やってきました人里。
から500メートルくらい離れてる場所。
ここでりんさん待ち合わせって言ったのになぁ………なにかして待ってるか。
「ジャンケンポン、あいこでしょ、あいこでしょ、あいこでしょ、あいこでしょ、あいこで………」
虚しい、めっちゃ虚しい、虚無値高い
にしても来ないなぁー、待ち合わせ時間間違えた?
まだ結構明るいし、早く来すぎたのでは?
うーむ………暇だし回っとくか。
「何してんのお前」
「人間ベイブ○ードしたらめっちゃ酔った………というか何してたのりんさん」
「首とってた」
その謎の言葉が気になり顔を上げると生首が2つほど並べられていた。
何してんすかこの人は………びっくりして吐きそうに、うっ。
「危ない危ない、吐くところだったぜ………」
「まだ時間あるなと思って、近くにいた妖怪やってきた」
「やってきたって、人間襲ってないやつやってない?」
「大丈夫だ、全員私を見るなり攻撃してきたからな」
そりゃあんたみたいな化け物が突然現れたら誰だって警戒しますよ、だって怖いもん。
白昼堂々刀持ち歩いて殺気ビンビン放ってる人が突然現れたら逃げるか戦うか命乞いするかくらいしかなくなるじゃん。
私なら命乞いする。
「時間調整してたんだよ、今くらいの時間が人が多くて紛れやすいんだ。ほらいくぞ」
「いやまって、そんな人に会う覚悟がまだ………」
「刺すぞ」
「イキマス」
刺すぞって、刺すぞって………指で?
その指で私の眼球を?もう目玉を再生するのは嫌だ。
そもそも視覚がなくなるだけで結構不安になるのに………目って繊細なんだからね、この前のなんか完全に直るのに丸一日かかったんだからな。
すごいチルノにいたずらされたんだからなこのやろう。
一日で治るのがおかしい気もするけど。
そもそも普通は治らないよねぇ。
なんて便利な体なんだろうか、
「おら」
「んがっ。いきなり貼ってくるなよ………」
「お前いちいち拒否してくるだろ、面倒くさい」
なんでや拒否権ください。
「はぁ………嫌だなぁ」
「何が嫌なのか知らんが、なんやかんやでついてきてるあたりお前も興味あるんだろ」
「まぁね」
何が嫌かってあんたに物理的なパワハラうけることが嫌なんだよ。
まぁ私自身、りんさんの話にのったのは、私もその半妖の人に会ってみたいと思ったのもそうだし、人間が妖怪たちをどういうふうに思っているかが気になるからだ。
私個人としては、ぜひ人間と共存して生きていきたいのだけどなぁ。
もし可能になるとして、一体何十年後になることだろうか。
「ん?まって顔面にこれつけられたら怪しまれるじゃん」
「………あ」
「あ、じゃないよ早く貼り替えてよ」
「………別にそのままでも良くね」
「いいわけないでしょーが!!」
いてっ!乱暴に剥がすな!
「ぐふぉ………なぜ腹に直接………」
「服の下ならわからないだろ」
「わだじの体はボドボドだぁ!」
「おっそーか」
「………」
「ねぇ怖いんだけど、みんな私のこと見てない?気づかれてるよねこれ、早く逃げないとやばいよねこれ」
「大丈夫だ、誰もお前のことになんか興味ない」
ちょっと心に刺さりそうなその言葉やめてくれない?
あ、今目があった、もうダメだおしまいだぁ。
「ん?なにあのいかにもって感じの服着てる人」
「陰陽師だよ、見たことなかったのか?」
何故だか今まで会ったことがありませんでした。
うーん、陰陽師だぁ。
着てる服から持ってるものまで全部陰陽師だぁ。
「普段は人里中じゃなく外や入り口にいるはずなんだが、多分あれは買い出しとかに来てるな」
よーするにパシリじゃね?
確かに持ってる霊力の量もりんさんより全然少ないみたいだし、お金持ってるし、パシリだな。
柊さんと似た何かを感じる。
「あ、目があった。りんさんは普段人里の中じゃ霊力も一応抑えてるんだね」
「まぁな、別に垂れ流していいことないし」
妖力や霊力などは、意識していないときはその気配のようなものが周囲に漏れる。
わかりやすく言ったら妖気とかに近いんじゃないだろうか、オーラみたいなものだ。
別に妖気出したからといって妖力が減るわけじゃない、ただこれを放出していると割と周囲の人に見つかる。
妖力はお札で強制的に抑え込んでるけど、霊力は構わず出るから霊力は霊力で抑えなきゃいけない。
「これ貼ってるとさ、吐き気がするんだよね、腹に貼ってるせい?」
「知らね」
「だよねー」
歩き続けていると、だんだん人のいないところにやってきた。
ここまで来てわかったけど、やっぱり時代相応の暮らしをみんなしているようだ。
服装も貧相なものだし、髪色も黒だしやっぱりおかしいのは妖怪妖精連中だけだったよ。
まぁりんさんも結構美人なんだけどさぁ………私の知り合い美人しかいねぇなぁこれ。
あ、柊木さんいたわ。
「着いたぞ、ここだ。多分」
「最後の要る?ちょ、押すなよ」
確認しろってか?自信ないから確認してこいってか?
心の用意が………はい行けばいいんですねわかりました。
背中すごい押してくるからしょうがない、入り口を開き中の様子を覗き込む。
「失礼しま——」
秒で出た。
「あー違ったかー」
「マジかよ………こんな昼間から………昼間からそんなことを………」
「おい、一体何を見た」
「へっへっへっへ………」
「壊れた?」
「はっはっはっはぁ………よし、気を取り直して、次はどこのに行けばいいんだよ、あと場所覚えてから呼んでよ」
「あ、あぁ、すまない」
なんでそんな申し訳なさそうに謝ってるの?ちょっと何やってるかわからないです。
さぁ次の家へ、当たるまでやってやるよ!
「あー、そこだった気が………」
「はいはい、見ればいいんでしょ見れば。お邪魔しま——した」
「早いな」
「いやぁ………」
あれは………うん………
「その白澤の人はさぁ………見た目若いよね?」
「あぁ、そうだが」
「中におばちゃんがいた」
「あぁ、そうか」
おばちゃんがいた、うん、おばちゃんがいた。
中にはおばちゃんがいただけ、私はそれ以外何も知らない。
「なんか………すまん」
「いいよ………もう」
「………」
「………」
「ここが………今度は大丈夫だよね?もう日が暮れようとしてるよ?ねぇ大丈夫だよね」
「あぁうん、大丈夫大丈夫。間違いない、思い出したから」
「本当かなぁ?」
「私を信じろ」
「無理だよ、前科ありすぎるもん」
一体何度私が記憶を消したと思っているんだ。
一体何度私が、見ては行けないものを見てしまった………てなったと思っているんだ。
というか、みんな家の中で変なことしすぎでしょ、そりゃあほぼ不法侵入みたいなことやってる私が悪いのかもしれないよ?でもそんなことばっかしてて災害とか来たらどうするの、すぐに逃げれるの?無理でしょ?
「まぁ………この家だけ周りになんもないとこにあるし、もはや人里の外って感じすらするし、それっぽいけどさ」
「だろ?」
「じゃあなんでこんなわかりやすいところ忘れちゃうのさ」
「あんまり細かいこと言ってると刺すぞ」
「アッハイ」
私とあなたではナ○パとカカ○ットくらい戦闘力に差があるんです、あんまりそうやって脅さんでください。
目の前の家は割とこじんまりとした小さな家。
それでも一人で住む分には十分な大きさだろう。
というか、人里ってかなりでかいね。
村が少し集まった程度かと思ってたよ。
現代の東京相当の繁栄具合なのかもなぁ。
「これ中に人いるよね?」
「あぁ、気配はするな」
「妖怪?」
「そうだな、人間の中に妖怪が少し混ざった感じだ」
「わかるんならなんでさっきまで気配で探さなかったの?」
「刺す」
「待って」
なんなんだこの人は………とりあえず会ってみるか。
えっと………とりあえず話しかけるか。
「すみません!誰かいらっしゃいますか?」
………あれ?居留守?
「あぁ、今行く、待っていてくれ」
「お、いたな」
「いたね」
あっ、やばい、急に心臓鳴り始めた。
そうだよ今から会う人は神獣やら聖獣やらと人間のハーフじゃん、設定めっちゃ盛ってる人じゃん。
あっ、やべ、死ぬわ、なんか死ぬわ私。
あわただしい足音がだんだんとこちらは近づいてくる。
そして、扉が開かれて放たれた言葉が。
「うわ、なんだこの毬藻頭」
………
んだとこのっ、だれが漂白剤でなんやかんやされたス○モじゃこのっ………
よし、落ち着けぇ、落ち着け私ぃ………
「ふぅ………深呼吸、深呼吸だ私」
「………ま、こいつは置いといて。あんたが半妖だな?」
「あぁ、そうだが。貴方は人間のようだが、そこの白いまり——」
「毛玉ですッ!!」
「あ、あぁ、そうか………で、なんの用だ?そもそもここの周りには陰陽師やほかの妖怪狩りもいたはずだが、どうしてここにいる。それに貴方は妖怪狩りじゃないのか」
「ありゃ、私はそんなに有名になってたのか」
「人外界隈ではわりと有名っすよ」
気持ちを落ち着かせ、目の前の女性の姿を見る。
白っぽい髪に洋服のようなもの………
あんたもその口か………
まぁそれはともかく、これまた結構な美人なことで。
「あ、ここに来た理由だったな。このもじゃもじゃ、前世人間だったらしい」
「は?」
おう、すっげぇ何言ってんだこいつって顔で見られてるぜ。
やめて、そんな目で見ないで、泣いちゃう。
「それであんたは人間と友好関係築きたいって思ってるだろ?それはこいつも同じみたいなんだよ」
「なぜ貴方は私のことをそれほど知っている?」
「色んな話が入ってくるんだよ、なんならあんたを退治してくれって依頼も何度か来てる」
「そうか………やっぱりそうか………」
すごく残念そうな顔をしてる。
そりゃそうか、自分は努力してるのにそれがまったく相手に通じてないんだもんなぁ。
「まぁ今日の私はあんたをやりに来たんじゃない。単にこいつを合わせたかっただけだ」
「あ、どうも」
「どうも、まぁせっかくの来客だ、中で話をしよう」
「あ、はい、では失礼して………」
なんか知らないうちにお邪魔する感じになっちゃってるぅ!なにこれ、どゆことこれ、おのれりんさん、勝手にぱっぱと物事進めよって!
「私は外で待ってる」
は?
いや来てよ!寂しいんすけど!
とは流石に言えないので黙って半妖の人についていく、すると居間のような場所へ案内された。
座るように促されたので正座する。
なぜ正座かって?謎の使命感かな。
うん、自分でもなに言ってるかわからない。
「え、えーと………お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
「上白沢慧音だ。………そんなに畏まらなくてもいいんだぞ?」
「いやあの、気にしなくていいんで」
「いやでも」
「本当に!いいんで!」
「あ、あぁ、わかったよ」
「あの、私は白珠毛糸です」
よし、自己紹介終えた!
帰る!
『刺す』
「へ!?」
「どうした?」
「い、いやあの、なんでもないです」
「そうか、ならいいんだが」
まさかとうとう幻聴が聞こえ始めるとは………とうとう私も頭がおかしくなってしまったらしい。
いや、もともとおかしな頭してたわ。
「で、さっきの話だが………前世が人間というのは本当か?」
「えぇ、まぁ」
時代は違うんだけどね。
「人間を襲おうとは?」
「思いませんよ、そもそも私毛玉だし、襲う理由がありません」
「そうか、そうか」
なにか考え込んでしまった。
んー………気まずいな。
「あの、半分人間で半分白澤ってのは?」
あと上白沢って白澤をもじっただけだよね。
「あぁ、間違いない。といっても、私はそういう生まれ方をしたんじゃなく、もともと人間だったんだ」
なるほど………つまり人間と白澤がやったわけじゃないんだね。
でも一体どうやったらそんなことになるんだろ。
まぁこの辺は流石に聞けないからなぁ。
「次は私が聞いていいか?」
「どうぞ」
「人里で噂になっていた、人間を助ける白いもじゃもじゃとは貴方のことか?」
「えー、はい、多分そっすね」
なんで白いもじゃもじゃなんだろう………私が白いもじゃもじゃだからか。
「では………あなたは人間と妖怪、どちら側だ」
「どちら側?」
全然そんな気しないけど私精霊なんすけと。
どちら側、かぁ。
「どっちでもないんじゃないですかね。少なくともどちらか一方だけに肩入れするような真似は今まではしてないから。私を襲ってくるなら、人間だろうと妖怪だろうと関係なくやるって気持ちではあります」
「そうか………私はもともと人間だった、だから死ぬまで人間の味方でいるつもりだ。だが、やっぱり私のような異物は認められないらしい」
そりゃそうだよなぁ。
存在が周りと違いすぎる、受け入れられない。
自分から何か行動を起こさないと、ねぇ。
「私もできることなら人間とは仲良くしたいと思っています。だけどまぁ、私の噂も人里ではそこまでいい印象は与えられてないみたいだし、難しいんでしょうね」
「そうだな、貴方の噂も、実は助けてると見せかけて生気を吸ってるとか、他にも色々余計なものがついていたよ」
「吸ってないし………」
まぁ大体予想はついてたけど………りんさんが私をそのもじゃもじゃとわかった上で襲いかかってきたのは、そういう依頼でも来てたんだろうな。
「やっぱり、人間とそれ以外が共存していくには、この世の何かを変えないと無理なんでしょうね」
「だな。少なくとも今の私たちにはそれは無理だろう、なにをやるべきかがわからないうちはな」
うーん。
生きるのって難しいね!