毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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ハイテンションを極めすぎて不審者

「夜は焼肉っしょおおおおおおおお!!フォオオオオオオオオ」

「大ちゃーん、毛糸がおかしくなっちゃったー」

「ご愁傷様です」

「焼肉なのかー」

「焼肉パーリナイッフォオオオオオオオオ」

「ぱりないなのかー」

 

ハイテンションじゃねえとやってらんねえぜこんな世界!その辺の食えそうな肉、じゃなくて獣を根こそぎ狩ってやったぜ!

あのドンカ○スが置いてった七輪でチマチマ焼いていくぜ!

後ろで首を繋いだまだ生きてる鳥がギャーギャー鳴いてくる。

 

「んだよ……この世界は弱肉強食なんだよ、大人しく強者に喰われろこのタンパク質野郎が」

「たんぱくなのかー」

「んなこたあどーでもいいぜ!どんどん焼いていくぜ!焼肉だぜ!」

「大ちゃーん、毛糸がすくいようがないよー」

「ご愁傷様です」

「ごしゅーしょーなのかー」

 

私の頭ご愁傷様です!色んな意味で!

 

「あー焼肉うまうま」

「人間の肉ー」

「ないわそんなもん」

「ないのかー」

 

 

 

 

「いやどうするんですあれ」

「救いようが無いな、前々から頭おかしいと思ってたが堕ちるとこまで墜ちたか。色んな意味で」

「でも焼く手際はめっちゃ上手ですよあれ」

「鳥焼かれてるけどいいのかあんたは」

「鴉も鳥食べますし」

「あぁ、そう」

 

二人の白狼天狗と一人の鴉天狗が、家の屋根から気の狂った毛玉を見下ろしている。

 

「最近休暇なかったんで毛糸さん励ましに行くのを口実に飲みに行こうと思ったらなんか宴始まってるとは」

「飲むだけ飲みに行きましょうよ、今なら壁に吐いてもきっと怒られませんて」

「椛、お前は吐く前提で飲みに行こうとするな」

「飲めるときに飲まないと損です」

「椛の言う通りです、せっかくの休みなんですから同族のいないところで飲もうってみんなで決めたじゃ無いですか」

「俺は首掴まれて連れてこられただけだし、明らかに同族より嫌な奴があそこで肉焼いて発狂してるんだが」

「あ、ほら河童の二人ももう行って皿とってますよ」

「何やってんのあいつら……河童ってきゅうり以外も食べるのか」

「いやきゅうり焼いてますね」

「きゅうりを………焼く?意味がわから——ぐはっ」

 

困惑していた柊木の頭に氷塊がクリティカルヒットした。

 

「オラァテメェらぁ!何こそこそ見てんだコラァ!焼肉その口にぶち込んでやろうかワッショオイ!」

「て訳で行きますか」

「そうですね、足臭は放っておきましょう」

 

 

 

 

「ひぃ!?目つき悪い人が屋根から落ちてきた!?あ、ああたまからちがっ、血がっ!」

「焼くか」

「焼くの!?」

「食うか」

「食うの!?」

「焼肉ってのは常にバイオレンスなことをしてるんだよ、生き物であった奴を肉塊へと変貌させ、その果てに地獄の業火で焼き、そして己が牙で噛み砕いて胃液という全てを溶かす液体で溶かしてんだよ」

「ちょっと気分悪くなったので帰ります……」

 

なんでや当然のことを言っただけだろ。

 

「というか盟友大丈夫かい?」

「大丈夫ってなに、頭が?」

「頭が」

「頭は常に爆発してますが?」

「いやそうじゃなくて、精神的に」

「るっせえ!叫ばないとやってらんねえんだよ!あーつら!もう悲しみが一周回って焼肉をしたいという欲望に変わったね!」

「なぁ本当に何があったんだい?話してみなよ」

「明日っていい天気ですね」

「は?………誤魔化し下手か!」

「るせえ肉食ってろ!」

「むがっ」

 

なんか色々勝手にやってきて飲み散らかしてるんですけど。

おいそこのワンコロ!うちの壁に吐くんじゃねえ滅ぼすぞ!あ、地面にやった。

 

「肉ううううう!」

「にとりさんあれもう駄目です、本格的に壊れてます」

「何かあったんだろうけどなぁ………本人があーじゃどうしようもないな」

「私は至って正常ですが!?」

「どの口が言ってるんだよ」

「むが、むがむごがが」

「頬張ったまま喋るな」

 

あー自作の焼肉のタレ美味しいなー、これ作るために何回か腹下したけど。

 

「にくー」

「だからルーミア、人肉はないって……私の腕があああ」

「あむあむ」

「食べるならこっちの体に悪くない方食べとけよ!あと私は人じゃないからそれは人肉じゃない」

「おえー」

 

あ、吐いた。

 

「毛糸さーん、こっちに肉くださーい」

「自分で焼けや!ソイヤ!」

「あ、くれるんですね」

 

カラスって肉食べんの?と思ったけど結構食べてたねそういえば。

 

「おらあ!もう肉あんまりねえぞ!」

「あんなに狂ってんのに肉だけは美味いんだな、わけわからん」

「肉を焼く人が頭おかしかろうが毛玉だろうが、焼かれた肉には関係のないことですし。足臭いんでこっち来ないでください」

「お前それいつまで言ってんの」

「足が臭く無くなるまで」

「いや臭くねえし」

「私が嘘ついてるって言うんですか?その首と足首ぶった斬りますよ」

「いやだから怖いなお前………酔ってる?」

「酔ってる訳ひっく」

「あーそーですかそーですか」

 

あ、肉無くなった。

 

「焼肉ぱーてぃ終わり!お開き!解散!」

「えー、まだ私たち来てちょっとしかたってないんですけどー」

「おめーらが来たから肉がすぐ無くなったんでしょうが!来るなら来るって事前に言いなさいよ!」

「いやー、驚かそうと思ったんですけどねー、あははは」

 

驚いたわ、そして迷惑。

まぁ帰れとは言わないけど。

そのままの勢いで七輪を蹴り飛ばして、なんか燃えるかもしれないって気づいたから氷漬けもしてその場に寝転がる。

 

「あー、胃もたれするわー」

「大丈夫ですか?」

「大ちゃん……大丈夫とも言えるし、そうでないとも言える」

「……?」

 

大ちゃんが固まってしまった。

 

「無理に明るくしなくてもいいんですよ」

 

明るくなりすぎって思われてそう。

でも今日は叫びたい気分だったんだよ、パーリィしたい気分だったんだよ、もう疲れたけど、

 

「自分の気持ちを抑えこんじゃ駄目ですよ」

あ、これ完全にヒャッハーしすぎて逆に心配されちゃってる奴だ。

 

「みんな優しくて私泣きそう」

「そんなこと言って、泣いたこともないじゃないですか」

 

ん?そーだっけ。

 

「自分の気持ちって言われてもねぇ……なんかあれだけど、私の気持ちは私にしかわからないからさ。気にしなくていいよ、私のことは。勝手に落ち込んで、勝手に立ち直ってるよ」

「そうですか……何かあったら言ってください。友達ですから」

 

そう言ってチルノの方へ行ってしまった大ちゃん。

なんかチルノに睨まれた、やめて、そんな目で見ないでー。

 

 

「……はぁ。何かあったら言ってくださいって………友達だから巻き込めないんじゃん」

「なるほどねえ」

「今度は誰………あ、こんばんは」

「はいこんばんは、少し移動しましょうか」

 

声が聞こえた方向を見ると、なんで言えばいいんだろう、空間の裂け目的な何かがあった。

そして私のいる場所が森の中へ変わり、目の前に久しぶりに見た人がいます、と。

 

「え、えええーっとと。紫さん?」

「久しぶりね。元気にしてたかしら」

 

なんで急に………

 

「貴方の気持ち、よーく分かったわ」

「え?はい?」

「辛いでしょう?突然の別れって」

「すみません、何考えてるのかはわかりませんがもうその話はやめてくれませんか」

「あら、嫌だったかしら」

「いやも何も、私の中ではもう終わったことなんで」

「あらそう」

 

つまらなさそうな表情を浮かべる紫さん。

なんで急に私に会いに来たのかわからないけど、もうあのことに触れられるのは勘弁願いたい。

 

「なんで急に会いに来たのかって思ってるでしょう」

「…まぁ」

「そんなに大したことじゃないわ、ただ一つ、聞いておきたいだけよ」

「……なんですか」

「今回の事で分かったでしょう。人間と関わるというのがどういうことか」

 

……これはあれか、あの夜の出来事は全部見られてたってことか。

 

「何が言いたいんです」

「これからどういう風にしていくのか、気になってね。貴方が人間と非常に友好的なのは分かっているわ。でも人間と関わるのがつまりどういうことか、貴方は理解したはずよ」

 

人間、妖怪、その差。

 

「人間は脆く儚いわ、私も幾度となく人間と別れてきた。貴方は知ってしまった、その辛さを」

「………」

「これからこの先、貴方はどう人間と接していくのかしら」

「………」

「まぁ答えは聞かないでおくわ。どうするか、しっかり考えておいてね」

 

一方的に喋られて勝手に帰られた。

気づけば元いた場所に戻っていた、神出鬼没すぎい。

 

「そんなもの、考えるだけ無駄じゃん」

 

私は自分がどうしたいかなんてわからないし、別にどうでもいい。

この世界はきっと、私なんかがいなくても何も変わらずに回ってるんだ、私がいたって何かが変わることなんてないんだ。

 

「私のことなんてどうでもいいし、気にする必要はない」

 

私が好きなのは自分じゃない、この世界だ。

この世界が変わらずに回るのなら、私はどうなってもいい。

 

「あー……頭痛くなってきた」

 

ダメだ、こんな大して大きくもない頭で難しいこと考えたら頭痛で死ぬね。

 

「おーい、私の家の周りで刃傷沙汰起こすのやめてねー」

「いや止めてくれええ!!」

「足臭、斬る」

 

酔うと辻斬りみたいになるとか、笑い事じゃなくて逆に笑えるね。

 

「俺の足は臭くねえ!」

「臭いから斬る」

「臭いですよ、臭い臭い」

「るりきゅうり食べるー?」

「あ、もらいます」

「大ちゃん、あたいお腹いっぱいで死ぬ…」

「だから食べ過ぎないようにって言ったのに…」

「誰か止めてくれよおおお!!」

「うるさ」

 

あー、今夜は月が綺麗だなー、うんうん。

なんかこう、綺麗だねうん。

うん?

 

「あー」

 

ルーミアが、私が作ったりんさんの墓石の前で佇んでいる。

私がルーミアに質問した限りでは、なんにも覚えてなさそうだったけど……何か感じることでもあるのかな。

それとも不自然にある石が気になってるだけか。

 

「ルーミアくーん、そんなところで何してるんだい」

「あー?よくわからない」

「えぇ………」

 

あっちの方のルーミアさんは完全に消滅したのかな………

私は別にどっちでもいいんだけど、胸にあるモヤモヤしたものがなかなかとれない。

まぁそれはルーミアも同じかなぁ。

 

「いってえええ!!背中、背中が切れたああ!?」

「あ、すみません手が滑りましたそのまま楽にしてあげますね」

「楽に死なせる気ないだろ!四肢を一つずつ落としていくとかそういうこと考えてるだろお前!」

「足臭は黙って死んでください」

「まぁまぁ、椛落ち着いて」

 

あ、文に言われたら止まるんだね。

 

「肴は手羽先かな」

「あやや!?」

 

バーサーカーは止まらなかったわ。

 

「ちょ、こっちに来ないで……って、あれ?」

「ぐぅ………」

「完全に潰れたな、なんでいつもこうなるかなぁ………」

「まぁ今日は吐いてないだけマシだよ、あーよかった、今日は私の家は無傷だー」

「あ、すまん、壁に当たって削れた」

「oh……」

 

 

 

 

「それでさ、ここの配線に迷ってるんだけど、なにか良い案ないかな」

「別にこれ、ここ通さなくてもよくない?直接こっちからじゃダメなの?」

「あ、確かにそうすればよかったですね」

「流石だなぁ……ってかなんで私達より電気とかに詳しいんだよ」

「なんでって言われましても……」

 

どうやらにとり達河童は現在、いつでも冷たいきゅうりを食べるための装置を作っているらしい。

完全に冷蔵庫ですねわかります。

 

「さっきはあんなに煩かったのに、今じゃすっかり戻ったね」

「まぁあれで溜まってたもの全部吐き出せたかなぁ………まぁ叫びすぎたせいで獣が襲ってきたんだけどね」

「聞きましたよ毛糸さん、とうとうこれで引きこもり仲間ですね」

「勝手に仲間にするな」

 

というかるり、お前も最近大して引きこもってないんじゃ………会ったばかりのころなんて外出た瞬間に過呼吸になってたのに。

 

「そうそう、この前るりが凄かったんだよ」

「え、なに」

「山で小さな反乱が起きたんだけどさ、るりがなんか一人で五十人くらいやっちゃってたんだよ」

「え、すご」

「変わりにあたしの部屋は無くなりましたけどね……ははっ」

 

顔が笑ってない笑ってない。

 

「その後さ、河童みんなでるりを胴上げしたらすぐに泡吹いて気絶したんだよ」

「しょうがないじゃないですか。部屋が無くなった衝撃で既に気絶寸前だったのに、それでそんなことされたら誰だって泡吹きますよ」

「いや絶対に吹かんわ」

「そうだね、それにもし吹いたとしても白目向いて絶叫しながらとんでもない顔で周囲を引かせるようなことはしないね」

「そんな顔してたんですかあたし!?」

 

してそう。

引きこもりはマシになっても、本質は変わらないんだなぁ。

 

「椛本格的にやばいので帰ります、今日はお邪魔しましたー」

「ほら、ちゃんと立って歩け、息くさっ」

「もう、二度と飲まない………」

「じゃあたしたちも帰りましょう」

「そうだね」

「毛糸さん、新しいあたしの部屋に引きこもりたかったらいつでも歓迎しますよ」

「え、あ、うん。うん?」

 

完全に引きこもり仲間認定されて、山の奴らは帰っていった。

ルーミアも気づいたらどっか行ってた。

 

さーて、今夜はよく眠れそうかなー?

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