毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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身の危険を感じたので帰ります by毛玉

 

 

地底へ来て二日目。

現在地霊殿内の書庫にて色々と情報収集中、おっきい書庫だ、図書館ぐらいありそう。

霊力を流してページを浮かしてめくるやり方で本を読んでいる。

 

とりあえず分かったこと。

この土地は今幻想郷と呼ばれているらしい。

どんな土地名だよって思ったけど、よく考えたら妖怪やら妖精やらいるんだからそりゃ幻想だわ、ということに行き着いた。

妖怪とは、さとりやこいし、幽香さんがそれに入るらしい。

あと、地底にいた大量の鬼も妖怪に入るらしい。

妖怪というからには、河童とか猫又とかもいるのだろうか。

 

「いますよ」

 

おうびっくりした!

 

「すみません癖です」

 

自覚してんなら直そうぜ?

 

「直したくても簡単には直せないもの、それが癖ってやつです」

 

ふーん………そーゆーものかね。

 

「私はさっそくあなたの癖を見つけましたよ?」

 

え?なに。

 

「びっくりすると全身の毛が一瞬逆立ちます」

 

………それ癖なの?自分でやろうとしてやってる訳じゃないんだけどな。

つかそれ別に直さなくていいし。

 

「それはそうと、今日は話したいことがあってきました」

 

なんすか。

 

「あなた………相当に特殊な生まれ方をしてきましたね?」

 

私の存在自体が特殊だと思うんですが。

 

「いえ、毛玉自体は割と探せば見つかります。まぁ地底にはいませんけどね、それでこいしも珍しがって拾ってきたのでしょうが。重要なのはそこではありません、あなたのその中身です。あ、中身といってもその体を切ったときの中身ではありませんよ、魂とかそういう奴です。魂なんてあるの?ですか。えぇ、割と普通にありますよ。先程毛玉は割と普通にいると言いましたが、あなたのように思考をしている毛玉は私は見たことがありません。おそらくあなたは転生か何かして、その体に入ったのでしょう。所謂憑依ってやつです。転生自体は普通に行われていますが、あなたのように魂が記憶を持って、それが毛玉に入るなんて事案は聞いたことがありません。毛玉とは本来、霊力を持って生まれる、というより存在自体が霊力の塊と言ったほうが正しいでしょうか。しかしながらあなたは霊力を全く待たずに生まれてきた。これは長年生きてきた私にとっても明らかに異質だということが感じ取れます。勝手ながらあなたの記憶などをいろいろ探らせてもらいましたが、どうやら私たちの存在がない世界から転生しているようですし、もうあなたに関してはほぼ全てが謎なんですよ」

 

……………………ふーん?

で、つまりどういうことだってばよ。

 

「あなたはとても不思議な存在です、あなたのような存在は、今までに私は見たことがありません」

 

最初にそれ言おうよ、長すぎるよ、てかよく噛まないね?割と早口だったし。

 

「すみません、これでも私、知らないものに関しては割と興味をそそられる系のあれなので」

 

はいそうですか。

ってか私、やっぱり転生してました?

 

「はい。ちゃんと聞こえてるじゃないですか。え?一部分だけですって?それは失礼」

 

ぱっぱと会話進めますねぇ、まぁ早いからいいけどさ。

 

「貴方みたいな人はそういませんよ、大概の人は気味悪がって私たちから離れて行きますから。そのおかげで結局はここへ………いえ、なんでもありません。話を戻しますが、あなたの記憶をのぞいた時、全く知らない世界が見えました。色々あなたにお聞きしたいこともあるのですが、何より驚いたのは妖怪や精霊の類がまったくもって居なかったことです。いや、いなかったというより存在していないといったところでしょうか」

 

つまり?

 

「あなたは私たちとは違う時代や世界から来た可能性が高いです」

 

ほほう………つまりマジもんの異世界転生だと。

つか今っていつなの?漢字あるし文字も読めるから日本だとは思うけど。

 

「時代は知りませんが………あ、そうだ。最近応仁のなんとかがが起きたとかなんとか」

 

応仁………?

応仁の乱ってこと?てことはあれ………戦国時代のアレで………えっと……500年くらい前?

元号が変わってるとかそういう次元じゃなかったぜ。

戦国時代ってあれよね?令和平成昭和大正明治江戸安土桃山戦国だよね?

めちゃくちゃ前やん。

 

「なるほど、そういう感じなのですか」

 

あ、やべ。

まぁ元号知ったところでなんだって話にもなるし、記憶も読めるんだったら隠したりしても無駄だろうな。

 

さとりのサードアイをじっと見つめる。

うん、見つめ返された。

 

「こいしのことですか………」

 

こいしのサードアイ、閉じてたからね。

 

「あれは………心を読むのをやめたのですよ。まぁ色々あったんです、昔。あなたには関係ない話ですけども」

 

じゃあ聞くのやめておきます。

 

「そうしてください、私もあまり……考えたくないので。………あなたみたいな人に、もっと早く会えていれば良かったんですけどね」

 

話は変わるけど、もじゃ系列なにがあったの?

 

「あぁ、こいしが拾ってきたもじゃもじゃした生き物ですね。毛が異様に伸びた兎とか、毛が異様に伸びた猫とか犬とか、過去に11匹いたんですが、全員死んじゃいました」

 

………死因は?

 

「こいしが力強く抱きしめすぎてです。自分の部屋に持ち込んで抱きしめながら寝てたようなんですけど、朝になったら私に、もじゃが冷たくなってる、と言われましたよ」

 

え、こわ。

抱きしめて殺すとか、こわ。

あれ?これ他人事じゃない?次のターゲット私?私次の被害者?

つか早死にっていうか普通に殺害されてるじゃん!

 

「大丈夫です安心してください、私がそうならないよう努力しますので」

 

尊きもじゃ11匹の前例があるんですが、それはそれはどうするつもりなので?

 

「…善処します」

 

おう頼りないお言葉ありがとうございます!

 

「お帰りになるのであれば言ってください、地底の出口くらいまでは道案内できますので」

 

そう言って書庫から出て行ったさとり。

地底から出るのは………まだいいかなぁ?

まだ色々と調べたいことがあるし。

せめて地上の地理ぐらいは知っておきたい。

 

地底、旧地獄とも言われる。

もともと地獄の一部だったらしいけど、なんらかの理由でここに移設されたらしい。

その時に、もともと地獄にいた怨霊とかに有効な覚り妖怪、といってもさとりとこいしだけのようだけど。

それと鬼とかも一緒に地底に来たらしい。

地底は上にある妖怪の山と呼ばれる山の地下深くにあって、その妖怪の山には現在河童や天狗が住んでいるらしい。

もともと鬼はその山を治めていたらしいんだけど、なぜか今は地底にいる。

 

地底は旧地獄と呼ばれるだけあって、灼熱地獄なるものがあり、なんかこう……管理しているらしい。

専門的な単語書いてあってちょっとよくわからん。

 

あと、妖怪及び妖精などの人外は基本的に歳を取らないらしい。

私は精霊の部類に入るらしい、妖精もそうらしい。

毛玉が精霊とか、この世界どうなってるのやら。

 

そもそも幻想郷なんて場所聞いたことないんだけど………戦国時代にはあったのかな?

いやでもこんな摩訶不思議な生き物がいるんだったら多少は絶対現代に伝わってるはず…

これはあれだな?考えるだけ無駄ってやつだな?私の本能がそう告げている。

 

あと気になるのはこの、八雲紫って人だ。

妖怪の賢者って呼ばれていて、なんでもすごい人らしい。

え?なにがすごいのかって?書いてないから知らん。

とりあえず、会ったらやばい系の人は極力会わないようにしないと、私の命が危ない。

まぁこの人は神出鬼没らしいから、そうそう会うことはないだろう。

 

……あれ?今フラグ立った?

 

まぁ調べ物もこれくらいにしておこう。頭の中整理整理っと。

 

部屋を出るためにドアの前に立った、いや立ってはいないけど。

 

………ん?

あれ?私、ここ閉めてないよね?

なんで閉まってんの?

え?

私、自力でドア開けられないんだけど、ドアノブ掴めないんだけど。

え?

あれ、これ………閉じ込められた?

 

 

出してェェェェェ!!誰かここから出してェェ!!おのれさとりィィ!ドアを閉じるとは酷いやつ!

 

うむ、全力でドアに突進したがどうしようも無い。

よし、本の続き読むか。

………また掴まれたよ………

 

「もじゃ十二号こんなところにいたの?さぁ、今日は私と一緒に寝よう?」

 

死刑宣告ありがとうございますっ!!

お母さん産んでくれてありがとう!あなたの毛玉は死にます!!さようならっ!!

 

ちょ、落ち着け、私にお母さんはいない。

え?お母さんいない?あれ、なんか目から毛屑が………

つか死にたくねェェェ!!

 

「暴れない暴れない、大丈夫、もじゃ十二号は誰かに襲われないように、ちゃんと抱き締めて寝るから」

 

それあかんやつ!それ一番したらあかんやつやて!つか襲ってんの君!!

うおあああああ!!

あ、なんか漏れた気がする。いや漏れてないけど漏らした気がする。

 

「すみません毛玉さん扉閉めたま………ま」

 

さ、さとりん…………

 

「こいし、離しなさい」

「なんで?お姉ちゃんも一緒に寝たいの?」

「寝たいけど、毛玉さんはダメよ」

「え?なんで?」

 

え?なんで?なんで私だけハブるの?

 

「毛玉の耐久性はあなたの思っている三倍脆いわ。小石をぶつけるだけで弾け飛ぶわよ」

 

えぇ…………

 

「そっかぁ………ごめんねもじゃ十二号、一緒に寝られなくて」

「もじゃ十二号は私が安全なところに避難させておくから、あなたは先に寝ておきなさい」

「はぁい」

 

た、助かった………

何故だろう、もじゃ十二号と呼ばれるとすごい身の危険を感じるぞ。

 

「扉閉めたことに気づかなくて……急いで戻ったら危ないところでしたね。本当にすみません」

 

いや、別にいいんだよ、うん………てかさとり、めっちゃくちゃすみませんって言うよね?癖?

 

「あぁ、多分癖です。それとできるだけ早く、地底から出ることをお勧めします。私までヒヤヒヤしてくるので………」

 

あ、はい………そうします………

 

「後、耐久性三倍脆いの発言は盛りました」

 

だよね!流石にそんなに脆いわけないよね!

 

「正確には、普通の人間が本気で殴ったら弾け飛ぶです」

 

いや、それはそれで………

つか本当に私脆いな?下手したら、自分で加速して何かにぶつかって飛び散るって事態になりかねないぞ………

もはや毛玉というよりただの埃カス。

 

 

 

 

「この縦穴を上に登っていけば地上に行き着きます。天狗に見つかると厄介なのでできるだけ早く移動してください。近くに道があるので、そこを通っていけば川があります。その川に沿って山を降りていけば、あなたが探している場所にたどり着けると思います」

 

いやほんと………何から何までありがとうございます。

 

「あとこれ」

 

あ、花冠、そういえば忘れてた。

つけてても違和感なくて、妙にフィットするからつけてるのも忘れるし、つけてなくても忘れる。

 

「これ、あの太陽の畑にいる人からもらったのでしょう?大丈夫だとは思いますけど、あんまりいい噂は聞かないので気をつけたほうがいいと思います」

 

そっかぁ、やっぱりそんな感じなのかぁ。

まぁしょうがないね、あの人オーラだけならここにいる怖そうな鬼の数倍はあるからね。

余裕でラスボスできるからねあの人。

よくそんな人に会って生きてたものだよ。

 

「あと一つ、できるだけ早く、落ち着いた場所に辿り着いた方がいいと思います。中途半端な場所だと大変なことになりかねないので」

 

ん?なんの話?

 

「それは………まぁ知らない方が楽しいこともありますから」

 

まぁそれはそうかもしれないけど。

危険なことだったらいくらでも教えてもらいたい。

 

「じゃあ危険なことを教えましょうか?」

 

え?

 

「今すぐ行かないとこいしに潰されますよ」

 

あばよぉさとりぃぃん!!

 

「さとりん………まぁ別にいいですけど」

 

ならよかったああああ!!

 

霊力を全力で放射しながら、全く明かりのない縦穴を上がっていった。

途中なんか居た気がするけど怖かったので速攻で登った。

 

もうやだこの世界

 

 

 

 

「………ねぇ大ちゃん」

「ん?どうしたの?」

「あたいなんか、忘れてる気がするんだ」

「奇遇だね私も。でも忘れるってことは大事なことじゃないんじゃない?」

「いやでも、忘れてる気がするってことは、思いだすべき何かがあるってことじゃないの?じゃなかったらそんなことも思わないと思うんだよ」

「おぉ………チルノちゃんらしからぬ鋭い考え。確かにそうだね……でも思い出せないものはしょうがなくない?」

「そうだよね!」

「うん。……あれ?チルノちゃん頭になんかついてるよ?」

「え?なにとって!」

「ほい。………あれ、この毛むくじゃらどこかで見たような…………」

 

気づくのに1時間ぐらいかかったかな………なんかもう疲れたよ

 

「………忘れてた」

「………なにこれ汚いなぁ……凍らすか」

「思い出してチルノちゃん。チルノちゃんの子分だよ?」

「え?あたいにそんなの居ないけど」

「えぇ………」

 

えぇ………私、影薄いのか?

あぁ、もう、なんか、疲れたよパトラックス………

 

すやぁ………


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