毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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毛玉と人形使い

魔法の森と思われる場所に足を踏み入れて、多分5分。

早々に目眩がしてきた。

 

おかしい…毛玉状態である私が目眩だと…

段々平衡感覚がおかしくなってくる。頭も痛くなってきた。

おかしい…毛玉状態である私が頭痛だと…

あ、やばい、これ本格的にマズイ、視界がぐるぐるしてきた。それに加えてもやもやーっとしたものがどんどん視界の中に…………

 

 

………視界に毛玉が一匹現れたんですけど。

 

毛玉がふわふわと私の視界の中で宙を舞う。あっちへ行ったりこっちへ行ったり、まるで意思を持っているかのように。

まるで私に存在感を示しているような。

 

その様子をただ見つめていると、突然毛玉の動きが止まり、その顔がこちらに向いた。

その瞬間、毛玉の姿が変わった。私そっくりに。

 

………ふぉ?

 

私そっくりなそいつは、無表情で私のことをただ見つめている。

私が何が起こっているのか理解できていない間に、私そっくりなやつは森の奥へと進んで姿を消してしまった。

なんか追いかけないとマズイ気がする。

 

そう思って毛玉状態を解除した瞬間に、しまった、と思った。

 

 

 

 

 

 

「………ふぉ?」

 

私は一体いつ寝たんだろう、こんなふかふかのベッドの上で。

ん?ふかふかのベッド?なんでふかふかのベッド?

というかここはどこ?マイハウスじゃないよ?マイハウスはぶっ壊れたよ?

思い出せ…思い出せ……何があったのかを………

 

ハッ、そうだ幻覚だ。私は幻を見ていたんだ。それで何をとち狂ったのか身体を出して、鼻で呼吸し、胞子を吸って…

 

あーバカ、このクソ毛屑が、クソまりもめ。アホだなお前。

はああぁぁ、まさか呼吸していなくても影響があるとは。恐るべし魔法の森。

 

 

「あら、お目覚めかしら」

「ほえ?」

 

声のした方向を見ると、可愛らしい人形が目の前にあった。

 

「ひょ?」

「あなた、森の中で倒れていたのよ。何があったのか思い出せる?」

「キエェエッ!!シャベッタァ!ニンギョウシャベッタァ!?ナンデッニンギョウシャベッタァ!?」

「いや私こっち」

 

人形のさらに奥を見ると、金髪の女の人がいた。

すごい指をクネクネさせている、なにしてんのあれ。

 

「あ、あぁどうも」

「はいどうも。ではなくて」

「あ、助けていただきありがとうございます」

「どういたしまして。ではなくて」

 

じゃあなんだって言うんだ。

ハッ、まさか助けた代わりに働けって言われるのか!?嫌だ!私は死ぬまでニートでいるんだ!

 

「あなた、この森に入ってきたわよね」

「はい」

「なんで?」

「なんで…と言われても……」

 

暇だったから……と言うしか無いなあ。

 

「…まあいいわ。聞かないでおく。この森の瘴気が良くないものと知っていても尚、ここを訪れる理由があったのね」

「うぇ?あぁ、うん…」

 

そんな切羽詰まってそうな理由ないです。

 

「あなた、名前は?」

「白珠毛糸です」

「私はアリス。先に言っておくけど魔法使いよ」

 

アリスっ、ここはどこの国ですかっ、日本じゃ無いんですかっ。

ん?魔法使い?

 

「あ、はあ〜、魔法使い」

「…意外ね、もっと驚くと思っていたのだけれど」

「そりゃあこの森に魔法の森って名前だし、魔法使いの一人や二人いて当然でしょ」

「私は魔法使いになって日が浅いけどね」

 

なるほど、魔法使いになると指先をクネクネするようになるのね。

この部屋中を人形が飛び回っている、まさかその指先のクネクネで操ってるの?どうやってるのそれ。

 

「あなたは?」

「はい?」

「種族よ、種族。人間ならまず森に入ることもままならない。妖怪なのは確かなのだろうけど」

「あ、自分毛玉です」

「………毛玉ぁ?」

 

突然だけどアリスさんの目つきが変わる。

こう、めっちゃ舐め回すように私のことを見てくる。指をクネクネさせながら。

 

「あ、あの?」

「なるほど、毛玉が妖怪になるような場合もあるのね。聞いたことはないから恐らく相当稀なことだろうけれど。通りでいくら観察しても種族がわからないわけだわ。それにしても持っている力が特殊ね、霊力と妖力が同じ肉体に同時に存在している?そんなことは…」

「あのー、アリスさん?」

「………あ、ごめんなさい、つい」

 

まあ私はそりゃ相当レアな奴だろうし……ハッ。

まさか助けた代わりにその身体を解剖させろとか言われる……?

 

「改めて。私はアリス・マーガトロイド、まあアリスって呼んでくれればいいわ。この魔法の森で魔法の研究をしているの」

「あー、白珠毛糸です。まあただの毛玉です」

「どう考えてもただの毛玉じゃ無いわよね?」

「毛玉です」

「いやいや……」

「毛玉です」

「あそう…」

 

そういうとアリスさんは何か考えこんでしまった。

下を向いてなんか呪文みたいなものをぶつぶつ喋っている。

わあ、変人だあ。

 

「よし、決めたわ」

「はい?」

「あなた行く当てないのよね?」

「え?あ、あぁ、まあそう…かな?」

「なら少しの間でいいから、ここで生活してくれないかしら」

「何言ってんだあんた」

 

…………え?いや本当に何言ってんだこの人。

こんな?正体不明の毛玉と?同居したい?こんなUMAと?さっき知り合ったばっかりの?少ししか喋っていない私たん

あっ、この人頭イってるわ、ヤバいわ。

 

「私、あなたに興味が湧いたの」

「そんな興味捨ててもらって結構です」

「じゃあ聞くけど、あなた自身、自分が一体何者なのか理解できていないのではないのかしら」

「ぬ………」

 

確かに、私は自分がどういった存在なのかわからないし、知りたいとも思っているけど……それとこれとは…

 

「あなたがここにいる間、私があなたのことを調べる。そしてわかったことがあれば、あなたに教える。駄目かしら」

「いや、うーん……駄目というか………ちょっと待って」

 

自分のことが分かるなら願ったり叶ったりだけど、何せ見知らぬ人と一緒に住むというのが……抵抗があるなあ。

でもこの人の目は本気そのものなんだよなあ……私のどこにそんな興味をそそられるのかわからないけど………

まあ、これも暇つぶしというか、経験……と考えるなら……

 

「そう……だなあ。それなら別に良いよ」

「本当に?嘘じゃない?」

「何故嘘をつかないといけない」

「よし………じゃ、短い付き合いかもしれないけどよろしくね、毛糸」

「あー、よろしく、アリスさん」

 

なんでこんな急展開になってんだろ………

 

 

 

 

「ふーん………つまりその身体の中にある霊力と妖力は、もともとあなたは持っていなかった、ということね」

「はい……そうっす………」

 

いきなり私のことについてめっちゃ質問された。

なんか体調悪いから遠慮してほしい………

 

「………大丈夫?」

「大丈夫じゃない……無理」

「まあ、長い時間森の中でくたばってたものね。この短時間で回復したのは流石というべきか……あなたが倒れてたあたりは幻覚作用のあるきのこが沢山生えていたし」

「幻覚………あぁ、あれか」

 

幻覚……というか目眩吐き気頭痛が激しかったんだけど。

もう二度とあんな思いしたくないね。

 

「どんなものを見たのか思い出せる?」

「はあ、幻覚………なんかもう一人の自分が現れたなぁ」

「自分が?」

「私そっくりな奴が突然現れて、どっか行って………そこで気を失ったっけ」

「………」

 

またアリスさんが考え込んでしまった。

何を考えているのか気になるけど、それよりもっと気になることがある。

 

「あの、部屋中で動き回っている人形は?」

「あぁ、私は人形使いだから」

「人形使い…魔法使いでなく?」

「魔法使いであり人形使いよ」

 

副職じゃないか!

そんなことが許させると思ってるのか!勇者とゴッドハンドを兼任できるわけないだろ!ダ○マ神官が許しても私は許さない!

 

「てか、アリスさんの種族って何?」

「魔法使いだけど」

「ふぉ?種族が魔法使い……?」

「そうだけど」

 

あれおっかしいなあ……魔法使いはそういう職業では…?

人間でも妖怪でもなく魔法使い?種族が魔法使い?

魔法使いってなんだっけえ?

 

「………知らないようだから、教えてあげるわね」

「…よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

「はあ………つまり人間をやめて魔法使いになれる術があって、それをすると人間でも妖怪でもない魔法使いってのになると………すみませんつまりどゆこと」

「霊力でも妖力でもなく、魔力を持つものが魔法使いということ」

「は、はあ…」

 

釈然としないなぁ…………ま、まあ、この世界の魔法使いってのはそういうものなんだろうな。

 

「それじゃあ、人形使いってのは…?」

「私にはある夢があって、そのために人形を操る魔法を日常的に使っているのよ。私も最近魔法使いになったばかりだし、ちゃんと練習していかないとね」

「最近ってどのくらい?」

「大体五十年くらいじゃないかしら」

 

五十年って最近なんだ!っへえええ!そーなんだー!

 

「私まだ十年くらいしか生きてない…」

「まあ五十年なんてあっという間よ」

 

それが魔法使いの基準かぁ……魔法使いパネェ。

 

「あ、私でも魔法って使える?」

「え、使いたいの?」

「え、使いたいですけど」

「なんで?」

「え?なんでって………」

 

そりゃあ、カッコいいのに憧れるからに決まってるじゃないの。

 

「それだけ強力な妖力を持っているのに、これ以上何を求めるの…」

「いや、まあ………とりあえず、使えるの?」

「魔力があれば、ちゃんと学べば使えるわ」

「魔力ないんですけど………アリスさんは最初から魔力持ってたの?」

「私の場合は………」

 

また考え込んだよこの人。

 

「そうね……まず魔力というのは、大体は生まれつき持っていることは無いわ。魔力を持っている人、つまり魔法使いの子どもは持っていることがあるけど。魔力を得るためには正しい手順を踏んで術を成功させる必要があるの」

「アリスさんはそれしたのか」

「えぇ。細かいことは省くけど。魔力、妖力、霊力。私たちの周りで最も身近な力の三つよ。まあ魔力は幻想郷だと見れるのはこの魔法の森くらいだろうけど」

 

魔力はアリスさんみたいな魔法使い。妖力は山や地底にいた妖怪。霊力は妖精や人間が持っている。

 

「基本的に、一つの生き物がその身体に宿していられるのはこの内の一つだけよ。もちろん、例外もいるけどね」

「へぇ……でも私二つあるけど」

「そう、そこが貴方の不思議な部分」

 

なんか指を刺されて宣言された。

 

「何故、一つだけしかその身体に力を宿すことができないのか。その理由はその生き物の魂と、その力が深く結びついているから。一つの魂に複数の力が同居している例外もいるし、なんならその逆もありえる。ただまあ、普通、そんなことをすれば魂が壊れるわね」

「ヒェッ…………でも、さっき言ってた感じでは、魔力は一つの魂に入るってことに…」

「私の場合、もともと持っていた力を魔力に上書きしたからね。元々魔力の持っていなかった魔法使いはこうやって魔力を得ているわ」

 

はえぇ………自分の妖力とか霊力とかを変異させて、別のものにできるってことか……

じゃあもし私が魔力を手に入れようとした場合、霊力と妖力のどちらかを手放さなきゃいけないわけかあ………

どちらか選べって言われたら霊力を捨てるけど…霊力は私の体を構成しているし、勝手に変えたら大変なことになりそう………普通の毛玉が持っているのも霊力だし。

そもそもチルノと幽香さんから取ったようなものだからなあ……そう簡単に手放す気にはならない。

 

「じゃあ私は魔法使えないなあ…」

「いや別に使えることには使えるけど」

「えっ」

 

使えんのかい!

 

「霊力魔力妖力、宿っている存在こそ違えど、本質的にはどれも似たようなものよ。例えばそうね……」

 

曰く

霊力は自然の力を宿していたり、退魔の術の元になったりする、生命力そのものみたいなもの。

 

魔力は、色んなものに変化することができて、炎や水を出したり、人形を操ったり……なんというかこう、すごく魔法っぽいことができる。

 

妖力は他の二つに比べて力そのものが強くなる傾向があるけど、その代わり霊力や魔力のように変化することが難しい、とのこと。

 

正直複雑すぎて、アリスさんに説明聞いてもよくわからなかったけど…

まあ大体こんなもんっしょ!

 

「あら、もう暗くなってきたわね」

「あーもうそんな時間。まあ気絶してたしそんなもんかな」

「当然、泊まるわよね?」

「え?あ、うん。泊めてくれるならありがたく」

 

まあ現状、この家の外から出るの怖いし………なんかこの家の中は大丈夫だけど、扉を開けたら急にまた幻覚が見えるとか……

 

「じゃあ色々準備しましょうか。貴方の部屋の片付け、手伝ってくれるわよね?」

「そりゃもちろん」

 

つか私の部屋あるんだ………私の部屋あるんだ!

私の家はもう完全に豆腐で、もはや家ですら無かったけど、他人の、こういう普通の家って感じのする建物で寝泊まりするのはこう………

 

結構、楽しみです。

 

 

 

 

 

「………寝たわね」

 

突然森に現れた、自称毛玉の彼女。

持っている霊力はそこまででも、妖力は大妖怪とか、そんな感じの強さを有しているように思えた。

最初はかなり警戒していたけど、まあこの森の瘴気で倒れるくらいだしそこまでとんでもない奴ではないだろうと判断して、なんとなく助けてあげた。

 

正直、彼女の身体はどうなっているのか、全く見当がつかないけど、ただ一つ気になることがある。

 

彼女の見た幻覚、もう一人の自分。

幻覚作用にもたらすきのこにも色々あれど、彼女が倒れていた辺りに生えていたのは、その者の深層意識を映し出すもの。

その多くは、自分の求めているのもの、願望、復讐や殺意と言った強い感情とかの、その者の心の多くを占めている。

そんな中から彼女の目に映ったのは、もう一人の自分………

 

まあ実際は全くわからないのだけれど。

考察ができないわけではない、でもそれは、それが正解とはあまり思えないような答えで……

深層意識が最も前面に出てくるのは夢の中、寝ている最中。

寝ている彼女が何か鍵になるようなことを寝言で言わないかなと、淡い希望を持っていたけれど。

 

「うぅ……キノコ殿下ぁ……お待ちください、今の兵力ではタケノコ皇女には敵いませぬぅ…」

 

無駄だったようね………

っていやいや。

 

「どんな夢見てるのよ…」

「殿下の気持ちもわかりますがぁ………今の貴方は復讐にぃ囚われて……王国の民たちが殿下を待って……帝国と戦うにはまだ早すぎますぅ……お待ちください殿下ぁぁ………」

「これって起こした方がいいの?なんかとんでもないことになってない?」

「…………」

「え、終わったの?そこで終わったの?」

 

…………えぇ?

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