「とまとまとぅまーと」
「けちゃぷっぷー」
「何してるんですか、二人とも」
「とまとまとぅまーと」
「けちゃぷっぷー」
「あの」
「とまとまとぅまーと」
「けちゃぷっぷー」
「………」
「とまとまとぅ——あふん!何すんの大ちゃん!」
「いや、洗脳されてたみたいなんで」
なんでやケチャップ悪ないやろ!
おむらいす食べたい。
「チルノちゃんも、何その歌」
「毛糸が教えてくれたんだぞ」
「リコピンとれよー」
「りこぴん?なんだそれ!」
「摂取すると血糖値が下がり、記憶力の低下が遅くなるうんたら」
「せっしゅ?けっとーち?なんだそれ」
「要するにさいきょーになる」
「なん………だと………どこにあるの!?」
「ふっ、知らね」
「えっ」
トマト食べたい、とうもろこし食べたい、牛乳飲みたい、お茶飲みたい、ハンバーグ食べたい、唐揚げ食べたい。
パンケーキ食べたくはない。
「あー、その辺にトマト生えてないかなぁ、日本には無いよなぁ」
「とまととまとって、急にどうしたんですか」
「いやね、最近赤い液体ばっかり見てたから、ケチャップを………いや、あれはトマトジュースか」
トマトジュースは普通に料理に使ってもいけるんだぞ、あんまり私は好きじゃ無いけどな。
「すぐに手に入りそうな野菜なんて、きゅうりくらいかぁ」
「きゅうり?なんだそれ、それも食べたらさいきょーになれるのか?」
「知らね」
「えっ」
でもなんやかんやで最近平和だなー、迷惑天狗どもも最近めっきり来なくなったし。
でもそれはそれでやることないんだよなー。
あ、ルーミアはなんかひょっこり帰ってきてた。
あーあ、暇だなー。
家庭菜園でもする?植物の種とか知り合いで持ってそうな人は………
河童は少し持ってるかもしれない、あとは………
あー、幽香さん………確かにあの人なら種とか山のように持ってるイメージが………
なぜだろう、幽香さんがペットのハムスターにひまわりの種をあげている様子が頭に………いやいや、この時代にハムスターなんて飼ってる人いないか。
ハムスターさ、割とすぐ死んじゃうんだよね、悲しくなる。
まぁ愛犬とかが死んじゃったときの喪失感の方がすごいと思うけどね。
結構みんなが犬とか猫とかを飼うのを迷うのは、手間とかお金の問題もあるんだろうけどやっぱり死んじゃったときの想像しちゃうからだよね、私は飼ったことないけど。
「大ちゃん、なんか育てるのに手頃な植物とかない?」
「なんですか急に、植物ですか。えっと………」
そう言って辺りを見渡す大ちゃん。
まぁ身の回りが大自然だからね、探せばいくらでもあるよね。
花とか草とか………花といえば、手に白い花冠巻いてたのを思い出した。
そういえば腕ぶっ飛んだ時になくしたんだよねぇ、うーん………殺される?私、幽香さんに殺される?
考えたってしょうがないか。
白い花かぁ、花とかあんまり詳しくないんだよなぁ。
えーと、桜とかも白いやつあるよね。
サボテンの花も白かったような………
白くなくていいから、もっと身近なもの………つくしとかたんぽぽとか………うん?たんぽぽ?
なんか妙にたんぽぽが引っかかるな………
たんぽぽって、綿毛が飛ぶあれでしょ?んー?
綿毛?綿毛………
毛玉………oh
「毛玉はたんぽぽだった………?」
「何言ってるんですか?あとすみません、植物といっても、育てやすいものと言われるとちょっと………」
「大妖精なのに?」
「大妖精は関係ないです」
緑のくせして、なんでそんなに目に優しい色で固めてる
のかしら。
というか、この時代の人は私含めて髪色が派手だ。
鴉天狗とか、白狼天狗とかは黒と白でわかりやすいけど、妖精や河童になってくるとマジで十人十色状態になる。
さすがに普通の人はそうじゃないよねぇ?
一般人まで頭がカラフルだとヤバくない?何がヤバいのかってこう、校則で毛染め禁止ってしてても周りがそんなのばっかりだから毛染めしてもバレないじゃん。
そしてみんな髪を痛めてボサボサになるんだ。
「なあ毛糸、他にもなんか教えてくれよ」
「ん?じゃあ、たーのしーい、なかまーが、死んじゃった、えーしー」
「何があったんですか?仲間に一体何があったんですか?」
「謎のロボットに変身させられて爆発四散させられた」
「ろぼっと?しさん?難しいぞ」
「お前はさいきょうの文字だけ書けるようになればそれでいいんじゃないかな」
「じゃあよみ書き教えてよ」
「教えても忘れるじゃん、馬鹿だし」
「ばかっていったほうがばかなんだぞ?知らないの?ばか」
「馬鹿の一つ覚え」
やれやれ、これだからバカの相手は疲れるぜ。
「してチルノよ」
「なんだ」
「この湖の底に見えるあの大きい影はなんだ」
「知らない」
そっか、そりゃ知らないよね、馬鹿だし。
さて、あれはなんなのだろうか、この湖のヌシとか?ぽくない?なんかそれっぽくない?
「なんかあの影、だんだん大きくなってません?」
「いやこれ、大きくなってるというよりこっちに近づいてきてるんじゃないかな」
「お、やる気か、相手してやるぞ」
「いよっ、頼りにしてるぞ空前絶後の地上最強の天下無敵の超絶怒涛最強の妖精、唯一神チルノ、湖の底に潜む化け物を退治してくれー」
「ふっふっふ、弱い子分のためにひと服履いてやるぞ」
「もう履いてるだろ」
人肌脱ぐんじゃないのか………
あーあ、その気になっちゃって氷作り出しちゃったよ、おいおいあいつ死んだな。
「バカはチョロくて助かるぜ」
「何言ってるんですか!危ないですよ!」
「でーじょーぶでーじょーぶ、野生の生き物なんて人を恐れてそうそう襲ってないよ、こっちが慌てて大きな音を出して刺激する方がいけな——」
水面からなにか巨大なものが飛び出してきたのがわかった。
なんでや、なんで出てきてしまうんや。
私すごいなんか偉そうに喋ってたじゃん、恥ずかしいじゃないか。
「逃げるよチルノちゃん!」
「まって!なんか人が喰われた!」
「この前落とした天狗じゃないのか!?」
「なんか助けてって聞こえた気がしたぞ!」
えっ、なに怖っ、生きてたってこと?その天狗生きてたってこと?やだ怖い、あたい怖いわ。
「助けないと!」
「どっちみちもう助からないよ!早く逃げないと、ってこっち見てる!?」
「本格的にやばいねー、魚みたいな形だけど普通に地上に上がってきそうだね、捕食対象としてロックオンされたね、逃げないと喰われるね」「なんか呑気ですね!」
「呑気じゃないよすごい焦ってるよ、焦ってるけどチルノが突っ込んでいってるの見てあいつ死んだなって思ってるだけ」
「チルノちゃああああん!」
「うおおおおおおお!!」
叫んで走り出したチルノ、放出した霊力を凝縮して無数の氷の粒にし、巨大な魚の方へと飛ばした。
あれいーなー、私も真似しようかなー。
氷の粒を飛ばしたはいいが、巨大な魚が水中にまた潜ってしまい氷の粒は空の彼方へと飛んでいった。
「当たらないぞっ!」
「今のうちに逃げよう!」
「いやだ!あたいがさいきょーであることを証明するために!あたいはこのしれんを乗り変えなきゃいけない!」
それは結構だけど、あの大きさだと中途半端な攻撃しても多分大したダメージは与えられないと思うな。
やるんならド派手にやらないと、うん。
「チルノー、やるなら巨大な氷の針とかを飛ばした方がいいぞー」
「おう!わかったぞ!大きい針だな!」
本当にわかってる?
チルノは両手を合わして氷を生成、その氷を高速で回転させながら徐々に大きく、尖らしていき、巨大な魚を貫くには充分な大きさになった。
「つぎ上がってきた時があいつの最後だぞ!」
「もうだめだこりゃ、完全に聞く気ないよ………」
「よくわからんけどいけるんじゃない?」
もうさ、メガロドンみたいなやつ出てきたら思考停止するしかないよね、考えるだけ無駄だよね。
どーせあれでしょ、幻想郷には神話の生物とかいっぱいいるんでしょ?なんなら神様もいるんでしょ?あー、みんな化け物で怖いわー。
チルノがひたすらに湖の水面を氷の針を持って眺めている。
小さな影の点が現れ、急速にそれが大きくなり、水面から巨大な魚が飛び出してきた。
その着地点は明らかに私たちを潰せる場所だ。
「うおおおお!いっけえええ!」
私たちの真上に達した巨大な魚、その落下してきて開く大きな口と中にチルノが回転する氷の針を飛ばした。
それがどうなったかを確認する前に、私は体を浮かし、大ちゃんとチルノに触れて巨大な魚の着地点から急いで移動した。
巨大な魚が地面に着地した衝撃を受け、三人まとめて吹っ飛ばされてしまった。
十数秒後、立ち上がりあたり見回すと、巨大な魚が土の上でバッタバッタ跳ねてた。
こう見たらただの魚が跳ねてるだけなんだけどなぁ、コイキ○グのはねるなんだけどなぁ。
サイズがサイズだからね、人を殺せるはねるだから、ダイ○ックスしちゃってるから。
「やったぞおお!あたいがさいきょー!」
「おっそうだな」
なんかめっちゃ勝ち誇ってる。
で、あれどうするんだよ、めちゃくちゃ跳ねてるよ、地響き起きてるよ。
よくよく考えたらあんなでかいのがいる湖ってやばくね?いや、もともと大きい湖だなとは思ってたけど。
「多分チルノの氷が刺さって痛くて暴れてるんだろうね」
「あれ、どうするんですか」
「死ぬのを待つ」
「えー………」
「そんなこと言ったって、しょうがないじゃないか。あんな巨体をどうしろと?まさか湖にリリースするわけでもないし」
「でも………」
あ、そういえば誰かが喰われたんだっけ、腹を裂いたらでてくるかな?
でも魚の解体作業とかやりたくないなー。
「とどめを刺せばいい話だぞ」
「そうはいってもねぇ、こんだけでかいと殺すっていう感覚がなぁ」
「放っておいて死なせるのも結局同じでしょ」
まぁ、それもそうか。
結局とどめを刺せずに死ぬまで放置した。
巨大な魚が暴れた跡は、土が全部ひっくり返り草地がなくなっていた。
「さて、腹の中にいるやつはもう死んでるだろうしこいつ丸ごと湖に沈めるか」
「いやきっと生きてるぞ」
「なぜそう思う?」
「なんとなく」
だめだこいつ、ただのバカだ。
まぁ、そんなにいうなら腹裂きますかね………
とは言ったものの、どうするんだ?これ。
「チルノ、そいつの腹のあたり凍らして」
「ん?なんでだ」
「いいからいいから」
何をさせられているのか理解できないようで、言われるがままに腹を凍らしていくチルノ。
まぁ何がしたいのかっていうと、凍らして割りやすくした肉を砕いて入れるようにしようというわけだ。
こんなにでかいと腹の中で何か化け物を飼っててもおかしくない気がするけどなぁ。
腹のあたりが凍ったのを確認すると、チルノを離れさせて、腕に妖力を込めてパンチした。
するといとも簡単に腹の部分は砕け、中が見えるようになった。
「うおっ生臭っ!いつものゲテモノ魚の数倍くさいぞこれ!」
「臭くて死にそう」
「怖いんでさっさと終わらせてきてくれません?」
めっちゃ距離取ってるよ大ちゃん、気持ちはわかるぜ。
詳しい説明は省くけど、とりあえずやばかった。
何がやばかったって、匂いとぶよぶよとしている周りの肉と体液と飛んでもなくでかい臓物と生臭さと腐乱臭、というか死臭がする。
やばかった。
すぐに毛玉の状態になって嗅覚とかその他もろもろを遮断したけど、たぶんこれ匂い染み付いてるなー、泣きたい。
チルノは早々にギブアップして外で伸びてる。
それっぽいやつが割とすぐに見つかってよかったよ、まったく………
そいつをなんとか腹の中から救出して、外へと引き摺り出してきた。
「………それで、これが食べられたっていう人?チルノちゃん」
「間違い無いぞ、こんな感じのやつだった」
「これさ………人魚?」
「はい、多分」
女の子だ………女の子の下半身が魚だ………どいうことだ………耳がなんかこう、すごい魚人っぽくて、下半身が魚っぽいこと以外は、完全に女の子だ………妖怪だろうけど、なんだこいつ………
「全然目を覚ましませんね………」
「毛糸の匂いで起きないかな?」
「起きたらいいけど、それはそれで傷つくねぇ………どうやって匂いとろうか」
「ん………うん?」
あ、目覚めた。
そんなに臭い?寝てるやつが起きるほど臭い?
言っておくけど私の匂いじゃ無いからねっ!魚の体内の匂いだからねっ!臭いの当たり前だからねっ!
「くさっ………」
「おうふ………」
「生きてたみたいで良かったです」
「さすがは妖怪だなぁ、生命力高い」
人魚の女の子が目を覚まし、目をパチパチとさせる。
するとまず最初に、こう一言。
「なにこの毬藻みたいな髪の毛してるやつ………」
「あぁん!?テンメッこのやろう!魚の叩きにしてやろうか!」
「ちょ、落ち着いてください!目を覚ましたばかりなんですから」
「確か私は食べられて………あっ………」
「おいなんか気絶したぞ、大丈夫か」
「大丈夫じゃないねぇ!私が今からそいつを切り刻んで刺身にするからねぇ!」
「だから落ち着いてください!いい加減にしないと怒りますよ!」
「さーせん………」
大方、食べられた時のこと思い出して気絶したんだろう、また起きるの待つか………
「とりあえず穴掘って、そこに水を貯めて入れておいてあげましょうか」
「そだねー」