分でも良くわかってないんだけど……二人は無事だろうか。

 

「……なるほどね」

「てか二人はなんでここに?」

「人里の妖怪にここが怪しいって教えてもらって、やたらと竹が薙ぎ倒されてる場所があったからそこを探って行ったらここに」

 

咲夜がそう答える。

うん、私のやった奴だねそれ。

 

図らずとも道標となったわけだ、さすが私……とはならないね。

 

「月を偽物と取っ替えるなんて愚行、この私が黙って見過ごすわけないじゃない。吸血鬼は夜の王よ」

「あーうんそっかそっか」

「喧嘩売ってるのかしら」

「お二人とも、今は火花を散らしてる場合ではないかと」

 

咲夜にそう諌められてハッとする。

 

「今はとにかく、このふざけた耳をしている者から情報を引き出すのが先決でしょう」

「ふざけた耳ってなによ!」

 

あ、そこ怒るんだ。

まあ確かに自分のアイデンティティの部分バカにされたら腹立つよね、気持ちはわかる。

 

「それもそうね」

「黒幕どこか知ってるよね君、教えてくんない?」

「言うわけないでしょ」

 

私だけピンポイントに睨まなくたっていいじゃん………

 

「自分の状況が分かって言ってるのかしら」

「あんたみたいな変な帽子かぶってるやつと交わす言葉はないわ」

「変っ!?」

「ははっ、言われてやんの」

 

いてっ、蹴るなや。

 

「咲夜、兎はどう調理するのが美味しいのかしら」

「少々手間はかかりますが、ジビエがよろしいかと」

 

えっお前ら食うつもり?マジで?

 

「そんな安っぽい脅しになんか屈しないわよ」

「何を勘違いしてるのかしら」

「何…?」

 

何…?

私も勘違いしてるってこと…?

 

「この竹林には兎が結構な数いるわよね。それを捕まえて、あなたの目の前で皮を剥いでいくのよ」

「なっ…」

「えぇ……」

 

いや…どういうベクトルの拷問なの?それは。

スプラッター苦手なら効きそうだけど……

 

「そ、そんなことで……」

「あら、私の目には動揺しているように見えるけれど?」

「っ……」

 

しかも効いてそうだし……

 

レミリアもレミリアで楽しそうだな?

いやでも…見てらんないや。

 

 

 

「それが嫌ならさっさと黒幕の居場所を吐きなさい、さもなくば今すぐに解体を始めるわよ」

「っ…卑怯な…!大体そんなすぐに兎を用意できるわけ」

「捕まえてきました」

「うそっはや!?」

 

時止めて捕まえてきたな咲夜……

 

「ほらほら、首筋にナイフが当たってますよ」

「くっ……!!」

 

 

 

 

 

 

「いつまでやってんだあいつら」

 

謎の応酬を繰り広げ続ける三人を尻目に、適当な壁に目星をつけて、腕に妖力を込めてぶっ飛ばした。

 

「……何してんのあんた」

「いや……可哀想だったから……」

「はあ?」

「そんな拷問まがいのことしてるより自分の足で歩いて行ったほうが早いって言ってんの」

「こいつから聞き出した方が確実でしょうが」

 

言い争ってる私とレミリアの間に咲夜が割って入ってくる。

 

「お嬢様、見たところこのウサギは拷問に耐える訓練を受けている可能性もあります。ここで時間を使うよりは、毛糸様の言うように自ら探し出した方が早く済むかと」

「咲夜まで?さっきまで乗り気だったじゃない」

「お嬢様が楽しそうでしたので、つい」

「何よそれ……はいはい、分かったわよ」

 

不服そうにそう言ったレミリア。

それを見た咲夜は何故か嬉しそうに笑い、兎から手を離した。

 

「運が良かったわね」

「っ………」

 

萎縮している。

うーん……やっぱりプレッシャーとかは本物なんだなあ。ちっこくても一勢力の頭であり吸血鬼なんだと改めて思う。

変な拷問にノリノリになるけど。

 

「……なんかごめんね?」

「え?」

 

振り返ってウサギの子にそう言った後、さっさと先に行ってしまった咲夜とレミリアを追いかけた。

 

 

 

 

 

 

「なんだったの……あの変なもじゃもじゃ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんたねぇ……」

「ん?」

「こっち見たまま壁ぶっ壊すんじゃないの」

「話しかけてきたのそっちじゃん」

 

無駄に入り組んでるので拳で破壊して一本道作った方が楽かなって。

 

「アテないんだしこうやって適当に進むしかないんよ」

「私が時を止めて周囲を見てきましょうか?」

「お前それもっと早く言ってくれない?」

 

薄々思ってたけど言い出してくれないからてっきりできないかやらないのかと…あとで修繕費請求されたら私はどうすればいいんだ。

 

「構いませんか?お嬢様」

「えぇ、把握し終わったら一旦戻ってきて」

「かしこまりました、それでは」

 

あ、消えた。

いいなあ時間停止……私も欲しいなあ……

 

………チルノと幽香さんのじゃなくて、咲夜の霊力取り込んでたら私も時を止められた可能性が……?

 

まあもしもの話にすぎないけれど……

 

「ん?なんでこっち見てんの?」

「………別に、なんでもないわよ」

「…?」

 

なんだろう、身だしなみにおかしいところでも……あ、そういや服がめちゃくちゃボロッボロだった。

まあ……着れてるうちはいいか。

 

「誰かと交戦中の魔理沙たちが見つかりました」

「おっ早いね。……いや当然か」

「このままその場所に一気に移動しますがよろしいでしょうか」

「うん、よろしく」

「では……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「硬すぎんだろあの結界——いぃ!!?毛糸ぉ!?」

「あ、久しぶり」

 

目の前に魔理沙がいた。

周りを見わたすとちゃんとアリスさんもいて、妖夢と幽々子さんも……ん?なんで?

 

「こんばんは毛糸さん」

「え、あ、うん」

「ってかレミリアと咲夜もいるじゃねえか、どういう状況だこれ」

 

弾幕を避けつつ状況を整理していく。

魔理沙たちと妖夢たちが合流してて、弾幕撃ってるのは……

 

「……っあー、あの人かぁ〜………」

 

なんだっけ…えーりん……とかそんな名前だったような…

 

「チッ、ここで手こずってる暇はねえのに……」

「…霊夢はもう先に?」

「そうみたいよ」

 

アリスさんがそう答えてくれる。

 

人数多くて逆に動きにくいって感じかなあ……今3人増えちゃったし。

それにさっき魔理沙がぼやいてた通り、弾幕当たってもびくともしないいかにも硬そうな結界があの人の周囲に張られている。

 

それ、ずるくない?

 

「まだ時間かかりそうなの?」

「うっせえじゃあお前も手伝えチビ吸血鬼!」

「誰がチビよ捻り潰すわよコソ泥」

 

今のは煽るように言ったレミリアが悪い。

妖夢たちも一緒になって弾幕撃ってるけど……時間かかりそうだなあ。

逆にここ突破した霊夢と紫さんはなんなんだ…?

 

「……そうねぇ」

「ん?」

「時間かかるなら先行ってもらいましょうか」

「お嬢様それは……」

 

先に行ってもらうって……

 

「残んのお前ら?でもそう簡単に通してくれなさそうだけど」

「何言ってるの、残るのはあなたと私よ」

 

……え? 

 

「咲夜なら簡単にアレをスルーできるわ」

「しかし…」

 

躊躇う咲夜。

そりゃそうだろう、主人を置き去りにして他の奴らと一緒に先に行けと言っているのだから。

命令であっても忠誠心がそれ許さない。

 

「……ま、お前がそうしたいなら私は付き合うよ」

「そういうことだから、咲夜。出来るわね?」

「っ………承知しました」

 

もうちょっと従者の気持ちを汲んでやれと思ってしまうけど……そんなことはレミリアが一番わかってるだろう。

 

「……ってか、春雪異変の時も似たようなことしたな」

「あら、そうだったの」

「ま、あの時は相手が私に用がある感じだったけど……今回はお前があるみたいだな」

「ふふっ、そうね」

 

視界から魔理沙たちが一気に消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……さて、どういうつもりなのかしら」

「あ、ちわーす、お久しぶりっす」

「そうね、久しぶりね」

 

八意永琳。

私の腕…というか、呪いのことをちゃんと教えてくれた人。

 

「初めて会うのもいるから、改めて自己紹介しましょうか。八意永琳よ」

「あら、礼儀正しいのね、月を奪う不埒者のくせに」

「土足、それに無許可で入り込んでくるあなたたちとは違ってね」

「あら、ここの主は心が狭いのね。私なんか日常茶飯よ」

「寛大であることは必ずしも正しいわけではないわ」

 

ひょえぇ……煽り合いしてるよ……

 

「あの人間たちは先に行ってしまったようだけれど……あなた達だけはここを通ることを許すわけにはいかないわね」

「元より許可なんて求めてないわ、最初から押し通るつもりだから」

「そう、なら精々進んでみるといいわ、吸血鬼さん。撃ち落としてあげるから」

 

そう言った瞬間とんでもない密度の弾幕が放たれた。

 

「wow……絶対さっきより本気出してるよねこれ」

「協力しなさい、手早くいくわよ」

「へいへい……合わせるよ」

 

二人同時に駆け出した。

 

 

うーん……弾幕ごっことは呼べないなこれ。

普通に戦いになってるように見える。

 

なんで私が戦ったらいっつもこんな感じなんだろうか……妖夢の時もそうだったし。

 

「出るわ」

「わーってるよ」

 

氷の蛇腹剣を2本取り出し、スペルカードを宣言する。

 

 

剣符『氷乱の双刃』

 

 

「ふんっぐう!!」

 

 

重ねて持ち、身を捻って体を回転させながら斜めに2度ぶん回し、その斬撃が弾を撒き散らしながら永琳さんの方へと突っ込んでいく。

 

逆方向に回って同じようにした後、最後にもう一度2本まとめて振り上げた。

斬撃が弾幕の壁に穴を開けて結界へとぶつかって消える。

 

 

流石に硬い、けれどもこれで見晴らしはよくなった。

 

「紅符『スカーレットシュート』」

 

私が開けた弾幕の穴を通って紅色の弾丸が何度も放たれる。

 

「やったか」

 

絶対にやれてないだろうなと思いつつそう言ってみる。

 

「……来てるな」

 

 

弾幕が段々と私の周りを取り囲んできている。

囲まれ切る前に間を縫って接近しないと、多分あれは本気で殴るくらいしないと割れてくれな———

 

 

「あ?」

「お?」

 

 

同じことを考えていたのか。

同じように飛び出してきたレミリアとぶつかった。

 

「っどこ見てんのよこのアホ!」

「お前が傷一ついれられてねえから私が直接叩こうと思ったんでしょうが!」

「私が攻撃であんたが補助って感じだったでしょうが!」

「そんな感じはしたけど口では言われてないので知りませぇん!!」

「あんたね——」

「「あ」」

 

あら目の前におっきな弾ァ…

 

「「なぁっ!?」」

 

お互いに突き飛ばしてギリギリで避ける。

 

「あんたね!邪魔するくらいなら引っ込んでなさい!」

「ハァ!?お前が協力しろつったんだろうがしばくぞ!」

「あんたみたいな毬藻に期待した私がバカだったわ」

「あっ言ったなお前」

「だったらどうなの——」

「「あ」」

 

掴みかかってたから避けられな——

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい協力やめェ!!」

「こっちはそのつもりだったんだけど!!」

「もう自由にやらせてもらうからなお前このやろう」

「望むところよ毬藻バカ」

「お前また毬藻つったな?」

 

「………」

 

なんなのかしら……あの二人……

 

始まって早々に仲違い?いや、単純に頭が悪いのかしら……

1発目避けたと思ったら2発目普通に当たってるし……

 

「……考えない方がよさそうね」

 

それならもう1発放つまで。

 

 

「——テメェ表でろやまりもって言った分だけ殴ったるわ」

「毬藻毬藻毬藻毬藻毬藻」

「はい潰すゥ!!」

「やれるもんなら———」

 

「……っ」

 

私の出した弾幕が直撃する直前で弾けた。

そもそもさっきは当たったけど大した傷はなかった、言動はああでも力は本物。

 

「こっからは好きにやらせてもらうからな、ホントに」

「そう、ならこっちも……」

「え?」

 

え?

 

「フンっ!!」

「ええええぇ!!?」

 

片方投げてきた!?

 

「しかも早い…っ」

 

急いで撃ち落とそうとしたが間に合わないと判断して結界で防御する。

投げ飛ばされながら飛び蹴りの姿勢に変えてきたそれを結界で受け止める。

 

「くっ…」

「あ…なんかすんません」

 

間の抜けた表情のくせに重い一撃。

結界にヒビが入って——

 

「っ!」

 

上から槍のようなものを持って飛び降りてくる姿を視認してすぐに毛玉を吹き飛ばし、弾幕を上方向に展開するけれど全部貫いてひび割れた結界に直撃した。

 

ガラスの割れるような音と共に結界が二枚弾け飛ぶ。

 

「全部で三枚ってとこかしら、随分と厳重に引きこもってるのね」

 

無事な一枚が残っているうちに弾幕で吸血鬼も引き剥がして———

 

 

「な——」

 

さっき吹き飛ばしたはずの毛玉がもう…っ!

 

急いで残りの一枚の結界を強化するが、妖力を纏った拳に叩き割られた。

 

「なんて威力……」

 

けれども、なんとか割られた衝撃で後ろに下がれた。

距離が空いているうちに急いで結界を張り直す。

 

「そこは決め切りなさいよあんた」

「うるせえよ、てかよくも投げ飛ばしてくれたなオイ」

「今そんなこと気にしてる場合?」

「おまっ、お前なぁ…」

 

 

 

 

なるほど、強い。

二人とも小柄でありながら妖怪としては上位の実力を持つのだろう。

 

こう何度も攻撃されていては、結界を突破されるのも時間の問題か。

なら……

 

「何もさせなければいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひゅー、すっごい密度」

「本気出してきたみたいね」

「避けれんのあれ」

「無理でしょ」

 

お互いに呑気に言葉を交わしながら急いで距離を取る。

 

「ほっ、はっ」

「ひぃっひょあっフゥッ!!」

「あんたもっと優雅に躱せないわけ?」

「むりぃっ!!」

 

避けれてても怖いんじゃ。

 

避けさせる気のない弾幕の壁が迫ってくるなか、先に飛んできた高速の弾を必死に避け続ける。

 

「これ以上距離が空くのは不味いわ!なんとかしなさい!」

「なんで人任せなん!?んなろっ」

 

氷壁と植物を組み合わせた巨大な壁を作り出し、妖力を流し込んで強固にする。

二人揃って急いでその壁の後ろに隠れた。

 

「んおっ…」

「やればできるじゃない」

「そりゃどうも……」

 

体に伝わってくる衝撃が氷がガリガリ削られているのを物語っている。

そうもたないなこれ、どんな弾幕出してんだよ全く。

 

 

「あの強さでここのボスじゃないってマジかよ…」

「そりゃそうでしょ。主ってのはそこの一番奥で挑戦者を待ち構えてるものよ」

「説得力すげえ」

 

しかしどうしたもんか……この量の弾幕掻い潜ってあのアホみたいに硬い結界やった上で致命打与えろと?

 

霊夢たちはどうやって二人だけでここ突破したんだよ……私たちだけ本気出されてるような気がしないでもないが。

 

 

「何を臆することがあるの?」

「あ?」

「私たちが二人揃ってるのよ、あれを突破できないわけがないわ」

「お前……」

 

随分とまあ。

力強い言葉とまっすぐな瞳なことだ。

 

「あんたは私が認めた妖怪よ、胸張りなさい」

「………」

 

あぁ、本当に。

 

「相変わらず自尊心すごいな、お前」

「それ、褒め言葉よ」

「褒めてんだよ」

「……そう」

 

傲慢、と言い換えてもいいかもしれない。

ただ、なんにせよ今は。

 

その力強さが。

 

この上なく頼もしい。

 

 

 

 

 

気づけば攻撃がパタリと止んでいた。

 

「……この感じ、次のでかい一発でこの壁粉々にする気だな」

「悠長にしてられないわね。早速反撃に……なによ」

「手」

「は?」

「手、出して」

 

私の手と顔を見て訝しげな表情を浮かべるレミリア。

 

「時間がないんでしょ?はよはよ」

「分かったわよ……」

 

 

怪しみつつ、嫌そうに私と手を重ねたレミリア。

 

 

その瞬間、その顔が驚いた表情に変わった

 

 

「これ…」

「じゃ、そういうことで」

 

呆けているレミリアをよそに立ち上がって息を整える。

言わなかったってわかるだろう。

 

そして、伝わったならきっとやり遂げてくれる。

 

「……フフッ、そういうことね、任せなさい」

 

 

その言葉を聞き届けたあと、私は目の前の氷の壁を自ら破壊して———

 

 

 

 

凛を抜いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不思議な奴だった。

初めて会った時は、ふざけた奴だと思った。

 

 

 

力を持っているくせに、それを感じさせない振る舞いをする。

頭の悪い言動をしているくせに、根はしっかりとしていて。

 

 

初めて会ったはずのフランを、危険を顧みずに首を突っ込んで、助けて。

それを、頼まれたからの一言で済ませてしまう。

 

 

 

そんなのばかりかと思えば、とても悲しそうな目をする。

まるで諦観したような……何かどうしようもないことを抱え込んでしまっているような、哀しい目。

 

 

 

 

……あの時、一瞬だけあいつがこぼした言葉。

 

本当の本音。

 

 

 

 

『誰が私を証明してくれる!』

『誰といたって、私は孤独を感じて…』

 

 

 

 

あの時の、あの言葉だけは。

紛れもない彼女の……本当の気持ちだったんじゃないかと、今になって思う。

 

 

 

 

それがなんなのか、私には分からない。

ただ、酷く悲しくて寂しいことということは、分かる。

 

 

 

 

 

 

 

だからこそ。

 

 

そんなものを抱え込んでもなお、笑って見せるから、戦ってみせるから。

 

 

 

だからこそ、白珠毛糸は強い。

 

 

 

 

 

 

部屋を覆いつくほどの大きな弾が迫ってくる。

 

甘い、実に甘い。

そんなものでどうにかなると思っているのか。

 

そんなものじゃあいつは……

 

 

 

 

 

 

 

 

———凛符『彼方任せの剣戟』———

 

 

 

 

 

 

 

「白珠毛糸は止まらない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!?」

 

真っ二つに切った!?

 

「くっ…!」

 

再度弾幕の壁を展開し、そのまま相手の方へと突っ込ませる。

けれど……

 

 

斬って、斬って、斬って。

行手を阻むもの全てを切り伏せて、一直線にこちらへと突っ込んでくる。

 

 

猛進だ、まるで何かに突き動かされているかのように、ただ進むことしか考えていないかのように。

体だけが動いているようにすら見える。

 

 

弓を取り出し、毛玉の方へ狙いをつける。

これで直接やるしか——

 

 

「なっ!」

 

 

もうすぐそこまで迫ってきている。

不味い、すでに間合に入られて——

 

 

「くぅっ…!」

 

その刀が結界に触れる直前にさらに障壁を張るが、1秒と持たずに破られる。

 

 

 

「一枚」

 

 

 

そう言った直後に結界が一枚、一振りで破れてしまう。

 

 

 

「二枚」

 

 

 

すぐさま結界を強固にし、引き剥がせるように弾幕を用意するが、またもや簡単に、その黒い刀に結界を割られる。

 

 

 

「三枚———」

 

 

 

 

そこでようやく、刀を振り上げて無防備なその体に弾幕を直撃させ、振り払うことに成功する。

 

 

 

 

 

危なかった、あのまま割られていたらそのまま切られて……

 

 

 

いや

 

 

 

「あの吸血鬼はどこに———」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———氷槍『スピア・ザ・グングニル』———

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

氷で出来た紅色の光を放つその槍が

 

結界を穿ち、その体を貫いた

 

 

 

 

 

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