「夜かなー?夜だったわ」
あそこにいると時間感覚が狂う、地底で生活するんなら別にいいだろうけど、ちょっと寄ってみるとかだったら気づいたら日付変わってましたとか普通にありそう。
とりあえず天狗の人探して、返事の手紙送らないと。
んー、天狗殿天狗殿ー………夜の間はみんな山の周りとかを哨戒に行ってるからいないのかな?地底への入り口だから探せば一人くらいいると思うんだけどなー。
探してみて、どうしても見つけられなかったらかっぱのとこにでも行こう、別にかっぱに渡してもいいでしょ、きっと天狗に渡してくれる。
夜はねー、ときどーき空に怪鳥飛んでるから飛びたくないんだよなー、でも下は下で妖怪いるし。
結局夜は行動すんなってことなんだよね。
ちょっやそっとじゃ死なない自信はあるけど、また化け物格とかの人が出てきて、私を本気で殺しに来たらもう無理だね。
………よくよく考えたら、こいしはどうやってあの馬地底に持って降りたんだ?担いだの?もしかして担いだの?さすが妖怪やることが人間とはちげーや。
お、あの辺りかな?火がついていて周りが明るくなっている。
近づいてみると小屋があった、小屋以外の何物でもない、小屋である。
人の気配はしないけどとりあえず中に入るか。
「失礼しまーす」
はいここどこですかぁぁぁぁ!?
なんでや!小屋に入ろうと来たらなんで急に異空間入んねん!なんでアナザーディメンションへの入り口が小屋の扉やねん!なんなんこの世界!常識も概念もへったくれもねぇな畜生!
周りを見渡すといっぱい眼球あった、コワイ、コワイヨアノメ、ヨウトンジョウノブタヲミルメデワタシノコトミテクルヨ。
ぐえぇ、SAN値削れるよぉ。
とりあえずなんだこれ?現実じゃないよね?精神世界?入っちゃった?私の精神って病んでんだな。
とりあえずさっさと帰んなきゃ。
後ろを向くと私が入ってきたと思われる扉があった、これで帰れるぜひゃっふぅ!!と、思ったら、バッテリー切れのどこ○もドア見たい感じでどこにも通じていなかった。
え?もしかして私、帰れない?
あ、詰んだわ、さよなら私の人生、さよならお母さん、産んでくれてありがとう、あ、お母さんいなかったわ。
「はぁ………どーしよ」
「ごめんなさいね、無理やり連れてきてしまって」
「ファ!?フゥエアイァアァアァアァアイルブ!?」
「いやどんな驚き方よ」
そ、そそそらおめっ、こんな精神ゴリゴリ削ってくるような空間で突然背後から話しかけてきたらビビるに決まってんだろぁ!?全身の毛、主に頭部が逆立ったわ!
「えーと、落ち着いた?」
「おぢづいだ」
「本当に大丈夫?ま、まぁいいわ。気を取り直して………」
振り返った先にいたのは金髪の髪の長いすんごい美人。
このよくわからん空間にいたよくわからん人は、私を観察するような眼で見てくる。
「私は八雲紫、名前くらいは聞いたことあるんじゃないかしら」
「えーと、八雲八雲………あー」
八雲紫ぃ………何故こんな人とぉ………死にそう。
「…えーと、本当に大丈夫?顔真っ青よ?」
「いやあの、ホントもう無理、ヤバイ」
「え、まさか吐く?ここで?」
「うっ、おろ——」
「吐いたらすっきりしやした」
「そ、そうならよかったわ」
口から出した瞬間に口元に空間の裂け目的な何かが出来て嘔吐物がそこに入っていった、よくわかんねーけどこの人すげー。
「えっと………八雲様?さっきはとんだ無礼を」
「様はやめてもらえるかしら」
「なんで?妖怪の賢者と呼ばれるくらい凄い方なら様をつけないと………じゃあ八雲さん?」
なぜ様がいけないんだ、ええやん様、偉そうやん。
「とりあえず、私は白珠毛糸です」
「毛糸ね、よろしく」
「えと、ハイ、ヨロシクオネガイシマス」
なんだろう凄いフレンドリーな感じするのに放ってるオーラやばい、これは幽香さんと同等、もしかしたらそれ以上かもしれない。
「まぁこんな空間にいても落ち着かないでしょう?座って話をしましょう」
「座るってどこにわ〜お………」
既に座っていただと。
それだけじゃない、周囲が一瞬であの奇妙な空間から日本家屋てきな場所に変わっている。
どうなってんだ、空間を自在に操れるのか?しゅごい。
「今回貴方と会った理由は、一度話をしてみたいと思ったからよ」
「話、ですか。私なんかと」
「貴方だからこそ、よ」
「はぁ」
私だからこそ、かぁ。
地底に行ったことかなああああ!?謝るから見逃してくれないかなああああ!!
「別に貴方が地底に行ったことには何も思っていないから、安心して」
「あ、はい」
「前々から貴方にはとても興味を持っていたのよ」
「私に?」
「えぇ、なんの力も持たない毛玉という種族でありながらも、種族を大きく変えた力を持っている。それも、その力は他人由来、貴方自身も不思議に思うのでしょう?」
………
一体、この人は………
「どこまで知っているんだって顔してるわね。そうねぇ、貴方が今よりもっと先の未来から転生してきた、ということは知っているわよ」
ま、じ、でぇ?
ま、じ、かぁ。
「誰から聞いたんですか」
「誰からも。私はただ貴方が話しているのを聞いただけよ」
ふーむ、つまりなんらかの方法で盗み聞きしてたと。
なんて事しやがるんだこの美人、やばいやつやん、いや、やばいってことは前々から聞いてたけれども。
「えーと……八雲さん、あなたみたいなとんでもないお方がどうしてこんな毛屑のカスのゴミクズの価値ゼロのもじゃもじゃなんかに?」
「凄い卑屈ね、あと紫でいいわ」
とりあえず、問答無用でお前を消すゥ!!ってされてないから多分殺されたりはしないはず……されないよね?
「そうねぇ………まずは私の夢、理想から言いましょうか。私が妖怪の賢者としてこの幻想郷を管理しているのは、来るべき時に備えるためよ」
「来るべき時?」
「そうよ。貴方が元いた時代、そこには私たち妖怪は存在しておらず、伝承や伝説として語り継がれている。違うかしら?」
「えぇまぁ、大方」
なんか仲良くなったらメダル落としたり、目玉が親父だったりするけどね、あとそんなこと言ったことあったっけ。
「それを貴方はこの時代と比べて、別の世界だと思っている。でもそれは違うわ」
「えーと、どういう意味で?」
「貴方が元いた世界と、この世界は同一のものということよ」
「でもそれなら、こんなに妖怪がいるのがなんでこの先の時代で存在がなかったかのように………」
「貴方にはまず妖怪の本質を理解して貰わないとね」
今の話が本当なら、今の時代にこのわんさかいる妖怪や妖精が、未来で完全に消失してしまっているということになる。
どうしてそんなことになる?人間が妖怪を滅ぼしたのか?いやでもそれじゃ、存在が無かったことになっているのには説明がつかない。
…私のこのちっぽけな脳みそじゃ考えるだけ無駄か。
「妖怪とは、人間の恐怖から生まれたもの。感情という概念から生まれた妖怪は、精神に大きく比重を置いている。そして妖怪は人間から恐れられることで力を増す、他にも色々あるけど、これが一番強くなろうと思えば早いわね。つまり人間が妖怪を恐れなくなると、どうなるか分かるかしら?」
「……妖怪が消滅する、か」
「その通りよ、恐らく貴方の時代で妖怪が居なくなったのは、人間が妖怪を恐れなくなったから」
妖怪は恐怖から生まれたもの、ねぇ。
確かに幽香さんとかルーミアさんとかめっちゃくちゃ怖いもんね、ラスボスの風格出てるもんね、そら強いわ。
確かに私が元いた時代では、妖怪を恐れているものなんていない、だって存在を知らないから。
じゃあ人間が妖怪を恐れなくなった理由は………
「………技術力の発展?」
「恐らくね。河童を見れば分かりやすいんじゃないかしら。彼等はとんでもない早さでその技術力を上げている。人間が遅れをとっているのは、霊術などがあるからというのもあるだろうし、妖怪に襲われているというのもあるでしょうね」
「それでも、人間は少しずつ技術を発展させている」
「そうね」
河童はこのまま行くと、私のいた時代くらいになったらガン○ムくらい建造してそうだけど。
人間が銃などを発明し、妖怪と人間の力関係が逆転すれば妖怪は一気に消滅に追い込まれる。
もし私のいた時代と同じ世界なら、あの時代の歴史の教科者通りにことが進んでいくはずだ、鉄砲なんて言ったら、火縄銃だったらもう既に作られてるんじゃなかろうか。
「私が何をしたいのかというと、そんな貴方のいた時代のようにしたくない、阻止したいのよ」
「ってことはつまり、人間が科学を発展させる前に潰すってこと?」
「それも有効な手段かもしれないわね。でも人間はこの国に限らず他のいろんな土地にいるわ、逆にそのことで人間を刺激し、逆に消滅を早めてしまうかもしれない」
それならいいんだ、今は毛玉とはいえ人間が嫌いってわけじゃない、人間を滅亡させたら今度は妖怪が滅亡するだろうし。
「じゃあ、何をするつもりなんですか、紫さん」
そう聞くと、紫さんは僅かに口角を上げた。
「人間が妖怪を信じなくなる、それを逆転させるのよ」
「逆転?えーと………えー?」
「詳しく説明してもしょうがないから省くけど、この土地一体を全て結界で覆うわ」
んなアホな、それに結界で覆ったところでいったいどうするんだ。
「結界の効果は、その結界の外の非常識を中の常識とする、ってとこかしら」
バリバリ概念系キタコレ、ちょーっと何言ってるかわからないですねぇ、ここではリ○トの言葉で話せ。
「人間が妖怪を認知しなくなるその前にこの結界を張り、この土地を外界から遮断して妖怪の消滅を逃れさせる。これ以外に方法はないと私は思っているわ」
「んなめちゃくちゃな………でもできるから言ってるんですよね」
「その通りよ、まぁ成功するかしないかは一か八かってところかしら」
確かにそれなら、未来で妖怪の存在がなくなったままで、変に歴史改変みたいなのが起こる心配もないだろう、過去改変とかできるのかしらんけど。
そもそも私の記憶が全て私の妄想説も捨てきれないし、そんなことはないと信じたいけど。
「まぁこの話はこのくらいにしておきましょう。要するに私は、貴方に協力してほしいのよ」
「協力って………私なんて特に何かできるわけでもないと思いますけど」
「貴方はまだ今まで通り生活してもらって構わないわ。私と貴方、妖怪と人間が共存できるようになってほしいという想いは同じでしょう」
そんなこと一言も言ってないと思うけどなぁ。
まぁその通りなんだけど、まだってのが気になるなぁ。
あとどんだけ知ってるんだこの人、私の頭の中でも覗いてんの?
「ただ、私は同じ志を持つ仲間を増やしたい、それだけよ」
………嘘だ。
使える手駒を増やしておきたいっていう魂胆が丸見えだ、私なんていなくたって、目的を達成するならこの人一人でも十分なはず。
嘘だとはわかるんだけどなぁ、真意がまるでわからない、まるで底無し沼だ、考えれば考えるだけ沼にはまっていく。
私ごときが推し量れる人物じゃないってことは確かかな。
「それに、気に入ってくれたでしょう?この幻想郷を」
「うん、まぁいいところだとは思いますよ、何度も死にかけてることを除けば」
「貴方は相当運が強いみたいだから、そうそう死なないと思うわ」
「確かに、私は相当運がいいです、貴方みたいな凄いお方とこうやってお話できてるんですから」
「別に心にないことは言わなくたって構わないのよ」
ばれてたか。
本当に、どこまでわかってんだこの人。
「別に貴方に何かをしろと要求するわけじゃないわ、貴方は今まで通りの生活をしてくれたらいい。その日が来たら、私に協力して頂戴」
「えー、まぁ、はい、わかりました」
逆に考えたら、私がとんでもない危機に陥ったらこの人が助けてくれるかもしれないってことだ。
いやほんと、願望1000%なんだけど、そう願いたい。
断って、じゃあ貴方には消えてもらうわ、的なことなってもやだし。
「そう、感謝するわ。貴方は人間としても、人外としてもその思考を巡らせることができる、そこに私は惹かれてるのよ」
「それができないって、単純な相手の気持ち考えない自分勝手な奴って事じゃないですか」
「そういうのが妖怪には多いの、知ってるでしょう?」
うん、知ってる。
「じゃあ長くなってしまったし、そろそろお別れにしましょうか。最後に一ついいかしら?」
「え……いいですけど」
「なら言わしてもらうわね。貴方、自分の存在について相当悩んでるみたいね」
いやだからほんと、どこまで………
「今から言うことをしっかり覚えておくといいわ」
「………」
「毛玉としての貴方と、人間としての貴方、それは同じとも言えるし、別々とも言える。ただそれはどちらも貴方の中にあるわ」
「…えーと、どういう意—」
「それじゃあまた会いましょう」
「ですよねっ!」
「あだっ!ってぇ、ケツ割れたぞー……というか余計モヤモヤするようになっちゃったじゃん!もー、寝れっかな」
突然穴のようなものに吸い込まれて、自宅の前に落とされた。
パル○アかな?空間を司ってるのかな?
あと手紙天狗に渡し損ねてるし………
毛玉の私と、人間の私か……もし別々だとしたら、私は毛玉としての私となるのだろうか。
でもそれなら人間の私って一体……同じとも違うとも言ってたし、もうわっかんないねこれ。
まぁ、言われた通り、この言葉は忘れずに覚えておくけど。
「………もう夜明けかぁ」