毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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毛玉は再度地に墜ちる

湖に一旦帰り、大ちゃんに地底へ行くことを伝えて承諾をもらい、その翌日に再び山へ来て柊木さんに地底へ通じる縦穴へ案内してもらった。

 

「ここだ」

「あ、どーも」

 

縦穴を覗き込む。

うむ、深い。

あの頃は抱えられてて周り見れなかったけど、今こうやってみると底がわからないくらい暗くて深いな。

 

「そういえば柊木さんが初めて私を見たのってここだったっけ」

「あぁ、そうだな。なんか変な玉が入って行こうとしてるのをみて追いかけたんだがもう落ちていってな、入らないとこまで行っていってしまった」

「そっかぁ、なんかごめんね?不可抗力だったの、いろいろあってさ」

「いいんだもう、過去の話だからな。あのあと部下からなんか馬鹿にされて上司に踏まれて減給になってやってはいけないことやろうとしたが、いいんだ。過去の話だからな」

「………ごめんね」

 

私悪くないんや、悪いのはこいしなんや。

 

「そんなことよりほら、早くいけよ。一応これいろいろ触れちゃ駄目なとこに触れてるからな。ややこしいことはこっちで揉み消しておくが危なくなったらすぐ帰って来いよ」

「お、おう。なんかいろいろとやらせてごめんね?」

「こっちもお前をまた山のことに巻き込んでるからな。まぁ今回の件に関しては、お前も何か知っていそうだったから軟禁して尋問することも考えたが」

「えっ」

「こうした方がいろいろと都合がいいからな」

 

やさしい世界でよかった………本当にやさしいのかこの世界、何回も死にかけてるけどやさしいのかこの世界。

 

「あとこれ、地霊殿の中の人に渡してきてくれ」

「ん?なにこれ封書?」

「上層部に承諾もらったあとついでに渡してくるように言われた。てわけで別に破いて燃やしてもらってもかまわんぞ」

「いや別にそんなことしませんけど。渡せばいいのね、了解」

 

さて、ぶっちゃけ行くのも怖いんだけど、行きたい気持ちのほうが勝っているからささっと行って帰ってこよう。

一応地上と地底を行き来している謎の少女の調査が目的だから、それを忘れないようにっと。

さて、それじゃあそろそろいってくるとしよう。

 

 

柊木さんに別れを告げてさっそく穴の中に飛び込む。

自由落下してもいいんだけど、どれくらいの深さか分からないから体を浮かして地面に激突しないくらいの速さで降りていく。

地霊殿の具体的な場所を教えてもらおうと思ったけど、地底の地形までは詳しく把握してる人はいないみたいだった。

でもまぁ、そんなに目立たない建物ではないだろうし、だれかに聞けば簡単にわかるはず。

そういえば地底って、もともとは地獄の一部で旧地獄とも呼ばれるようになったんだっけ。

地獄ねぇ。

前世じゃそんなものロクに信じてなかった、もちろんなにか非行に走っていたわけじゃないけど。

死んでもその先があるっていうのはいいことだ、脳が全く働かなくなってもそこで終わりじゃなく、輪廻転生をする。

まぁ私はそこから若干外れた存在な気がしないこともないけど、その辺はなんとか多めに見てくれないかなぁ。

まぁ死ぬ気はないんだけど。

 

一度上から見下ろしただけだけど、地獄とかそんな感じはあんまりしなくて、一つの地下都市って感じの印象を受けた。

たしか日の光も届かなかったはずなのにそこそこ明るかった。

この縦穴は暗いけど。

手から霊力弾を出して周りを少しだけ明るくする。

流石に手ぶらでくる勇気はないので使えそうなものを持ってきた。

短剣とかハンカチ代わりの布切れとか布切れとか布切れとか。

持ってくもの思いつかなかったから布切れしかねぇわ、あほくさ。

 

そういえば一人で行くのはそれなりに怖いからついてきてくれないかってみんなに聞いたら、即答で断られた。

みんな忙しいんやなって。

 

「へいへい、そこのもじゃもじゃ君何の用ー?」

「ハワインドゥル!?」

「はわいんどぅる!?どんな驚き方!?」

 

ふぁーびっくりした。

背後から突然女性の声がして、ふりむくと女性の顔があった。

逆さまの。

 

「ンドゥルアイ!?」

「大丈夫?さっきから変な声しか出してないよ?驚かしてる私も悪いんだけどさー」

「お、驚かすなよ、なんで逆さま?何故逆さま?」

「そういう種族柄なんで」

「あー、そう」

 

逆さまから私と同じ向きになる女性。

よく見ると手から糸のようなものが出ていて、それで逆さまになっていたんだと分かった。

………スパイ○ーマン。

いやでも女性か。

 

「迷い込んだんなら帰ったほうがいいよー?この先進んでも、地上から追い出されたならず者しかいないからね」

「いや、別に迷い込んだわけではないんで。ちょっとした用があって、地霊殿ってとこ目指してるんですけど」

「地霊殿?なんだってそんなとこに?まぁいいや、下に着いたら道なりに進んでいけばそのうち着くよ。あんまりお勧めしないけど」

「ん?まぁいいや、ありがとう。ついでに教えて欲しいんだけど、最近ここを行き来してる少女知らない?」

「んー?少女?あーこいしのこと?」

「やっぱりそうなんかい。ありがとう、じゃ、まだ用事あるから」

「じゃあねー。………なんか変な奴」

 

おい、聞こえてんぞ。

変な奴て………変な奴ってなんじゃ。

ハワインドゥル。

 

 

 

 

着いたね、一番下。

なんか広がってるね、地下世界。

これがアンダーワールドってやつだなぁ?

薄暗い印象だけど、意外と遠くが見渡せる程度には明るい。

さっきの人に言われた通り道なりに進んでいくと開場所についた。

思ったより広いなぁ、まぁこの道を進んでいけばつくらしいし、とりあえず歩いて行けば………ん?橋だ。

広いとはいえ感覚的には屋内だから、橋があるとこう、違和感がすごいな。

ん、誰かいる。

 

「どちら様?ここを訪れるなんて余程の世間知らずの馬鹿なのかしら」

「目があって一言目で馬鹿呼ばわりされるとは思わなかった」

「そんな派手な頭してたら人に顔を覚えられるのも簡単そうね、妬ましい」

「ね、妬ましい?え、なに、この頭がいいと思ってくれてんの?え、なんか複雑なんだけど。そっちこそ髪の毛ストレートでいいじゃん、そっちの方が妬ましいわ」

「誰がそのもじゃもじゃを妬ましいと言ったかしら?私はただ人に顔を覚えてもらいやすそうと思っただけよ」

「そりゃこんな頭だから確かに人間違いとかはないけどさぁ」

 

パツキンばっかりのこの世界もなかなかだと私は思います!

第一人を髪の毛で判断するのは間違ってると思いますっ!あれ!?私人のこと言えなくね!?私が一番人を髪の毛で判断してるじゃんっ!

 

「えっと、その橋通っていい?頼まれてることがあるんだけど」

「他人に頼み事をされるほど信頼されてるのね妬ましい」

「あの、通っていいっすか」

「そしてそうやって利用されてることにも気づかないその平和な頭も妬ましいわ」

「おい遊んでんだろあんた、私のこと煽って楽しんでんだろ」

「今更気づいたのかしら?その平和で派手な頭が」

「もういいから!」

「あら残念」

 

残念ってなに、残念ってなに!

そんなに人のこと煽って楽しいですか!?私は楽しくないですよ!!

もうやだ地底怖い、まだろくに入ってないのにスパイダーと煽り厨いるんだもん、地底怖い。

 

「で、地上のもじゃもじゃさんがこんな薄暗い場所へ何の用かしら。特に用もないならさっさもその派手な髪の毛巻いて逃げ帰ることを推奨するわ」

「さっきから私の頭のことばっかりじゃん、珍しい?そんなに珍しいこの頭。しょうがないじゃん種族柄なんだから」

「そんな寝癖を極めたような髪で堂々と外へ出られるその頭が」

「ええかげんにせい。ようするに私がバカって言いたいんだろそうなんだろ」

「さて、そろそろ飽きたし用件を聞きましょうか」

 

飽きたって、やっぱり遊んでたんじゃないか。

あと気まぐれすぎない?そんなに煽りたい、私のことをそんなに煽りたいですか、そーですか。

 

「地霊殿の人に渡したいものがあるからそこ通っていいですかって、さっきから言ってるんだけど」

「そこの穴から来たってことは妖怪の山連中からかしら。まぁそういうことなら通っても構わないわよ、さっきは悪かったわね」

 

絶対思ってないわ、一ミリたりとも悪いと思ってないわこの人、わかるもん、目を見たらわかるもん。

緑色のカラコンなんかしよってからに。

 

「地霊殿へはこの道をずっと進んでいけば着くわ。まぁ別に難しい場所に建ってるわけでもないから、この地底をぐるぐる回ってるだけでも着くでしょうけど」

「誰の頭がくるくるローリングもじゃ毛玉じゃ」

「誰もそこまで言ってないわよ」

 

会話をやめて橋へともたれかかって目を閉じたその人をここぞとばかりに睨め付け、その道をずっと進んで行った。

 

 

 

 

ぶっちゃけ宙に浮けばいいと思った。

でも上は上でなんか目立ちそうだし、空飛んで打ち落とされたりしても敵わないし、歩いているほうがしっくりくるので歩いている。

やっぱり人は地に足つけて生活しなきゃダメだよ、ずっと宙に空いてたら筋力低下するよ。

筋力もへったくれもない体だけどな。

しっかしまぁずいぶんと活気のある街だ。

活気のあるというか、血気盛んというか、視界に絶対殴り合いが入ってくるというか、なんというか、蛮族。

あと酒臭がすごい、嘔吐物もすごい、もらいゲロしそうなレベルですごいって言葉を通り越して一周回ってすごい。

確かに鬼は酒と喧嘩が好きって聞いたことがあるけど、吐くのも好きってのは聞いたことないです。

今妖怪の山は鬼が留守にしてるから天狗がでかい顔できるって文が言ってたけど、まぁ確かにこんな蛮族たちが上司だったらそりゃあでかい顔するよね。

まぁそれにしても天狗や河童たちは怯え過ぎなんじゃないかと。

まぁ確かにこの光景を見て常人なら恐怖を覚えること間違いなしだけど、やっぱり同じ人の形をしてるもの同士なんだから多少なりとも話せばわかるはず。

いやまてよ、あのなんだっけ、名前忘れた。

き、き………おっさんが鬼みたいなやつって恐れられてたんだから、鬼が全員あんな感じだったら怖がるのも当然なのかな?

 

毛糸はこのあと、鬼という種族の恐ろしさを存分に味わうこととなったのであった。

 

的な展開にならないことを心の底を突き破ったさらにその深くから願ってます。

 

 

 

 

なんとか暴力、酒、嘔吐物の三要素を切り抜けて建物の少なくなってきた道はやってきた。

多分ここをまっすぐ進んだら地霊殿に着くはず、着くよね?道間違えてないよね?私もうここ通りたくないよ?

思えばさとりんはちょうどいい感じにこの道を避けて行ってくれてたんだなぁ。

 

 

と、思ってたのが10分前の出来事です。

 

「姐さんつれてきやした!」

「おうご苦労」

 

姐さんってなんだよ姐さんって………姐さんじゃん。

額に赤い一本角、なんか強そうな風格、周りの取り巻きの下っ端感。

間違いない、姐さんや。

 

 

地霊殿へ向かおうとしたら鬼の兄ちゃんに声かけられて職務質問みたいなのされてお前怪しい認定されて連れてこられました。

解せぬぅ………解せぬぞぉ………私の一体どこが怪しいというんだ。

挙動不審で変な頭してて、急に話しかけられて地上から来たって言っただけじゃないか………いったい私のどこが怪しいっていうんだ。

いったい!どこが!

ってふざけてる場合じゃないんだったよははっ。

 

「あの、すみません私なんかしましたか?」

「いーや特に?」

「じゃあなんで囲まれてるんですか」

「私の気まぐれ………かな」

「なんすかそれ」

「いやー、変な妖力だしてる強そうだけど弱そうなもじゃもじゃがいるって聞いたからさ、気になったから連れてきてもらった」

 

私って………どこにいっても誰に見られてもまずもじゃもじゃなんだね、間違ってないんだけどさ。

赤く大きい盃にひたすら酒を入れて飲み続ける目の前の女性。

最初見たときからすごい気になってたんだ。

なんなんだその体操服は………すごい気になるぞ。

 

「それで?山の連中に頼まれて来たそうじゃないか、あいつら元気にしてたか?」

「いやー、うん、元気だようん。すこぶる元気」

 

多分あんたらがいないから。

 

「そうか、そうか。いやー山の連中にも暫く会ってないからなぁ、また遊びに行きたいんだが、なかなか機会がなくてね」

「今ちょっと忙しいみたいだから、今はまだやめたほうがいいと思いますよはい。最近ちょっといろいろあってまだ落ち着くまで時間かかりそうだから」

「そっか、残念だなぁ、たまには他のやつとも飲んでみたいと思ってたんだが」

 

うむ、この人が地上に来るのは防いだぞ感謝しろ天狗諸君。

 

「おっと忘れてたな、私は星熊勇儀」

「白珠毛糸です」

「よし!表でろ」

「は?」

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