毛玉さん今日もふわふわと   作:あぱ

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毛玉は頭が悪い

藍さんと私の何が違うか。

まあ色々違うんだけど、とりあえず一つわかること。

妖力弾の出し方が違う。

私はいつも氷出す時も妖力弾出す時も手から出してるんだけど、藍さんはノーモーションで大量に出してくる。さながら弾幕ってところだ。

こっちに飛んでくる無数の妖力弾を氷壁で防いで、こっちも妖力弾を一個投げて爆発させる。

 

すぐにその場を飛び退いて、氷壁を蹴ってぶち割ってきた藍さんの攻撃を回避。体を浮かして衝撃波を出し、回転しながら藍さんに蹴りをお見舞いした。

 

戦闘センスのない私でも妖力だけは立派だ。手足に込めればかなりの威力になる。

でも本当に、立派なのは妖力だけで、そもそもの身体能力が低い。妖力である程度上げられるとはいえ、元から高い方が絶対いいに決まってる。

 

かなりの速さで蹴ったと思うけど腕で防がれた。まあのけぞったみたいだし、反撃もらわなかっただけでもよしとしよう。

 

そもそも私が妖力の使い方が下手だったのは理由がある。

もちろん下手なのは下手なんだけど、要は殴った方が早いからである。そもそも前世じゃ妖力霊力なんてものなかった。あるのが当然のこの世界で生きてきた奴らに比べて下手なのはしょうがないだろう。

その点、格闘だったら難しいこと考えなくて楽だよねって。

 

要するに面倒くさかっただけなんだけど。

 

 

藍さんが妖力弾を乱れ打ちしてきた。

速度も威力も高い。まともに当たれば身体が吹っ飛ぶだろう。氷壁を作る時間もないので頑張って身をかわし続ける。

乱射が終わりかけのあたりで右腕に一発食らってしまった。当然体勢が崩れるけど、一旦毛玉になって無理やり体勢を整える。案の定私のいたところを光線が通っていた。当たったら穴あきそう。

うん!容赦ないね!

 

「ふぅぅぅ………」

 

一番初めに山でどんぱちした頃は、ちょっと本気で妖力弾を連射しただけで妖力がすっからかんになった。でも少なくとも、今の私ならもっと多くの妖力を使うことができるはず。

本当に少しずつとはいえ、増えているんだから。

 

体から妖力を放出し、その妖力を感じ取る。体の外に出た妖力を、自分の意のままに支えるように。

 

感覚を掴んだら後は簡単、その妖力で弾を作ってぶっ放すだけだ。

私の周りで作られた妖力弾は藍さんに向かって一直線に飛んでいく。

避けようと思えば避けられるはずなのに、藍さんは全く避ける様子がない。妖力の障壁で私の妖力弾を受け止めようとしているらしい。

でもそれは……ちょっと舐めすぎだ。

ちょっと藍さんと戦った今ならわかる。絶対幽香さんの方が強い、

その障壁は数秒で割れ、藍さんは空を飛んで私の弾を回避した。

まあ倒せるとは思って居なかったし、ダメージも入ったら嬉しいなー程度でやってたから。

 

でも時間稼ぎにはなったか。

 

私の手に握られているのは氷の剣。なんの変哲もないただの氷の剣。

妖力弾を連射している間、手元で必死にこれを作ってた。アリスさんのとこでも頑張って練習してた奴だ。このため時間稼ぎに結構妖力消費したから、少しくらいは役に立って欲しい。

 

本当はこんな普通の剣作る気じゃなかったんだけど……まだあれは練習段階だし、そもそも必要なもの持ってないし。

 

「そんな棒切れでどうするつもりだ」

「私の妖力詰めまくってるこれを棒切れ呼ばわり……」

 

一応軽く腕に妖力込めて振ったら岩が砕けるほどの威力は出るんだけどなあ!?

 

「かかってこい。この○○○○が」

「んなっ………普通にひどい」

 

ただ残念なことに、私は今まで格闘だけで生きてきた。剣とか槍とか斧とか、その類で戦ったことはほぼない。

妖力の使い方と同じ話だ。殴った方が早かった。

でもそれは筋力おかしい鬼とか他の化け物妖怪の話で、私は素の身体能力は低い。低すぎるくらいだ。

だから武器を持つ。

この手に馴染む氷で。

 

剣に妖力を纏わせて一振り、斬撃が藍さんの方へ飛んでいく。

藍さんは障壁をぶつけて対抗、負けたのは私の斬撃の方だ。でもそれと同時に氷と妖力弾を飛ばしていたので障壁はそのまま砕け散る。

そこはすかさず近寄って剣を横に振った。後ろを下がった藍さんだが、一緒に飛んだ斬撃を避けきれずに当たった。

………いや服にちょっと切れ込みがついた程度なんだけど。

 

服に切れ込みが入ったのを見て、なんか理解できないって顔をしている藍さん。

 

「………太刀筋が素人すぎる」

「素人ですが?」

「………」

「………」

 

謎の沈黙。

だってしょうがねえじゃんずっと素手で生き抜いてきたんだから!素手舐めんな!皆も素手になろうぜ!私は氷の剣使うけどな!

 

唐突に藍さんが飛び回り、藍さんの周囲から妖力弾が放射状に放たれる。時々わたしを追尾する奴も混ぜ込んで。

………急になにぃ?

落ち着いて妖力で障壁を作り、さらに氷の壁を周囲に張った。

あれだけ放射状に放っている弾幕も、私を低速で追尾する弾も、この壁を貫通することはできない。

 

「何がしたぐっふぉ」

 

全部貫通してきた。レーザーが氷壁も障壁も全部貫通して私の腹をぶち抜いてきた。

別に全然死に至る怪我じゃないけど、その隙を当然藍さんは見逃さない。頭を掴まれたような感覚を感じたと思ったら、身体が宙に浮いて身体を地面に思いっきりぶつけられた。

 

頭をぶつけたことで一瞬だけ頭が真っ白になったが、身体が勝手に毛玉になって抜け出し、近距離で妖力弾を乱射して無理矢理距離をとった。

 

「……頭から血出てるし」

 

多分これ私の頭一部分だけ赤くなってるよね。何故かアリスさんに頭を染色された時のことを思い出したわ。

 

腹の数を塞いで藍さんを睨みつける。

 

「どうした。髪を汚されるのは嫌だったか」

 

別に髪を汚されたのにキレたからにらめつけてるんじゃない。

ちょっとくらい私の眼光にびびってくれないかなあって思っただけだ。

………駄目だ、頭打ったせいでちょっと思考回路がオワってしまっている。

気を取り直して………

 

「だるくなってきた………」

 

いやもう本当になんなの……これ大分手加減されてる気すらするのに、まともな攻撃入れられてないし……

棒立ちの隙だらけな私に藍さんが近寄ってくるが、とりあえず力任せに剣を振って退ける。

てかなんで私こんなに嫌われてるんだろ……自分で言うのもなんだけど、私を嫌ってる人ってあんまりいないと思うよ?私のことが好きじゃない奴はいても、ここまで憎悪を向けられた覚えない。

 

あ、でもなんか藍さんから敵意剥き出しの視線が感じられなくなってる気がする。じゃあなんで攻撃してくるのかって話だけど。

なんなの?言葉喋らないの?必要なのは肉体言語ただ一つなの?ヒエッ戦闘狂だあ!

 

ダメだ、なんかやる気なくなってる。

 

「やらなきゃ死ぬぞ私、やらなきゃ死ぬぞ私。ふぅ……」

「思っていたよりはちゃんとしていたようだ」

「じゃあ戦うのやめようか!閉廷!おわり!解散!」

「こちらも、少し本気を出さしてもらおう」

「いや出さんでいいから……わおすっげぇファイアー」

 

立ち止まった藍さんの背後に燃え盛る火炎ができた。

あれか、巷で噂の妖術ってやつか。私も炎出せるようになりたい!

 

「今からこの炎でお前を焼く」

 

今から私焼かれちゃうみたいです。

狐に火……わかりやすく狐火?いや空気の揺れ方が半端じゃないんだけど……結構距離空いてるはずなのに、その熱さがひしひしと感じられる。

試しに軽く妖力の入っていない氷を牽制として打ち込んでみたけど……

 

「溶ける、かぁ」

 

しかも一瞬で。こりゃ蒸発してるな。水になった途端に蒸発されている。うん!すっげえ熱そう!

私の妖力を流し込めるだけ流し込んだ氷でもそう長くは持たなそう……5秒くらいで溶けそう。

 

「行くぞ」

「こないで……」

 

行くぞ、の行、の部分で既に飛んできたその炎は私の左腕を焼いた。

急いで腕を引き抜いたけど、服は焦げ落ちて腕は真っ黒に炭化していた。

使い物にならなくなった腕を引きちぎって新たな腕を生やす。もちろんその間に炎が飛んでくるから、氷壁で少しでも時間を稼いで逃げ回りながら。

こう……圧倒的火力って感じがする。妖力の力だけでいえば負けていないと思うけど……うん!使い方の問題だね!

焦るな焦るな。私は妖怪の中ではまだまだ若造、これから強くなればええんや。

まあ今から既に焼かれそうなんだけど。

 

再生した腕を見て改めて思う。

この体は激しい痛みは感じないように出来ている。もちろんそっちの方が良いんだけど、やっぱり私はもう完璧に人外なんだなあって。心は人間なのにね。

 

「逃げるだけか」

「逃げなきゃ焼かれる」

 

でも…そうだなあ。

私のことで唯一誇れる点は、再生能力が異常に高い点くらいだろう。それ以外ないんじゃない?

頑張って探せばもう少し挙がるかもしれないけどさ。

とにかく、それしかないなら、それを最大限に活かすまで。

 

全身に妖力を過剰に回す。身体能力にはほどほどに。体の保護と、即座に再生するために。

そして難しいことは考えず、藍さんの方へと走り出した。

 

「なんだ、丸焼きにされたいか」

 

飛んできた炎を避けるのに精一杯でとても返答できない。いや会話しなくても良いんだけど。

ま、今からするのは脳死の特攻、ゴリ押しである。

いつのまにか半分くらい溶けてた氷の剣をもう一回作り直し、妖力をありったけ込める。

 

藍さんが腕を一振りすると、炎が藍さんを囲むように出てきた。

 

「そのまま突っ切ってくると思ったが、違うのか」

「そりゃ焼け焦げますし。突っ込むわけない」

 

言い終わる前に妖力を込めまくった氷をいくつも打ち出す。

炎の壁の向こうで弾かれる音、そこに向かって手に持っている剣を力一杯投げた。

 

「氷を飛ばすだけではなにも——」

 

さっき突っ込むわけないと言ったな。

 

あれは嘘だ。

 

焼けないように目を閉じて無理やり炎の壁を突破、焼け爛れる体を再生させながら藍さんが受け止めた剣を握ってそのまま全妖力を流し込み全力で斬る。

驚いたような表情をしたのも束の間、視界が真っ赤になってなにも見えなくなった。

だけど体の動きは止めない。腕で剣を受け止められているなら、その腕を叩き斬るまで。

 

「とまらな…おおおおおおおおっ!」

 

叫ぶ藍さん、私だって叫びたいが、何分焼かれているため息すらできない。

焼かれ、再生して、焦げて、再生し……それを繰り返しながらも、剣に力を入れ続ける。

 

焼かれて体の感覚が無くなっている中、不思議と腕に剣が食い込んでいるという感覚だけは伝わってくる。

妖力がなくなるまで私は止まらない。無くなっても、気を失うまでは止まらない。

 

気の遠くなるような、数十分にも及ぶような数秒が経ったあと、腕が軽くなった。

 

そして体が軽くなった。

 

 

 

 

 

 

「………」

 

私、息してる?

 

「生きてるううゲッホゲッホ」

「おはよう」

「あぁおはよおおおおお!?」

 

普通に返事しかけたけど隣で寝てるの紫さんやん……なに普通に寝てるの……

横にやべー存在がいる中で寝てられないので起き……起き……

 

「動けない……」

「そりゃあ四肢ないからね」

「多分裸……」

「そりゃあ服全部焼けたからね」

「しんどい……」

「そりゃあ妖力使い切ったからね」

「隣で紫さんが喋りかけてくる……」

「嫌だったかしら?」

「そういうわけでは……」

 

単純に自分の置かれているこの状況に困惑しているだけで……

えーっと?手足ない服ない妖力ない気力ないっと。

妖力は……本当だ、全然ないや。足一本くらいなら生やせるかな……霊力は残ってるから、とりあえずこれも足に……

 

「全裸かぁ……」

「服なら藍が適当なもの探してるわよ」

「あぁ、それはどうも。………いや同じ大きさのあるんですか?言うのもなんですけど、二人とも凄い……体が大きいじゃないですか」

「この屋敷に貴方と同じくらいの大きさの子がいるのよ。いや、貴方より少し小さいかしらね。まあその子の服取りに行ってるんじゃない?」

 

そんなのいたのか……大丈夫?私と藍さんの戦いの余波で周りと建物吹っ飛んだりしてない?

 

「あの後……私が気を失った時どうなってたんですか?」

「貴方が藍の腕を切り落としたあと、藍が貴方を思いっきり蹴飛ばして試合終了ね」

「はぁ……腕…腕飛ばしたの謝らなきゃなあ」

「気にすることはない」

 

うわ、きたよ………

 

「君は気づいていないだろうが、既に一日経っている。綺麗に腕を切断してくれたおかげで、くっつけるのにはそう時間は掛からなかったさ」

 

藍さん……腕くっつくんだ……

 

「とりあえず着替えを持ってきた。どんなものがいいのか分からなかったので二つ持ってきたが……」

「2つ?」

「そうだな…見せた方が早いか」

 

蘭さんが見せてくれたのは二つの服。

一つは普通の、時代相応で地味な着物。

もう一つは、明るくて小さな可愛い子が着てそうな可愛らしい洋服。

 

ぅん………

 

「そっちの地味な方で……」

 

私の服装って地味な方だったんだなって改めて……文字T?あぁ、燃えたよ。

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