毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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念願だった………はずだけども

………は!

 

すやぁと言ったらマジで寝てしまった。

毛玉になってからの初めての睡眠、かもしれない。

というか寝てたのか?ぼうっとしてただけじゃね?寝るということが脳味噌を休憩させることを言うのであれば、間違いなく私は寝ていない。

だって脳味噌ないもん!!多分!

 

周りはちょっとした洞穴みたいな感じだ。

きっと大ちゃんが私をここに押し込んでくれていたんだろう。

 

さて、ずっと横になってるわけにも行かないので立ち上が………

 

立ち上がるってなんだろう………足無いのに。

いや、でも待てよ、私は今上を向いているし、感覚的には大の字で寝ていた。

つまり手足の感覚がある。

あれ………手足?私無いよ?手?足?動体?無いよ?だって私毛玉じゃん。

急に鼻で呼吸をする感覚を自覚する。

鼻?無いよね?

あっれれぇ?おっかしいぞぉ?

すごいデジャブを感じる………

 

これって………あれ………そーゆーこと………だよね?

んー………

 

 

私の毛玉ボディが消え去ってノーマルボディになってやがる………

ふとさとりんの言葉が脳裏を過ぎる。

なんか意味深なこと言ってたよなぁ………つまりこういうことなのかなぁ………

 

よし、このまま驚いているだけじゃあ何にも始まらない。

とりあえず体の確認をしなければ。

もしかしたら毛玉に手と足が生えて鼻がついただけかもしれない。

鼻がなかったら完全にス○モ。

いや、そんなことはあってはならないけれども!!

 

勇気を出して私の体を見る。

 

うん、全裸

 

悲報、私氏、手足が生えたら全裸だった。

そりゃそうだよね!人になったら服もセットでしたなんて、そんな都合いいことないもんね!!

急いで私の下に敷かれていた葉っぱを手に取ってあそこに当てる。

非常にまずい、ヒジョーにまずい、ヒジョーニマズイッチ。

まずい状況すぎてわけのわからない言葉を発してしまうゾイ。

おうふ落ち着け落ち着け、このままだとアキラ1○○%的なあれになりかねない。

ネタならともかく普通だったら公然猥褻でお縄になりかねない。

てかあれ、私って多分心の中は女性なんだけど体の方は?下半身しか隠してないけど。

 

………チラッ

 

即葉っぱ被したよね、ありのままの私隠したよね。

さーてどうするどうする。

この葉っぱで服作る?いや無理無理。

誰かに助けを呼ぶ?いや、でもこの状態だと気づいてくれる人がさとりんぐらいしか居なさそうだし………

でもこの状態はまずいよねぇ………

声出る?

 

「あー」

 

シャァベッタァァァァァァァ!!

 

まさか自分にこれを言う日が来るとは………

つかボイスが聴き慣れません!若干ロリボイスな気がします!!私の体型ロリなんですか!?

とと、とりあえず立ち上が——

 

「なんか騒がしいな………誰かいるのかな?」

 

あ………ずいぶんと聴き覚えのある声……

 

どうしようもねぇわぁ〜もう諦めたわ〜

よりによって大ちゃんに見つかったわ〜これはもう裸族認定確定になりましたわ〜

 

まて、まだあきらめるのは早い。

いや、手遅れなんだけども!あきらめるのは違うだろォ!?

そうだ!今すぐいつもの毛玉ボディになれば!そうすればこの状況を回避できるッ!!

うおおおおおおお!!戻ってこい私の毛玉ボディィィィィ!!

 

「………あ、失礼しましたー」

 

………帰っていった。

 

酷いよね、こんなのって。

私、悪くないよね、何一つ、悪くないよね。

せめてさ?何か予兆ぐらいあってもよかったじゃん。

毛玉ってさ?妖精と同じ精霊なんでしょ?じゃあさ?服くらいあってもいいよね?タチの悪いドッキリ番組でもさ?もーちょっと配慮あるよ。

せめてさ、下着ぐらいくださいよ。

全裸は無いですって、さすがに酷いですって。

まあ要するに

 

「服くれ………」

 

いやさ、うん。

世界って、残酷だね。

そりゃあね、毛玉に人権なんてないですよ、今の私が毛玉かは知らんけども。

そもそもなんで私こうなった?人ではない、うん、ただの人ではない。

となると妖怪にでもなったか?動物がなんらかの理由で妖怪になるケースもあるらしい。

いやでも、こいしやさとりん、幽香さんから感じられたようなものは私からは感じられない。

となると妖精コース?妖精のような何かになった?ありえる。

そもそも妖精と毛玉が同じ精霊なら、毛玉が妖精のような体を得てもいいはず……いや待て、そもそも精霊ってなんだろう?いやそれを言い出すともはや毛玉って何?毛の玉?誰が得するの?それ。

 

よし、ちょっと落ち込むついでに悟り開いてくっか。

 

と思って目を閉じて寝そべろうとした瞬間、顔面に何かが叩きつけられた。

 

「それ、着てください」

 

あ、スミマセンありがとうございます………

 

 

 

 

「えーっと………それで、あなたは毛玉さん………てことでいいんですかね?」

「ハイ」

「そ、そうでしたか………」

 

気まずい死にたい帰りたい、土に。

なんかすごい気を使われてるやん、敬語やん、初対面の相手扱いやん、確かに実質初対面だけども。

あー還たい。

 

「………」

「………」

 

………気まずい。

どうしてくれようかこの空気。

 

とりあえず服はもらった。

といっても、すこし小さいけどね。

包まっているだけなんだけど、周りから見たらまぁ全裸には見えないだろうからこのままでもいいや。

 

また、誰かが来たようだ。

 

 

「おうい大ちゃーん、よくわからない毛玉なんか放っておいて遊び………誰だお前!?」

 

毛玉です。

 

あなたの子分の毛玉です、まぁね、初見じゃこんなのわからんわ、うん。

 

「チルノちゃん、この人はあの毛玉さんだよ」

「え………はぁ?おいおい大ちゃん、いくらあたいの物覚えが悪いからって流石にそんな嘘には引っかからないよ?そもそもなんだよそのふざけた頭は!!」

 

ふざけた………頭?

いやぁ………まぁ、予想はつくけどさぁ?

 

「ちょっと川に行ってくるわ………」

「あ、はいお気をつけて。チルノちゃんには私から説明しておきますので」

 

ぐっ………敬語………

 

「おい待てよ!お前大ちゃんと何してたんだ!なんか悪いことしてないだろうな!!」

「してないしてないから、とりあえず私の話を聞いて?」

 

わぁー久しぶりのあんよだー感激だなー。

 

 

 

 

意外と歩けた、喋り方忘れてなかった。

前にもし体ができた時のこと考えてたんだけど、動かし方わかんなくなって最悪詰むんじゃないかと思ったんだけど、全然大丈夫だったね!

世界って優しいね!服関係以外は!

とはいえ素足で土の上を歩くのはなかなかきつい、この感覚も久しぶりだけど、不快なものは不快だ。

足の裏すんごい汚れる。

 

それにしても、なーんで私は記憶失ってるんだ?時代やくだらないことは覚えてるくせに、自分のことになるとなーんにも思い出せない。

急に体ができたのも謎だし………あ、よく考えたらもうこの世の全てが謎だわ、考えるだけ無駄だわ。

という思考放棄をこの状態になってから一体何回してきたのだろうか。

 

歩くにつれ川の音が流れてくる。

やはり、普段の毛玉状態の方が早く移動できるかな。

まず足を突っ込んで汚い足を洗い流す。

ちょっとした小さい川だけど、その綺麗な水面は私の顔を映し出す。

そっと覗き込んでみる。

 

……………

 

しってた

 

でも一応

、し

なんじゃこの白いもじゃもじゃは!?これじゃあまるであれじゃあないか!某糖尿病銀髪侍と緑のもじゃもじゃヒロオタを足して2で割った感じになってるじゃあないか!!もうちょっとマシな髪型は無かったんか!?クセありすぎだろ!?

 

ふぅ………

 

やーっぱり頭は毛玉そのものだったよ。

あれだね、毛玉の擬人化イラスト描いてもらったら五人中四人くらいはこんな髪の毛にしてるだろうね、だって毛玉だもの。

 

頭をぶんぶん振ると髪の毛がふぁっさぁってなってる感じがする。

試しに触ってみる。

 

………あれだよね、私今までふわふわって、浮いている感じで使ってきたけど、私の髪の毛あれだわ、ふわふわしてる。

すごく………ふわふわしてます。

 

そのあとも頑張って目を凝らして水面を見たけど、わかったのは髪の毛は白いもじゃもじゃ。

瞳の色は多分黒。

顔の形?水面じゃ見えないんだよ察しろや。

あれ?幽香さんとこ鏡あったよね?割と大きな。

つかあの人の暮らしっぷり割と現代に近かったんだけど………ここ本当に戦国時代?てかあの方何者?

いや、今更か。

てか私が何者だったわ。

 

この体の力………というか筋力。

ためしに近くにあった小さい木の枝を手に取ってへし折ってみよう。

うん、折れるわ。

じゃあこの人の頭くらいありそうな石………

あ、無理だわ、やっぱり貧弱もやっとヘアーボールだったわ、もはや貧弱もやしボール、もやし玉に改名した方がいいレベルで貧弱だったわ。

そんな岩でも、私がちょっと霊力を流せば簡単に浮くんだけどね。

うむ、手がある分浮かせたものを動かすのは楽なものだ。

 

あ、そうだ。

この状態でも私は宙に浮けるのかな?もし浮けなければ私の個性が一つ減って、ただの髪の毛が変な変態へと成り下がってしまう。

 

早速試そうとしたけど………そもそもどうやって私って浮いてたんだ?

霊力を持つ前から宙には浮いてたし………こんな時こそあれか、念じるのか、念じれば解決するのか。

うおおおお!!浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮け浮きましたー。

やったぜ。

念じたらどうにかなるもんだね。

なんとなく久しぶりな感覚だけど、足と腕がぶらんぶらんとしていることに関しては新鮮に感じる。

宇宙行ったらこんな感じなのかな?

今度は落ちろと念じてみる。

 

おっと……… 

落ちようと念じてからは早かった。

もう一度宙に浮こうと念じてみる、するとこんどはすんなりと宙に浮いた。

 

ふむ、なんとなくわかった。

一応、この人の形をしている状態であれば重みはある。

風で流されたりはしないし、貧弱ではあるけど筋力もあるらしい。

とりあえずもうこれで風に流されることはなくなったぜ!!

浮くことに関しても、2回目以降は割とスムーズに切り替えることができるようになった。

感覚的には………そうだなぁ

ゴムの風船を膨らますのは2回目から楽になる的な?辛いのは最初だけ?みたいな?

ちょーっと何言ってるかわかんないですなぁ。

まぁほんと、この辺のとこは感覚的なアレなので説明するのなんて無理無理。

 

浮遊状態での移動方法は毛玉の時とそんなに変わらない。

人の形をしていて重みがあると言っても浮遊状態であれば関係ないようだ。

ただあんまり急に体を動かすと、手足とかの関係で関節が痛くなったり、そもそもスピードが出なかったりする。

というか今更なんだけど、なんで落ちずにずっと宙に浮いていられるのだろうか。

チルノの頭にくっついてた感じ、毛玉の状態………というより浮いている状態では重みは発生しないらしい。

本人が全く気づかなかったのが根拠だ。

え?単にバカだったから?

………そんなことはないと信じている。

 

まだ眠気の残っている顔を、川の水で洗い流す。

 

にしてもなんで急に眠たくなったんだろ。

この体になるためにエネルギーが必要で、それを蓄えるために寝始めたとか?

いや、でも実際私は今も眠気というものを感じている。

目覚めた時からずっとだ。

考えられるのは………毛玉から人に近づいた?

胸に手を当てる。

あれ?心臓って右側だっけ?左側だっけ?

めんどくさいから両手つけてしまえ!!

 

………

 

あ〜鼓動の感覚〜

 

脇で手を挟んだり、口の中に指を突っ込んでみる。

どれも久しぶりの感覚だ。

いや、普段からこんなことしてるわけじゃないけども。

そもそも前世の記憶なかったから言い訳のしようがなかったわ。

それはともかく、脇に手を突っ込めばあったかく、口の中はちゃんと唾液で濡れていた。

 

うむ、間違いない。

今の私は、ちゃんと臓物がある。

多分心臓から胃、腸、その他もろもろちゃんとある。

頭から足の先まで血管が伸びている、爪も生えている。

今の私は、ちゃんと人だ。

もしかしたら人じゃないかもしれないけど、人間に近い何かだってことはわかる。

であれば、突然眠気が発生するのもまぁわかる。

だって普通の人なら睡眠が必要だもの。

ずっと毛玉で寝る必要なしに過ごしてきたのに、急に眠らないといけないようになりましたって、これもなかなか………まぁ体を得たのは嬉しいことだけども。

 

 

へぁっ!!

気づいてしまった…

ワタシ、カラダ、オンナ。

 

ちらっ

 

うん、うん………

ステータスステータス。

 

そもそも毛玉って性別ないよね!?そりゃあさ!一人称私だよ!!でもさ!そこは中性とかじゃあないの!?毛玉に性別なんてないでしょ!?あったとしてどこで見分けるの!?毛質!?毛質とか!?毛質で見分けられたりするんですか!?別にいいけどね!!

正直小さい方が好き。

なんの話かは言っていない。

 

とりあえず一旦戻るか………

多分大ちゃんはあれだろうな……初対面の相手にはちゃんと敬語使える人なんだろうなぁ……

感覚的にはあれでしょ?いなくなったペットが人間になって帰ってきた的な。

 

「はぁ………気まずい…」

 


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